※本記事は、三井住友建設株式会社 の有価証券報告書(第22期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 三井住友建設ってどんな会社?
土木・建築工事を中核とする準大手ゼネコンです。橋梁分野での高い技術力や超高層住宅の実績に特徴があります。
■(1) 会社概要
同社の起源は、1887年創業の三井建設と、別子銅山開発に由来する住友建設に遡ります。両社はそれぞれ発展し、2003年4月に合併して三井住友建設が発足しました。2022年4月には東京証券取引所の市場区分見直しによりプライム市場へ移行しました。現在、インフロニア・ホールディングスとの経営統合に向けた手続きが進められています。
2025年3月31日現在、連結従業員数は5,392名、単体では2,903名です。大株主構成については、筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第2位は南青山不動産となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 13.05% |
| 株式会社南青山不動産 | 9.58% |
| 野村 絢(常任代理人 三田証券株式会社) | 9.41% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性1名、計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長執行役員社長は柴田敏雄氏が務めています。社外取締役は3名で、取締役全体の25.0%を占めています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 柴田 敏雄 | 代表取締役社長執行役員社長 | 1985年三井建設入社。土木本部土木技術部長、執行役員、常務執行役員土木本部長、取締役などを経て2024年4月より現職。 |
| 平 喜 彦 | 取締役常務執行役員安全環境本部管掌土木本部長 | 1988年住友建設入社。土木本部土木設計部長、執行役員、常務執行役員土木本部副本部長などを経て2024年4月より土木本部長。2025年4月より現職。 |
| 由 井 孝 | 取締役常務執行役員経営企画本部長 | 1990年三井建設入社。企画部長、執行役員経営企画本部副本部長などを経て2023年4月より経営企画本部長。2024年4月より現職。 |
| 十 河 亮 介 | 取締役常務執行役員管理本部・人材開発本部管掌 | 1988年住友銀行入行。三井住友銀行理事、SMBC債権回収代表取締役社長などを経て、2024年7月同社常務執行役員。2025年6月より現職。 |
社外取締役は、川橋信夫(元JSR代表取締役社長)、丹生谷晋(元出光興産代表取締役副社長)、山下真実(株式会社ここるく代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「土木工事」「建築工事」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 土木工事
国内および海外において、土木工事の設計、施工ならびにこれらに関係する事業を行っています。特に橋梁分野では豊富な実績を有し、プレキャスト技術などを活用したインフラ整備を手掛けています。
工事請負による収益が主な柱です。運営は、同社および子会社の三井住建道路、三井住友建設鉄構エンジニアリング、ドーピー建設工業、Antara Koh Private Limitedなどが担っています。
■(2) 建築工事
国内および海外において、建築工事の設計、施工ならびにこれらに関係する事業を行っています。超高層住宅建設などの分野で多くの実績を持ち、企画提案から施工、アフターサービスまでを提供しています。
主な収益源は建築物の建設工事代金です。運営は、同社および子会社のSMCR、SMCCタイランド、SMCCウタマインドネシアなどが中心となって行っています。
■(3) その他
上記報告セグメントに含まれない事業として、太陽光発電事業や保険代理店業などを展開しています。再生可能エネルギー分野への取り組みも進めています。
売電収入や保険手数料などが収益となります。運営は、同社グループの関連部門や特定の子会社等が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は4,000億円台で推移していますが、利益面では変動が見られます。2022年3月期と2023年3月期には損失を計上しましたが、2024年3月期には黒字回復しました。2025年3月期は、国内大型建築工事における損失計上などが影響し、売上高は微減、各利益段階では前年を下回る結果となりました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 4,216億円 | 4,033億円 | 4,586億円 | 4,795億円 | 4,630億円 |
| 経常利益 | 131億円 | -83億円 | -185億円 | 63億円 | 37億円 |
| 利益率(%) | 3.1% | -2.1% | -4.0% | 1.3% | 0.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 76億円 | -86億円 | -256億円 | 45億円 | 9億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を比較すると、売上高の減少に伴い売上総利益も減少しています。売上総利益率は7%台前半で推移しています。販売費及び一般管理費は微減しましたが、営業利益、経常利益ともに前年を下回りました。特に2025年3月期は、完成工事における損失引当金の計上などが利益を圧迫する要因となりました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 4,795億円 | 4,630億円 |
| 売上総利益 | 351億円 | 332億円 |
| 売上総利益率(%) | 7.3% | 7.2% |
| 営業利益 | 85億円 | 76億円 |
