※本記事は、石油資源開発株式会社の有価証券報告書(第56期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 石油資源開発ってどんな会社?
石油資源開発は、国内外での石油・天然ガスの探鉱から生産、販売までを一貫して手掛けるエネルギー企業です。
■(1) 会社概要
同社は1955年12月に特殊会社として設立され、1970年に石油開発公団から分離して民間会社として再発足しました。2003年10月に東京証券取引所市場第一部へ上場を果たしています。その後、2018年には相馬LNG基地の操業を開始し、直近の2026年2月には米国でタイトオイル・ガス資産を保有する企業を連結子会社化するなど事業を拡大しています。
現在の従業員数は連結で1,670名、単体で993名となっています。筆頭株主は国(経済産業大臣)であり、第2位および第3位は資産管理業務を行う信託銀行等の金融機関が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 経済産業大臣 | 37.84% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 8.45% |
| STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505223 | 2.63% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性13名、女性2名の計15名で構成され、女性役員比率は13.3%です。代表取締役社長社長執行役員は山下通郎が務めており、社外取締役比率は45.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 山下通郎 | 代表取締役社長社長執行役員 | 1982年同社入社。企画室長、環境・新技術事業推進本部副本部長、執行役員などを経て、2024年4月より現職。 |
| 藤田昌宏 | 代表取締役会長 | 1977年通商産業省入省。経済産業省貿易経済協力局長、住友商事副社長などを経て、2019年同社代表取締役社長、2024年4月より現職。 |
| 中島俊朗 | 取締役副社長執行役員経営企画本部長 | 1986年同社入社。経営企画部長、執行役員、取締役常務執行役員、取締役専務執行役員などを経て、2026年4月より現職。 |
| 山田知己 | 取締役専務執行役員海外事業本部長 | 1985年同社入社。中東・アジア・欧州事業本部イラクプロジェクト部長、執行役員などを経て、2026年4月より現職。 |
| 舟津二郎 | 取締役常務執行役員総務部、人事部担当 | 1988年同社入社。総務部長、人事部長、常務執行役員などを経て、2024年6月より現職。 |
| 中野正則 | 取締役常務執行役員国内事業本部長 | 1987年同社入社。技術本部環境技術部長、国内事業本部探鉱開発部長、相馬事業所長などを経て、2025年7月より現職。 |
社外取締役は、山下ゆかり(日本エネルギー経済研究所常務理事)、北井久美子(勝どき法律事務所弁護士)、杉山美邦(日本テレビホールディングス会長)、柿木厚司(JFEホールディングス元社長)、和田雅樹(和田法律事務所弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」「北米」「欧州」「中東」「その他」の事業を展開しています。
■(1) 日本
国内における原油・天然ガスの探鉱・開発・生産から、パイプラインやLNG基地を通じたガス供給、電力販売、バイオマス発電まで幅広い事業を展開しています。
需要家からガスや電力の販売代金を受け取るほか、託送供給サービスによる手数料を得ています。事業の運営は同社および日本海洋石油資源開発等の子会社・関連会社が行っています。
■(2) 北米
米国テキサス州やオクラホマ州、コロラド州等において、タイトオイルおよびタイトガスの探鉱・開発・生産を行っています。また、フリーポートLNGプロジェクトにも参画しています。
生産した原油や天然ガスを市場で販売することで収益を得ています。運営は主に子会社のJapex (U.S.) Corp.やVerdad Resources Intermediate Holdings LLCが行っています。
■(3) 欧州
ノルウェー領海上の鉱区において、原油および天然ガスの探鉱開発および生産事業を展開しています。
生産した原油・天然ガスを販売することにより収益を得ています。事業の運営は子会社のJAPEX Norge ASが行っています。
■(4) 中東
イラク共和国のガラフ油田において、原油の開発と生産事業を行っています。
生産された原油を販売し、代金を回収するモデルで収益を得ています。運営は主に子会社のジャペックスガラフが行っています。
■(5) その他
東南アジアやロシアにおいて、石油・ガス資源の探鉱開発および生産事業を展開しています。
権益を保有するプロジェクトを通じて、原油等の販売により収益を得ています。東南アジアではEMP Gebang Ltd.、ロシアではサハリン石油ガス開発が事業を展開しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高はエネルギー価格の変動等により増減を繰り返しており、直近の2026年3月期は3,403億円となっています。経常利益は2023年3月期をピークに減少傾向にありますが、利益率としては継続して10%台後半から20%台の高水準を維持しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2491億円 | 3365億円 | 3259億円 | 3891億円 | 3403億円 |
| 経常利益 | 437億円 | 831億円 | 688億円 | 642億円 | 616億円 |
| 利益率(%) | 17.5% | 24.7% | 21.1% | 16.5% | 18.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -200億円 | 588億円 | 469億円 | 739億円 | 379億円 |
■(2) 損益計算書
売上高および各利益段階で減収減益の傾向となっています。原油や天然ガスの販売価格下落、および液化天然ガスの販売量減少などが影響し、売上総利益率および営業利益率ともに前年から低下しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 3891億円 | 3403億円 |
