※本記事は、ファースト住建株式会社 の有価証券報告書(第27期、自 2024年11月1日 至 2025年10月31日、2026年1月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ファースト住建ってどんな会社?
近畿圏を地盤に、一次取得者層向けの低価格な戸建住宅を提供するハウスビルダーです。全国へエリアを拡大中です。
■(1) 会社概要
1999年に飯田建設工業(現 一建設)出身者が兵庫県で設立し、戸建事業を開始しました。2003年に大証二部へ上場し、2013年には東証一部(現 スタンダード市場)へ銘柄指定されました。2018年にアオイ建設を、2024年にKHCを連結子会社化するなど、M&Aを通じて事業基盤とエリアの拡大を進めています。
連結従業員数は411名、単体では227名です。筆頭株主は創業家一族の資産管理会社と思われる中島興産で、第2位は伏見管理サービス、第3位は個人株主となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 中島興産 | 33.93% |
| 伏見管理サービス | 12.94% |
| 内藤 征吾 | 3.64% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は中島 雄司氏、社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 中島 雄司 | 代表取締役社長 | 飯田建設工業(現 一建設)を経て同社設立時に取締役就任。2000年より現職。アオイ建設社長、リタ総合不動産社長等を兼務。 |
| 中山 成人 | 常務取締役兼首都圏支社長 | 豊島商事などを経て同社入社。浦和支店長、企画営業部長などを歴任し、2025年より現職。 |
| 田中 武志 | 取締役東海支社長 | ユニホーを経て同社入社。東海支社長として執行役員を務め、2025年より現職。 |
| 西村 幸雄 | 取締役工事部長 | 橋本工務店を経て同社入社。工事部長代理などを経て、2025年より現職。 |
| 藤本 智章 | 取締役管理部長 | 税理士事務所を経て同社入社。常勤監査役、取締役(監査等委員)などを歴任し、2025年より現職。 |
| 城島 美香 | 取締役(監査等委員) | 太陽神戸銀行(現 三井住友銀行)を経て同社入社。管理部財務課長を経て、2025年より現職。 |
社外取締役は、田村 一美(公認会計士・税理士法人ティーエーシー代表社員)、水永 誠二(弁護士・牧野内総合法律事務所所属)です。
2. 事業内容
同社グループは、「戸建事業」および「マンション事業等」事業を展開しています。
■(1) 戸建事業
近畿圏、東海、首都圏などを主要エリアとし、一次取得者層向けの戸建分譲住宅の企画・建築・販売を行っています。また、自由設計による注文住宅や規格型注文住宅「オーダーキューブ・システム」の請負工事も提供しています。
収益は、住宅購入者からの物件販売代金や建築請負代金から得ています。分譲住宅は主に仲介業者を通じて販売され、施工は外部業者への委託を活用しています。運営はファースト住建、アオイ建設、KHCなどが担っています。
■(2) マンション事業等
マンションの新築分譲、中古マンションのリノベーション販売、不動産賃貸、および大規模木造建築などの特建事業を行っています。新築分譲では40戸程度の中規模マンションを手掛け、賃貸では単身者向けマンション等を保有しています。
収益は、マンション販売代金、賃貸物件の入居者からの賃料収入、および建築請負代金から構成されています。新築マンションの施工は外部建設業者に委託し、販売は代理会社を通じて行っています。運営は主に同社グループが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高はM&A効果などにより400億円台を回復し、増収傾向にあります。利益面でも、売上拡大に伴い経常利益は回復基調にあり、当期は24億円を計上しました。利益率は5%台で推移しています。
| 項目 | 2021年10月期 | 2022年10月期 | 2023年10月期 | 2024年10月期 | 2025年10月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 426億円 | 400億円 | 434億円 | 360億円 | 429億円 |
| 経常利益 | 35億円 | 32億円 | 27億円 | 18億円 | 24億円 |
| 利益率(%) | 8.2% | 7.9% | 6.1% | 5.0% | 5.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 21億円 | 19億円 | 17億円 | 11億円 | 11億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間では、売上高が約69億円増加し、売上総利益も拡大しています。売上総利益率は14.7%から16.4%へと改善しました。営業利益も増益となり、営業利益率は5.8%へ上昇しています。
| 項目 | 2024年10月期 | 2025年10月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 360億円 | 429億円 |
| 売上総利益 | 53億円 | 70億円 |
| 売上総利益率(%) | 14.7% | 16.4% |
| 営業利益 | 18億円 | 25億円 |
| 営業利益率(%) | 5.1% | 5.8% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が13億円(構成比28%)、販売手数料が7億円(同17%)を占めています。売上原価においては、土地購入費や外注費などが主要な構成要素となっています。
■(3) セグメント収益
戸建事業はKHCの子会社化等により販売棟数が増加し、増収増益となりました。マンション事業等も、賃貸用不動産の販売や賃料収入の増加により増収増益を達成しました。
