大成建設 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

大成建設 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場および名古屋証券取引所プレミア市場に上場。主な事業は土木、建築、開発事業です。直近の業績は、全てのセグメントで売上高が増加し、売上総利益の増加等により大幅な増収増益となりました。


※本記事は、大成建設株式会社 の有価証券報告書(第165期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

大成建設転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

1. 大成建設ってどんな会社?

国内トップクラスの規模を誇るスーパーゼネコンの一角。国内外で大規模なインフラ整備や建築プロジェクトを手掛けています。

(1) 会社概要

1873年に大倉組商会として創立し、1946年に現在の社名へ改称しました。1957年に東京証券取引所へ上場し、2010年には有楽土地を完全子会社化しています。近年では2023年にピーエス・コンストラクション(旧ピーエス三菱)を連結子会社化するなど、グループ体制を強化しています。

同社の連結従業員数は16,382名、単体では8,994名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、次いで資産管理業務を行う日本カストディ銀行、同社取引先持株会が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 17.80%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 5.80%
大成建設取引先持株会 3.63%

(2) 経営陣

同社の役員は男性15名、女性3名の計18名で構成され、女性役員比率は17.0%です。代表取締役社長は相川善郎氏が務めています。

氏名 役職 主な経歴
相 川 善 郎 代表取締役社長 1980年4月同社入社。東京支店建築部長、常務執行役員、取締役等を経て2020年6月より現職。
田 中 茂 義 代表取締役会長 1979年4月同社入社。九州支店長、専務執行役員、代表取締役等を経て2023年4月より現職。
岡 田 正 彦 代表取締役 1982年4月同社入社。秘書部長、常務執行役員、専務執行役員を経て2023年6月より現職。
白 川 賢 志 取締役 1984年4月同社入社。千葉支店長、常務執行役員、専務執行役員を経て2024年6月より現職。
笠 原 淳 一 取締役 1985年4月同社入社。管理本部総務部長、常務執行役員、専務執行役員を経て2024年6月より現職。
山 浦 真 幸 取締役 1985年4月同社入社。千葉支店長、執行役員、常務執行役員を経て2023年6月より現職。
吉 野 雄一郎 取締役 1986年4月同社入社。中国支店長、執行役員、常務執行役員を経て2023年6月より現職。


社外取締役は、西村篤子(元特命全権大使)、大塚紀男(元日本精工社長)、上條努(元サッポロHD社長)、小出寛子(元パルファン・クリスチャン・ディオール・ジャポン社長)です。

2. 事業内容

同社グループは、「土木事業」「建築事業」「開発事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 土木事業

ダム、トンネル、橋梁、道路などの社会インフラ整備を行います。官公庁や民間事業者から工事を請け負い、国内外でプロジェクトを遂行しています。

収益は発注者からの工事請負代金です。運営は主に同社や大成ロテック、ピーエス・コンストラクションなどのグループ会社が行っています。

(2) 建築事業

オフィスビル、マンション、商業施設、工場などの建築工事を行います。超高層ビルや大規模施設の施工に強みを持ち、リニューアル工事なども手掛けています。

収益は施主からの工事請負代金です。運営は同社や大成ユーレックなどが担っています。

(3) 開発事業

不動産の売買、宅地の開発・販売、保有不動産の賃貸などを手掛けています。都市再開発プロジェクトへの参画やマンション分譲事業も行っています。

収益は不動産の販売代金や賃貸料、管理手数料などです。運営は同社および大成有楽不動産などが中心となって行っています。

(4) その他事業

建設業に関連する受託研究、技術提供、環境測定、PFI事業、レジャー関連事業などを展開しています。

収益はサービスの対価や事業収益です。運営は同社および専門性を持つ各グループ会社が行っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

売上高は増加傾向にあり、特に直近では2兆円を超える規模に拡大しています。利益面では、一時期利益率が低下していましたが、直近では回復し、経常利益、当期純利益ともに大きく増加しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 14,801億円 15,432億円 16,427億円 17,650億円 21,542億円
経常利益 1,359億円 1,032億円 631億円 389億円 1,345億円
利益率(%) 9.2% 6.7% 3.8% 2.2% 6.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 783億円 577億円 370億円 226億円 947億円