| 売上総利益 | 992億円 | 767億円 |
| 売上総利益率(%) | 25.5% | 22.5% |
| 営業利益 | 620億円 | 389億円 |
| 営業利益率(%) | 15.9% | 11.4% |
販売費及び一般管理費のうち、人件費が145億円(構成比40%)、外注工事費が31億円(同9%)を占めています。売上原価(2,636億円)の構成比は売上高に対して77%となっています。
■(3) セグメント収益
主力の日本セグメントをはじめ、すべての地域で減収となっています。特に欧州セグメントでは、権益の譲渡等に伴う販売量の減少により売上高が大きく落ち込んでおり、全体業績に影響を与えています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 日本 | 2799億円 | 2482億円 |
| 北米 | 557億円 | 524億円 |
| 欧州 | 192億円 | 81億円 |
| 中東 | 343億円 | 317億円 |
| 連結(合計) | 3891億円 | 3403億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態(積極型)となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 1308億円 | 1030億円 |
| 投資CF | -1071億円 | -2005億円 |
| 財務CF | -387億円 | 60億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は72.8%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「エネルギーの安定供給を通じた社会貢献を使命とするとともに、持続可能な開発目標の実現に向けた社会的課題の解決に取り組みます」という経営理念を掲げています。石油・天然ガスの探鉱から販売までを担い、国内インフラ基盤を活用したサプライチェーンを強化し、新技術開発を通じて気候変動などの課題解決への貢献を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、すべてのステークホルダーとの信頼を最優先とし、企業としての持続的な発展を重視する文化を持っています。事業活動そのものがCSRであるとの考えに基づき、「JAPEX HSEポリシー」や「JAPEXグループ倫理行動規範」を制定しています。また、多様な人材が能力を十分に発揮できる「DE&I方針」も掲げています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、2035年までを見据えた中長期の成長戦略「JAPEX経営計画2026-2035」を策定しています。2030年度までを「コア資産群」の構築期間とし、2031年度以降にその収益貢献を本格化させる方針です。
* 2035年度に当期純利益1,000億円
* 2035年度に生産量18万boe/d
* 2035年度にCO2累計貯留量800万t以上
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、「海外E&PとCCUS(二酸化炭素の回収・有効活用・貯留)への集中」を重点施策としています。国内で培ったE&Pの総合技術力やCCUSの知見を活かし、強みを発揮できるエリアに経営資源を集中投下します。また、ポートフォリオの厳格な管理や入れ替えを断行し、持続可能な事業モデルへの転換と企業価値の向上を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「コア資産群構築を実現する組織・人材集団」への変容を目指し、キーポジション人材の計画的な確保・育成と組織カルチャー変革を戦略の両輪として推進しています。また、「役割等級制度」を導入し、自律的なキャリア形成を支援するとともに、働きがいのある職場づくりや健康経営の推進にも取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 39.8歳 | 14.1年 | 10,606,937円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 8.1% |
| 男性育児休業取得率 | 84.2% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 69.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 69.7% |
| 男女賃金差異(非正規雇用労働者) | 57.8% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新規学卒における女性採用比率(33.3%)、管理職における中途採用者比率(26.7%)、採用に占める中途採用者比率(51.5%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 原油・天然ガスの価格変動リスク
同社の売上高や営業利益は、原油・天然ガス等の価格変動から直接的な影響を受けます。将来的な販売価格の下落などにより、事業用資産の帳簿価額が回収できない見込みとなった場合には、減損損失を計上することになり、業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) カントリーリスクと地政学的影響
海外E&P事業は、イラクやロシアなどカントリーリスクが相対的に高い地域で展開される場合があります。中東情勢の緊迫化や各国の政治・経済・社会的な混乱、法制や税制の変更により、事業の円滑な遂行が妨げられ、業績に悪影響を及ぼすリスクが存在します。
■(3) E&P事業特有の投資リスク
E&P事業は探鉱から生産まで長期間にわたり多額の投資を要します。地質的な不確実性により十分な資源量を発見できないリスクや、資機材の高騰、開発スケジュールの遅延、さらに生産終了後の廃坑・廃山費用が見積もりを超過するリスクなどがあり、投資損失が発生する可能性があります。



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