マーチャント・バンカーズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

マーチャント・バンカーズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

マーチャント・バンカーズは、東京証券取引所スタンダード市場に上場し、国内外の企業向け不動産投資や貸金業、再生可能エネルギー投資などのマーチャント・バンキング事業を展開しています。直近の業績は、売上高が約34億円と減収となり、経常損益は赤字へ転落する厳しい結果となりました。


※本記事は、マーチャント・バンカーズ株式会社の有価証券報告書(第102期、自 2024年11月1日 至 2025年10月31日、2026年1月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. マーチャント・バンカーズってどんな会社?


同社は不動産投資、貸金業、再生可能エネルギー分野への投資などを手掛ける投資会社です。

(1) 会社概要


1947年に西日本紡織として設立され、長らく紡績事業を手掛けていましたが2002年に同事業から完全撤退しました。その後、ホテル運営等の事業再編を経て、2009年に現在のマーチャント・バンカーズに社名を変更しています。近年は不動産投資や海外への展開を推進し、多角的な投資活動を行っています。

現在の従業員数は連結、単体ともに2名の少数精鋭体制です。筆頭株主は同社取締役が代表を務める関連会社のアートポートインベストで、第2位はぽると、第3位はTOTAL NETWORK HOLDINGS LIMITEDとなっています。

氏名 持株比率
アートポートインベスト 32.80%
ぽると 15.72%
TOTAL NETWORK HOLDINGS LIMITED 14.75%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は髙﨑正年氏です。社外取締役比率は16.7%です。

氏名 役職 主な経歴
髙﨑正年 代表取締役社長兼CEO 1990年国際証券(現三菱UFJモルガンスタンレー証券)入社。2003年アートポート入社などを経て、2014年に同社入社。投資事業部部長やCFOを歴任し、2022年6月より現職。
加藤東司 取締役 1987年SEDIC入社。松下プロモーションなどを経て2020年に同社入社。経営管理部長やオペレーション事業部統括部長を務め、2025年1月より現職。
サム・ガーボウ 取締役 1989年Golden Harvest (HK)入社。アジアの各種映像関連企業を歴任し、2017年MBK Asiaディレクター就任。同社監査役などを経て2023年6月より現職。
山﨑佳奈子 取締役 2004年マザーバード入社。複数企業を経て2016年に同社入社。執行役員CFO兼財務経理部長などを経て、2025年1月より現職。
西村豊一 取締役 1986年プレイロード入社。アートポートなどを経て、アートポートインベスト代表取締役に就任。関連会社代表などを兼務し、2019年6月より現職。


社外取締役は、川戸淳一郎(川戸淳一郎法律事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「マーチャント・バンキング事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

(1) マーチャント・バンキング事業


日本や中国などの海外企業向けに不動産投資を行うほか、株式・不動産・売掛金を担保とした貸金業、再生可能エネルギー分野へのプロジェクト投資などを幅広く手掛けています。対象やスキームを制約しないダイナミックな投資活動を通じて、持続的な成長と企業価値の向上を目指しています。

主な収益源は、所有する不動産からの賃料収入や、株式・不動産等の投資回収によって得られるキャピタルゲインです。運営は主にマーチャント・バンカーズが中心となって担っており、子会社のMBKプロパティや海外法人と連携しながら事業を展開しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績推移を見ると、不動産市況や売却タイミングの影響で売上高は大きく変動しています。2024年10月期は物件売却が好調で44億円を計上しましたが、直近の2025年10月期は売却物件数の減少などにより34億円の減収となりました。利益面でも特別損失の計上などが響き、赤字へ転落しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2023年10月期 2024年10月期 2025年10月期
売上高 27億円 44億円 15億円 44億円 34億円
経常利益 2億円 1億円 -1億円 1億円 -0.3億円
利益率(%) 8.1% 3.3% -5.5% 2.2% -0.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 1億円 -0.5億円 1億円 2億円 -1億円

(2) 損益計算書


2期間の損益構成を比較すると、当期は売上高の減少に伴い売上総利益も減少していますが、営業利益率は改善傾向にあります。これはあらゆるコストの削減に果断に取り組んだことが寄与したものと見られます。

