※本記事は、株式会社テレビ朝日ホールディングスの有価証券報告書(第86期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. テレビ朝日ホールディングスってどんな会社?
同社グループはテレビ放送事業を中核に、動画配信などのインターネット事業やショッピング事業など多様なメディア事業を展開しています。
■(1) 会社概要
1957年に日本教育テレビとして創立され、1959年に開局しました。1977年に全国朝日放送(略称テレビ朝日)に社名を変更し、2000年に東京証券取引所市場第一部へ上場を果たしました。2014年には認定放送持株会社体制へ移行して現在の社名となり、あわせてBS朝日を連結子会社化しています。
現在の従業員数は連結で5,622名、単体で84名です。筆頭株主はその他の関係会社である朝日新聞社で、第2位は持分法適用の関連会社である東映、第3位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 朝日新聞社 | 20.21% |
| 東映 | 17.70% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 5.94% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性3名の計14名で構成され、女性役員比率は21.4%です。代表取締役会長は早河洋、代表取締役社長は篠塚浩です。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 早河洋 | 代表取締役会長 | 1967年入社。報道局長、編成本部長などを経て2009年代表取締役社長に就任。2014年より代表取締役会長兼CEO。2022年より現職。 |
| 篠塚浩 | 代表取締役社長取締役会議長、インターネット戦略・ネットワーク戦略・サステナビリティ推進担当 | 1986年入社。報道局長などを経て2014年取締役報道局長に就任。常務取締役を経て2022年より現職。 |
| 西新 | 取締役副社長コンテンツ戦略・営業戦略担当 | 1989年宣弘社入社。1997年入社。総合編成局長などを経て2019年取締役に就任。2025年より現職。 |
| 角南源五 | 取締役経営戦略・財務・広報IR担当 | 1979年入社。総務局長などを経て2010年取締役に就任。テレビ朝日代表取締役社長、BS朝日代表取締役社長を経て2022年より現職。 |
| 板橋順二 | 取締役メディアシティ戦略担当 | 1987年入社。総務局長を経て2019年取締役に就任。2022年より現職。 |
| 新堀仁子 | 取締役コンプライアンス統括局長コンプライアンス・人権担当 | 1991年入社。テレビ朝日番組審査室長などを経て2024年テレビ朝日取締役コンプライアンス統括室長に就任。2025年より現職。 |
| 長田明 | 取締役(監査等委員) | 1986年入社。テレビ朝日広報局長を経て2022年同社役員待遇広報局長に就任。2023年より現職。 |
社外取締役は、多田憲之(東映代表取締役会長)、田中早苗(田中早苗法律事務所代表)、角田克(朝日新聞社代表取締役社長)、池田克彦(元警視総監)、樋口美雄(慶應義塾大学名誉教授)、藤重貞慶(元ライオン代表取締役)、芳仲美惠子(畑・芳仲法律事務所パートナー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「テレビ放送事業」「インターネット事業」「ショッピング事業」および「その他事業」を展開しています。
■(1) テレビ放送事業
テレビ番組の制作および放送に係る事業を行っており、広告を出稿する企業や一般の視聴者が顧客です。
収益は番組提供企業からのタイム収入やスポット収入のほか、番組販売収入などから得ています。運営は主にテレビ朝日やBS朝日、シーエス・ワンテンなどが行っています。
■(2) インターネット事業
インターネットを利用した広告付動画配信や動画配信コンテンツの制作および権利許諾などに係る事業を行っており、広告主やインターネットユーザーが顧客です。
収益は、動画配信時の広告収入やコンテンツの販売、動画配信プラットフォームでの利用料などから得ています。運営は主にテレビ朝日やテレビ朝日メディアプレックス、シンエイ動画などが行っています。
■(3) ショッピング事業
テレビ通販番組やECサイトにおける通信販売に係る事業を行っており、一般の消費者が主な顧客です。
収益は、商品の販売による販売代金から得ています。運営は主にロッピングライフなどが行っています。
■(4) その他事業
音楽出版事業、イベント事業、機器販売・リース事業、出資映画事業などを行っており、イベント来場者や映画観客、音楽ファンなどが顧客です。
収益は、イベントや映画のチケット収入、音楽の著作権収入、機器のレンタル収入などから得ています。運営は主にテレビ朝日、テレビ朝日ミュージック、テレビ朝日サービスなどが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は一貫して増加傾向にあり、堅調な成長を続けています。経常利益は一時的に減少した時期もありましたが、直近2期で大きく回復し、収益性の向上が見られます。当期利益は変動がありますが、直近では高水準を維持しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,983億円 | 3,046億円 | 3,079億円 | 3,241億円 | 3,395億円 |
| 経常利益 | 264億円 | 232億円 | 199億円 | 285億円 | 366億円 |
| 利益率(%) | 8.9% | 7.6% | 6.5% | 8.8% | 10.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 83億円 | 37億円 | 55億円 | 131億円 | 70億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い売上総利益と営業利益がともに拡大しています。利益率も改善しており、効率的な事業運営による収益性の向上がうかがえます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 3,241億円 | 3,395億円 |
