鉄建建設 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

鉄建建設 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の総合建設会社。鉄道工事に強みを持ち、土木・建築・不動産事業を展開。直近の連結業績は、大型工事の価格転嫁や資材の海外調達による原価低減が奏功し、売上高は微増ながら営業利益は261.1%増、経常利益は32.8%増と大幅な増益を達成。一方、最終利益は特別損失等の計上により減益となりました。


※本記事は、鉄建建設株式会社 の有価証券報告書(第84期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 鉄建建設ってどんな会社?


鉄道関連工事に強みを持つゼネコンで、JR東日本が筆頭株主。トンネルや駅舎等のインフラ整備を主力とします。

(1) 会社概要


1944年2月、鉄道工事の施工等を目的として鉄道建設興業が設立されました。1961年に東証二部へ上場し、1963年には東証一部へ指定替えとなりました。翌1964年、現在の鉄建建設へ商号を変更。2022年4月の東証市場区分見直しにより、現在はプライム市場に上場しています。

連結従業員数は1,871名、単体では1,731名です。筆頭株主は事業提携先でもある東日本旅客鉄道で19.75%を保有しており、第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)です。東日本旅客鉄道とは土木・建築工事の受注等で密接な関係にあります。

氏名 持株比率
東日本旅客鉄道 19.75%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 12.14%
鹿島建設 3.36%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性3名の計14名で構成され、女性役員比率は21.4%です。代表者は代表取締役社長執行役員社長の伊藤泰司氏です。社外取締役比率は42.9%です。

氏名 役職 主な経歴
伊藤泰司 代表取締役社長執行役員社長 1978年日本国有鉄道入社。東日本旅客鉄道執行役員長野支社長等を経て、2015年同社取締役執行役員副社長。2018年6月より現職。
東海林 直人 代表取締役執行役員副社長DX推進室長 1985年同社入社。土木本部土木部長、常務執行役員経営企画本部長等を経て、2024年6月代表取締役執行役員副社長。2025年4月より現職。
瀬下耕司 取締役 1983年同社入社。建築本部建築部長、常務執行役員建築本部長、取締役常務執行役員建築本部長を経て、2025年4月より現職。
草刈昭博 取締役常務執行役員管理本部長 1982年同社入社。管理本部財務部長、執行役員管理本部副本部長等を歴任。2022年4月常務執行役員管理本部長。2023年4月より現職。
大場秀彦 取締役常務執行役員土木本部長 1984年同社入社。名古屋支店次長兼土木部長、執行役員名古屋支店長等を経て、2023年4月常務執行役員土木本部長。2023年6月より現職。
猪塚武志 取締役常務執行役員経営企画本部長サステナビリティ推進室長 1987年同社入社。経営戦略室経営企画部長、執行役員東北支店長等を経て、2024年6月取締役常務執行役員経営企画本部長。2025年4月より現職。


社外取締役は、池田克彦(元警視総監)、大内雅博(高知工科大学教授)、富田美栄子(西綜合法律事務所代表)、齊藤誠(東日本旅客鉄道執行役員)、関谷恵美(日本グリーン電力開発会長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「土木工事」「建築工事」「不動産事業」「付帯事業」および「その他」事業を展開しています。

土木工事

トンネル、橋梁、鉄道関連施設などの土木工事を請け負っています。また、これらに関する調査、企画、測量、設計、監理等も行っています。官公庁や鉄道事業者などが主な顧客です。

工事の進行に応じた請負代金が主な収益源です。運営は主に鉄建建設が行っており、連結子会社の株式会社ジェイテック等が専門工事の施工協力を行っています。海外では現地法人が施工を担当しています。

建築工事

駅舎、オフィスビル、マンション、商業施設などの建築工事を請け負っています。土木同様、調査、企画、設計、監理等も手掛けます。民間企業や官公庁、鉄道事業者が顧客となります。