項目 2024年10月期 2025年10月期
売上高 44億円 34億円
売上総利益 11億円 8億円
売上総利益率(%) 24.1% 23.3%
営業利益 3億円 3億円
営業利益率(%) 7.3% 8.4%


販売費及び一般管理費のうち、消費税が1.7億円(構成比34%)、支払手数料が1.1億円(同22%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社はマーチャント・バンキング事業の単一セグメントで構成されています。当期は賃貸用不動産の売却を進めたものの、想定していた売却件数に達しなかったため、前期比で減収となりました。

区分 売上(2024年10月期) 売上(2025年10月期)
マーチャント・バンキング事業 44億円 34億円
連結(合計) 44億円 34億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業の営業活動で得た資金を活用し、借入金の返済を進めながらも、必要な新たな投資を行っている健全なキャッシュ・フロー状況です。

項目 2024年10月期 2025年10月期
営業CF 31億円 24億円
投資CF -50億円 -13億円
財務CF 21億円 -8億円


財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は30.1%で市場平均を下回っています。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は当期が赤字のため算出されていませんが、安定した収益基盤の構築による財務体質の改善が課題となります。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は投資会社として、「さまざまな投資活動の成果により、持続的な企業成長を実現すること」を経営の基本方針に掲げています。独立系の利点を生かし、投資規模や業種、スキームにとらわれない柔軟かつダイナミックな投資活動を展開することで、独自の企業価値向上を目指しています。

(2) 企業文化


事業会社の実績を生かした「一緒に経営する」丁寧なハンズオン投資を行うことを大切にしています。また、収益の安定化や財務健全性の確保に配慮し、ボラティリティやリスク許容度に応じた慎重な投資姿勢を堅持しつつ、期待利回りを画一的にしない柔軟な判断を重んじる文化があります。

(3) 経営計画・目標


マーチャント・バンキング事業を主とした安定的な企業成長を目指す中で、投資業特有のボラティリティを踏まえた健全な財務基盤の維持・管理を最重要視しています。市場リスクに耐えうる頑強な財務体質と柔軟な投資活動を行うための流動性を確保するため、以下の数値を目標として掲げています。

・流動比率200%超
・自己資本比率40%超

(4) 成長戦略と重点施策


投資活動によるキャピタルゲインの追求と安定した収益基盤の構築を目指し、不動産からの賃料収入に加えて、企業投資活動や不動産仲介等による手数料収益などへの多角化を進めています。経営基盤強化のための重点施策として以下を掲げています。

・営業投資事業における収益確保と適切なリスク管理
・新規事業の立ち上げによる収益基盤の拡大
・専門知識や豊富な経験を持った人材の確保・育成・組織化
・投資回収やファイナンスを通じた成長資金の確保

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


中長期的な企業価値向上のため、ダイバーシティによる個々の力の掛け合わせを重要な戦略と位置づけています。国籍、性別、年齢、学歴、職歴など様々な立場の価値観や経験を生かした組織づくりを推進し、専門知識や豊富な経験を持った人材の確保・育成・組織化に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年10月期 52.0歳 12.2年 7,053,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 株式市場や不動産市場の動向


国内外の株式や不動産を対象とした投資事業を展開しているため、市場市況の著しい変動により保有資産の価格が下落するリスクがあります。期待したキャピタルゲインの未達や評価損の発生などが、同社の経営成績に直接的な影響を及ぼす可能性があります。

(2) 金利の上昇と資金調達コスト


事業展開において金融機関等からの借入による資金調達を行っているため、将来的な金利水準の上昇が資金調達コストの増加に直結します。また、金利上昇は顧客の期待利回りの上昇や不動産価格の下落を招き、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 少数精鋭の組織体制と人材確保


投資事業や管理業務には高度な専門知識と経験が求められますが、同社は少数精鋭の組織体制を敷いています。基幹人員の退職や休職による業務への支障を防ぐため、代替人員の確保や外部委託先の活用など、組織的対応力の強化に努めています。

(4) 特有の法的規制とコンプライアンス対応


マーチャント・バンキング事業において、金融商品取引法、宅地建物取引業法、貸金業法などの法的規制を受けています。これら法令の遵守を徹底していますが、予期せぬ規制変更や行政処分を受けた場合、事業活動が制限されるリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。