※本記事は、エイケン工業株式会社 の有価証券報告書(第57期、自 2024年11月1日 至 2025年10月31日、2026年01月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. エイケン工業ってどんな会社?
自動車用フィルターおよびガス燃焼機器の製造・販売を行うメーカーです。静岡県御前崎市に本社を置きます。
■(1) 会社概要
同社は1969年、神奈川県にて自動車用フィルターの製造販売を目的に設立されました。1976年にはガス機器の製造を開始し、事業を拡大しました。2004年に日本証券業協会への店頭登録を取り消し、ジャスダック証券取引所に株式を上場しました。その後、市場統合を経て、2022年の東京証券取引所の市場区分見直しに伴い、スタンダード市場へ移行しました。
2025年10月31日現在、従業員数は単体で251名です(連結子会社はありません)。筆頭株主は同社の主要株主である育実企画株式会社で、第2位、第3位には個人株主が名を連ねています。育実企画株式会社は同社代表取締役の近親者が議決権を所有する会社です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 育実企画株式会社 | 14.64% |
| 石田由紀子 | 6.74% |
| 安池真理子 | 6.72% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性13名、女性0名の計13名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は宮治友博氏です。社外取締役比率は約15%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 宮 治 友 博 | 代表取締役社長 | 2018年同社入社。貿易部長、営業部長を経て、2024年取締役副社長。2025年1月より現職。 |
| 早 馬 義 光 | 取締役会長 | 1979年同社入社。製造部長、取締役副社長を経て、2009年代表取締役社長。2025年1月より現職。 |
| 櫻 井 英 司 | 専務取締役兼総務部長 | 1995年同社入社。総務部長を経て、2018年取締役。2025年1月より現職。 |
| 原 豊 | 取締役製造第一部長兼生産技術部長 | 1998年同社入社。総合管理部長、品質保証部長兼生産技術部長を経て、2024年11月より現職。 |
| 須 藤 孝 | 取締役機器事業部長兼購買部長 | 1995年同社入社。製造第一部長、機器事業部長兼総合管理部長を経て、2024年11月より現職。 |
| 原 盛 朗 | 取締役品質保証部長兼開発技術部長 | 2007年同社入社。開発技術部長兼機器事業部長を経て、2024年11月より現職。 |
| 山 口 高 広 | 取締役製造第二部長 | 1998年同社入社。生産技術部長、製造第二部長を経て、2024年1月より現職。 |
社外取締役は、髙宮春樹(公認会計士・税理士)、藤田逸雄(元河合楽器製作所製造管理部長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「フィルター部門」、「燃焼機器部門」および「その他」事業を展開しています。
■フィルター部門
自動車のエンジンオイルや燃料、空気をろ過するための各種フィルター(オイルフィルター、フューエルフィルター、エアーフィルターなど)を製造・販売しています。主な顧客は、自動車部品を取り扱う商社や販売会社であり、国内市場のほか、海外市場へも製品を供給しています。
収益は、顧客への製品販売による代金です。国内では自動車補修用部品市場向けに販売し、海外では自社ブランド「VIC」を展開して日本車向け補修部品として販売しています。運営は主にエイケン工業が行っています。
■燃焼機器部門
厨房機器やボイラーなどに使用されるガスバーナおよび関連部品を製造・販売しています。顧客は主に業務用厨房機器メーカーやボイラーメーカーなどです。
収益は、顧客への製品販売による代金です。厨房機器用バーナやコインランドリーの乾燥機用バーナなどを提供しています。運営は主にエイケン工業が行っています。
■その他
上記報告セグメントに含まれない事業として、灰皿等の販売を行っています。
収益は、製品の販売代金です。事業規模は小さく、運営はエイケン工業が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績推移を見ると、売上高は増加傾向にあります。第55期に一時的に利益率が低下しましたが、その後回復し、第57期には売上高81億円、経常利益4.5億円を達成しました。当期純利益も増益基調で推移しています。
| 項目 | 2021年10月期 | 2022年10月期 | 2023年10月期 | 2024年10月期 | 2025年10月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 68億円 | 70億円 | 68億円 | 73億円 | 81億円 |
| 経常利益 | 6億円 | 4億円 | 1億円 | 3億円 | 5億円 |
| 利益率(%) | 8.7% | 5.3% | 2.2% | 4.2% | 5.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 4億円 | 3億円 | 1億円 | 2億円 | 3億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加し、利益率も改善しています。売上総利益率は前期の14.0%から当期は14.9%へ上昇しました。増収効果に加え、生産効率の向上が寄与し、営業利益率は前期の3.8%から5.1%へと改善しています。
| 項目 | 2024年10月期 | 2025年10月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 73億円 | 81億円 |
| 売上総利益 | 10億円 | 12億円 |
| 売上総利益率(%) | 14.0% | 14.9% |
| 営業利益 | 3億円 | 4億円 |
| 営業利益率(%) | 3.8% | 5.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給料が1.9億円(構成比24%)、運搬費が1.5億円(同19%)を占めています。売上原価においては、材料費が27億円(当期総製造費用の49%)、労務費が14億円(同24%)を占めています。