| 売上総利益 | 907億円 | 1,035億円 |
| 売上総利益率(%) | 28.0% | 30.5% |
| 営業利益 | 197億円 | 262億円 |
| 営業利益率(%) | 6.1% | 7.7% |
販売費及び一般管理費のうち、代理店手数料が410億円(構成比53.0%)、人件費が166億円(同21.5%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力のテレビ放送事業が増収を牽引しています。インターネット事業も大きく伸びており、動画配信の成長が寄与しています。一方、ショッピング事業は減収となりました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| テレビ放送事業 | 2,334億円 | 2,455億円 |
| インターネット事業 | 297億円 | 338億円 |
| ショッピング事業 | 202億円 | 184億円 |
| その他事業 | 408億円 | 418億円 |
| 報告セグメント等合計 | 3,241億円 | 3,395億円 |
| 連結(合計) | 3,241億円 | 3,395億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である健全型のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 265億円 | 249億円 |
| 投資CF | -325億円 | -9億円 |
| 財務CF | -71億円 | -112億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は80.1%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「放送の公共性・公益性を常に自覚し、展開する事業を通じて魅力的かつ社会から求められる情報やコンテンツを提供し、夢や希望を持ち続けられる社会の実現に貢献すること」を経営の基本方針として掲げています。
■(2) 企業文化
すべての従業員がクリエイター&イノベーターとなり、コンテンツの価値最大化を図ることを重視しています。多様化する社会において、異なる価値観を持った多様性に富んだ人材の確保と育成を進め、個々の能力を最大限に発揮できる職場づくりに注力しています。
■(3) 経営計画・目標
2026年度から2029年度までの経営計画「START UP テレ朝!! 経営計画 2026-2029」を策定しています。定量的な経営目標は以下の通りです。
* 2029年度までに連結売上高4,000億円
* 営業利益330億円、経常利益430億円
* ROE(自己資本利益率)7%台の達成
* PBR1倍の達成
■(4) 成長戦略と重点施策
今後の成長実現のために「5つのキーストラテジー」を設定し、IP展開と大型イベントを開発する東京ドリームパークの育成、アニメ制作や配信戦略の強化によるコンテンツ価値の最大化とグローバル展開、全社的なAIの活用などを進めていく方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社はコンテンツ価値を最大化する「360°戦略」を推進するため、多様性に富んだ人材の確保(ダイバーシティの確保)、個人の能力を最大限に活かす自律的なキャリアパスや人材配置(人材育成)、心身の健康を守り働きがいを実感できる職場づくり(エンゲージメントの向上)の3本柱で人材戦略を展開しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 44.5歳 | 19.1年 | 15,002,000円 |
※同社単体の平均年齢・平均勤続年数・平均給与は、有価証券報告書に記載がないため、上記は従業員数が最も多い子会社であるテレビ朝日のデータを掲載しています。平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 17.6% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 84.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 83.6% |
| 男女賃金差異(パート・有期) | 85.9% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員比率(25.8%)、夏期休暇取得率(97.1%)、年平均休暇取得日数(18.3日)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 広告市場の変化と視聴率低迷
テレビの視聴形態の多様化や動画配信プラットフォームの台頭などにより、テレビ広告収入の減少圧力となる可能性があります。また、視聴率の低迷は広告収入の減少に直結し、コンテンツ制作費などのコストが増加する中で収益性が悪化するリスクを抱えています。
■(2) コンプライアンスと内部統制
同社グループの事業はステークホルダーからの信用に依拠しています。情報漏洩やハラスメントなどのコンプライアンス違反、情報システムのセキュリティ上の欠陥など内部統制の不備が発生した場合、企業イメージの毀損や広告出稿の抑制につながる可能性があります。
■(3) 情報管理とサイバーセキュリティ
番組の出演者や観覧者、インターネット事業の会員などの個人情報を多数保有しています。不正アクセスや不正利用などにより情報の外部流出が発生した場合には、データ管理に対する信用性が低下し、事業運営や収益に影響を及ぼす可能性があります。



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