請負工事による代金が収益の柱です。運営は主に鉄建建設が行っています。設計業務の一部については、関連会社の株式会社アル.パートナーズ建築設計が行っています。

不動産事業

オフィスビルや住宅等の不動産の売買、賃貸、土地開発関連事業を行っています。法人や個人が顧客となります。

不動産の販売代金や賃貸料が収益源です。運営は、鉄建建設のほか、連結子会社のテッケン興産株式会社および鉄建プロパティーズ株式会社が行っています。

付帯事業

建設工事に付帯する資機材の販売や警備業務、事務業務の受託などを行っています。

資機材の販売代金や業務受託料が収益源です。運営は、連結子会社のテッケン興産株式会社、株式会社ディッグ、鉄建プロパティーズ株式会社が行っています。

その他

建築技術者の教育や建設工事の業務支援、いちご観光農園の運営、小水力発電事業などを行っています。

教育受講料や農園の入園料・販売代金、売電収入などが収益となります。運営は、TKパートナーズ株式会社、株式会社ファーム ティー・エス、TKアクアグリーン株式会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は1,500億円〜1,800億円台で推移しており、直近は増加傾向にあります。経常利益は82期に大きく落ち込みましたが、その後は回復基調にあり、84期は30億円まで増加しました。利益率は1〜4%台で推移しています。当期純利益は変動が見られます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,820億円 1,516億円 1,607億円 1,836億円 1,851億円
経常利益 65億円 62億円 10億円 23億円 30億円
利益率(%) 3.6% 4.1% 0.6% 1.2% 1.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 42億円 47億円 24億円 43億円 34億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は微増ですが、売上総利益が大きく増加しており、利益率が改善しています。これに伴い営業利益も大幅に伸長しました。一方、販売費及び一般管理費も増加傾向にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,836億円 1,851億円
売上総利益 111億円 135億円
売上総利益率(%) 6.0% 7.3%
営業利益 10億円 35億円
営業利益率(%) 0.5% 1.9%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が51億円(構成比45%)、法定福利費が8億円(同7%)を占めています。売上原価については、完成工事原価が1,664億円で売上原価合計の98%を占めています。

(3) セグメント収益


土木工事は減収減益となりましたが、建築工事は増収となり、赤字幅が縮小しました。不動産事業と付帯事業は増収増益となり、特に不動産事業の利益率の高さが目立ちます。全体としては、利益率の改善が進んでいます。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
土木工事 920億円 890億円 37億円 35億円 3.9%
建築工事 880億円 908億円 -32億円 -10億円 -1.1%
不動産事業 33億円 45億円 2億円 6億円 14.3%
付帯事業 1億円 4億円 1億円 1億円 31.3%
その他 2億円 2億円 2億円 2億円 79.9%
調整額 -32億円 -35億円 -0億円 -0億円 -
連結(合計) 1,836億円 1,851億円 10億円 35億円 1.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業の営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスとなる一方、資産売却等による投資CFと借入金増加等による財務CFがプラスとなっています。これは、売上債権の増加や仕入債務の減少といった運転資金の変動に加え、積極的な資金調達を行っていることを示唆しており、「救済型」のパターンに該当します。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 40億円 -203億円
投資CF -43億円 6億円
財務CF 11億円 179億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.8%でプライム市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は31.0%で市場平均(非製造業)を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「信用と技術」を基本とし、顧客に喜ばれる安全で良質な社会基盤を創造することを通じて社会の繁栄に貢献することを目指しています。同時に、持続的に成長し、家族に誇れる働きがいのある企業となることを経営理念として掲げています。

(2) 企業文化


株主、顧客、取引先、従業員など関係するすべてのステークホルダーから「価値ある企業」として支持され、将来にわたりその存在を主張することを基本理念としています。また、サステナビリティ経営を推進し、社会的価値と経済的価値の両立を目指す姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


2024年4月に策定した「中期経営計画2028」において、持続的に成長する鉄建グループを目指し、利益創出力の回復・強化と資本コスト・株価を意識した経営を掲げています。

* 2028年度目標:ROE 8%以上、連結営業利益 80億円以上、配当性向 50%程度
* 2026年度目標:ROE 7%以上、連結営業利益 50億円以上、配当性向 50%程度

(4) 成長戦略と重点施策


「中期経営計画2028」に基づき、生産性と利益創出力の回復、成長領域への積極投資、人的資本の充実とESG推進、資本効率経営への転換を基本方針としています。土木・建築事業では選別受注と集中管理による原価低減を進め、鉄道分野や官公庁建築でのシェア拡大を目指します。また、建設DXの推進や環境負荷低減にも注力します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人的資本」を支えるため、タレントマネジメントシステムを導入し、経営戦略に沿った育成と適正配置を推進しています。階層別研修やDX人材育成、早期の現場所長育成など教育体制を充実させるとともに、DE&Iやワークライフバランスの実現により、社員エンゲージメントの向上を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.9歳 16.4年 9,163,803円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.9%
男性育児休業取得率 124.1%
男女賃金差異(全労働者) 66.3%
男女賃金差異(正規雇用) 69.8%
男女賃金差異(非正規雇用) 67.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、社員一人当たりの研修時間(44時間)、障がい者雇用率(2.6%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 資材・労務費等の高騰


請負契約後に原材料価格や労務費などが高騰した場合、その上昇分を請負金額に十分に反映できない可能性があります。建設コストの上昇が続く中、価格転嫁が困難な状況となれば、工事採算が悪化し、同社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 公共事業投資額の減少


建設事業の売上高は公共事業の投資額に大きく依存しています。公共投資は政策や経済情勢により変動するため、予想を上回って投資額が減少した場合には、受注機会の喪失や競争激化を招き、同社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 災害・事故の発生


施工中の防災や事故防止には万全を期していますが、予期せぬ原因により工事事故や労働災害が発生するリスクがあります。こうした事態が生じた場合、損害賠償の発生や指名停止処分による受注機会の減少などにより、同社グループの社会的信用や業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 海外事業に伴うリスク


海外での工事展開において、現地の政治・経済情勢の変動、予期せぬ法規制の変更、テロや紛争の発生、為替相場の変動などのリスクが存在します。これらが顕在化した場合、工期の遅延やコスト増加などを招き、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。