きんでん 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

きんでん 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

きんでんは東京証券取引所プライム市場に上場する総合設備工事業を展開する企業です。電気、情報通信、空調等の設備工事を主力とし、関西電力グループの一員として安定した事業基盤を持ちます。直近の業績は増収増益で、完成工事高および全ての利益項目において過去最高を更新しています。


※本記事は、株式会社きんでん の有価証券報告書(第111期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. きんでんってどんな会社?


関西電力を筆頭株主とする総合設備工事会社です。電気、空調、情報通信など社会インフラを支える設備工事を幅広く手掛けています。

(1) 会社概要


1944年、近畿地方の電気工事業者が統合し「近畿電気工事」として設立されました。1969年に大阪証券取引所市場第一部、1970年に東京証券取引所市場第一部へ上場し、1990年に現社名「きんでん」へ変更しました。海外展開も早く、1980年代より米国やアジア各国へ現地法人を設立しています。近年では風力発電事業や海外での設備工事事業など、事業領域を拡大しています。

連結従業員数は14,359人、単体では8,461人が在籍しています。大株主は、関西地域の電力供給を担う事業会社が筆頭で、2位には資産管理を行う信託銀行、3位には筆頭株主グループの不動産開発会社が名を連ねています。関西電力グループとの強固な資本関係のもと、安定した経営基盤を築いています。

氏名 持株比率
関西電力 29.64%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 11.20%
関電不動産開発 7.30%

(2) 経営陣


同社の役員は男性18名、女性2名の計20名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は上坂 隆勇氏が務めています。社外取締役比率は30.0%です。

氏名 役職 主な経歴
上坂 隆勇 代表取締役社長 1980年きんでん入社。2016年常務執行役員東京支社長、2018年取締役常務執行役員を経て、2020年6月より現職。
土井 義宏 代表取締役会長 2009年関西電力常務取締役、2016年同社代表取締役副社長執行役員、2020年関西電力送配電代表取締役社長を経て、2023年6月より現職。
林 弘之 代表取締役副社長東京本社代表東京営業本部長営業総括 代表取締役経営執行役員副社長 1983年きんでん入社。2017年取締役常務執行役員、2018年取締役専務執行役員を経て、2023年6月より現職。
西村 博 取締役専務執行役員電力本部長安全衛生環境室担当中央総括安全衛生管理者 1982年きんでん入社。2017年常務執行役員電力本部副本部長、2018年取締役常務執行役員を経て、2023年6月より現職。
佐藤 守良 取締役専務執行役員大阪営業本部長経営企画部担当 1981年きんでん入社。2016年執行役員中部支社長、2019年取締役常務執行役員を経て、2023年6月より現職。
福田 隆 取締役常務執行役員東京本社代表補佐営業担当 2016年関西電力常務執行役員、2020年関西電力送配電常務執行役員を経て、2023年6月より現職。
伊﨑 幸治 取締役常務執行役員コーポレート部門担当(秘書・IR・広報・経営企画・総務法務・経理) 取締役経営執行役員常務 1983年きんでん入社。2019年執行役員四国支社長、2022年常務執行役員を経て、2023年6月より現職。
堀切 正則 取締役常務執行役員技術企画室長情報通信本部長中央統括安全管理者(情報通信本部担当) 1986年きんでん入社。2018年執行役員技術企画室長、2020年常務執行役員技術企画室長を経て、2023年6月より現職。
吉増 憲二 取締役常務執行役員技術本部長京都研究所担当中央統括安全管理者(技術本部担当) 1988年きんでん入社。2017年執行役員大阪支社長、2023年常務執行役員技術本部副本部長を経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、鳥山半六(弁護士)、髙松啓二(元近鉄グループHD副社長)、森川桂造(元コスモエネルギーHD会長)、相良和伸(元大阪大学大学院教授)、小久江晴子(双日社外取締役)、武藏扶実(ダスキン社外取締役)、石原美幸(元UACJ社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「設備工事業(建設事業)」を展開しています。

(1) 電気工事(一般電気工事・配電工事等)


ビル、工場、商業施設などの一般電気工事や、電力会社から受注する配電工事、送電線工事、発変電所工事などを提供しています。顧客は主に関西電力グループや、建設会社、官公庁、一般民間企業など多岐にわたります。社会インフラの構築や維持管理を担う重要な事業です。

収益は、顧客からの工事請負代金によって構成されています。運営は主にきんでんが行い、配電工事等の周辺業務については子会社のきんでんサービスなどが請け負っています。また、海外においては各国の現地法人が設計・施工を行っています。

(2) 情報通信工事・環境関連工事ほか


情報通信工事では電気通信工事や計装工事を、環境関連工事では空調管工事などを手掛けています。また、内装設備工事や土木工事も行い、建物全体の設備を総合的にサポートしています。顧客のニーズに合わせて、省エネ提案やリニューアル工事なども提供しています。

