※本記事は、石油資源開発株式会社 の有価証券報告書(第55期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 石油資源開発ってどんな会社?
石油・天然ガスの探鉱・開発・生産(E&P)を中核に、インフラ・ユーティリティ事業も展開する総合エネルギー企業です。
■(1) 会社概要
同社は1955年に石油資源開発株式会社法に基づく特殊会社として設立され、1970年に民間会社として再発足しました。2003年に東京証券取引所市場第一部に株式を上場し、2018年には相馬LNG基地の操業を開始してガス供給インフラを強化しています。直近では2024年にノルウェーのJAPEX Norge ASを子会社化するなど海外事業も展開しています。
連結従業員数は1,653名、単体では972名です。筆頭株主は日本のエネルギー政策を管轄する経済産業大臣であり、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は同社と同様にエネルギー開発を行うINPEXとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 経済産業大臣 | 37.84% |
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 10.11% |
| 株式会社INPEX | 2.78% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性13名、女性2名の計15名で構成され、女性役員比率は13.3%です。代表取締役社長社長執行役員は山下通郎氏です。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 山下 通郎 | 代表取締役社長社長執行役員 | 1982年4月同社入社。環境・新技術事業本部副本部長、取締役専務執行役員などを経て、2024年4月より現職。ジャペックスガラフおよび日本海洋石油資源開発の代表取締役社長を兼務。 |
| 藤田 昌宏 | 代表取締役会長 | 1977年4月通商産業省入省。経済産業省貿易経済協力局長、住友商事代表取締役副社長執行役員などを経て、2019年6月同社入社。同社代表取締役社長社長執行役員を経て、2024年4月より現職。 |
| 石井 美孝 | 代表取締役顧問 | 1981年4月同社入社。常務執行役員広域ガス供給本部副本部長、取締役専務執行役員電力事業本部長、代表取締役副社長執行役員などを歴任。福島ガス発電代表取締役社長を兼務し、2025年4月より現職。 |
| 中島 俊朗 | 取締役専務執行役員経営企画本部長 | 1986年4月同社入社。企画室長、経営企画部長、執行役員、常務執行役員、取締役常務執行役員を経て、2025年4月より現職。 |
| 舟津 二郎 | 取締役常務執行役員秘書室、総務法務部、人事部担当 | 1988年4月同社入社。総務部長、総務法務部長、人事部長、執行役員、常務執行役員を経て、2024年6月より現職。 |
| 手塚 和彦 | 取締役社長命嘱託 | 1983年12月同社入社。技術本部技術研究所長、執行役員技術本部長、常務執行役員技術本部長、取締役常務執行役員を経て、2025年4月より現職。 |
社外取締役は、伊藤鉄男(元最高検察庁次長検事)、山下ゆかり(日本エネルギー経済研究所常務理事)、川崎秀一(元沖電気工業代表取締役会長)、北井久美子(元厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)、杉山美邦(日本テレビホールディングス代表取締役会長執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」「北米」「欧州」「中東」の報告セグメントおよび「その他」事業を展開しています。
■(1) 日本
国内において原油・天然ガスの探鉱・開発・生産(E&P事業)を行うほか、インフラ・ユーティリティ事業として、国産天然ガスおよび輸入LNGを原料とするガスの製造・販売、電力の販売を行っています。また、その他の事業として、石油製品等の販売や坑井の掘さく・調査等の請負業務も行っています。
収益は、原油・天然ガス・電力・石油製品等の販売対価や、掘さく等の請負作業および物理探鉱作業等の対価から得ています。運営は、同社および日本海洋石油資源開発、白根瓦斯、福島ガス発電(持分法適用関連会社)、エスケイエンジニアリング等の関係会社が行っています。
■(2) 北米
米国において、オイルサンドプロジェクトやタイトオイル開発プロジェクトなどを通じ、原油・天然ガスの探鉱・開発・生産を行っています。また、インフラ・ユーティリティ事業として、LNGプロジェクトにも参画しています。
収益は、生産した原油・天然ガスの販売対価などから得ています。運営は、現地法人のJapex (U.S.) Corp.や関連会社のGulf Coast LNG Holdings LLC等を通じて行われています。
■(3) 欧州
英領北海およびノルウェー領海上鉱区において、原油・天然ガスの探鉱・開発・生産を行っています。
収益は、生産した原油・天然ガスの販売対価から得ています。運営は、現地法人のJAPEX UK E&P Ltd.およびJAPEX Norge ASが行っています。
■(4) 中東
イラク共和国のガラフ油田において、原油の開発・生産を行っています。
収益は、生産物分与契約などに基づく原油の販売対価から得ています。運営は、同社連結子会社のジャペックスガラフが行っています。
■(5) その他
上記報告セグメントに含まれない地域として、インドネシア等の東南アジアやロシア(サハリン)等において、原油・天然ガスの探鉱・開発・生産を行っています。
収益は、各プロジェクトにおける原油・天然ガスの販売対価や配当等から得ています。運営は、関連会社のEnergi Mega Pratama Inc.やサハリン石油ガス開発等を通じて行われています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は2021年3月期の2401億円から2025年3月期の3891億円へと拡大傾向にあります。利益面では、2021年・2022年3月期は最終赤字でしたが、2023年3月期以降は黒字化し、高い利益率を維持しています。特に2025年3月期は売上高が過去最高水準となり、当期純利益も前期比で増加しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,401億円 | 2,491億円 | 3,365億円 | 3,259億円 | 3,891億円 |
| 経常利益 | 100億円 | 437億円 | 831億円 | 688億円 | 642億円 |
| 利益率(%) | 4.2% | 17.5% | 24.7% | 21.1% | 16.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -27億円 | -310億円 | 674億円 | 537億円 | 812億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加しましたが、売上原価の増加率が売上高の増加率を上回ったため、売上総利益率は低下しました。一方、営業利益は増加しています。売上高の規模拡大に伴い、売上総利益および営業利益の絶対額は増加傾向にあります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 3,259億円 | 3,891億円 |