| 営業利益率(%) | 1.8% | 1.6% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が124億円(構成比48.3%)、退職給付費用が8億円(同3.2%)を占めています。
■(3) セグメント収益
各セグメントの状況を見ると、土木工事は売上高が横ばいながらセグメント利益は減少しました。一方、建築工事は売上高が減少したものの、セグメント利益は大幅に増加しました。建築工事では採算重視の取り組みにより大型工事を除く案件の収益性が改善しています。その他事業は売上高が増加し、利益も安定しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 土木工事 | 2,154億円 | 2,129億円 | 332億円 | 276億円 | 13.0% |
| 建築工事 | 2,637億円 | 2,496億円 | 18億円 | 55億円 | 2.2% |
| その他 | 4億円 | 5億円 | 2億円 | 2億円 | 39.5% |
| 調整額 | -15億円 | -9億円 | -1億円 | -1億円 | - |
| 連結(合計) | 4,795億円 | 4,630億円 | 351億円 | 332億円 | 7.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業の収益(営業CF)がマイナスとなり、投資資産の回収(投資CFプラス)や手元資金の取り崩しなどで対応していることから「事業検討型」と判定されます。本業の立て直しや事業構造の見直しが課題となる局面です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 215億円 | -167億円 |
| 投資CF | 135億円 | 26億円 |
| 財務CF | -75億円 | -69億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.2%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も17.8%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「顧客満足の追求」「株主価値の増大」「社員活力の尊重」「社会性の重視」「地球環境への貢献」を経営理念として掲げています。これらを通じて、安全で快適な社会の実現に取り組んでいます。
■(2) 企業文化
持続可能な社会の実現に向けた社会的責任を果たすため、「三井住友建設グループ企業行動憲章」を定めています。これはグループ各社の役員・従業員がとるべき行動の指針であり、コンプライアンスの徹底や社会との調和を重視する企業風土の醸成を目指しています。
■(3) 経営計画・目標
「中期経営計画2022-2024」に基づき、「収益力の向上」「成長分野への挑戦」「人材基盤の強化」に取り組んできました。今後はインフロニア・ホールディングスとの経営統合を通じて、建設とインフラ運営の両輪で成長することを目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社はインフロニア・ホールディングスによる公開買付けを通じた経営統合を決定しました。これにより、両社の強みである官公庁や民間事業者、新興国でのインフラ案件の受注拡大を目指します。また、国内インフラの維持・更新や海外でのインフラ需要の取り込み、エンジニアリング力の強化を進め、総合インフラサービス企業としての成長を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「2030年の将来像」実現に向け、採用強化、リテンション強化、人材の質向上を戦略の柱としています。多様な人材が活躍できる環境づくりを進め、適正な人材の獲得・配置と能力開発により、社員の意欲を高め、エンゲージメント向上に繋がる価値循環を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 46.2歳 | 21.0年 | 8,933,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.0% |
| 男性育児休業取得率 | 107.6% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 59.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 65.1% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 66.7% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、週休二日(新規着工現場の4週8休以上)(実施率)(91.9%)、総合職の定期採用における女性比率(28.4%)、キャリア採用(中途採用)における女性比率(36.4%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 不採算工事の発生リスク
受注時の想定誤りや施工条件の変更等により工事が不採算となる可能性があります。また、施工中の予算外原価負担による利益率低下も業績に影響します。同社は厳格な受注審査や施工時の支援体制強化、工事進捗・原価管理の徹底により、リスク低減と損益影響の最小化に努めています。
■(2) 経済リスク(景気・相場変動)
建設投資動向、資材価格や労務単価の変動、金利・為替相場の変動等が業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は資材の適時発注や契約時の価格転嫁協議、金利・為替予約等の活用により影響の抑制を図るとともに、生産性向上による競争力強化に取り組んでいます。
■(3) 法的規制・訴訟リスク
建設業法等の法的規制の変更や、施工物件の瑕疵、独占禁止法違反等に関する訴訟リスクがあります。同社はコンプライアンス教育の徹底や法的チェック体制の強化を図っています。現在、横浜市所在マンションに関する損害賠償請求訴訟が係争中であり、引き続き適切に対応していく方針です。



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