※本記事は、株式会社ミロク の有価証券報告書(第94期、自 2024年11月1日 至 2025年10月31日、2026年1月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ミロクってどんな会社?
同社は、100年以上の歴史を持つ猟銃製造を祖業とし、世界的ブランドであるブローニング社との提携を通じて高品質な製品を供給する製造業者です。
■(1) 会社概要
1893年に高知県で猟銃製造を開始し、1946年に前身となるミロク工作所を設立しました。1963年には大阪証券取引所市場第二部に上場し、1966年に米国ブローニング社と業務提携を行いました。2003年には持株会社体制へ移行し、現在の商号に変更しています。2022年の市場区分見直しに伴い、現在は東証スタンダード市場に上場しています。
連結従業員数は627名、単体では20名体制です。筆頭株主は、提携先であるブローニング・アームズ・カンパニーの実質保有分であり、第2位は関連会社のミロク興産、第3位は主要取引銀行である四国銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| MLPFS CUSTODY ACCOUNT | 13.29% |
| ミロク興産 | 8.81% |
| 四国銀行 | 4.74% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性0名の計11名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は弥勒美彦氏が務めています。社外取締役比率は36.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 弥勒 美彦 | 取締役社長(代表取締役) | 富士ゼロックス(現 富士フイルムビジネスイノベーション)を経て同社入社。2001年より現職。ミロク製作所社長、ミロク機械会長等を兼任。 |
| 宮地 雅久 | 取締役管理本部本部長 | 四国銀行執行役員、同社常勤監査役を経て、2024年より現職。 |
| 井戸 隆雄 | 取締役(非常勤) | 電通レイザーフィッシュ(現 電通デジタル)を経てミロク製作所入社。ミロクリエ社長、ミロク製作所取締役銃砲事業本部本部長を務める。 |
| 稲田 勝裕 | 取締役(非常勤) | ミロク機販(現 ミロク機械)入社。同社取締役東京営業所所長を経て、2020年より同社社長を務める。 |
| 井上 孝志 | 取締役(非常勤) | 井上石灰工業社長、井上ワイナリー社長を務める。2019年より現職。 |
| ジャンルイ・ダム | 取締役(非常勤) | ジェイテクトトルセンヨーロッパCEO等を経て、ブローニングビアナ会長、FNブローニンググループ民生部門製造担当を務める。 |
| トラビス・ホール | 取締役(非常勤) | ブローニングInc.社長兼CEOを経て、同社エグゼクティブアドバイザーを務める。 |
| 堀見 和道 | 取締役(非常勤) | 新日本製鐵(現 日本製鉄)を経て、高知県佐川町長を務めた。現在は高知大学理事。 |
社外取締役は、井上孝志(井上石灰工業社長)、ジャンルイ・ダム(ブローニングビアナ会長)、トラビス・ホール(元ブローニングInc.社長兼CEO)、堀見和道(元高知県佐川町長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「猟銃事業」、「工作機械事業」、「クラウドソリューション事業」および「その他」事業を展開しています。
**(1) 猟銃事業**
散弾銃、ライフル銃および猟銃関連商品の製造・販売を行っています。主要顧客は提携先であるブローニンググループであり、米国や欧州市場向けに製品を供給しています。
収益は主に、ブローニンググループへの製品販売による対価です。運営は主に株式会社ミロク製作所、株式会社南国ミロク、株式会社ミロク工芸が行っています。
**(2) 工作機械事業**
深穴加工機、超精密研磨機、深穴加工用工具の製造・販売および穴明け加工業務を行っています。半導体業界や自動車産業などを顧客としています。
収益は、製品の販売代金や加工サービスの対価です。運営は主にミロク機械株式会社、MIROKU MACHINE TOOL,INC.が行っています。
**(3) クラウドソリューション事業**
設備保全業務効率化のためのクラウドサービス等の開発および販売を行っています。
収益は、クラウドサービスの利用料やシステム販売代金です。運営は主に株式会社ミロクリエが行っています。
**(4) その他**
自動車用ハンドルの仕入・販売および木工商品の仕入・販売を行っています。自動車関連事業ではトヨタ自動車向けの製品を扱っています。
収益は、自動車部品メーカー等への製品販売による対価です。運営は主に株式会社ミロク製作所、株式会社ミロクテクノウッドが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2024年10月期から2025年10月期の業績を見ると、売上高は前期の109億円から125億円へと増加しました。経常利益も前期の赤字から2.1億円の黒字に転換しています。一方で、当期利益(親会社所有者帰属)は前期に続きマイナスとなりました。売上の回復は見られるものの、最終損益面では依然として厳しい状況が続いています。
| 項目 | 2021年10月期 | 2022年10月期 | 2023年10月期 | 2024年10月期 | 2025年10月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 137億円 | 115億円 | 119億円 | 109億円 | 125億円 |
| 経常利益 | 6億円 | 8億円 | 8億円 | -3億円 | 2億円 |
| 利益率(%) | 4.3% | 7.1% | 6.7% | -2.4% | 1.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 2億円 | 2億円 | 3億円 | -15億円 | -10億円 |
■(2) 損益計算書
2024年10月期と2025年10月期を比較すると、売上高は109億円から125億円へ増加し、売上総利益も8億円から12億円へ増加しました。売上総利益率は7.0%から9.9%へと改善しています。営業利益については、前期の5億円の赤字から当期は0.2億円の赤字へと、損失幅が大幅に縮小しました。
| 項目 | 2024年10月期 | 2025年10月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 109億円 | 125億円 |
| 売上総利益 | 8億円 | 12億円 |
