テレビ朝日ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

テレビ朝日ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場。テレビ放送事業を中核に、インターネット、ショッピング、その他事業を展開。直近の業績は、スポット広告収入の回復やイベント事業の好調により、売上高は3,241億円(前期比5.2%増)、経常利益は285億円(同43.2%増)と増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社テレビ朝日ホールディングス の有価証券報告書(第85期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. テレビ朝日ホールディングスってどんな会社?


テレビ放送事業を中核に、ABEMA等のインターネット事業やショッピング、イベント事業を展開する認定放送持株会社です。

(1) 会社概要


同社は1957年に日本教育テレビとして創立し、1959年に放送を開始しました。2000年に東証一部へ上場し、2014年には認定放送持株会社体制へ移行して現社名に変更しました。近年はインターネット事業を強化し、KDDIとの提携や「ABEMA」の展開など、放送外収入の拡大を推進しています。

連結従業員数は5,526名、単体では76名です。筆頭株主はその他の関係会社である新聞社、第2位は持分法適用関連会社かつその他の関係会社である映画会社、第3位は信託銀行です。メディア・コンテンツ企業との資本関係が強く、安定的な株主構成となっています。

氏名 持株比率
朝日新聞社 24.72%
東映 17.51%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.12%

(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性2名の計15名で構成され、女性役員比率は13.3%です。代表取締役会長は早河洋氏、社外取締役比率は46.7%です。

氏名 役職 主な経歴
早河 洋 代表取締役会長 1967年入社。編成・制作等の要職を経て2009年社長、2014年会長兼CEO。2022年より現職。テレビ朝日会長を兼務。
篠塚 浩 代表取締役社長 1986年入社。報道局長、取締役、常務を経て2022年より現職。テレビ朝日社長を兼務。人事局、SDGs推進室を担当。
武田 徹 取締役 1974年入社。人事局長、専務等を経て2019年より現職。テレビ朝日取締役副会長を兼務。ネットワーク戦略室等を担当。
角南 源五 取締役 1979年入社。テレビ朝日社長、BS朝日社長等を経て2022年より現職。テレビ朝日取締役副社長を兼務。経営戦略局等を担当。
板橋 順二 取締役 1987年入社。総務局長等を経て2022年より現職。テレビ朝日常務を兼務。メディアシティ戦略を担当。
堀江 隆 取締役 1987年朝日新聞社入社。同社常務を経て2023年より現職。テレビ朝日常務を兼務。広報を担当。
西 新 取締役 1989年宣弘社入社、1997年同社入社。コンテンツ編成局長等を経て2022年より現職。テレビ朝日常務を兼務。


社外取締役は、多田憲之(東映会長)、田中早苗(弁護士)、中村史郎(朝日新聞社社長)、池田克彦(元警視総監)、弦間明(元資生堂社長)、藤重貞慶(元ライオン社長)、宮田桂子(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「テレビ放送事業」「インターネット事業」「ショッピング事業」および「その他事業」を展開しています。

(1) テレビ放送事業


地上波放送局のテレビ朝日、BS放送のBS朝日、CS放送のシーエス・ワンテン等が、テレビ番組の制作および放送を行っています。視聴者に多様なコンテンツを提供し、広告媒体としての価値を創出しています。

収益は主に、番組提供スポンサーからのタイム収入や、番組間のCM枠販売によるスポット収入等の広告料収入です。運営は主に株式会社テレビ朝日、株式会社BS朝日等の連結子会社が行っています。

(2) インターネット事業


インターネットを利用した広告付動画配信や、動画配信コンテンツの制作、権利許諾等を行っています。「ABEMA」「TELASA」「TVer」などのプラットフォームを通じてコンテンツを展開しています。

収益は、動画配信に伴う広告収入や課金収入、コンテンツ販売収入等です。運営は主に株式会社テレビ朝日、株式会社テレビ朝日メディアプレックス等の連結子会社が行っています。

(3) ショッピング事業


テレビ通販番組やECサイトにおいて、商品を販売する通信販売事業を行っています。「じゅん散歩」などの番組連動販売や、独自商品の開発・販売を手掛けています。

収益は、一般顧客への商品販売代金です。運営は主に株式会社ロッピングライフ、株式会社イッティ等の連結子会社が行っています。

(4) その他事業


音楽著作権の管理・開発、イベントの企画・運営、放送機器の販売・リース、映画への出資など、放送以外の多角的なエンターテインメント事業を行っています。

収益は、音楽出版収入、イベント入場料、機器レンタル料、映画配分金などです。運営は主に株式会社テレビ朝日、株式会社テレビ朝日ミュージック、株式会社テレビ朝日サービス等の連結子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は緩やかな右肩上がりで推移しており、3,000億円台で安定しています。利益面では、経常利益が200億円台前後で推移していましたが、当期は大幅な増益となり、利益率も向上しました。当期純利益も前期比で大きく増加し、過去5期間で最高水準となっています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 2,646億円 2,983億円 3,046億円 3,079億円 3,241億円
経常利益 180億円 264億円 232億円 199億円 285億円
利益率(%) 6.8% 8.9% 7.6% 6.5% 8.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 71億円 83億円 37億円 55億円 131億円