| 売上総利益 | 873億円 | 992億円 |
| 売上総利益率(%) | 26.8% | 25.5% |
| 営業利益 | 552億円 | 620億円 |
| 営業利益率(%) | 17.0% | 15.9% |
販売費及び一般管理費のうち、人件費が128億円(構成比38%)、外注工事費が38億円(同11%)、減価償却費が33億円(同10%)を占めています。
■(3) セグメント収益
各セグメントの状況を見ると、北米と欧州が大幅な増収増益となり、全社の業績を牽引しました。日本セグメントは増収ながらも減益、中東セグメントは減収減益となりました。特に欧州セグメントは売上・利益ともに前期から数倍に拡大しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 日本 | 2,565億円 | 2,799億円 | 511億円 | 450億円 | 16.1% |
| 北米 | 306億円 | 557億円 | 114億円 | 211億円 | 37.9% |
| 欧州 | 26億円 | 192億円 | 4億円 | 56億円 | 29.2% |
| 中東 | 362億円 | 343億円 | 48億円 | 42億円 | 12.1% |
| 連結(合計) | 3,259億円 | 3,891億円 | 552億円 | 620億円 | 15.9% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
**健全型**:営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 906億円 | 1,308億円 |
| 投資CF | -997億円 | -1,071億円 |
| 財務CF | -286億円 | -387億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は77.4%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、エネルギーの安定供給を通じた社会貢献を使命とするとともに、持続可能な開発目標の実現に向けた社会的課題の解決に取り組むことを経営理念としています。国内外での石油・天然ガスの探鉱・開発・生産・販売や、国内インフラ基盤を活用したガス・電力供給の強化、新技術開発を通じた気候変動課題への貢献を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は「SHINE」と称する5つのCSR重点課題(エネルギー安定供給、企業文化としてのHSE、誠実性とガバナンス、社会との良好な関係構築、選ばれる魅力ある職場)を掲げています。特にHSE(労働安全衛生・環境)を企業文化として重視し、すべてのステークホルダーとの信頼関係を最優先に、持続的な発展と企業価値の最大化を図る姿勢を持っています。
■(3) 経営計画・目標
同社は「JAPEX経営計画2022-2030」において、収益力の強化と2030年以降を見据えた事業基盤の構築を基本方針としています。定量目標として以下を掲げています。
* 事業利益:2026年度に300億円、2030年度に500億円
* ROE:2026年度に5%、2030年度に8%
* 利益構成(E&P分野:E&P以外の分野):2026年度に6:4、2030年度に5:5
■(4) 成長戦略と重点施策
「JAPEX2050」および経営計画に基づき、E&P事業の収益力強化とカーボンニュートラル社会への対応を両輪で進めています。E&P分野では既存油ガス田の安定生産と周辺開発、海外プロジェクトの着実な遂行を図ります。インフラ・ユーティリティ分野ではガス・電力供給の強化に加え、再生可能エネルギー開発を推進します。また、カーボンニュートラル分野では、CCS/CCUS技術の実用化・事業化を目指し、2030年度までにハブ&クラスター型モデル事業の立ち上げを計画しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は人材を価値創造の源泉と位置づけ、「人材育成基本方針」や「DE&I方針」のもと、自律したプロフェッショナルの育成と多様な人材の活躍促進を図っています。具体的には、DX推進や新規事業への転換に適応するためのリスキリング、役割等級制度への移行による評価制度の刷新、女性管理職登用や男性の育児休業取得促進などの環境整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 40.1歳 | 14.7年 | 10,314,588円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 6.4% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 68.2% |
| 男女賃金差異(正規) | 68.5% |
| 男女賃金差異(非正規) | 53.8% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新規学卒における女性採用比率(33.3%)、管理職における中途採用者比率(27.1%)、採用に占める中途採用者比率(51.5%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 原油・天然ガス価格の変動リスク
同社グループの売上高や営業利益は、原油価格や天然ガス価格の変動により大きな影響を受けます。価格変動リスク低減のために商品スワップ取引等を講じていますが、完全に回避することはできません。また、価格の長期的な下落等により事業用資産の減損損失が発生し、経営成績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 為替の変動リスク
国内で生産する原油・天然ガスは円建てで販売されますが、その価格は国際価格や為替レートの影響を受けます。また、輸入LNG等の仕入れ価格も為替の影響を受けます。為替予約等でリスク低減を図っていますが、急激な円高・円安は売上高や利益に影響を与えます。
■(3) E&P事業投資(探鉱投資、開発投資等)に関するリスク
石油・天然ガスの探鉱・開発には多額の投資と長い期間を要します。探鉱段階で資源を発見できないリスクや、開発段階でのコスト増加、スケジュール遅延、生産開始後の予期せぬ地質的問題や市況悪化により、投下資金を回収できず投資損失が発生する可能性があります。また、将来の廃鉱費用が見積りを上回る場合、追加の費用負担が生じる可能性があります。
■(4) 海外E&P事業投資に特有のリスク
海外での事業展開においては、カントリーリスクが存在します。事業実施国の政治・経済・社会情勢の悪化、法制度や税制の変更、治安悪化などが、プロジェクトの遂行や収益性に悪影響を及ぼす可能性があります。特にイラクやロシアなどの地政学的リスクが高い地域での事業については、情勢変化による影響を慎重に管理する必要があります。



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