| 売上総利益率(%) | 7.0% | 9.9% |
| 営業利益 | -5億円 | -0.2億円 |
| 営業利益率(%) | -4.8% | -0.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が4億円(構成比28%)、運賃が2億円(同13%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の猟銃事業は、ブローニンググループからの受注が堅調で増収となり、営業利益も黒字転換しました。工作機械事業は売上高が増加したものの、利益率の高い加工部門の苦戦により減益となりました。クラウドソリューション事業は増収ながら営業損失が続いています。その他事業は売上高が微減しましたが、利益は増加しました。
| 区分 | 売上(2024年10月期) | 売上(2025年10月期) | 利益(2024年10月期) | 利益(2025年10月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 猟銃事業 | 92億円 | 107億円 | -4億円 | 1億円 | 1.1% |
| 工作機械事業 | 17億円 | 18億円 | 2億円 | 1億円 | 7.3% |
| クラウドソリューション事業 | 0.0億円 | 0.2億円 | -0.4億円 | -0.4億円 | -256.8% |
| その他 | 0.5億円 | 0.5億円 | 0.3億円 | 0.3億円 | 64.3% |
| 調整額 | -0.2億円 | -2億円 | -2億円 | -3億円 | - |
| 連結(合計) | 109億円 | 125億円 | -5億円 | -0.2億円 | -0.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年10月期 | 2025年10月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -0.4億円 | 12億円 |
| 投資CF | -34億円 | -25億円 |
| 財務CF | 33億円 | 16億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は当期純損失計上のため算出されていません。財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は49.1%で、スタンダード市場(製造業平均57.5%)を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「誠実と正直こそ信頼への近道」を経営の基本方針としています。会社に関わるすべての人々に比類のない喜びと感動を与えるため、高品質な製品とサービスを世界へ提供することを基本理念に掲げています。
■(2) 企業文化
「HONESTY」をキーワードに、顧客、従業員、パートナー企業、地域社会、株主の5者を大切にするという約束を掲げています。特に従業員については、一人ひとりを尊重し、心理的かつ経済的な幸せを感じられるよう、働きがいのある環境と公平な制度づくりに注力する姿勢を示しています。
■(3) 経営計画・目標
「2026中期経営計画」を推進しており、生産性の向上と各事業間の交流による相乗効果を通じて、同社の「ものづくり」体制を確立することを目指しています。次期の通期連結業績見通しとしては、以下の数値を掲げています。
* 売上高:122億円
* 営業損失:1億円
* 経常利益:0.6億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:6.1億円
■(4) 成長戦略と重点施策
猟銃事業では、新工場の本格稼働による生産能力拡充と既存工場の再構築、IT/IoT活用による自動化を進めます。工作機械事業では、半導体やFPD市場の需要を取り込み、拠点の稼働率向上を図ります。自動車関連事業では、経営基盤の強化とともに新技術・新工法開発に取り組みます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
積極性、創造力、柔軟性、行動力、コミュニケーション能力を持つ人材を求めています。採用ではチャネル拡大や学校との関係強化を進め、育成ではOJTに加え、専門知識習得のための研修や選抜型英語研修などを実施しています。また、従業員のエンゲージメント向上を目指し、公平な制度構築や働きやすい環境整備に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年10月期 | 41.3歳 | 7.2年 | 4,730,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 13.3% |
| 男性育児休業取得率 | 80.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 90.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 87.9% |
| 男女賃金差異(非正規) | 115.8% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、教育訓練実施率(136.8%)、有給休暇取得率(77.8%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 猟銃事業における海外政治・経済情勢
売上の大半を海外のブローニンググループ向けが占めるため、米国や欧州の政治経済情勢、銃規制の強化、関税政策の変更などの影響を強く受けます。これらにより市場が縮小した場合、受注減少や対応費用の増加につながる可能性があります。
■(2) 特定の取引先への依存
猟銃事業の売上の90%以上がブローニンググループ向けであり、自動車関連事業でも主要製品がトヨタ自動車向けであるなど、特定の取引先に依存しています。主要顧客の方針変更や受注減少が生じた場合、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 原材料の調達と価格変動
原材料価格の高騰や、特殊性により調達先が限定されていることによる供給リスクがあります。価格転嫁が困難な場合や、調達先の倒産等により供給が滞った場合、生産活動や収益性に影響が出る可能性があります。
■(4) 人材の確保および育成
慢性的な人材不足の中で、事業継続と成長には優秀な人材の確保と技術伝承が不可欠です。計画通りに採用や育成が進まない場合、技術力の維持や生産体制に支障をきたし、競争力が低下する恐れがあります。



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