モルフォ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

モルフォ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース市場に上場し、スマートフォン向けを中心とした画像処理・画像認識ソフトウェアの研究開発を行っています。第22期(2025年10月期)の連結業績は、売上高34億円(前期比1.7%増)と微増ながら、経常利益は1億円(同75.8%減)と大幅な減益となり、当期純損失を計上しました。


※本記事は、株式会社モルフォ の有価証券報告書(第22期、自 2024年11月1日 至 2025年10月31日、2026年1月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. モルフォってどんな会社?


独自の画像処理技術の研究開発を行い、スマホや車載機器等へソフトウェアをライセンス提供する企業です。

(1) 会社概要


2004年に設立され、2011年に東証マザーズ(現グロース)へ上場しました。2018年にはフィンランドのAI開発企業Top Data Science Ltd.を子会社化し、グローバル展開を加速させています。2024年9月にはソニーセミコンダクタソリューションズと資本業務提携を行うなど、技術力を背景とした提携戦略を推進しています。

連結従業員数は166名、単体では102名です。筆頭株主は創業者で社長の平賀督基氏であり、第2位は業務提携先のミックウェア、第6位には同じく資本業務提携先のデンソーが名を連ねており、事業パートナーとの資本関係が構築されています。

氏名 持株比率
平賀 督基 9.79%
ミックウェア 4.20%
松井証券 4.14%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は平賀督基氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
平賀 督基 代表取締役社長 2004年5月同社設立、代表取締役社長就任。CTO室室長、Morpho US, Inc.社長、技術部門管掌などを経て現職。
曽田 誠 取締役 大和総研、マネックス証券調査部長、デジタルガレージ取締役兼専務執行役員などを経て、2025年1月より現職。
西山 貴之 取締役 住友重機械工業、マン・マシンインターフェースを経て2007年入社。プロダクト開発部部長等を歴任し、2019年1月より現職。


社外取締役は、各務茂夫(東京大学特命教授)、永田淸人(元NTTドコモ取締役)、秋山ゆかり(Leonessa代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ソフトウェア関連事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) ソフトウェア関連事業(ロイヤリティ収入)


国内外の事業者に対し、同社グループのソフトウェア製品を商用目的で利用許諾し、対価を得ています。スマートフォン等の組込み機器市場が主要なターゲットであり、製品が搭載された機器の出荷台数や利用期間等に応じたライセンス料が主な収入源となります。

収益源は、製品搭載機器の出荷台数に応じたランニング・ロイヤリティ、利用期間に応じた期間ロイヤリティ、または機種限定での一括ライセンス料です。これらの契約は、主に株式会社モルフォおよび海外連結子会社が顧客と直接締結して運営しています。

(2) ソフトウェア関連事業(サポート収入)


顧客が同社グループのソフトウェア製品を利用することを前提とした、実装(ポーティング)支援や、利用許諾後の技術的なサポートを提供しています。開発段階から製品導入後の保守まで、一貫した技術支援を行うことで製品の円滑な利用を促進しています。

収益源は、製品の実装支援を行う開発サポート収入と、利用許諾後に一定期間の技術サポートを提供する保守サポート収入です。運営は主に株式会社モルフォが担当し、海外顧客に対しては各国の連結子会社がサポートを行っています。

(3) ソフトウェア関連事業(開発収入)


顧客が試作機等へ実装して技術評価を行うための画像処理エンジンの提供や、新たな技術・製品・サービスを創出するための研究開発を請け負っています。顧客の仕様に応じた受託開発も行い、成果物の権利を共有することで将来的なライセンスビジネスにつなげています。

収益源は、利用範囲を限定した画像処理エンジンの提供による収入や、取引先の仕様に基づく研究開発の請負収入です。運営は株式会社モルフォが中心となり、AI技術に関しては子会社である株式会社モルフォAIソリューションズ等も連携して事業を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年10月期から2023年10月期までは赤字が続いていましたが、2024年10月期に大幅な増収となり黒字転換を果たしました。しかし、直近の2025年10月期は売上高こそ微増したものの、利益面では経常利益が大きく減少し、最終損益は再び赤字に転じています。利益率の変動が大きく、安定収益の確保が課題となっています。

項目 2021年10月期 2022年10月期 2023年10月期 2024年10月期 2025年10月期
売上高 17億円 20億円 24億円 33億円 34億円
経常利益 -8億円 -5億円 -2億円 3億円 1億円
利益率(%) -48.6% -25.6% -8.1% 9.0% 2.1%
当期利益(親会社所有者帰属) -8億円 -7億円 -3億円 3億円 -1億円

