シャノン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

シャノン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

シャノンは東京証券取引所(グロース)に上場し、マーケティングクラウド事業およびイベントクラウド事業を展開する企業です。直近の業績では、主力のサブスクリプション売上が堅調に推移したことに加え、徹底したコスト管理や運用効率の向上により営業費用が減少し、営業利益および経常利益が黒字転換を果たしています。


記事タイトル:「シャノン転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態」

※本記事は、株式会社シャノンの有価証券報告書(第25期、自 2024年11月1日 至 2025年12月31日、2026年3月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. シャノンってどんな会社?


マーケティングの自動化や効率化を支援するクラウドサービスとイベント運営支援を展開しています。

(1) 会社概要


2000年に有限会社シャノンとして設立され、2002年に組織変更しました。2011年に統合型マーケティング支援サービスを開始し、2017年に東京証券取引所マザーズへ上場しています。2020年にバーチャルイベント専用の子会社としてジクウを設立し、2025年にInnovation X Solutionsを完全子会社化しました。

従業員数は連結で195名、単体で187名です。筆頭株主は親会社であるイノベーションで、第2位は創業者の前代表取締役社長である中村健一郎氏、第3位は永島毅一郎氏となっています。

氏名 持株比率
イノベーション 56.71%
中村 健一郎 5.88%
永島 毅一郎 4.69%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性0名の計5名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役CEOは山﨑浩史氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
山﨑 浩史 代表取締役CEO クラレ、ザッパラス専務、バロックジャパンリミテッド専務等を経てイノベーション入社。同社取締役会長を務め、2025年4月より現職。
大江 翔 取締役COO パシフィックマネジメント、アクセンチュア等を経て2025年2月に同社へ入社し経営企画室長を務める。2026年1月より現職。
笹岡 大志 取締役(監査等委員) ランドスター、日立コンサルティング、すかいらーく等を経て2024年にイノベーション入社し執行役員を務める。2025年4月より現職。


社外取締役は、松原由高(元アライドテレシス社長)、岡田英明(現ピットデザイン社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「マーケティングクラウド事業」および「イベントクラウド事業」を展開しています。

(1) マーケティングクラウド事業


同社グループの中核を担う事業であり、主にBtoB企業を対象に統合型マーケティング支援サービスを提供しています。マーケティング業務の自動化や効率化を支援するプラットフォームや、Webサイト構築を行うコンテンツマネジメントシステム、メタバースイベントプラットフォームの開発および販売を展開しています。

収益は、クラウドサービスの年間利用契約に基づくサブスクリプション売上と、初期導入やコンサルティング等によるプロフェッショナル売上から構成されています。事業の運営は、同社に加え、連結子会社のInnovation X Solutionsやジクウなどが担っています。

(2) イベントクラウド事業


大規模な展示会や企業が主催するプライベートショーにおいて、申込受付管理や来場者認証などを効率的に実現するクラウドサービスを提供しています。また、電子タブレットを用いたアンケートやイベント用モバイルアプリなど、各種デジタルデバイスを活用した開催および運営支援サービスを展開しています。

収益源は、イベントごとのシステム提供やコンサルティングに伴うサービス売上と、会期当日の機材レンタルや事務局運営支援などのアウトソーシング売上が主となっています。本事業は同社が主体となって運営を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の売上高は右肩上がりで推移しており、着実な成長を続けています。利益面では過去数期間にわたり経常損失を計上していましたが、当期は販売費及び一般管理費等の抑制により経常利益が黒字転換を果たしました。

項目 2021年10月期 2022年10月期 2023年10月期 2024年10月期 2025年12月期
売上高 22億円 25億円 29億円 32億円 32億円
経常利益 0.5億円 -3億円 -3億円 -0.5億円 0.6億円
利益率(%) 2.4% -13.2% -9.3% -1.7% 2.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 1億円 -4億円 -5億円 -2億円 -0.3億円

(2) 損益計算書


売上高は前期と同水準を維持する一方で、売上原価の減少により売上総利益が改善しています。さらに、コスト管理の徹底が奏功して営業費用が抑えられ、営業利益は黒字へと大きく改善する結果となりました。

項目 2024年10月期 2025年12月期
売上高 32億円 32億円
売上総利益 19億円 21億円
売上総利益率(%) 60.2% 66.0%
営業利益 -0.5億円 1億円
営業利益率(%) -1.6% 3.8%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が9億円(構成比47%)を占めています。また、当期総製造費用のうち、経費が9億円(同70%)、労務費が4億円(同30%)を占めています。

