東亜建設工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東亜建設工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

プライム市場および札幌証券取引所に上場する東亜建設工業は、港湾を中心とした国内土木、物流施設に強みを持つ国内建築、海外事業を展開しています。直近の業績は、手持工事が順調に進捗し売上高3587億円、海外の大型工事の利益貢献等により経常利益246億円と増収増益を達成し、堅調な成長を続けています。


※本記事は、東亜建設工業株式会社の有価証券報告書(第136期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 東亜建設工業ってどんな会社?


港湾等の海上土木と物流施設等の建築を主力とし、国内外で社会インフラ整備を牽引する総合建設企業です。

(1) 会社概要


1908年に浅野総一郎が鶴見・川崎地先の埋立事業を出願し、1914年に鶴見埋築として設立されました。1944年に東亜港湾工業へ社名変更し、1949年に東京証券取引所へ上場しました。1973年には陸上土木・建築分野へ本格進出するとともに東亜建設工業へ社名変更し、現在に至ります。

従業員数は連結で2145名、単体で1880名です。筆頭株主および第2位は資産管理業務を行う信託銀行で、第3位は継続的な取引関係にある事業会社の太平洋セメントです。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 11.90%
日本カストディ銀行(信託E口) 5.50%
太平洋セメント 5.22%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役兼執行役員社長は早川毅氏が務めており、社外取締役比率は55.6%です。

氏名 役職 主な経歴
早川毅 代表取締役 兼執行役員社長 1989年同社入社。大阪支店長、執行役員等を経て、2022年より現職。
中尾剛 代表取締役 兼執行役員専務 1991年同社入社。人事部長、経営企画部長等を経て、2025年より現職。
木村克尚 取締役 兼執行役員専務 1990年同社入社。国際事業部土木部長、営業部長等を経て、2025年より現職。
木村徹也 取締役(監査等委員) 1990年同社入社。東日本建築支店管理部長、総務部長等を経て、2024年より現職。


社外取締役は、国谷史朗(弁護士法人大江橋法律事務所パートナー)、関根嘉奈子(元欧州復興開発銀行局長)、岡村眞彦(元三井物産常務執行役員)、半田未知(コントロールソリューションズ代表取締役社長)、玉井哲史(玉井哲史公認会計士事務所開設)です。

2. 事業内容


同社グループは、国内土木事業、国内建築事業、海外事業および「その他」事業を展開しています。

国内土木事業


海上土木分野を中心に、港湾、空港、鉄道、道路などのインフラ・社会資本の整備を行っており、国土交通省などの官公庁や民間企業を主要な顧客としています。
収益は、発注者からの建設工事の請負代金や設計受託料として得ており、運営は主に同社が行っています。

国内建築事業


物流施設(冷蔵倉庫等)を中心とした特命案件、企画提案案件、設計施工案件の受注拡大に取り組んでおり、民間企業や官公庁を主要な顧客としています。
収益は、発注者からの建築工事の請負代金や設計受託料として得ており、運営は主に同社が行っています。

海外事業


東南アジアを中心に、アフリカや南アジアなどにおいて、海上土木工事などの建設事業を展開しています。現地の政府機関や民間企業が主な顧客です。
収益は、海外での建設工事の請負代金として得ており、運営は同社の国際事業本部のほか、子会社のPT TOA TUNAS JAYA INDONESIAなどが行っています。

その他


不動産の開発・販売・賃貸に関する事業や、船舶・建設機械の製造・修理、建設に付帯する各種事業活動を展開しています。
収益は、不動産の賃貸料・販売代金や、資機材の販売・賃貸料等として得ており、運営は子会社の東亜リアテックや東亜鉄工などが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、売上高が2198億円から3587億円へと順調に拡大しています。経常利益も一時的な落ち込みを経て力強く回復しており、利益率の改善とともに当期利益も増加傾向を維持しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 2198億円 2136億円 2839億円 3305億円 3587億円
経常利益 101億円 66億円 166億円 201億円 246億円
利益率(%) 4.6% 3.1% 5.9% 6.1% 6.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 65億円 44億円 99億円 136億円 182億円

