※本記事は、株式会社学情 の有価証券報告書(第48期、自 2024年11月1日 至 2025年10月31日、2026年1月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 学情ってどんな会社?
就職情報事業を専業とし、20代・第二新卒向けの「Re就活」や新卒向け「あさがくナビ」等を展開する企業です。
■(1) 会社概要
1977年に実鷹企画として設立され、1981年に就職情報事業へ進出しました。2000年に現社名の学情へ商号変更し、2004年には20代専門の転職サイト「Re就活」を開始しました。2006年に東証一部へ上場し、2013年には朝日新聞社・朝日学生新聞社と資本業務提携を行っています。
単体従業員数は392名です。筆頭株主は創業者一族の資産管理会社であるアンビシャスで、第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 株式会社アンビシャス | 16.80% |
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 7.58% |
| 株式会社日本カストディ銀行(信託口) | 6.04% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性3名の計10名で構成され、女性役員比率は30.0%です。代表取締役社長は中井大志氏です。社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 中井 清和 | 取締役会長(代表取締役)全般 | 1976年同社創業。1977年同社設立、代表取締役社長を経て、2022年より現職。 |
| 中井 大志 | 取締役社長(代表取締役)全般 | 2001年同社入社。東京企画営業本部副本部長、取締役副社長等を経て、2022年より現職。 |
| 乾 真一朗 | 取締役コーポレート本部・メディアビジネス本部担当 | 1996年同社入社。企画部マネージャー、執行役員等を経て、2023年より現職。 |
社外取締役は、辻内章(元監査法人トーマツパートナー)、笹川祐子(イマジンネクスト代表取締役社長)、宮田喜好(朝日新聞社取締役)、和田裕美(HIROWA代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「就職情報事業」および「その他」事業を展開しています。
**(1) 就職情報事業**
20代向け転職サイト「Re就活」、ダイレクトリクルーティングサービス「Re就活ダイレクトリクルーティング」、新卒向け就職サイト「Re就活キャンパス(旧あさがくナビ)」、合同企業セミナー「就職博」「転職博」などを運営しています。企業と求職者のマッチングを支援するサービス群です。
収益は、求人企業から受け取る広告掲載料、イベント出展料、人材紹介の成功報酬などから構成されています。また、大学等への就職支援や採用アウトソーシングも手掛けています。運営は主に学情が行っています。
**(2) その他**
報告セグメントに含まれない事業として、官公庁や地方公共団体から受託する雇用対策事業などを展開しています。
収益は、官公庁や自治体などの発注元から受け取る業務受託費となります。運営は主に学情が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は着実な成長を続けており、直近5期間で拡大傾向にあります。利益面では、積極的な成長投資を行っている影響等により、経常利益率は30%台から20%台へと推移していますが、依然として高い収益性を維持しています。
| 項目 | 2021年10月期 | 2022年10月期 | 2023年10月期 | 2024年10月期 | 2025年10月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 62億円 | 68億円 | 88億円 | 107億円 | 110億円 |
| 経常利益 | 20億円 | 20億円 | 26億円 | 31億円 | 27億円 |
| 利益率(%) | 32.4% | 30.1% | 29.2% | 28.5% | 24.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 14億円 | 14億円 | 18億円 | 22億円 | 19億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加しましたが、売上原価および販売費及び一般管理費の増加により、営業利益は減少しました。売上総利益率は高い水準を維持しているものの、成長投資に伴うコスト増が利益を圧迫しています。
| 項目 | 2024年10月期 | 2025年10月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 107億円 | 110億円 |
| 売上総利益 | 71億円 | 72億円 |
| 売上総利益率(%) | 66.4% | 65.2% |
| 営業利益 | 27億円 | 23億円 |
| 営業利益率(%) | 24.8% | 21.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が15億円(構成比31%)、販売促進費が9億円(同18%)を占めています。また、売上原価においては、放送・掲載費が14億円(売上原価に対し36%)を占めています。
■(3) セグメント収益
中途採用商品は「Re就活」が好調で大幅な増収となりましたが、新卒採用関連は採用早期化の影響等により軟調でした。その他事業は減少しました。
| 区分 | 売上(2024年10月期) | 売上(2025年10月期) |
