※本記事は、株式会社ナレルグループ の有価証券報告書(第7期、自 2024年11月1日 至 2025年10月31日、2026年1月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. ナレルグループってどんな会社?
建設およびIT業界向けに技術者派遣を行う持株会社です。未経験者をプロ人材に育成する仕組みに強みを持ちます。
■(1) 会社概要
同グループの中核であるワールドコーポレーションは、2008年に建設業向け技術者派遣を目的に設立されました。2019年に持株会社体制へ移行し、2020年にはIT派遣を行うATJCを子会社化して事業領域を拡大しました。その後、職人紹介事業を行う全国建設人材協会をグループに迎え入れ、2023年7月に東京証券取引所グロース市場へ上場を果たしました。
2025年10月31日時点で、連結従業員数は4,283名、提出会社単体では36名です。筆頭株主は創業者である小林良氏の資産管理会社である村松屋商店で、第2位には投資事業有限責任組合アドバンテッジパートナーズV号が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 村松屋商店 | 33.75% |
| 投資事業有限責任組合アドバンテッジパートナーズV号 | 12.00% |
| AP CAYMAN PARTNERS Ⅲ,L.P.(常任代理人 大和証券) | 4.10% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性2名の計7名で構成され、女性役員比率は28.6%です。代表取締役は小林 良氏です。社外取締役比率は57.1%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 小林 良 | 代表取締役 | タケフジ、東京アソシエイツを経て2008年ワールドコーポレーション設立、代表取締役就任。2019年より同社代表取締役。 |
| 柴田 直樹 | 専務取締役 | 夢真ホールディングス、光通信を経て2011年ワールドコーポレーション入社。コントラフト代表取締役等を歴任し、2022年より現職。 |
| 後藤 洋平 | 取締役 | 日興シティグループ証券、三菱商事、野村キャピタル・パートナーズ等を経て2024年同社入社。2025年1月より現職。 |
社外取締役は、羽鳥 良彰(公認会計士・羽鳥良彰公認会計士事務所所長)、島田 圭子(コーン・フェリー・ジャパン シニア・クライアント・パートナー)、西村 隆志(アドバンテッジパートナーズ パートナー)、爲近 幸恵(TXL法律事務所 パートナー弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「建設ソリューション」および「ITソリューション」事業を展開しています。
■(1) 建設ソリューション事業
建設・プラント業界向けに、施工管理技術者やCADオペレーター等の技術者派遣を行うほか、施工図作成の請負業務を提供しています。また、建設技能職(職人)を対象とした職業紹介事業も展開しています。主な顧客は、建築、土木、空調衛生、電気設備工事を行う建設会社やプラントエンジニアリング会社です。
収益は、顧客企業から受け取る技術者の派遣料金や紹介手数料等から構成されています。技術者派遣の運営は主にワールドコーポレーションが行い、職人紹介事業は求人サイト「ジョブケンワーク」を運営するコントラフトと、有料職業紹介の認定団体である全国建設人材協会が連携してサービスを提供しています。
■(2) ITソリューション事業
SIer(システムインテグレーター)等の開発案件やインフラ管理業務に対して、IT技術者の派遣やSES(システムエンジニアリングサービス)契約による受託開発を行っています。主なエンドユーザーには情報通信事業者や金融機関などが含まれます。
収益は、顧客企業に対する技術役務の提供対価として得ています。この事業の運営は、株式会社ATJCが行っており、未経験者採用を中心とした人材供給体制を構築しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年10月期から2025年10月期までの業績を見ると、売上収益は順調に拡大を続けており、この5年間で約2倍の規模に成長しています。一方、利益面では、2024年10月期までは増益基調でしたが、直近の2025年10月期は減益となりました。これは将来の成長に向けた採用費等の投資を積極的に行ったことによるものです。
| 項目 | 2021年10月期 | 2022年10月期 | 2023年10月期 | 2024年10月期 | 2025年10月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 121億円 | 145億円 | 180億円 | 216億円 | 242億円 |
| 税引前利益 | 16億円 | 19億円 | 25億円 | 31億円 | 28億円 |
| 利益率(%) | 13.2% | 12.7% | 13.8% | 14.2% | 11.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 10億円 | 12億円 | 17億円 | 22億円 | 21億円 |
■(2) 損益計算書
売上収益は前期比で増加し、事業規模の拡大が続いています。売上総利益も増加していますが、営業利益は減少しました。これは、事業拡大に伴う販管費の増加率が売上総利益の増加率を上回ったためであり、成長投資を優先した結果と言えます。
| 項目 | 2024年10月期 | 2025年10月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 216億円 | 242億円 |
| 売上総利益 | 59億円 | 62億円 |
| 売上総利益率(%) | 27.5% | 25.8% |
| 営業利益 | 31億円 | 28億円 |
| 営業利益率(%) | 14.4% | 11.7% |
販売費及び一般管理費のうち、人件費が20億円(構成比60%)、支払手数料及び支払報酬料が5億円(同14%)を占めています。事業拡大に伴う管理部門の人件費増加等が影響しています。
■(3) セグメント収益