(2) 損益計算書

大幅な増収に伴い、売上総利益が大きく増加しました。営業利益率も前期と比較して大きく改善しており、収益性が向上しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 17,650億円 21,542億円
売上総利益 923億円 1,934億円
売上総利益率(%) 5.2% 9.0%
営業利益 265億円 1,202億円
営業利益率(%) 1.5% 5.6%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が408億円(構成比37%)、調査研究費が127億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益

土木事業、建築事業ともに大型案件の進捗などにより増収となりました。開発事業も不動産販売が堅調で増収となっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
土木事業 5,055億円 6,306億円
建築事業 11,173億円 13,726億円
開発事業 1,297億円 1,376億円
その他 125億円 134億円
連結(合計) 17,650億円 21,542億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

本業の営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスとなる一方、投資活動によるキャッシュ・フローはプラス、財務活動によるキャッシュ・フローはマイナスで、事業検討型(事業拡大に伴う資産増加)に分類されます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 406億円 -138億円
投資CF -1,387億円 105億円
財務CF 1,094億円 -1,338億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は35.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

グループ理念として「人がいきいきとする環境を創造する」を掲げています。自然との調和の中で、安全・安心で魅力ある空間と豊かな価値を生み出し、次世代のための夢と希望に溢れた地球社会づくりに取り組むことを使命としています。

(2) 企業文化

「自由闊達」「価値創造」「伝統進化」の3つの価値を「大成スピリット」として全役職員が共有しています。これらを日々の行動や判断の基準とし、グループ理念の実現に向けて取り組む企業風土があります。

(3) 経営計画・目標

「TAISEI VISION 2030」達成計画および中期経営計画(2024-2026)を策定し、2026年度の数値目標として以下を掲げています。
* グループ営業利益:1,200億円
* グループ純利益:800億円
* ROE:8.5%程度
* 売上高:19,500億円程度

(4) 成長戦略と重点施策

「TAISEI VISION 2030」の実現に向け、各事業セグメントで成長戦略を推進します。国内建築事業では環境技術やデジタル技術の活用によるサービス提供、国内土木事業ではインフラ整備のトップランナーとしての貢献を目指します。また、開発事業でのグループシナジー追求や海外事業の現地化推進、エンジニアリング事業の強化に加え、3年間で計3,500億円の投資を計画しています。

* 成長投資:1,700億円
* 事業投資:1,200億円
* 基盤維持投資:600億円

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

「人がいきいきとする環境を創造する」という理念のもと、人材を競争力の源泉と捉え、多様な人材が能力を最大限に発揮できる環境整備を進めています。人事制度改革を通じて、社員のエンゲージメント向上、人的資本投資の拡充、ウェルビーイングの実現に取り組み、持続的な成長を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.4歳 17.2年 10,580,204円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.5%
男性育児休業取得率 89.3%
男女賃金差異(全労働者) 58.4%
男女賃金差異(正規) 59.0%
男女賃金差異(非正規) 56.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメントスコア(BBB 55)、新卒女性採用比率(25%)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 建設市場の動向

国内建設事業の比重が高いため、国内建設市場の急激な縮小や競争激化が生じた場合、受注高や利益が減少する可能性があります。これに対し、リニューアル分野やエンジニアリング事業、開発事業への注力、新たなビジネスモデルの確立などで対応しています。

(2) 資材価格の変動

原材料価格の高騰に対し、請負代金への転嫁が困難な場合、工事採算が悪化するリスクがあります。資材価格動向のモニタリングや集約購買による原価低減、発注者との価格交渉などでリスク低減に努めています。

(3) 労働環境リスク

建設業界における労働力不足や、働き方改革関連法への対応(2024年問題)が課題となっています。不適切な労働管理や過重労働が発生した場合、社会的信用の失墜や人材確保への悪影響が生じる可能性があります。適正な要員配置や業務効率化、休暇取得促進などで対応しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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