くら寿司 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

くら寿司 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

くら寿司は東京証券取引所プライム市場に上場し、回転すしチェーン「くら寿司」を国内外で直営展開する企業です。2025年10月期は、国内外での積極的な出店や人気キャラクターとのコラボ企画などが奏功し、売上高は過去最高を更新して増収となりました。利益面では経常利益が微減となったものの、当期純利益は増益を達成しています。


※本記事は、くら寿司株式会社 の有価証券報告書(第30期、自 2024年11月1日 至 2025年10月31日、2026年01月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. くら寿司ってどんな会社?


「食の戦前回帰」を理念に掲げ、化学調味料など四大添加物を排除した回転すしチェーンを国内外で展開する企業です。

(1) 会社概要


1995年に大阪府で設立され、回転すしの製造・販売を開始しました。2001年にナスダック・ジャパン市場へ上場し、2004年には東証二部、2005年には東証一部へ指定替えを行いました。2008年に米国子会社を設立して海外展開を本格化させ、2019年に現在の社名へ変更しました。2020年には台湾子会社が現地市場へ上場しています。

連結従業員数は2,854人、単体では1,794人です。筆頭株主は不動産賃貸業等を営むウォルナットコーポレーションで、第2位も同様に同住所のトラストです。第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。上位2社は創業家に関連する資産管理会社と推測されます。

氏名 持株比率
ウォルナットコーポレーション 29.29%
トラスト 11.07%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 6.17%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は田中邦彦氏が務めています。社外取締役比率は30.0%です。

氏名 役職 主な経歴
田中 邦彦 代表取締役社長 1977年に個人の寿司店を創業し、1995年の同社設立時より代表取締役社長を務める。創業以来、経営トップとして事業を牽引し現職。
田中  信 取締役副社長 1998年に入社。人事本部長や経営戦略本部長、法務本部長などを歴任し、2019年より現職。KURAおさかなファーム代表取締役も兼任。
田中 節子 取締役環境事業本部長 1995年の設立時に入社し取締役営業企画室長に就任。社長室長などを経て、2008年より現職。
尾越 健二 取締役店舗開発本部長 2000年に入社。購買本部などを経て、経営戦略本部長として執行役員、取締役、専務取締役を歴任し、2025年11月より現職。
岡本 浩之 取締役広報・IR本部長 三洋電機、江崎グリコを経て2018年に入社。広報宣伝IR本部長などを歴任し、2025年11月より現職。
勝見 哲平 取締役人事本部長 2005年に入社。採用部マネージャーを経て、2019年に執行役員人事本部長に就任し、2025年1月より現職。


社外取締役は、榎本弘一(榎本行政書士事務所所長)、大田口宏(大雪法律事務所所長)、北川洋士(北川洋士会計事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「北米」「アジア」の報告セグメントで事業を展開しています。

(1) 日本事業


国内において回転すしチェーン「くら寿司」や「無添蔵」などの直営店運営を行っています。主要な顧客は一般消費者であり、ロードサイド店を中心に全都道府県へ出店しています。アプリを活用した予約システムや、非接触型サービスの導入など、テクノロジーを活用した店舗運営が特徴です。

収益は、来店客への飲食提供による代金が主な源泉です。運営は主にくら寿司が行っています。添加物を含まない食材の使用や、皿回収システム「ビッくらポン!」などのアミューズメント要素を取り入れ、競合他社との差別化を図っています。

(2) 海外事業(北米・アジア)


米国および台湾、中国において回転すしチェーンを展開しています。日本で培った店舗運営ノウハウやシステムを現地の市場環境に合わせて展開し、グローバルなブランド認知拡大を目指しています。米国子会社および台湾子会社はそれぞれの現地株式市場に上場しています。

収益は、各国の店舗における飲食提供による代金です。運営は、米国ではKura Sushi USA, Inc.、台湾では亞洲藏壽司股份有限公司、中国ではKura Sushi Hong Kong Limitedおよび上海藏寿餐飲管理有限公司が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間の業績を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあり、事業規模の拡大が続いています。特に直近の2025年10月期には売上高が2,451億円に達しました。利益面では、2022年10月期に一時的な落ち込みが見られましたが、その後回復し、経常利益は60億円台で推移しています。当期純利益も直近2期は30億円を超える水準を維持しており、増収基調の中で利益確保も進んでいます。

項目 2021年10月期 2022年10月期 2023年10月期 2024年10月期 2025年10月期
売上高 1,477億円 1,831億円 2,114億円 2,350億円 2,451億円
経常利益 32億円 25億円 29億円 62億円 62億円
利益率(%) 2.1% 1.3% 1.4% 2.6% 2.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 27億円 2億円 3億円 37億円 35億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し、売上総利益も増加しています。売上総利益率は約59%と高い水準を維持しています。営業利益は前期の57億円から55億円へとわずかに減少しましたが、営業利益率は2%台を保っています。原材料価格や人件費の上昇といったコスト圧力がある中で、売上拡大により利益額を概ね維持している状況です。

