#記事タイトル:巴工業転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、巴工業株式会社 の有価証券報告書(第96期、自 2024年11月1日 至 2025年10月31日、2026年1月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 巴工業ってどんな会社?
遠心分離機を中心とする機械製造販売と、化学工業製品の輸入販売を主要事業とする機械メーカー兼専門商社です。
■(1) 会社概要
1941年に米国製遠心分離機の販売・修理を目的に設立され、1996年に株式を店頭登録しました。その後、2004年に東京証券取引所市場第二部に上場し、翌2005年には同市場第一部へ指定替えとなりました。海外展開も進めており、2013年には米国に現地法人Tomoe Engineering USA, Inc.を設立しています。
同社グループ(連結)の従業員数は724名、単体では483名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位、3位は投資事業有限責任組合となっており、機関投資家やファンドが上位を占めています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行 | 8.43% |
| UH Partners 2投資事業有限責任組合 | 6.80% |
| 光通信KK投資事業有限責任組合 | 6.43% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.0%です。代表取締役社長は玉井 章友氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 玉井 章友 | 代表取締役社長 | 日本国土開発、エルケム・ジャパンを経て同社入社。化学品本部副本部長、化学品本部長、機械本部長などを歴任し、2023年1月より現職。 |
| 篠田 彰鎮 | 取締役 常務執行役員機械本部長 | 日本海事検定協会を経て同社入社。化学品本部副本部長、化学品本部長、巴恵貿易(深圳)董事長などを経て現職。Tomoe Engineering USA, Inc. Presidentを兼務。 |
| 東 徹行 | 取締役 常務執行役員化学品本部長 | 同社入社。化学品本部機能材料部長、化学品本部副本部長、巴物流代表取締役社長などを経て2023年1月より現職。 |
| 藤井 修 | 取締役 執行役員総務部および業務部担当 | 同社入社。総務部長、総務部および業務部担当兼総務部長などを経て現職。 |
| 橘田 一幸 | 取締役 執行役員経理部および経営企画部担当 | 富士銀行(現みずほ銀行)入行。同社入社後、経理部長、経理部および経営企画室担当兼経理部長などを経て現職。 |
| 矢倉 敏明 | 取締役(監査等委員) | 富士銀行(現みずほ銀行)入行。同社入社後、経理部長、経理部および経営企画室担当兼経理部長などを歴任し、2023年1月より現職。 |
社外取締役は、八尋 研治(元明治安田損害保険執行役員)、杉原 麗(弁護士)、越智多佳子(公認会計士・税理士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「機械製造販売事業」および「化学工業製品販売事業」を展開しています。
■(1) 機械製造販売事業
遠心分離機を中心とした各種分離機器の製造および販売を行っています。顧客は化学、食品、医薬品業界や官公庁(下水処理場等)など多岐にわたり、製品は固液分離プロセスにおいて使用されます。
収益は、製品の販売代金のほか、アフターサービスや部品販売、装置工事から得ています。運営は主に同社が行い、国内のアフターサービス等は巴機械サービス、部品加工は巴マシナリーが担当しています。海外では中国の巴栄機械設備(太倉)有限公司や米国のTomoe Engineering USA, Inc.などが製造・販売・サービスを行っています。
■(2) 化学工業製品販売事業
合成樹脂、工業材料、鉱産物、化成品、機能材料、電子材料など、特色ある化学工業製品等の仕入・販売を行っています。専門商社として、ニッチな市場や高付加価値商材を取り扱っています。
収益は、商品を顧客へ販売することによる代金回収が主となります。運営は同社に加え、中国の巴工業(香港)有限公司や巴恵貿易(深圳)有限公司、タイ、ベトナム、マレーシア、チェコにある海外現地法人が各地域での営業活動拠点として機能しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5期間の業績を見ると、売上高は右肩上がりで推移しており、直近では約594億円に達しています。利益面でも、経常利益および当期利益ともに増加傾向にあり、利益率も安定して高い水準を維持しています。特に直近の決算では増収増益を達成し、成長が継続しています。
| 項目 | 2021年10月期 | 2022年10月期 | 2023年10月期 | 2024年10月期 | 2025年10月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 451億円 | 456億円 | 496億円 | 521億円 | 594億円 |
| 経常利益 | 29億円 | 34億円 | 41億円 | 48億円 | 54億円 |
| 利益率(%) | 6.4% | 7.5% | 8.3% | 9.2% | 9.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 20億円 | 26億円 | 28億円 | 31億円 | 35億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益が増加しています。営業利益も増加しており、本業の収益性が向上しています。売上高の伸びに対し、売上原価や販管費も増加していますが、増収効果が上回っています。
| 項目 | 2024年10月期 | 2025年10月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 521億円 | 594億円 |