(2) 損益計算書


売上高は増加し、売上総利益率も改善傾向にあります。特に営業利益率が大きく向上しており、コストコントロールと高収益事業の成長が寄与していることが伺えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 3,079億円 3,241億円
売上総利益 767億円 868億円
売上総利益率(%) 24.9% 26.8%
営業利益 123億円 197億円
営業利益率(%) 4.0% 6.1%


販売費及び一般管理費のうち、代理店手数料が377億円(構成比56%)、人件費が159億円(同24%)を占めています。

(3) セグメント収益


テレビ放送事業はスポット収入の回復等により増収増益となりました。インターネット事業は広告付動画配信等が好調で大幅な増益を達成しました。その他事業もイベント事業の回復等により増収増益となり、全体として全セグメントで黒字を確保しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
テレビ放送事業 2,265億円 2,334億円 60億円 113億円 4.8%
インターネット事業 263億円 297億円 23億円 37億円 12.5%
ショッピング事業 200億円 202億円 14億円 15億円 7.4%
その他事業 351億円 408億円 28億円 32億円 7.9%
調整額 - - -1億円 -0億円 -
連結(合計) 3,079億円 3,241億円 123億円 197億円 6.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはプラス、投資CFはマイナス、財務CFはマイナスとなっており、本業で稼いだ資金で投資を行い、借入返済や配当支払いも実施している健全型と言えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 191億円 265億円
投資CF -217億円 -325億円
財務CF -58億円 -71億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は79.6%で市場平均を大きく上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは放送の公共性・公益性を常に自覚し、展開する事業を通じて魅力的かつ社会から求められる情報やコンテンツを提供し、夢や希望を持ち続けられる社会の実現に貢献することを経営の基本方針としています。

(2) 企業文化


「テレビ朝日グループの価値の源泉は“コンテンツ”にある」という基本理念を掲げています。視聴者やアドバタイザー等の要請に応える多様なコンテンツを制作し、グループのあらゆるメディアで展開するなど、コンテンツパワーを活かした事業活動を重視する文化があります。

(3) 経営計画・目標


「新しい時代のテレビ局」へ進化するため、2023年度より経営計画「BREAKOUT STATION!新しい時代のテレビ朝日 経営計画2023-2025」を推進しています。2025年度の数値目標として以下を掲げています。

* 連結売上高3,300億円
* 営業利益200億円
* 経常利益250億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益200億円

(4) 成長戦略と重点施策


収益の最大化を目指す「360°戦略」を推進しています。地上波では最強コンテンツの編成による視聴率3冠を目指し、インターネット領域ではABEMAやTELASA等での展開拡大を図ります。また、東京ドリームパーク等の拠点開発によるメディアシティ戦略や、アニメ・ゲーム等の新領域開拓にも注力し、IPビジネスの開発に努めています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


多様化する社会ニーズに応えるため、「ダイバーシティの確保」「人材育成」「エンゲージメントの向上」を3本柱として推進しています。多様な人材の確保と計画的な登用、個々の能力を最大化する育成・配置、そして心身ともに健康で働きがいのある職場づくりを通じて、コンテンツ価値の最大化を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.3歳 19.1年 13,726,000円


※従業員は全て株式会社テレビ朝日からの出向者であるため、上記は同社の数値を記載しています。平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 17.5%
男性育児休業取得率 84.6%
男女賃金差異(全労働者) 85.5%
男女賃金差異(正規雇用) 85.7%
男女賃金差異(非正規雇用) 81.1%


※数値は主要な連結子会社である株式会社テレビ朝日のものです。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員比率(24.7%)、一般社員の他社就業経験者比率(15.8%)、夏期休暇取得率(96.8%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業環境および経営管理体制に関するリスク


テレビ放送事業収入は企業の広告宣伝費に依存しており、景気後退や消費低迷の影響を受けやすい特性があります。また、スマートフォンの普及や動画配信の台頭による視聴形態の多様化、インターネット広告との競争激化など、事業環境の急速な変化が収益に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 設備・投融資に関するリスク


技術水準の維持や競争力強化のため、コンテンツ制作力の増強やメディア戦略の強化に向けた設備投資・投融資を継続しています。しかし、これらの投資が期待されるリターンをもたらす保証はなく、想定を下回る場合には財政状態や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 個人情報の取り扱いに関するリスク


番組出演者や視聴者、インターネット事業の会員などに関する多数の個人情報を保有しています。セキュリティ対策や教育を行っていますが、不正アクセス等により情報流出が発生した場合、社会的信用の低下や業務停滞を招き、経営成績に影響を与える可能性があります。

(4) 自然災害等によるリスク


大規模災害の発生時には、放送継続が困難になる場合やCMなしの報道特別番組への変更等が生じることがあります。また、設備への被害や社員の被災により通常の事業運営に支障をきたす可能性があり、経営成績に影響を及ぼすリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。