(2) 損益計算書


売上高は33億円から34億円へとわずかに増加しましたが、売上原価の増加により売上総利益は減少しました。さらに、販売費及び一般管理費が増加したことで、営業利益は前期の2.6億円から0.5億円へと大幅に縮小しています。営業利益率は7.8%から1.4%へと低下しており、コスト負担が利益を圧迫している状況が見て取れます。

項目 2024年10月期 2025年10月期
売上高 33億円 34億円
売上総利益 19億円 18億円
売上総利益率(%) 57.6% 54.9%
営業利益 3億円 0.5億円
営業利益率(%) 7.8% 1.4%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が5.5億円(構成比30%)、給与手当が3.5億円(同20%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社は単一セグメントのため、事業ごとの利益比較はありませんが、売上高は前期比で微増しています。スマートデバイス領域での中国メーカー等へのライセンス収入が伸長した一方、コスト増により全体の利益確保が難しくなっている状況です。

区分 売上(2024年10月期) 売上(2025年10月期)
ソフトウェア関連事業 33億円 34億円
連結(合計) 33億円 34億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがマイナスであることから「健全型」と判定されます。本業で得た現金を投資に回しつつ、財務活動による支出も行っている状態です。

項目 2024年10月期 2025年10月期
営業CF 2億円 0.1億円
投資CF -1億円 -4億円
財務CF 1億円 -0.1億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は当期純損失のため算出されていませんが、前期は8.8%でした。財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は87.3%で、グロース市場の平均(43.3%)を大きく上回る極めて高い水準を維持しています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「新たなイメージング・テクノロジーを創造する集団として、革新的な技術を最適な「かたち」で実用化させ、技術の発展と豊かな文化の実現に貢献する」ことを理念としています。また、「Rise above what we see, to realize what we feel ― 人間の目を拡張し、感動に満ちた世界を実現しよう ―」をビジョンに掲げ、画像処理と画像認識技術の融合による新たな技術・製品開発に取り組んでいます。

(2) 企業文化


研究開発主導型の企業として、既存技術とは一線を画す新たな技術を世に送り出すことを重視しています。技術的な差異化を強みとし、中核技術の開発は社内リソースで行う一方、間接的な工程は外部パートナーを活用してリソースを集中させる方針をとっています。また、高い技術力だけでなく、その有用性を市場に伝えられる人材の育成と確保を重視しています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画「Vision2027」を策定し、テクノロジーによるイノベーションを通じて顧客価値の最大化を目指しています。スマートデバイス、車載/モビリティ、DXの3つを戦略領域と定め、画像処理技術を軸にした高付加価値ソリューションの開発により、顧客の課題解決を図る方針です。

(4) 成長戦略と重点施策


今後の成長に向けて、車載/モビリティおよびDX市場を新規事業領域の柱としています。車載分野では自動運転・先進運転支援システム(AD/ADAS)やドライバーモニタリングシステム、DX分野ではOCRやセキュリティカメラ、建設向けの画像認識技術等の開発を推進します。

また、海外展開の加速を重要テーマとし、グローバル人材の採用や海外パートナーとの連携強化を進めています。さらに、独自技術の保護と活動領域確保のため、他社に先駆けた特許権の取得・活用にも注力する方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


技術革新が速い事業環境において、専門知識・技術を持つ高度人材の確保を急務としています。採用競争を勝ち抜くために独自の強みを訴求するとともに、技術の有用性を市場に提案できる人材の育成・確保を重視しています。企業認知度の向上や開発力の強化を通じて採用力を高め、戦略的な人材育成に努める方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年10月期 36.7歳 5.6年 6,745,206円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 新技術及び新製品の開発


技術革新のスピードが速い業界に属しており、既存技術の陳腐化や競合製品の登場、市場ニーズとのミスマッチ等のリスクがあります。同社は独自の画像処理技術を強みとし、最先端AI技術の開発や有能な人材の確保により、競争力の維持・強化に努めています。

(2) 知的財産権


同社の技術に関連して、他者から権利侵害の訴えを起こされるリスクや、逆に同社の権利が侵害されるリスクがあります。これに対し、特許権の取得・保護を推進するとともに、製品開発段階での十分な調査を通じて、第三者の知的財産権侵害の回避を図っています。

(3) 特定の市場/顧客への依存


スマートフォン市場を中心とした事業展開を行っており、特定市場の成長鈍化や主要顧客(Xiaomi、ソニーセミコンダクタソリューションズ等)との取引環境の変化が業績に影響を与える可能性があります。これに対し、様々な地域・用途・顧客への展開を加速させ、リスク分散を図っています。

(4) 海外事業展開


海外売上比率が高く、中国等のカントリーリスクや地政学リスク、為替変動の影響を受ける可能性があります。これに対し、グローバルな経営体制の構築や情報収集体制の強化、為替予約によるリスクヘッジ等を行い、影響の低減に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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