■(3) セグメント収益
フィルター部門は、国内商社向けやアジア向け輸出の増加により増収増益となりました。燃焼機器部門は、厨房機器用バーナの販売増と価格改定効果により、売上高は微増ながら利益は大幅に改善しました。
| 区分 | 売上(2024年10月期) | 売上(2025年10月期) | 利益(2024年10月期) | 利益(2025年10月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| フィルター部門 | 70億円 | 78億円 | 6億円 | 7億円 | 8.8% |
| 燃焼機器部門 | 3億円 | 3億円 | 0.1億円 | 0.4億円 | 11.2% |
| その他 | 0.0億円 | 0.0億円 | -0.1億円 | -0.1億円 | -183.5% |
| 調整額 | - | - | -3億円 | -3億円 | - |
| 連結(合計) | 73億円 | 81億円 | 3億円 | 4億円 | 5.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
エイケン工業は、営業活動で得た資金を元手に、設備投資や預け入れ等を行いつつ、株主への配当も実施しています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等の支払いがあったものの、利益の計上や減価償却等により大幅な収入となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、定期預金の預け入れや有形固定資産の取得による支出が主な要因です。財務活動によるキャッシュ・フローは、株主への配当金の支払いが主な支出となりました。
| 項目 | 2024年10月期 | 2025年10月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 5億円 | 8億円 |
| 投資CF | -3億円 | -3億円 |
| 財務CF | -1億円 | -1億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「常に創造と革新の力を養い、勇気と決断で任務を遂行し、反省を忘れず、信頼と調和に満ちた価値ある企業集団を築きあげよう」という社是を掲げています。この指針のもと、研究開発型企業として高い収益性を目指し、企業価値を高めることに取り組んでいます。
■(2) 企業文化
「誰もが身近に接する自然をいつ迄も守っていかなければならない」という基本理念のもと、環境に配慮した製品づくりを重視しています。また、常に高い収益性を目指すとともに、サステナビリティの観点から温室効果ガスの排出抑制や資源の有効利用に取り組み、持続可能な社会の実現に貢献する姿勢を持っています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、継続的な安定成長と企業価値の向上を目指しており、資本効率を重視した経営を行うために、ROE(自己資本利益率)の向上を目標指標として掲げています。
■(4) 成長戦略と重点施策
主力であるフィルター事業では、海外市場において自社ブランド「VIC」の拡販や未開拓国への進出を進めるとともに、国内では大型車用フィルターや建機用フィルターの販売拡大を図ります。また、燃焼機器事業では顧客ニーズに合わせた新規バーナの開発や生産体制の強化に取り組みます。長期的にはEV化の進展を見据え、M&Aを含めた情報収集や新製品開発により、新たな事業の柱の構築を目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は多様な価値観を尊重し、差別やハラスメントのない働きやすい職場環境の整備に努めています。人材育成においては、階層別研修の実施や報奨金制度の導入により、従業員のスキルアップを支援しています。また、工場内空調設備の導入などによる労働環境の改善や労働災害防止にも取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年10月期 | 41.1歳 | 14.2年 | 4,731,122円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 0.0% |
| 男性育児休業取得率 | 0.0% |
同社は公表義務の対象ではないため、有報には男女賃金差異の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、製品1個当たりのCO2排出量(97.4g)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 自動車用フィルターに特化した事業について
同社グループの売上高の約96%は自動車用フィルター事業が占めています。現在は内燃機関車の重要部品ですが、燃料電池車や電気自動車(EV)などの次世代自動車の普及によりフィルターが不要になる可能性があり、将来的な事業リスクとなる可能性があります。これに対し、開発部を中心に新製品開発や新規事業の開拓に取り組んでいます。
■(2) 自動車用フィルター業界の競争について
自動車用フィルター市場では、東南アジアなどで生産される安価な製品が増加し、価格競争が激化しています。生産効率の向上などでコスト競争力の維持を図っていますが、想定を超える安価な製品の流入や販売増があった場合、業績に影響を与える可能性があります。これに対し、高品質・低コスト生産体制の確立や企画立案型の営業活動による拡販を進めています。
■(3) 原材料の仕入について
原材料の調達は取引先からの供給に依存しており、取引先の操業停止等により供給が困難になった場合、生産活動に支障をきたす可能性があります。また、原材料価格の高騰をコスト削減や販売価格への転嫁で吸収できない場合、リスクとなる可能性があります。在庫の適正化や取引先との関係強化により、安定調達と最適価格の維持に努めています。
■(4) 地震発生による影響
同社の生産設備は静岡県御前崎市にあり、南海トラフ巨大地震が発生した場合、生産設備等が被害を受け、生産活動に支障をきたす可能性があります。これに対し、定期的な防災訓練や設備点検を実施するとともに、BCP(事業継続計画)を策定し、早期の事業復旧が可能な体制を構築しています。



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