※本記事は、泉州電業株式会社 の有価証券報告書(第76期、自 2024年11月1日 至 2025年10月31日、2026年1月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 泉州電業ってどんな会社?
電線・ケーブルの専門商社として、業界トップクラスの実績を持つ独立系企業です。豊富な在庫と即納体制、加工機能を強みとしています。
■(1) 会社概要
1949年に設立され、1991年に大阪証券取引所市場第二部へ上場しました。2002年に東京証券取引所市場第二部へ上場後、2017年に同市場第一部へ指定替えとなり、2022年の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しました。国内外に販売拠点を展開し、近年ではベトナムやアメリカにも現地法人を設立するなど、グローバル展開を推進しています。
連結従業員数は838名、単体では579名です。大株主構成については、筆頭株主は同社代表取締役社長の西村元秀氏で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は創業家出身の個人株主となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 西村元秀 | 9.30% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 7.27% |
| 西村陽子 | 5.47% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性2名の計13名で構成され、女性役員比率は15.4%です。代表取締役社長は西村元秀氏が務めています。社外取締役比率は38.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 西村 元秀 | 代表取締役社長 | 岡三証券を経て1995年同社入社。営業本部長などを歴任し、2000年より現職。 |
| 田原 隆男 | 取締役副社長執行役員 | 1969年同社入社。名古屋支店長、国際本部長などを歴任し、2024年より現職。 |
| 成田 和人 | 専務取締役執行役員管理本部長兼人事部長 | 1982年同社入社。総務部長、管理副本部長などを経て、2024年より現職。 |
| 宇正 鬪曜 | 専務取締役執行役員営業本部長 | 1988年同社入社。札幌支店長などを経て、2021年より現職。 |
| 西村 元一 | 専務取締役執行役員国際本部長 | 日本電産(現ニデック)を経て2009年同社入社。国際部長などを経て、2024年より現職。 |
| 島岡 修子 | 常務取締役執行役員管理副本部長兼輸出管理室長 | 1979年同社入社。経理部長などを経て、2025年より現職。 |
| 花山 昌典 | 取締役執行役員大阪本店長兼第三営業部長兼営業本部特機部長 | 1975年同社入社。広島支店長などを経て、2023年より現職。 |
| 福田 勇 | 取締役執行役員経営企画室長 | 1991年同社入社。情報システム室長などを兼務し、2024年より現職。 |
社外取締役は、宗岡徹(関西大学大学院会計研究科教授)、近藤剛史(弁護士)、山條博通(元りそな銀行常務執行役員)、森脇朗(元資産管理サービス信託銀行社長)、森本千晶(元関西みらい銀行人事部長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「電線・ケーブル」の単一セグメントで事業を展開しています。
**電線・ケーブル事業**
機器用電線、通信用電線、電力用ケーブル、汎用被覆線などの電線類や、それに付帯する各種電設資材、情報関連機器等の販売を行っています。主な顧客は建設会社、電設資材販売業者、機械メーカーなど多岐にわたります。商品の販売だけでなく、電線の端末処理などの加工サービスも提供しています。
収益は、顧客への商品販売および加工製品の提供による対価から得ています。運営は主に泉州電業が行っており、エステック、三光商事、nbsなどの国内子会社および海外現地法人が連携して事業を展開しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年10月期から2025年10月期までの業績推移です。売上高は長期的に拡大傾向にありましたが、直近では横ばいから微減となりました。利益面では、2024年10月期まで増加傾向にあったものの、当期は減益となっています。
| 項目 | 2021年10月期 | 2022年10月期 | 2023年10月期 | 2024年10月期 | 2025年10月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 925億円 | 1,136億円 | 1,250億円 | 1,362億円 | 1,356億円 |
| 経常利益 | 50億円 | 79億円 | 88億円 | 108億円 | 93億円 |
| 利益率(%) | 5.4% | 6.9% | 7.0% | 7.9% | 6.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 36億円 | 53億円 | 59億円 | 76億円 | 67億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益実績です。当期は前期と比較して、売上高は微減、売上総利益および営業利益は減少しました。利益率も低下しており、コスト負担の影響が見られます。
| 項目 | 2024年10月期 | 2025年10月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,362億円 | 1,356億円 |
| 売上総利益 | 211億円 | 205億円 |
| 売上総利益率(%) | 15.5% | 15.1% |
