※本記事は、巴工業株式会社 の有価証券報告書(2025年10月期、2024年11月1日 ~ 2025年10月31日、2026年1月28日 提出)の開示情報に基づき作成しています。会計基準は 日本基準 です。
1. 企業概要:どんな会社?
同社グループは、遠心分離機等の製造・販売を行う機械製造販売事業と、化学工業製品等の仕入・販売を行う化学工業製品販売事業を主軸に事業を展開しています。子会社13社とともにグローバルに事業を展開しています。
単体従業員数は483名、連結従業員数は724名です。セグメントは機械製造販売、化学工業製品販売、全社(共通)の3つです。
主な国内グループ会社は、巴マシナリー(機械製造販売)、巴機械サービス(同)などです。
2024年8月1日、巴工業は合成樹脂原料等の仕入・販売を行う星際化工有限公司とその子会社を解散・清算することを決議し、現在手続きを進めています。
2. 給与と働き方:どんな環境で働く会社か?
巴工業は、機械製造販売と化学工業製品販売という専門性の高い事業を展開しており、その事業特性が給与水準や働き方にも影響を与えていると考えられます。同社グループは、技術革新と社会貢献を重視する経営理念のもと、従業員の育成と働きやすい環境づくりにも力を入れています。グローバルな事業展開を背景に、専門性を高めながら長期的に活躍できる環境が期待できるでしょう。
■(1) 給与水準と在籍傾向:平均年間給与・勤続年数・年齢
巴工業では、従業員の平均勤続年数が比較的長く、平均年齢も一定の水準にあることから、長期的なキャリア形成が可能な環境であると推測できます。これは、同社が従業員の定着を重視し、安定した働き方を支援している傾向を示していると言えるでしょう。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 平均年間給与 | 9,525,000円 |
| 平均勤続年数 | 13.7年 |
| 平均年齢 | 40.2歳 |
| 単体従業員数 | 483人 |
| 連結従業員数 | 724人 |
| 単体のグループ内比率 | 66.7% |
同社グループは、給与や勤続年数に応じて給付額が決まる確定給付型の制度と、会社が拠出した資金を従業員が運用する確定拠出型の制度の両方を採用しています。これらの制度は一部の連結子会社を除く同社グループ全体に適用されています。
なお、退職一時金の有無や支給条件、従業員ごとの会社拠出額などは、有価証券報告書では確認できないため、就業規則や募集要項で確認する必要があります。
確定給付型の退職給付債務は24.4億円、年金資産は59.5億円となっています。
■(2) 人材戦略と報酬制度:育成方針と給与の決め方
巴工業は、「高い技術と優れた製商品を提供し、社会に貢献する」という経営理念のもと、それを担う人材の確保と育成を不可欠な要素と位置付けています。また、「従業員に生きがいを見出す場を提供する」ことも重要な経営理念の一つです。第14回中期経営計画「Create The New Future ~新たな未来の創造~」では、より働きやすく働きがいのある会社を目指し、様々な施策に取り組んでいます。
人材育成においては、遠心分離機技術者、化学分野の専門人材、そしてグローバルに活躍できる人材の育成に注力しています。新卒・中途採用に加え、OJTや各種階層別研修、目的別専門研修、海外語学留学などを通じて、社員のスキルアップを支援しています。自己啓発も推奨されており、学習費用支援や資格取得報奨金制度も設けられています。
社内環境整備では、基本的人権と多様性を尊重し、働きやすい職場環境を確保するための「行動規範」を定めています。コンプライアンス意識醸成のための活動や、ダイバーシティ&インクルージョン研修、ハラスメント防止研修を実施しています。ワークライフバランスを重視し、社員エンゲージメント調査、時差勤務や在宅勤務制度、年次有給休暇の取得促進、育児休業等の拡充にも取り組んでいます。さらに、執務環境の改善や健康管理補助、世間水準を超える賃上げも実施されています。
■(3) 人的資本データ:多様性と働き方に関する指標
有価証券報告書の法定開示項目および任意開示指標を示します。各指標は、女性活躍推進法・育児介護休業法に基づく法定開示と、同社が独自に開示している任意指標から構成されています。
法定開示
提出会社単体の法定開示データです。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 1.8% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 63.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 62.6% |
| 男女賃金差異(非正規雇用労働者) | 79.9% |
人的資本に関する取組
提出会社単体のデータを示します。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 総合職正社員に占める女性比率の向上 | 6.4% |
| 離職率の低減・維持 | 2.3% |
| 有給休暇取得率の向上 | 83.6% |
3. 事業の構造:どんなビジネスをしている会社か?
