大成建設 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

大成建設 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

大成建設は、東京証券取引所プライム市場および名古屋証券取引所プレミア市場に上場し、土木、建築、開発を主力とする総合建設企業です。直近は大型工事の進捗端境期により減収となったものの、不採算工事の減少など利益率の大幅な改善により営業利益が前期比で5割以上増加し、力強い増益を達成しました。


※本記事は、大成建設の有価証券報告書(第166期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月16日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 大成建設ってどんな会社?


土木、建築、不動産開発を幅広く手がけ、次世代のための環境と空間創造を担う総合建設企業です。

(1) 会社概要


1873年に大倉喜八郎氏が大倉組商会を創立し、1917年に大倉土木組として分離・誕生しました。1946年に大成建設へと改称し、1957年に東京証券取引所へ上場を果たしています。2009年から2010年にかけて大成ロテックや有楽土地などを完全子会社化し、2025年には東洋建設を完全子会社化するなど、事業基盤の強化を推進しています。

従業員数は連結で18,503名、単体で9,518名です。筆頭株主は資産管理業務等を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位にも同様の日本カストディ銀行が名を連ねています。また、第3位には同社の取引先持株会が入っており、安定的な株主構成と強固な取引先関係を築いています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 15.47%
日本カストディ銀行(信託口) 6.02%
大成建設取引先持株会 3.79%

(2) 経営陣


同社の役員は男性14名、女性2名の計16名で構成され、女性役員比率は13.0%です。代表取締役社長は相川善郎氏が務めています。社外取締役比率は36.4%です。

氏名 役職 主な経歴
相川善郎 代表取締役社長 1980年同社入社。東京支店建築部長、常務執行役員などを経て2020年より現職。
田中茂義 代表取締役会長 1979年同社入社。九州支店長、専務執行役員などを経て2023年より現職。
笠原淳一 代表取締役 1985年同社入社。管理本部総務部長、専務執行役員などを経て2026年より現職。
岡田正彦 取締役 1982年同社入社。秘書部長、代表取締役などを経て2026年より現職。
白川賢志 取締役 1984年同社入社。千葉支店長、専務執行役員などを経て2024年より現職。
山浦真幸 取締役 1985年同社入社。千葉支店長、常務執行役員などを経て2023年より現職。
吉野雄一郎 取締役 1986年同社入社。中国支店長、常務執行役員などを経て2023年より現職。


社外取締役は、大塚紀男氏(元日本精工社長)、國分文也氏(元丸紅社長)、上條努氏(元サッポロホールディングス社長)、小出寛子氏(元パルファン・クリスチャン・ディオール・ジャポン社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、土木事業、建築事業、開発事業およびその他事業を展開しています。

(1) 土木事業


同社および大成ロテックや東洋建設などの関係会社が、国内外で土木工作物の建設工事全般に関する事業を展開しています。インフラ整備や防災減災などの社会課題解決に向けた施工実績を誇ります。

収益は、発注者である官公庁や民間企業からの工事請負代金が主な源泉です。運営は主に大成建設が行うほか、大成ロテックや東洋建設などの子会社および関連会社が、それぞれの専門性を活かして工事を担っています。

(2) 建築事業


同社および大成設備や東洋建設などの関係会社が、国内外の建築物の建設工事全般に関する事業を手がけています。オフィスビルや商業施設、生産施設など多様な建築ニーズに対応し、設計から施工までを一貫して提供しています。

収益は、顧客である民間企業や官公庁からの工事請負代金によって構成されています。運営は主に大成建設が行い、設備工事などを大成設備をはじめとする関係会社が担う体制を構築しています。

(3) 開発事業


不動産の売買、宅地の開発・販売、保有不動産の賃貸・管理などの開発事業を幅広く展開しています。建設事業と連携し、付加価値の高い街づくりや都市開発を推進しています。

収益は、不動産の販売代金や保有物件の賃貸収入、管理・斡旋手数料などから得ています。運営は主に大成建設および大成有楽不動産、大成有楽不動産販売などの子会社が主体となって行っています。

(4) その他


受託研究や技術提供、環境測定など、建設業に付帯関連する幅広いサービス事業を展開しています。また、PFI事業やその他のサービス業も手がけ、事業領域の多角化を進めています。

収益は、顧客からの研究受託料やサービス提供の対価などによって構成されています。運営は主に大成建設のほか、PFI事業を営む子会社やサービス業を担う複数の関係会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、売上高が1兆5,432億円から2兆1,542億円の間で推移し、直近は2兆891億円となりました。経常利益は一時的に減少した時期もありましたが、直近2期間で大幅に回復し、利益率も9.4%へと向上して力強い収益改善傾向を示しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 15,432億円 16,427億円 17,650億円 21,542億円 20,891億円
経常利益 1032億円 631億円 389億円 1,345億円 1,958億円
利益率(%) 6.7% 3.8% 2.2% 6.2% 9.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 577億円 370億円 226億円 947億円 1,454億円