(3) セグメント収益


マーケティングクラウド事業は、一部事業の譲渡や大型案件収束の影響により前期比で減収となりましたが、ストック型売上は堅調に推移しました。イベントクラウド事業は、リアルイベントの開催回帰に伴い大型案件が増加し、増収増益を達成しています。

区分 売上(2024年10月期) 売上(2025年12月期) 利益(2024年10月期) 利益(2025年12月期) 利益率
マーケティングクラウド事業 27億円 26億円 2億円 4億円 16.9%
イベントクラウド事業 5億円 6億円 0.4億円 1億円 16.0%
調整額 - - -3億円 -4億円 -
連結(合計) 32億円 32億円 -0.5億円 1億円 3.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

シャノンは、事業運営に必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、事業活動から生み出される資金の状況を示しています。投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資や有価証券の取得・売却等による資金の増減を表しています。財務活動によるキャッシュ・フローは、借入や返済、配当金の支払い等による資金の変動を示しています。

項目 2024年10月期 2025年12月期
営業CF 2億円 6億円
投資CF -2億円 -0.6億円
財務CF 3億円 -3億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「マーケティングの再現性で世界を変える」というミッションと、「日本を代表するマーケティングクラウドになる」というビジョンを掲げています。マーケティングの再現性を社会に普及させることで企業の顧客創造を容易にし、次世代に誇れる豊かな世界の実現を目指して事業を運営しています。

(2) 企業文化


ミッションとビジョンの実現に向け、「お客様の立場に立つ」「個人と会社の成長」「チームファースト」「創造思考」「サイエンス」という5つのバリュー(行動指針)を定めています。これらを行動指針とすることで、社員一人ひとりがプロフェッショナルとして考え行動する組織文化の構築に努めています。

(3) 経営計画・目標


国産マーケティングオートメーション市場におけるシェアNo.1の奪還を最優先事項として掲げています。ターゲット市場の再定義と拡大を通じて保有アカウント数の最大化を図ることで、ストック型ビジネスの基盤となるサブスクリプション売上の継続的な成長および営業利益率の向上を重点目標として設定しています。

(4) 成長戦略と重点施策


導入ハードルを下げた低価格プランの展開や、ユーザーインターフェースの改善によりターゲット層を拡大します。また、最新の外部AI技術をスピーディーに取り込み、製品競争力を強化します。当面は利益の最大化を最優先とし、コスト管理の徹底やテクノロジー活用による業務効率化を推進することで高収益体質への転換を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


市場成長率が高い領域で事業を展開しているため、経験者採用に加えて未経験者の内部育成を重視しています。階層別研修や職種ごとの役割定義を整備し、社員の専門性向上を支援しています。また、目標管理制度や定期的な1on1、エンゲージメント調査を導入し、働きがいがあり仕事を続けやすい環境の構築を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 36.9歳 6.4年 5,860,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 18.2%
男性育児休業取得率 200.0%
男女賃金差異(全労働者) 81.3%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 77.9%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 74.7%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場環境および競争の激化


国内マーケティングオートメーション市場は成長が鈍化しており、他社サービスからのリプレイス需要の取り込みが不可欠です。競合他社による価格競争や大規模なプロモーションが展開された場合、想定したシェアの獲得が進まず、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 技術革新およびAI実装の遅れ


生成AIなどの最新テクノロジーの製品実装を重点課題としていますが、技術革新のスピードが予想を上回る場合や、実装したAI機能が顧客ニーズに適合しない場合、プロダクトの競争力が低下する恐れがあります。また、AI利用に関する新たな法的規制が発生した場合も事業に影響を与える可能性があります。

(3) システム障害および外部インフラへの依存


同社のサービスは外部のクラウドコンピューティングサービスを基盤として運営されています。冗長性の確保やセキュリティ対策を実施していますが、大規模なシステム障害やサイバー攻撃、予期せぬ事象によるシステムダウンが発生した場合、サービスの提供に支障をきたす可能性があります。

(4) 為替変動によるコスト増大


同社グループは、外部クラウドサーバーなどの海外事業者が提供するサービス利用料の一部を外貨建てで支払っています。そのため、想定以上に為替相場が円安に推移した場合、運営コストが増大し、同社グループの財政状態および経営成績に影響を及ぼすリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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