アドバンスクリエイト 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アドバンスクリエイト 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場。国内最大級の保険選びサイト「保険市場」を運営する保険代理店事業を主軸に、ASP、メディア、再保険事業等を展開。直近決算では主力の代理店事業やメディア事業の苦戦等により減収となり、営業損失、経常損失を計上。資本増強により債務超過は解消済みです。(138文字)


※本記事は、株式会社アドバンスクリエイト の有価証券報告書(第30期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アドバンスクリエイトってどんな会社?


保険に関わるあらゆる情報とサービスを提供する「保険市場」を運営し、保険代理店事業等を展開する企業です。

(1) 会社概要


1995年に設立され、2002年にナスダック・ジャパンへ上場しました。2004年に保険ショップ「保険市場」の全国展開を開始し、2008年にはハワイ州にて再保険事業の免許を取得し営業を開始しました。2022年の市場区分見直しに伴い、東京証券取引所プライム市場へ移行しています。

連結従業員数は229名、単体では228名です。筆頭株主はライフネット生命保険(29.07%)、第2位はSBIホールディングス(28.71%)であり、いずれも同社と資本業務提携関係にある事業会社等です。第3位は創業者の資産管理会社である有限会社濱田ホールディングス(6.33%)となっています。

氏名 持株比率
ライフネット生命保険 29.07%
SBIホールディングス 28.71%
有限会社濱田ホールディングス 6.33%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名、計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は濱田佳治氏です。社外取締役比率は36.4%です。

氏名 役職 主な経歴
濱田 佳治 取締役社長(代表取締役) 1995年同社設立、代表取締役社長就任。2004年保険市場取締役、2008年Advance Create Reinsurance Inc.会長などを歴任。2025年1月より現職。
櫛引 健 専務取締役 1984年アリコジャパン入社。2009年同社入社。マーケティング・営業統括本部長、経営管理本部長などを経て、2025年2月より現職。
鳥居 俊文 取締役常務執行役員 1995年セゾン生命保険入社。1997年同社入社。マーケティング本部長、OMO営業本部長などを歴任し、2025年10月より現職。


社外取締役は、桜井洋二(元イーデザイン損害保険社長)、櫻井祐記(元富国生命保険取締役副社長)、島津朝子(島津国際法律事務所代表弁護士)、小坂田成宏(弁護士法人淀屋橋・山上合同パートナー社員弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「保険代理店事業」、「ASP事業」、「メディア事業」、「メディアレップ事業」および「再保険事業」を展開しています。

(1) 保険代理店事業


「保険市場」を統一ブランドとし、Webプロモーションにより収集した顧客ニーズ情報を基盤に、通信販売、対面販売、ネット完結型保険販売など多様なチャネルで保険募集を行っています。

収益は、各保険会社との手数料規程に基づき発生する保険代理店手数料収入やボーナス収入、マーケティングコストの負担収入等です。運営は主にアドバンスクリエイトが行っています。

(2) ASP事業


保険会社・提携代理店・顧客の事務負担軽減を狙い、保険契約までの流れを一括管理できる共通プラットフォームの開発・推進を行っています。

収益は、共通プラットフォームに係るクラウドサービスの提供によるASP収入です。運営はアドバンスクリエイトが行っています。

(3) メディア事業


同社運営の保険選びサイト「保険市場」を、セールスプロモーションに有効な広告媒体として活用する事業です。

収益は、「保険市場」を媒体としたメディア事業による収入であり、外部クライアント等から広告掲載料などを受け取ります。運営は株式会社保険市場が行っています。

(4) メディアレップ事業


「保険市場」の運営で蓄積したWebマーケティングのノウハウをベースに、保険専業の広告代理店として広告業務を提供しています。

収益は、保険会社等の広告運用を受託することによる広告運用収入です。運営は株式会社保険市場が行っています。

(5) 再保険事業


同社が保険代理店として獲得した保険契約をベースに、保険会社各社から再保険として出再いただくスキームを推進し、収益源の多様化を図っています。

収益は、保険会社からの再保険料収入です。運営はAdvance Create Reinsurance Incorporatedが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は減少傾向にあり、直近では66億円となっています。利益面では、経常損失および当期純損失が続いており、直近3期間はいずれも赤字となっています。特に第28期以降は損失幅が拡大傾向にありましたが、直近の第30期では赤字幅が縮小しています。

項目 2021年9月期 2022年9月期 2023年9月期 2024年9月期 2025年9月期
売上高 94億円 95億円 104億円 79億円 66億円
経常利益 8億円 0.5億円 -15億円 -8億円 -9億円
利益率(%) 8.2% 0.5% -14.2% -10.3% -14.0%
当期利益(親会社所有者帰属) -2億円 -14億円 -18億円 -23億円 -15億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で減少し、売上総利益も減少しました。営業損失は前期の7億円から6億円へと縮小しました。売上高の減少に対し、売上原価および販売費及び一般管理費を抑制したことで営業損失幅が改善しています。