巴工業グループは、遠心分離機などの機械製造販売と、化学工業製品の仕入れ・販売を主軸に事業を展開しています。多岐にわたる製品とサービスを通じて、国内外で価値を提供しています。
■(1) 事業内容と収益モデル:何で利益を上げているか
巴工業グループは、産業機械の製造販売と化学工業製品の販売を二つの柱として事業を展開しています。遠心分離機などの機械製品は国内外の幅広い顧客に提供され、化学工業製品は多岐にわたる産業分野で利用されています。同社グループはグローバルな事業基盤とネットワークを強みとし、持続的な成長を目指しています。
機械製造販売事業
この事業では、遠心分離機などの産業機械の製造と販売を行っています。国内の官需および民需向け販売が好調に推移し、前期から売上を大きく伸ばしました。収益は、機械本体、装置・工事、部品・修理の販売から得ています。運営は、巴機械サービス、巴マシナリー、巴栄機械設備(太倉)、Tomoe Engineering USA, Inc.などが行っています。
化学工業製品販売事業
この事業では、化学工業製品の仕入れと販売を手掛けています。鉱産関連の樹脂向け添加剤や化成品関連のコーティング用途向け材料が伸長し、前期から売上を伸ばしました。収益は、合成樹脂関連、工業材料関連、鉱産関連、化成品関連、機能材料関連、電子材料関連などの幅広い分野の製品販売から得ています。運営は、巴工業(香港)、巴恵貿易(深圳)、TOMOE Trading(Thailand)Co.,Ltd.、TOMOE TRADING(MALAYSIA)SDN.BHD.、TOMOE TRADING VIETNAM CO.,LTD.、TOMOE Advanced Materials s.r.o.などが行っています。
| セグメント | 売上高(2024年10月期) | 売上高(2025年10月期) |
|---|---|---|
| 化学工業製品販売 | 391億円 | 441億円 |
| 機械製造販売 | 130億円 | 152億円 |
■(2) 業績トレンド:直近の売上・利益の推移
巴工業グループの直近5期間の業績は、売上高、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益のいずれも一貫して増加傾向を示しています。特に当連結会計年度においては、売上高と各利益が過去最高を更新する結果となりました。これは、両事業セグメントの販売が伸長したことが背景にあります。
| 項目 | 2021年10月期 | 2022年10月期 | 2023年10月期 | 2024年10月期 | 2025年10月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 451億円 | 456億円 | 496億円 | 521億円 | 594億円 |
| 経常利益 | 29.1億円 | 34.2億円 | 41.2億円 | 47.8億円 | 54.0億円 |
| 経常利益率 | 6.4% | 7.5% | 8.3% | 9.2% | 9.1% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 21.1億円 | 26.6億円 | 27.3億円 | 36.2億円 | 38.5億円 |
| 1株当たり当期純利益(円) | 70.43 | 88.84 | 91.32 | 120.80 | 128.66 |
■(3) 収益性と生産性:1人あたりの稼ぐ力を見る
同社グループの従業員1人あたりの売上高と営業利益は、当連結会計年度において前期から増加しています。これは、同社グループ全体の売上高と営業利益が伸長したことと、連結従業員数が減少したことが影響しています。これらの指標の向上は、組織全体の効率性が高まっていることを示しています。
| 指標 | 2024年10月期 | 2025年10月期 |
|---|---|---|
| 従業員1人あたり売上高(連結) | 66.3百万円 | 82.0百万円 |
| 従業員1人あたり営業利益(連結) | 6.0百万円 | 7.4百万円 |
4. 経営の安定性:どれくらい安心して働けそうか?