(2) 損益計算書


売上高の成長に伴い、売上総利益・営業利益ともに増加しています。各段階の利益率も前年を上回る水準で推移しており、確かな収益力の向上が見られます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 3305億円 3587億円
売上総利益 350億円 419億円
売上総利益率(%) 10.6% 11.7%
営業利益 206億円 242億円
営業利益率(%) 6.2% 6.7%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が75億円(構成比42%)、調査研究費が15億円(同8%)を占めています。

(3) セグメント収益


国内土木事業および海外事業における大型案件の順調な進捗が売上増を牽引しました。利益面では各報告セグメントで増益となり、特に海外事業の大幅な利益貢献が全体の業績を押し上げています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
国内土木事業 1411億円 1560億円 132億円 137億円 8.8%
国内建築事業 1104億円 943億円 64億円 82億円 8.7%
海外事業 657億円 923億円 42億円 75億円 8.1%
その他 133億円 161億円 21億円 16億円 9.9%
連結(合計) 3305億円 3587億円 206億円 242億円 6.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」のキャッシュ・フローとなっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -143億円 480億円
投資CF 1億円 -15億円
財務CF -13億円 -391億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は17.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は38.2%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「高い技術をもって、社業の発展を図り、健全な経営により社会的責任を果たす」という社是を掲げています。誠実な施工で永い信用を築き、人々の信頼と期待に応えながら共に発展していくことを基本方針とし、2035年に向けて「社会を支え、人と世界をつなぎ、未来を創る」という長期ビジョンを定めています。

(2) 企業文化


人材を最重要の経営資源と位置づけ、「社会の要請に応える人材と事業の成長」を重視する文化があります。また、「安全をすべてに優先させる」という基本方針のもと、労働災害を絶対に発生させない意識を共有し、多様な人材が能力を最大限に発揮できる心理的安全性の高い組織づくりを推進しています。

(3) 経営計画・目標


「中期経営計画〈2026 - 2028〉」において、中長期的な売上高の成長と収益性の向上を目指し、以下の連結目標数値を掲げています。

・2028年度売上高:3,800億円
・2028年度営業利益:215億円
・ROE:10%以上の継続

(4) 成長戦略と重点施策


各事業領域における人材戦略・DX戦略にフォーカスし、組織能力と生産性を向上させることで利益拡大を図ります。

・国内土木:港湾等の得意分野を堅持しつつ、防衛・陸上分野の拡大や洋上風力・CCSなど新領域へ挑戦
・国内建築:冷蔵倉庫等の深掘りによる優位性確立と、社会公共インフラ部門の営業体制再構築
・海外:土木分野の強みを生かしながら、注力地域を明確にして建築分野を着実に拡大

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業規模の拡大と生産性向上を両立させるため、量的確保と質的高度化を同時に進める「人的資本経営」を推進しています。若手社員の早期育成やシニア社員の活躍支援、DE&I(多様性・公平性・包摂性)の推進、従業員エンゲージメントの向上を重点施策とし、次世代経営人材の育成にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.0歳 17.8年 10,193,864円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.0%
男性育児休業取得率 97.4%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 58.5%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) 62.5%
労働者の男女の賃金の差異(パート・有期雇用労働者) 43.5%


また、同社は「人的資本データシート」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、自己都合離職率(1.7%)、障がい者雇用率(3.1%)、年次有給休暇取得率(55.1%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 施工品質リスク


契約不適合責任および製造物責任による損害賠償が発生した場合、同社グループの業績および社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。施工検討会やパトロールによる事前・施工中の確認、竣工時の社内検査を徹底することで不適合の発生防止に努めています。

(2) 災害・事故の発生


工事施工において、予期せぬ要因から事故や労働災害が発生する可能性があります。安全衛生環境管理計画書に基づく危険予知活動、安全環境教育およびパトロールを継続的に実施し、事故の未然防止と万一の際の被害最小化に取り組んでいます。

(3) 資材・エネルギーの調達リスク


建設資材やエネルギー価格の高騰により工事採算が悪化した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。サプライチェーン全体を意識した安定的な調達体制の構築や、正確な原価管理、早期購買の実施により、価格変動の影響を最小限に抑えるよう努めています。

(4) 信用リスク


建設工事は完成引渡しまでが長期にわたり、引渡し時に多額の代金が支払われるため、発注者の信用リスクや協力業者の信用不安が生じた場合、資金回収不能や工事の遅延を招く可能性があります。危機管理マニュアルの運用と企業調査を通じた与信管理を徹底しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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