太平洋興発 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

太平洋興発 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場。北海道を地盤に、不動産賃貸・分譲、石炭等の輸入販売、有料老人ホーム運営などを展開する多角化企業。直近の連結業績は、主力である商事セグメントの石炭販売数量が増加し増収となったものの、仕入価格高騰や肥料セグメントの原材料高などが響き、経常利益は減益となった。


※本記事は、太平洋興発株式会社 の有価証券報告書(第150期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 太平洋興発ってどんな会社?


北海道を拠点に、祖業の炭鉱事業から転換し、不動産、商事、介護サービス等を多角的に展開する企業です。

(1) 会社概要


1920年に太平洋炭礦として設立され、石炭採掘を開始。1949年に上場。1970年に現社名へ変更し不動産業へ転換、2002年には採炭事業から撤退した。その後、有料老人ホーム運営や建設、商事など多角化を推進。近年は市場区分見直しに伴いスタンダード市場へ移行し、安定収益基盤の強化を図っている。

連結従業員数は676名、単体では237名。筆頭株主は北海道士別市のクロダで、第2位は同じく天塩倉庫、第3位は従業員持株会となっている。上位株主には創業家資産管理会社や取引関係者が名を連ねている。

氏名 持株比率
クロダ 5.04%
天塩倉庫 5.01%
太平洋興発持株会 4.53%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は板垣好紀氏です。社外取締役比率は22.2%です。

氏名 役職 主な経歴
板垣 好紀 代表取締役社長管理部門及び内部監査統制室担当 1984年入社、総務部長、常務取締役を経て2017年より現職。
猿子 満彦 常務取締役釧路支店長、釧路支店及び関連会社担当 太平洋製作所入社、同社常務取締役等を経て2019年より現職。
髙瀨 聡 常務取締役燃料部担当 太平洋炭礦入社、同社燃料部長等を経て2023年より現職。
山本 崇 取締役不動産管理部、札幌支店及び帯広支店担当 1989年入社、札幌支店長等を経て2017年より現職。


社外取締役は、藤井和典(弁護士・山王シティ法律事務所共同代表弁護士)、山口禎子(公認会計士税理士山口禎子事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「不動産」「商事」「サービス」「建設工事」「肥料」の5つの報告セグメントを展開しています。

(1) 不動産セグメント


マンション・戸建・住宅地の分譲販売、およびマンション・ビルの賃貸・管理を行っています。札幌市を中心に住居系マンションや商業用店舗を保有し、高い稼働率を維持することで安定的な収益源となっています。

収益は、不動産の販売代金および賃貸料・管理料収入から構成されます。運営は、主に同社および連結子会社である新太平洋商事が行っています。

(2) 商事セグメント


石炭(輸入炭・国内炭)、バイオマス燃料、石油、建築資材などの仕入販売や、船舶による輸送業務を行っています。電力会社や紙パルプ産業などの既存ユーザー向けにエネルギー資源を供給しています。

収益は、各商品の販売代金および輸送運賃等から得ています。運営は、同社および太平洋運輸、太平洋トラック、新太平洋商事などの連結子会社が担っています。

(3) サービスセグメント


有料老人ホームの運営、ゴルフ練習場運営、事務計算受託、ビル清掃、タクシー事業、飲食事業など多岐にわたるサービスを提供しています。特に有料老人ホームは東京と北海道で展開し、入居者ニーズに対応した運営を行っています。

収益は、施設入居金・利用料、各サービスの提供対価から構成されます。運営は、太平洋シルバーサービス、太平洋シルバーサービス北海道、エイチ・シー・シー、太平洋トータルシステム、まりも交通などの連結子会社が行っています。

(4) 建設工事セグメント


建設工事の請負および各種機械・設備の製造・修理を行っています。

収益は、工事請負代金および製品販売代金から得ています。運営は、太平洋製作所および太平洋機工が行っています。

(5) 肥料セグメント


農業用の炭カル肥料、消石灰、石粉の製造販売を行っています。

収益は、製品の販売代金から得ています。運営は、訓子府石灰工業が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は400億円から500億円規模で推移していますが、変動が見られます。直近の2025年3月期は前期比で増収となったものの、経常利益は大幅な減益となりました。利益率は1〜2%台で低水準にて推移しており、収益性の向上が課題となっています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 278億円 329億円 510億円 411億円 421億円
経常利益 5億円 4億円 13億円 10億円 6億円
利益率(%) 1.9% 1.2% 2.6% 2.5% 1.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 3億円 4億円 5億円 5億円 4億円