巴工業グループは、本業で得た資金を成長のための投資に充てている状況です。これにより、将来に向けた事業拡大を進めていることがうかがえます。
■(1) 財務基盤:自己資本と手元資金の厚み
巴工業グループの財務基盤は、自己資本比率が75.8%と高い水準を維持しています。これはプライム市場の製造業平均と比較しても高い水準であり、安定した経営基盤を示しています。ROE(自己資本利益率)は9.4%で、プライム市場平均と同水準となっています。手元資金として134億円の現金及び預金を保有しており、事業運営における資金の安定性も確保されています。これらの財務状況は、入社後の雇用や給与の安定性にもつながる要素です。
| 指標 | 2024年10月期(前期) | 2025年10月期(当期) |
|---|---|---|
| 純資産 | 394億円 | 427億円 |
| 自己資本比率 | 74.0% | 75.8% |
| ROE(自己資本利益率) | 9.5% | 9.4% |
| 現金及び預金 | 149億円 | 134億円 |
■(2) キャッシュフロー:事業・投資・財務の資金の流れ
巴工業グループの当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、23.8億円の増加となりました。これは、税金等調整前当期純利益や減価償却費による資金の増加が、法人税等の支払いや棚卸資産の増加による資金の減少を上回ったためです。投資活動によるキャッシュ・フローは△24.7億円の減少となり、有形固定資産の取得による支出が主な要因となっています。その結果、フリーキャッシュ・フローは△98百万円のマイナスとなりました。これは本業で得た資金を、将来に向けた設備投資に積極的に充てている成長投資フェーズにあることを示しています。このような資金の流れは、会社の将来的な成長と、それに伴う雇用や給与の安定性につながる可能性があります。
| 項目 | 2024年10月期(前期) | 2025年10月期(当期) |
|---|---|---|
| 営業CF | 33.6億円 | 23.8億円 |
| 投資CF | △6.3億円 | △24.7億円 |
| 財務CF | △13.3億円 | △15.5億円 |
| フリーCF(営業CF+投資CF) | 27.3億円 | △98百万円 |
■(3) 事業リスクと雇用への影響:転職時に押さえたいポイント
① 継続企業の前提に関するリスク
継続企業の前提に関する特記事項はありません。
② 事業構造・収益性に関するリスク
同社グループは、国内およびアジア地域の景気動向や主要顧客の設備投資動向、公共投資の動向により業績および財政状態が影響を受ける可能性があります。また、化学工業製品販売事業では原材料の需給や価格動向、競合他社との価格・サービス競争もリスク要因となっています。
海外事業展開に伴うリスクとして、現地の政情、行政、法規制、税制、人材確保とその維持等に起因する不測の事態発生により、同社グループの業績および財政状態が影響を受ける可能性があります。特に米中対立や日中関係、台湾有事、米国の関税政策などの諸問題により、事業活動が制約を受ける可能性があります。
③ 人材・組織に関するリスク
同社グループは、少子高齢化や労働人口の減少により、技術革新や経営に不可欠となる高度な能力を有する人材の確保と育成が困難になるリスクを認識しています。優秀な人材の獲得や育成が計画通りに進まない場合、またベテラン社員から若手層への知識や技術の伝承が進まない場合には、営業、設計、製造、研究開発等の業務継続に影響を及ぼし、業績に影響を与える可能性があります。
④ 雇用安定性・リストラ
解雇給付・リストラクチャリング引当金・構造改革費用の計上など、該当する記載はありません。
5. ビジョンと企業風土:どんな組織を目指している会社か?
巴工業グループは、創造と創業の精神を基盤に、技術革新と社会貢献を通じて持続可能な未来を築くことを目指しています。従業員一人ひとりが生きがいを見出し、多様な価値観を尊重し合える企業風土を大切にしています。
■(1) 経営理念とビジョン:会社はどこを目指しているか
同社グループは「創造と創業の精神」を経営の基本方針としています。会社に関連する人々の豊かな未来づくりに寄与するとともに、お客さまへの高い技術と優れた製商品の提供を通じて社会に貢献することを目指しています。また、従業員に生きがいを見出す場を提供することも経営理念の一つです。
サステナビリティ経営においては、継続的な技術革新や新規用途開発による持続可能な成長を実現します。社会的課題解決に資する事業を推進し、持続可能な社会の実現と企業価値向上を目指しています。
■(2) 企業風土:大切にしている価値観とカルチャー
同社グループは、社員の基本的人権と多様性を尊重し、働きやすい職場環境を確保することを「巴工業グループの行動規範」に明記しています。多様な背景や価値観を持つ社員がお互いを尊重し、それぞれの特徴を活かして活躍できる環境の整備に努めています。
「従業員に生きがいを見出す場を提供する」という経営理念のもと、より働きやすく働き甲斐のある会社を目指しています。働きやすい職場環境作りを推進し、全てのステークホルダーに対する社会的責任を果たすことを基本方針としています。
■(3) 経営課題と今後の重点テーマ
同社グループは、グローバル化の推進と、これを担う人材教育を重要な施策としています。両事業の持続的成長と収益力向上を図る方針です。
サステナビリティに関する全社的な取り組みを推進するため、「サステナビリティ推進委員会」を設置しています。気候変動が事業にもたらす機会・リスクの評価や温室効果ガス削減などの社会的課題、人的資本に関する取り組みについて討議し、進捗管理を行っています。また、リスクマネジメント委員会や企業倫理委員会を通じて、リスク管理と適正な企業行動の推進にも取り組んでいます。
6. 経営体制とガバナンス:誰がどう会社を動かしているか?