| 営業利益 | 103億円 | 90億円 |
| 営業利益率(%) | 7.6% | 6.6% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が42億円(構成比36.2%)、その他が27億円(同23.7%)を占めています。また、運賃及び荷造費は15億円(同12.6%)となっています。
■(3) セグメント収益
同社は単一セグメントのため、セグメントごとの比較はありません。半導体製造装置向け等の回復遅れや建設関連の工期遅延などが影響し、全体として微減収となりました。
| 区分 | 売上(2024年10月期) | 売上(2025年10月期) |
|---|---|---|
| 電線・ケーブル | 1,362億円 | 1,356億円 |
| 連結(合計) | 1,362億円 | 1,356億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
泉州電業は、電線・ケーブル事業を主軸に、安定した資金創出能力を有しています。営業活動では、本業で得た利益や売上債権の減少が資金増加に寄与しました。投資活動では、定期預金の預け入れや有価証券の取得等により資金を使用しましたが、定期預金の払戻や有価証券の売却等で一部を回収しました。財務活動では、配当金の支払い等が主な資金流出要因となりました。これらの活動の結果、同社は前連結会計年度に比べて資金を増加させています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「新しい価値を創造して、能力を発揮し、社業の発展に努め、社会に貢献するとともに、株主に報い、社員の福利厚生を図る」ことを経営理念として掲げています。この理念のもと、変化する市場ニーズに適合した商品・サービスの提供を行うとともに、サステナビリティ経営を基本方針としています。
■(2) 企業文化
失敗を恐れずチャレンジ精神を持った社員を育成し、新しい分野へ挑戦する気風を重視しています。性別や国籍等を問わず多様な人材を採用し、社員一人ひとりがやりがいを持って働ける環境作りを推進しています。現状に満足せず常に問題意識を持ち、変革へ挑戦する姿勢が推奨されています。
■(3) 経営計画・目標
2027年10月期を最終年度とする「泉州電業グループ中期経営計画」を策定し、以下の経営数値目標を掲げています。
* 連結売上高:1,600億円
* 経常利益:130億円
* ROE:15%以上
* 配当性向:35%以上
* 株主総還元率:50%以上
* PBR:2.0倍以上
■(4) 成長戦略と重点施策
100年企業を目指し、収益の長期安定化と持続的成長を図るため、以下の戦略を推進しています。メーカーと共同でのオリジナル商品開発や加工部門の強化、各拠点の物流機能拡充によるジャスト・イン・タイム体制の充実を図ります。
* 産業機械向けFAケーブル等の売上構成比向上
* 関東・東京地区での営業強化およびシェア拡大
* 非電線の新商品開発および新分野開拓
* 海外連結子会社との連携強化によるグローバル展開
* DX推進による構造改革とコスト削減
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
多様性のある人材を採用し、様々な価値観を取り入れることで従業員満足度を高め、個々のパフォーマンス向上を図る方針です。人材育成においては、「社員一人一人が個性、自主性、創造性を発揮し生き生きと働く」等を理念とし、女性活躍推進や教育制度の拡充、職種・等級制度の見直しなどを進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年10月期 | 39.3歳 | 15.0年 | 7,066,472円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 4.2% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 100.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 65.2% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | 73.3% |
| 労働者の男女の賃金の差異(非正規) | 81.7% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性総合職比率(8.7%)、エンゲージメント回答率(97.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 銅価格の変動リスク
主要取扱商品である電線・ケーブルの主材料は銅であり、その国際相場の変動により仕入価格が大きく変動する可能性があります。販売価格への転嫁が遅れた場合、損益に悪影響を及ぼす可能性があります。同社は在庫の早期販売や、受注と同時の発注によるヘッジを行っています。
■(2) 経済情勢・需要変動の影響
商品は設備投資向けが主であるため、建設需要や企業の設備投資動向の影響を受けます。これらが低迷した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社は幅広い業種に販売先を分散させることで、影響の最小化に努めています。
■(3) 海外事業に伴うリスク
中国、東南アジア、北米等に拠点を展開しており、現地の経済動向、政治・社会情勢の変化、法的規制の変更等が業績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社は専門家との連携や情報交換を通じて、変化に迅速に対応できる体制を目指しています。



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