| 区分 | 売上(2024年10月期) | 売上(2025年10月期) | 利益(2024年10月期) | 利益(2025年10月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 戸建事業 | 347億円 | 410億円 | 25億円 | 31億円 | 7.7% |
| マンション事業等 | 13億円 | 19億円 | 4億円 | 5億円 | 25.1% |
| その他 | 0.1億円 | 0.1億円 | -11億円 | -13億円 | -14267.0% |
| 連結(合計) | 360億円 | 429億円 | 18億円 | 24億円 | 5.5% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、分譲用地等の仕入資金を借入金に依存しているため、棚卸資産の増加に伴い営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスとなる、または有利子負債が増加する可能性があります。
営業活動によるキャッシュ・フローは、主に不動産事業における棚卸資産の増減等により変動します。投資活動によるキャッシュ・フローは、主に不動産取得等に係る支出によりマイナスとなっています。財務活動によるキャッシュ・フローは、主に借入金の返済や調達等により変動します。
| 項目 | 2024年10月期 | 2025年10月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 60億円 | 29億円 |
| 投資CF | -14億円 | -12億円 |
| 財務CF | -31億円 | 0.1億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「住宅作りにおいて、社会へ貢献する」「より良いものを、より安く、より早く、より安全に提供することで社会へ貢献する」「人を育て、健全経営を行い、社会へ貢献する」の3つを企業理念として掲げています。これらを通じて、良質な住宅の提供と社会貢献の実現を目指しています。
■(2) 企業文化
「お客様第一主義」を基本方針とし、顧客満足の向上を目指す文化があります。また、営業部門や工事部門でアウトソーシングを積極的に活用することで「少数精鋭主義」を持続させ、ムリ・ムダを省いた健全かつ効率的な経営を行うことを重視しています。
■(3) 経営計画・目標
既存エリアの深耕と新規エリアへの展開により販売棟数を拡大しつつ、一定の収益性と資本効率を確保することを目標としています。具体的な経営指標として以下を掲げています。
* 売上高経常利益率:10%以上
* 自己資本当期純利益率(賃貸等不動産関連を除く):10%以上
* 棚卸資産回転率:年3回転
■(4) 成長戦略と重点施策
主力の戸建事業では、年間2~3支店の新設によるエリア拡大と、徹底したマーケティングリサーチによる地域密着営業を推進します。また、注文住宅、マンション事業、特建事業(大規模木造建築)など周辺領域の育成や、M&Aによるグループ拡大を通じて収益基盤の強化と経営の安定化を図る方針です。
* 支店展開を通じた事業エリアの拡大と市場シェア向上
* アウトソーシング活用による少数精鋭体制の維持
* 事業の多角化(注文住宅、マンション、特建事業等)による経営基盤の確立
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
事業拡大に対応するため、新卒・中途採用による人材確保と育成を最重要課題としています。OJTや各種研修、資格取得支援を通じて専門知識を持つ人材を育成し、少数精鋭主義を維持することを目指しています。また、施工能力確保のため、協力業者の開拓や外国人技能実習生の受入にも取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年10月期 | 43.2歳 | 7.3年 | 446万円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.7% |
| 男性育児休業取得率 | 33.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 73.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 73.8% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 81.7% |
※男女賃金差異(正規雇用)は正規雇用労働者(一般)の数値を記載しています。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 戸建分譲事業への依存
同社グループの売上の大部分は戸建分譲事業が占めており、住宅一次取得者層を主なターゲットとしています。そのため、景気悪化、金利上昇、消費税増税などにより住宅需要が減少した場合、業績に大きな影響が及ぶ可能性があります。徹底した市場調査と事業サイクルの短縮によりリスク低減を図っています。
■(2) 用地仕入と在庫リスク
事業の継続には適正な価格での用地仕入が不可欠ですが、競合や地価変動により計画通りに仕入が進まない可能性があります。また、完成在庫を持たない方針ですが、販売が長期化した場合、価格改定による採算悪化や在庫評価損が発生するリスクがあります。営業情報の共有やネットワーク強化で対応しています。
■(3) 外注先への依存と施工力確保
施工管理を除く工事の大部分を外部業者に委託しているため、建設労働者の不足や高齢化により十分な施工力を確保できない場合、工期の遅延や建築コストの上昇を招く恐れがあります。協力業者の新規開拓や外国人技能実習生の受入などにより、施工体制の安定化に努めています。



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