(2) 損益計算書


売上高は増加しましたが、売上原価率の上昇により売上総利益は減少しました。営業利益率は2.0%と低水準です。コスト面では、売上原価が売上の約90%を占めており、原価管理が重要となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 411億円 421億円
売上総利益 48億円 44億円
売上総利益率(%) 11.6% 10.4%
営業利益 12億円 9億円
営業利益率(%) 3.0% 2.0%


販売費及び一般管理費のうち、社員給与が9億円(構成比26%)、輸入炭販売費が6億円(同18%)を占めています。

(3) セグメント収益


商事セグメントが売上の大半を占めますが、利益率は1.7%と低く、利益貢献度は不動産セグメントが高い構造です。不動産は売上規模は小さいものの利益率が高く、全社利益を支えています。肥料セグメントは赤字となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
不動産 30億円 30億円 9億円 9億円 30.0%
商事 260億円 277億円 5億円 5億円 1.7%
サービス 54億円 54億円 4億円 4億円 6.8%
建設工事 45億円 36億円 1億円 1億円 3.3%
肥料 23億円 23億円 1億円 -1億円 -4.8%
連結(合計) 411億円 421億円 12億円 9億円 2.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

太平洋興発は、建設工事の受注減を利益率向上でカバーし、肥料事業では販売数量増も原材料高で一時的に損失となったものの、全体として営業活動によるキャッシュ・フローは増加しました。投資活動では固定資産の取得が主な支出要因となり、財務活動では借入金の増加が資金獲得につながっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 5億円 9億円
投資CF -7億円 -10億円
財務CF -5億円 2億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、各事業分野を通じて企業の社会的責任を果たしながら積極的な事業活動を行い、人々の豊かな暮らしの実現に貢献することを経営の基本方針としています。不動産、商事、サービス、建設、肥料の5事業を柱に社会への貢献を目指しています。

(2) 企業文化


持続可能な社会の実現と中長期的な企業価値向上を目指し、ESG(環境・社会・ガバナンス)活動に積極的に取り組む姿勢を重視しています。環境配慮型事業の推進や、地域社会への貢献、コンプライアンスの徹底を通じて、ステークホルダーとの信頼関係構築に努めています。

(3) 経営計画・目標


具体的な数値目標としての経営計画は開示されていませんが、既存事業の強化による安定的な収益確保と、新事業分野への取り組みによる新たな収益源の確保を目指しています。各セグメントにおいて収益性の向上と事業規模の拡大を目標としています。

(4) 成長戦略と重点施策


既存事業においては、不動産賃貸の高稼働率維持、バイオマス燃料の取扱拡大、有料老人ホームの商品多様化などを推進し、安定収益の確保を図っています。また、新事業分野への取り組みとして、社有地の有効活用による賃貸事業など、新たな収益事業の創造に注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


キャリアアップ推進のための人事・研修制度の充実や、国家資格取得推進のための自己啓発制度、子育てと仕事の両立支援など、人材育成と社内環境整備に力を入れています。多様な人材が能力を発揮できる環境づくりを目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 60.3歳 8.8年 3,683,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 18.9%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 86.0%
男女賃金差異(正規) 79.9%
男女賃金差異(非正規) 87.7%


※男性育児休業取得率は、同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理職に占める女性労働者の割合(16.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 不動産市況や地価動向の影響


主要事業である不動産賃貸事業において、競合による供給過多や価格競争により、賃料下落や空室率上昇のリスクがあります。また、北海道地区(特に釧路地区)の地価下落による資産価値の減少が、経営成績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 輸入炭在庫の価格変動リスク


商事セグメントの輸入炭販売事業では、国際情勢やエネルギー価格の変動により石炭市場価格が大幅に変動する可能性があります。価格下落時には棚卸資産評価損が発生するリスクがあり、在庫増による運転資金需要への対応も必要となります。

(3) 有料老人ホーム事業の競合リスク


サービスセグメントの有料老人ホーム事業では、新規参入の増加や入居保証金の低額化傾向により競争が激化しています。また、ヘルパー等の人材流動性が高く、高品質なサービス維持のための人材確保が課題となっており、稼働率や収益性に影響を与える可能性があります。

(4) 関係会社の支援に関するリスク


かつての関係会社である太平洋炭礦に対し、借入金等の債務保証を行っています。同社が保有する不動産の売却や賃貸収入が返済額に満たない場合、保証債務の履行による損失や資金負担が生じる可能性があります。地価下落等により同社の債務超過が拡大した場合、引当金の追加計上が必要となるリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。