項目 2024年10月期 2025年10月期
売上高 2,350億円 2,451億円
売上総利益 1,392億円 1,452億円
売上総利益率(%) 59.3% 59.2%
営業利益 57億円 55億円
営業利益率(%) 2.4% 2.2%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が696億円(構成比50%)、賃借料が151億円(同11%)を占めています。店舗運営における人件費と家賃が主要なコスト要因となっています。

(3) セグメント収益


全セグメントで増収となりました。日本事業はインバウンド需要の拡大やコラボ企画が寄与し増収となりましたが、原材料高騰等の影響で利益は減少しました。北米事業は積極的な出店により大幅な増収となり、黒字化を達成しました。アジア事業もコラボ企画等が好評で増収増益となりました。全体として海外事業の成長が業績を牽引しています。

区分 売上(2024年10月期) 売上(2025年10月期) 利益(2024年10月期) 利益(2025年10月期) 利益率
日本 1,740億円 1,764億円 66億円 50億円 2.9%
北米 359億円 421億円 -10億円 1億円 0.3%
アジア 251億円 266億円 9億円 12億円 4.4%
調整額 -3億円 -3億円 -2億円 -1億円 -
連結(合計) 2,350億円 2,451億円 62億円 62億円 2.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

くら寿司のキャッシュ・フローの状況についてご説明します。

同社は、営業活動により資金を創出し、投資活動で事業拡大のための設備投資や有価証券の取得を行い、財務活動では子会社の増資による収入を得ることで資金調達を行っています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、主に税金等調整前当期純利益や減価償却費等により収入となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有価証券や有形固定資産の取得による支出が大きくなりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、連結子会社の増資による収入があった一方で、リース債務の返済や配当金の支払いによる支出がありました。

項目 2024年10月期 2025年10月期
営業CF 184億円 149億円
投資CF -103億円 -186億円
財務CF -40億円 49億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「食の戦前回帰」を理念とし、添加物を含まない素材そのものの味わいを求め、食が安心・安全だった戦前の健康的でバランスの取れた食生活を取り戻すことを目指しています。創業以来、全食材から化学調味料などの四大添加物を完全に排除した商品を提供し、食を通じて社会や世界の人々の幸せに貢献することを使命としています。

(2) 企業文化


「見えないところこそ大切にする」という行動指針の実践を重視しています。また、教育を重視し、「教育日本一企業」を目指して、社長自らが講師を務める「社長塾」や、従業員の技術や接客を競うコンテストを世界規模で開催するなど、向上心と主体性を持つ人材を育成する文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標


2030年度を最終年度とする「長期構想」を掲げています。第二の創業期として日本国内と海外を両輪で拡大させ、以下の数値目標を設定しています。

* 全世界売上高:3,600億円以上
* 店舗数:1,100店舗以上

(4) 成長戦略と重点施策


「くら寿司」ブランドの認知拡大と、国内・海外での出店加速を成長戦略の柱としています。AIやITを活用した効率的な店舗運営、DXによる顧客満足度の向上、スマートくら寿司の導入などを推進します。また、漁業創生への取り組みやグローバルな人材育成にも注力し、高付加価値を生み出す企業体質の構築を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「教育日本一企業」を目指し、役割や役職に応じた研修制度やeラーニング、コンテスト等を通じて、主体性のある人材育成を行っています。また、多様な人材が活躍できるよう、JOB型人事制度や専門職制度、ライフステージに合わせた柔軟な働き方の提供、外国人採用や障がい者雇用の促進など、社内環境の整備にも力を入れています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年10月期 32.4歳 7.6年 5,213,450円


※平均年間給与は基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.3%
男性育児休業取得率 77.4%
男女賃金差異(全労働者) 92.7%
男女賃金差異(正規) 70.3%
男女賃金差異(非正規) 117.1%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 食品の安全管理


「食の戦前回帰」を理念とし、無添加や安全にこだわった食を提供している同社グループにとって、食中毒の発生は最大のリスク要因です。衛生管理の徹底や抗菌寿司カバー「鮮度くん」の導入などの対策を講じていますが、万が一衛生問題が発生した場合、企業イメージの失墜や営業停止等により業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 食材の仕入れ


食材の品質管理を最重要課題とし、トレーサビリティの追求や産地分散を行っていますが、不適切な食材の混入が発生した場合は信用失墜のリスクがあります。また、世界的な食材需要の変動、為替相場の変動、漁獲規制などにより原材料価格が高騰したり入荷が困難になったりした場合、顧客満足度の低下や業績への悪影響が生じる可能性があります。

(3) 海外戦略


米国および台湾において子会社を通じて積極的に店舗展開を行っています。市場調査等を慎重に行っていますが、進出先の国における政治、経済、社会情勢の変化や予期せぬ事象により事業活動に問題が生じた場合、グループ全体の業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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