| 売上総利益 | 135億円 | 150億円 |
| 売上総利益率(%) | 25.9% | 25.2% |
| 営業利益 | 47億円 | 54億円 |
| 営業利益率(%) | 9.0% | 9.0% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が29億円(構成比30%)、賞与引当金繰入額が16億円(同16%)を占めています。
■(3) セグメント収益
両セグメントともに増収となりました。特に機械製造販売事業は売上高が大きく伸長し、利益も大幅に増加しています。化学工業製品販売事業も増収となりましたが、利益は横ばいとなっています。
| 区分 | 売上(2024年10月期) | 売上(2025年10月期) | 利益(2024年10月期) | 利益(2025年10月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 機械製造販売 | 130億円 | 152億円 | 12億円 | 18億円 | 12.1% |
| 化学工業製品販売 | 391億円 | 441億円 | 35億円 | 35億円 | 8.0% |
| 連結(合計) | 521億円 | 594億円 | 47億円 | 54億円 | 9.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動で得た資金の範囲内で投資活動や株主還元を行っており、借入金の返済も進めていることから、健全型のキャッシュ・フロー状態と言えます。
| 項目 | 2024年10月期 | 2025年10月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 34億円 | 24億円 |
| 投資CF | -6億円 | -25億円 |
| 財務CF | -13億円 | -15億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.4%で市場平均と同水準である一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は75.8%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
創造と創業の精神をもって会社を成長させ、関係者の豊かな未来づくりに寄与することを基本方針としています。また、顧客へ高い技術と優れた製品・商品を提供することで社会に貢献し、従業員に生きがいを見出す場を提供することを理念として掲げています。
■(2) 企業文化
同社グループの「行動規範」において、法令遵守をはじめステークホルダーとの関係や地球環境の保全について定めています。また、社員の基本的人権と多様性を尊重し、働きやすい職場環境を確保することを明記しており、多様な背景や価値観を持つ社員が互いを尊重し活躍できる環境づくりを目指しています。
■(3) 経営計画・目標
2026年10月期から2028年10月期までの新中期経営計画「Create The New Future~新たな未来の創造~」を策定しています。最終年度の目標として、連結売上高700億円、営業利益および経常利益70億円、当期純利益50億円を掲げています。
* 連結売上高:700億円
* 営業利益:70億円
* ROE:10.5%
■(4) 成長戦略と重点施策
機械製造販売事業では、海外市場での販売促進、インドや米国市場の深耕、東南アジアでのネットワーク構築を進めます。また、バイナリー発電装置の拡販や環境負荷低減製品の拡充、新工場の建設による生産能力増強を行います。化学工業製品販売事業では、高付加価値商品の拡充や海外ビジネスの拡大、新商品開発による収益基盤の多様化を推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
事業戦略に基づき、年齢、性別、国籍等を問わず多様な人材を採用し、OJTや各種研修、海外語学留学等を通じて育成する方針です。各社員に求める役割を明確化し、自律的な成長を促すとともに、自己啓発を支援します。また、多様性を尊重し、ワークライフバランスに配慮した働きやすい職場環境の整備にも注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年10月期 | 40.2歳 | 13.7年 | 9,525,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 1.8% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 63.4% |
| 男女賃金差異(正規) | 62.6% |
| 男女賃金差異(非正規) | 79.9% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、総合職正社員に占める女性比率(6.4%)、離職率(2.3%)、有給休暇取得率(83.6%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 景気、事業環境に関するリスク
機械製造販売事業は化学・食品等の設備投資や公共投資の動向、化学工業製品販売事業は化学工業全般や自動車・半導体業界等の動向の影響を受けます。特に化学品事業は原材料を扱うため短期間で需給調整が発生しやすく、機械事業は設備投資サイクルにより遅れて影響が出る傾向があります。
■(2) 海外事業展開に伴うリスク
米国、中国、東南アジア、インド、欧州等で広く事業を展開しているため、各国の政情、法規制、税制等の変化により業績が影響を受ける可能性があります。特に、米中対立や台湾有事、米国の関税政策などの地政学リスクが事業活動の制約となる恐れがあります。
■(3) 為替相場および株価の変動に関するリスク
外貨建輸出入取引や外貨建債権債務を保有しているため、為替変動の影響を受けます。また、取引先企業の株式等を保有しており、株価変動や出資先の財政状態悪化が業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。



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