|---|---|---|
| 新卒採用集合品 | 53億円 | 52億円 |
| 新卒採用個別品 | 18億円 | 15億円 |
| 中途採用商品 | 34億円 | 41億円 |
| その他 | 3億円 | 2億円 |
| 連結(合計) | 107億円 | 110億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
学情は、営業活動により資金を創出し、投資活動で事業拡大を図り、財務活動で株主還元を行うことで、事業基盤の強化と持続的な成長を目指しています。
営業活動では、主に事業活動から得られた利益により資金が増加しました。投資活動では、有価証券の売却収入や取得、無形固定資産の取得などにより資金が増加しました。財務活動では、配当金の支払いと自己株式の取得により資金が減少しました。
| 項目 | 2024年10月期 | 2025年10月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 16億円 | 19億円 |
| 投資CF | 2億円 | 4億円 |
| 財務CF | -13億円 | -15億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「つくるのは、未来の選択肢」をパーパスに掲げています。就職活動における「キャリアスタート」、転職による「キャリアチェンジ」、そして「キャリアアップ」といった活動を通じ、これからの時代を担う世代に一つでも多くの選択肢を示すことで、働き手の自己効力感や幸福感の向上を目指しています。
■(2) 企業文化
創業以来、「お客様の「困った」をどうビジネスで解決するか。」の精神を重視しています。日本初の合同企業セミナー「就職博」を開催するなど、固定概念にとらわれない新たなサービスの展開を追求し、次世代の活躍をサポートすることを通じて、企業の成長と日本経済の活力向上に貢献するという価値観を持っています。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画(2024年10月期~2026年10月期)において、企業価値の向上を目指しています。特にキャリア採用(経験者採用)市場での成長強化を重点施策とし、以下の目標を掲げています。
* キャリア採用領域で年率30%の売上成長
* 2026年10月期に従業員500人体制
■(4) 成長戦略と重点施策
キャリア採用領域の基幹サービス「Re就活」の成長強化とともに、新たなサービス展開を推進しています。積極的な広告宣伝投資によるブランド力向上や、営業プロセスの分業化・専門性の進化による生産性向上を図っています。
* 専門人材の採用を含めた人員拡大とデジタル活用による生産性向上
* 「Re就活」ブランドを活かした業界・職種特化型サービスの開発強化
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人的資本を企業成長の根幹と位置付け、従業員が能力と個性を最大限発揮し自律的にキャリア形成できる環境整備に注力しています。「企業の成長」と「個人の成長」の両立を目指し、主体的に考え行動できる自律型人材の育成を推進しており、階層別・職種別の多様な研修プログラムや、成果に応じた評価制度を導入しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年10月期 | 30.8歳 | 6.6年 | 5,915,259円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 10.2% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 63.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 61.4% |
| 男女賃金差異(非正規) | 86.2% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理職に占める経験者採用の比率(20.03%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 景気の変動と雇用情勢
事業は景気動向による雇用情勢の影響を受けやすく、想定を超える景気後退や経済環境の変化が発生した際は、企業の採用予算縮小などにより業績に影響を与える可能性があります。構造的な人手不足により影響は減少傾向にありますが、世界的な金融危機などの大きな変化には注意が必要です。
■(2) 個人情報の保護
求職者の個人情報を多数取り扱う事業の特性上、個人情報の漏洩や不適切な利用などのトラブルは、社会的信用の失墜やブランドイメージの悪化を招き、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。プライバシーマークの取得やセキュリティ対策など管理体制の強化に努めています。
■(3) パンデミックの影響
対面形式のイベント(就職博・転職博など)を開催しているため、感染症の流行等により行動制限措置が取られた場合、開催中止や制約を受けるリスクがあります。Webメディアの強化やオンラインイベントなどサービスの多角化を進めていますが、パンデミック発生時は業績に影響が出る可能性があります。
■(4) システム障害
Webメディア関連サービスを提供しているため、自然災害や外部攻撃等によるシステム障害が発生した場合、サービス提供が一時中断されるリスクがあります。バックアップ体制の整備やセキュリティ強化を行っていますが、回避困難な障害が発生した場合は業績に影響をもたらす可能性があります。



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