(2) 損益計算書


売上高は減少したものの、売上総利益は1,934億円から2,914億円へと大きく増加しました。これに伴い営業利益も1,202億円から1,880億円へ拡大し、収益性の抜本的な改善が進んでいることが確認できます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 21,542億円 20,891億円
売上総利益 1,934億円 2,914億円
売上総利益率(%) 9.0% 13.9%
営業利益 1,202億円 1,880億円
営業利益率(%) 5.6% 9.0%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が515億円(構成比36%)、調査研究費が153億円(同11%)を占めています。また、売上原価の内訳では、外注費が7,564億円(構成比63%)、経費が2,626億円(同22%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別の状況を見ると、土木事業は子会社化の影響等で増収・増益を達成しました。一方、建築事業は大型工事の進捗端境期により減収となりましたが、不採算工事の減少により利益は大幅に改善し、利益率向上に大きく貢献しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
土木事業 6,306億円 6,797億円 876億円 956億円 14.1%
建築事業 13,726億円 12,486億円 113億円 784億円 6.3%
開発事業 1,376億円 1,442億円 235億円 240億円 16.6%
その他 134億円 166億円 23億円 24億円 14.2%
調整額 - - -46億円 -123億円 -
連結(合計) 21,542億円 20,891億円 1,202億円 1,880億円 9.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスであることから、営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う「積極型」の状態にあります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -138億円 1,473億円
投資CF 105億円 -1,959億円
財務CF -1,338億円 244億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は18.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は34.9%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「人がいきいきとする環境を創造する」というグループ理念を掲げています。自然との調和の中、安全・安心で魅力ある空間と豊かな価値を生み出し、次世代のための夢と希望に溢れた地球社会づくりに取り組むことを使命としています。

(2) 企業文化


グループ理念を追求するための行動様式として、自由闊達・価値創造・伝統進化の3つの価値を「大成スピリット」と定めています。全役職員がこの価値観を共有し、社員を大切にすることを経営の中心に置く「人生を尊重する企業風土」の醸成に努めています。

(3) 経営計画・目標


中長期的に目指す姿の実現に向け、「中期経営計画(2024-2026)」を策定し、持続的な成長に向けたマイルストーンを定めています。2026年度に向けて以下の数値目標を掲げています。

* グループ営業利益:1,880億円
* グループ純利益:1,510億円
* ROE:15.4%
* 売上高:2兆4,200億円

(4) 成長戦略と重点施策


各事業セグメントの中長期事業戦略とそれを支える事業基盤の整備に加え、将来の成長機会獲得に必要な投資を着実に実行する方針です。環境・エネルギーや人権をサステナビリティ戦略の重点領域と位置づけ、技術開発やM&Aを通じたビジネスモデルの変革を推進しています。

* 成長投資:1,740億円
* 事業投資:1,260億円
* 基盤維持投資:700億円

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人財が競争力の源泉である」との認識のもと、社員が能力を最大限に発揮できる環境整備と多様なキャリアパスの実現を目指しています。自律的なキャリア形成を支援する等級・評価・給与制度等の人事制度改革を実行し、「働きやすさ」と「働きがい」を兼ね備えた組織構築を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 42.3歳 17.0年 11,910,134円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.1%
男性育児休業取得率 129.6%
男女賃金差異(全労働者) 59.0%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 60.2%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 51.1%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメントスコア(A 59.6)、新卒女性採用比率(22%)、サプライヤーのサステナビリティ活動状況確認率(67%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 建設市場の動向


国内建設事業の割合が高いため、市場の急激な縮小や競争環境の激化が生じた場合、収益が減少するリスクがあります。リニューアル分野や開発事業に注力し、新たなビジネスモデルの確立に向けた取り組みを進めています。

(2) 資材価格の変動


原材料価格が高騰した際、請負代金への反映が困難な場合、工事収支が悪化するリスクがあります。資材価格の動向モニタリングや集約購買による原価低減に努めるとともに、価格交渉や物価スライドの採用で対応しています。

(3) サステナビリティ課題への対応


気候変動や人権尊重への取り組みが不十分な場合、企業競争力や評価が低下するリスクがあります。長期環境目標の策定や人権デュー・ディリジェンスの実施を通じ、サプライチェーン全体でのサステナビリティ推進に注力しています。

(4) 人的基盤の確保


建設技能労働者の高齢化や若年入職者の減少による担い手不足が、工程遅延や施工品質の低下を招くリスクがあります。協力会社と連携した担い手確保や働き方改革の推進、処遇改善を含めた労働環境の整備に取り組んでいます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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