建設ソリューション事業は、在籍技術者数と稼働人数が増加し、契約単価も上昇したことで増収となりましたが、積極的な採用投資により減益となりました。ITソリューション事業も同様に、稼働人数の増加と単価上昇により増収を達成しましたが、セグメント利益は減少しました。
| 区分 | 売上(2024年10月期) | 売上(2025年10月期) | 利益(2024年10月期) | 利益(2025年10月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 建設ソリューション | 193億円 | 216億円 | 26億円 | 22億円 | 10.4% |
| ITソリューション | 23億円 | 25億円 | 1.5億円 | 1.4億円 | 5.4% |
| 調整額 | -0.3億円 | -0.2億円 | 3.6億円 | 4.4億円 | - |
| 連結(合計) | 216億円 | 242億円 | 31億円 | 28億円 | 11.7% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は58.9%で市場平均を上回っています。
| 項目 | 2024年10月期 | 2025年10月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 23億円 | 23億円 |
| 投資CF | -0.1億円 | -2.0億円 |
| 財務CF | -19億円 | -19億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同グループは、「深刻化するプロ人材の枯渇を解決し、日本を「課題解決先進国」にする。」をミッションとして掲げています。少子高齢化によるプロ人材不足やDXの遅れといった社会課題に対し、人材供給と業務効率化支援を通じて解決を図り、国や産業の発展に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、「人材育成」を重視する組織文化を持っています。専門技術のインプットだけでなく、個人の成長段階やタイミングに合わせた感情的なフォローも重要視しています。血の通った育成文化と技術を基盤に、専門知識とビジネススタンスを備えた人材を安定供給する体制を構築しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は「Change & Growth 2030」と題した中期経営計画を策定し、2030年10月期に向けた目標を掲げています。「人材とテクノロジーの両輪で建設業界の未来を支える」を方針とし、以下の数値目標を設定しています。
* グループ連結売上収益:500億円
* 営業利益:50億円
* 営業利益率:10.0%
* ROE:20%以上
* 技術者在籍人数:8,000人
■(4) 成長戦略と重点施策
コア事業の競争力向上、建設DXの推進、職人紹介事業の拡大、デジタル活用による生産性向上を4つの成長戦略として掲げています。採用手法の多様化やブランド強化、育成・定着支援の拡充に取り組むほか、建設DX企業との協業やBPO事業の立ち上げも推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
未経験者を中心とした採用を行い、独自の若手人材育成メソッドを通じてプロ人材へと成長させる方針をとっています。入社年次に応じた階層別研修や資格取得支援を行い、技術者の継続的な成長とキャリア形成を支援する「ゼロプロ成長サイクル」を推進しています。また、退職率低減に向けたフォロー体制の強化にも注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年10月期 | 39.3歳 | 3.1年 | 8,395,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | - |
| 男性育児休業取得率 | 34.8% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 77.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 80.6% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 64.0% |
※上記数値は、提出会社及び連結子会社の一部項目については公表義務の対象ではないため、連結子会社(株式会社ワールドコーポレーション)の実績を記載しています。女性管理職比率については記載が省略されています。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、人事評価における最高評価の男女割合差(△1.5%)、男女の平均勤続年数の差異(6ヶ月)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 建設業界の景気動向
同社グループの業績は国内の建設投資動向の影響を受けます。経済情勢の悪化により公共・民間工事が減少した場合、派遣契約の中途解約や条件悪化が生じる可能性があります。多くの正社員を抱えているため、待機技術者の人件費負担が重くなり、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 技術者人材の確保
技術者の採用は成長における重要課題です。国内の労働人口減少が進む中、技術者の需給は逼迫しており、採用競争が激化しています。需要に見合う人材を確保できない場合や採用コストが増加した場合、事業規模の拡大が計画通りに進まず、経営成績に影響を与える可能性があります。
■(3) 労務管理
約4,000人の派遣技術社員が在籍しており、労務管理に関する規制強化への対応が求められています。万一、不適切な労務管理による法令違反や労働争議が発生した場合、社会的信用の失墜や事業運営への支障が生じる可能性があります。また、派遣先での労災事故リスクも内在しています。
■(4) のれんの減損
同社グループは、主にワールドコーポレーションの株式取得により生じた多額ののれん(総資産の57.3%)を計上しています。のれんの償却は行っていませんが、対象事業の収益力が低下した場合には減損損失を計上する可能性があり、経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。



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