巴工業は監査等委員会設置会社であり、取締役会が経営の意思決定と監督を担っています。社外取締役が監査等委員として経営の健全性と透明性の確保に努める体制です。
■(1) 株主構成:誰に支えられている会社か
同社の株主構成を見ると、筆頭株主は日本マスタートラスト信託銀行であり、信託業務にかかる株式を保有しています。上位には複数の投資事業有限責任組合が名を連ねており、機関投資家による保有が一定の割合を占めていることがうかがえます。また、同社グループの従業員持株会も上位株主として名を連ねています。
| 株主名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行 | 8.43% |
| UH Partners 2投資事業有限責任組合 | 6.80% |
| 光通信KK投資事業有限責任組合 | 6.43% |
なお、みずほ銀行は2025年10月15日現在で768千株を保有している旨が大量保有報告書に記載されています。
■(2) 経営陣の経歴:どんな人たちが会社を率いているか
同社の役員は9名(男性7名・女性2名)で構成され、女性役員比率は22.0%です。代表取締役社長は玉井章友氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 玉井 章友 | 代表取締役社長 | 1980年日本国土開発入社、1988年エルケム・ジャパン入社。2000年同社入社後、化学品本部工業材料部長、取締役化学品本部副本部長などを歴任。2023年より現職。 |
| 篠田 彰鎮 | 取締役 常務執行役員機械本部長 | 1985年日本海事検定協会入社、1989年同社入社。大阪支店化学品営業部長、化学品本部化成品部長などを経て、2023年より現職。 |
| 東 徹行 | 取締役 常務執行役員化学品本部長 | 1984年同社入社。化学品本部機能材料部長、取締役化学品本部副本部長などを歴任。2023年より現職。 |
| 藤井 修 | 取締役 執行役員総務部および業務部担当 | 1987年同社入社。総務部長などを経て、2023年より現職。 |
| 橘田 一幸 | 取締役 執行役員経理部および経営企画部担当 | 1987年富士銀行入行、みずほ銀行仙台支店支店長などを経て、2019年同社入社。2023年より現職。 |
社外取締役は、八尋研治氏(元明治安田損害保険執行役員アンダーライティング部長・監査等委員)、杉原麗氏(末石・古久保法律事務所弁護士・監査等委員)、越智多佳子氏(越智公認会計士事務所代表・監査等委員)です。
同社は監査等委員会設置会社を採用しており、取締役会の監査・監督機能の強化を図っています。複数の独立社外取締役が監査等委員として、独立的かつ客観的な立場から監査・監督を行っています。
■(3) 役員報酬の仕組み:経営責任とインセンティブの設計
同社の役員報酬は、固定報酬である基本報酬と業績連動報酬である賞与で構成されています。毎事業年度の業績や担当事業部門の評価、個別評価に基づき支給額が決定される仕組みです。
| 区分 | 人数 | 総額 | 1人あたり平均 |
|---|---|---|---|
| 取締役(監査等委員及び社外除く) | 5名 | 3.0億円 | 60.0百万円 |
| 監査等委員(社外除く) | 1名 | 33百万円 | 33.0百万円 |
| 社外役員 | 4名 | 46百万円 | 11.4百万円 |
※本記事は、有価証券報告書などの公開情報から、転職・就職活動に役立つ情報をまとめたものです。内容の充実に努めていますが、掲載時点の情報であることをご留意ください。気になる点やご指摘があればお気軽にお知らせください。



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