項目 2024年9月期 2025年9月期
売上高 79億円 66億円
売上総利益 58億円 52億円
売上総利益率(%) 73.6% 79.0%
営業利益 -7億円 -6億円
営業利益率(%) -9.1% -9.2%


販売費及び一般管理費のうち、報酬給与が18億円(構成比32%)、支払手数料が16億円(同27%)を占めています。売上原価については、保険代理店事業における外注費などが主な構成要素となっています。

(3) セグメント収益


主力の保険代理店事業は減収減益(赤字縮小)となりました。メディア事業およびメディアレップ事業は大幅な減収減益となりましたが、ASP事業は増収増益を確保しました。再保険事業は減収減益となりました。

区分 売上(2024年9月期) 売上(2025年9月期) 利益(2024年9月期) 利益(2025年9月期) 利益率
保険代理店事業 47億円 44億円 -12億円 -9億円 -20.1%
ASP事業 3億円 3億円 1億円 1億円 40.6%
メディア事業 12億円 7億円 3億円 1億円 17.2%
メディアレップ事業 4億円 2億円 -0.3億円 -1億円 -40.1%
再保険事業 11億円 10億円 1億円 1億円 8.2%
連結(合計) 79億円 66億円 -7億円 -6億円 -9.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、債務超過解消のため資金調達を実施し、継続企業の前提に関する状況解消に向けた対応策を進めております。

営業活動によるキャッシュ・フローは、保険選びサイトへの集客が検索エンジンの表示結果に依存することや、過去の売上高訂正等が影響し、マイナスが続いております。投資活動によるキャッシュ・フローについては、有価証券報告書に具体的な記載がありません。財務活動によるキャッシュ・フローは、債務超過解消のための資金調達や、一部取引金融機関との契約に関する対応等が行われております。

項目 2024年9月期 2025年9月期
営業CF -17億円 -39億円
投資CF -1億円 -1億円
財務CF 15億円 84億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「お客様が最適・快適な購買環境で、簡単便利に保険を購入いただく」ことを基本方針としています。また、「人生は有限、可能性は無限!」を企業理念とし、今を懸命に生き抜く人々に保険という手段を提供するとともに、無限の可能性を創造する人材育成を通じて社会貢献を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「保険業界のイノベーター」として進化し続けることを重視しています。また、「人とテクノロジーを深化させ進化する会社」を標榜し、社員一人ひとりを大切にする文化を背景に、高い倫理観と誠実性、謙虚さを持つ人材の育成と、多様性や公平性を尊重する職場環境の構築に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


同社は経営成績の向上を目指し、以下の経営指標を目標として掲げています。
* 自己資本利益率:20%以上
* 売上高経常利益率:20%以上
* 配当性向:50%以上
* 自己資本比率:80%以上

(4) 成長戦略と重点施策


保険募集プロセスのDX化やOMO戦略の高度化、プラットフォーム戦略の推進に注力します。また、財務基盤の安定化と内部統制の強化を図ります。

* 「オンライン面談」を軸としたOMO戦略を、アバター等の活用により高度化。
* 共通プラットフォーム「Advance Create Cloud Platform (ACP)」の機能拡充と外販推進。
* コンプライアンス体制の充実と再発防止策の着実な実行。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人こそ全て」と考え、人材育成と社内環境整備を柱としています。採用では、高い志と倫理観を持つ人材を求め、企業文化を軸とした教育・研修制度を充実させています。また、全社統一の固定給制やノー残業デーの導入など、働きやすい環境づくりと多様性の尊重に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年9月期 37.2歳 7.8年 6,147,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 33.8%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 81.3%
男女賃金差異(正規雇用) 86.5%
男女賃金差異(非正規) 115.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職比率(34.6%)、ペーパーレス化比率(87.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) コンサルティングプラザの展開について


同社は直営のコンサルティングプラザを11拠点展開しています。都市部を中心とした新規出店と生産性を考慮した廃店を進めていますが、状況によっては新規出店が困難になる可能性や、廃店に伴う除却損等が発生するリスクがあります。

(2) 保険会社との関係について


売上高の多くは保険代理店手数料に依存しており、取引保険会社の財政状態悪化や破綻、特定保険会社(メットライフ生命等)への依存による影響を受ける可能性があります。また、手数料収入の計上(PV計算)に関して、保険会社からの情報に基づき自社計算を行っていますが、計算の前提となる情報の変動等が経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 競合について


他の保険代理店や金融機関、通信販売会社等との競合に加え、インターネットを通じた保険募集を行う事業者が多数存在します。同社はWebマーケティングや対面販売の強化等で差別化を図っていますが、新たな事業者の参入や競合状況の変化により、経営成績等が影響を受ける可能性があります。

(4) 重要事象等について


前連結会計年度における過年度決算訂正等により一時債務超過となりましたが、資本増強により解消しました。しかし、連続して営業損失等を計上しており、営業CFもマイナスです。一部の債権流動化契約における財務制限条項への抵触もあり、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる状況が存在しています。これに対し、業績回復や固定費適正化等の対策を講じています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。