収益は、これらの工事施工に対する請負代金から得ています。運営はきんでんが主体となるほか、給排水衛生工事を行う西原衛生工業所や、情報通信システム機器の販売を行うきんでんスピネットなどの子会社も各専門分野で事業を展開しています。風力発電事業は特定の子会社が運営しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は堅調に推移しており、直近では7,000億円を超える水準に達しています。利益面でも、経常利益および当期利益ともに増加傾向にあり、利益率も向上しています。特に当期は、旺盛な建設需要や価格転嫁の進展により、増収増益を達成しました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 5,563億円 5,668億円 6,091億円 6,545億円 7,051億円
経常利益 448億円 400億円 402億円 460億円 645億円
利益率(%) 8.1% 7.1% 6.6% 7.0% 9.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 311億円 258億円 277億円 298億円 424億円

(2) 損益計算書


直近2期間の比較では、売上高の増加に伴い売上総利益が増加しています。売上総利益率も改善しており、採算性の向上が見られます。営業利益は大幅に増加しており、本業の収益力が強化されていることが伺えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 6,545億円 7,051億円
売上総利益 1,076億円 1,328億円
売上総利益率(%) 16.4% 18.8%
営業利益 427億円 610億円
営業利益率(%) 6.5% 8.6%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が336億円(構成比47%)、退職給付費用が11億円(同1%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社グループは設備工事業(建設事業)の単一セグメントであるため、セグメントごとの数値は連結数値と同様の動きを示しています。豊富な手持工事高を背景に工事が順調に進捗し、売上高が増加しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
設備工事業(建設事業) 6,545億円 7,051億円
連結(合計) 6,545億円 7,051億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 385億円 245億円
投資CF -222億円 36億円
財務CF -160億円 -250億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は72.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、企業理念のもと「環境に優しい、持続可能な、より良い社会」の実現への貢献に向けて、「社会のインフラを支える企業」として持続的成長・発展していくことを目指しています。

(2) 企業文化


同社は「人」を最も大切な経営資源と位置づけ、人と心を経営の根幹に置いています。また、「必ずやり遂げる精神」を持つプロ集団を目指し、現場や顧客に対して真摯に向き合う姿勢を重視しています。安全、高品質、効率的な施工を実現するため、技術・技能の研鑽にも力を入れています。

(3) 経営計画・目標


同社は中期経営計画『Sustainable Growth 2026 ~人、心、そして未来へ~』を推進しており、2026年度成長Visionとして「連結7,000億円規模の経営」を掲げています。

* 売上高:7,000億円程度
* 営業利益:500億円程度

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、地域密着と事業拡大に向けた「事業戦略」をはじめ、「環境戦略」「人財・働き方戦略」「コーポレート戦略」を展開しています。具体的には、事業基盤の整備・拡大や、労働・職場環境の整備を進めています。また、人的資本を重視し、教育施設や新事業所への投資を行うとともに、資本政策の推進により企業価値向上を図っています。今後は地域密着の深化や事業拡大に加え、ガバナンス改革による意思決定スピードの向上にも取り組みます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「企業の持続的成長・発展を支え、社会に貢献できる人財を育成する」という方針の下、ダイバーシティ&インクルージョンの推進や体系的な人財育成を行っています。性別や国籍等を問わず多様な人財を活用し、働きがいのある職場環境の整備や健康経営にも注力しています。また、教育インフラへの投資として「きんでん学園」の移転・建替え計画も進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.7歳 19.7年 8,881,450円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
男性育児休業取得率 46.2%
男女賃金差異(全労働者) 61.8%
男女賃金差異(正規) 63.9%
男女賃金差異(非正規) 53.5%


※女性管理職比率については、同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒採用の女性技術者数(5.0倍)、男女の平均勤続年数の差異(104.6%)、定期健康診断の受診率(100%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済状況の変化


電気設備工事の需要は国内外の経済状況に左右されます。民間工事における価格競争の激化、政府・自治体の建設投資抑制、海外の経済情勢や法令変更などが業績に影響を及ぼす可能性があります。また、資材費や外注費の高騰、大口得意先である関西電力グループの設備投資抑制もリスク要因となります。

(2) 得意先の倒産等による不良債権


同社は得意先との契約に基づき工事を施工していますが、得意先の倒産等が発生した場合、不良債権化するリスクがあります。与信管理を強化していますが、多額の不良債権が発生すれば業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 大規模自然災害及び感染症


大規模な自然災害や感染症の流行により、社屋や車両、工事機材等の設備、従業員が被害を受けた場合、あるいは経済・社会活動が混乱した場合、同社グループの業績や財務状況に悪影響が生じる可能性があります。また、気候変動に関連するリスクも認識しており、これらが顕在化した場合も同様の影響が懸念されます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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