キユーピー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

キユーピー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の食品メーカーです。マヨネーズ・ドレッシング類やサラダ・惣菜等の製造販売を主力事業とし、海外展開も進めています。2025年11月期の連結業績は、売上高5,134億円(前期比6.1%増)、経常利益374億円(同1.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益305億円(同42.4%増)と増収増益でした。


※本記事は、キユーピー株式会社 の有価証券報告書(第113期、自 2024年12月1日 至 2025年11月30日、2026年2月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. キユーピーってどんな会社?

マヨネーズやドレッシングで国内トップシェアを誇る食品メーカーです。「食と健康」をテーマに、サラダ・惣菜、タマゴ事業なども展開しています。

(1) 会社概要

1919年に食品工業として設立され、1925年にキユーピーマヨネーズの製造を開始しました。1957年に現社名へ変更し、1973年に株式を上場しました。2013年には研究開発・オフィス機能を持つ「仙川キユーポート」を開設。2025年11月にはアヲハタを完全子会社化するなど、グループ体制を強化しています。

現在、連結従業員数は10,773名、単体では2,388名です。筆頭株主は日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は創業家の資産管理会社である中島董商店、第3位は同じく資産管理会社の董花となっており、創業家関連企業が主要株主として名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 12.14%
株式会社中島董商店 8.23%
株式会社董花 7.99%

(2) 経営陣

同社の役員は男性11名、女性3名の計14名で構成され、女性役員比率は21.4%です。代表者は代表取締役 社長執行役員 髙宮 満氏です。社外取締役比率は28.6%です。

氏名 役職 主な経歴
髙宮 満 代表取締役 社長執行役員 1987年同社入社。研究開発本部長、マーケティング本部長などを歴任。2020年キユーピータマゴ代表取締役社長を経て、2022年より現職。
中島 周 取締役会長取締役会議長 およびブランド担当 1983年日本興業銀行入行。1993年中島董商店入社。同社取締役社長を経て、2016年より同社会長。2021年中島董商店代表取締役社長に就任し現職。
渡邊 龍太 取締役 常務執行役員サプライチェーンマネジメント担当 1987年同社入社。生産本部生産企画部長、生産本部長などを経て、2021年取締役上席執行役員。2024年より現職。
山本 信一郎 取締役 常務執行役員コーポレート担当 1985年同社入社。トウ・アドキユーピー代表取締役社長などを経て、2022年同社上席執行役員。2025年より現職。
濱崎 伸也 取締役 常務執行役員グループ営業担当 兼市販用市場統括 1988年同社入社。海外本部長、執行役員などを経て、2021年上席執行役員。2025年より現職。


社外取締役は、柏木 斉(元リクルートホールディングス社長)、福島 敦子(ジャーナリスト・元TBSキャスター)、西川 久仁子(ファーストスター・ヘルスケア社長)、ハロルド・ジョージ・メイ(元タカラトミー社長)です。

2. 事業内容

同社グループは、「市販用」「業務用」「海外」「フルーツ ソリューション」「ファインケミカル」「共通」事業を展開しています。

(1) 市販用

家庭向けのマヨネーズ・ドレッシング類、パスタソース、パッケージサラダ、惣菜、育児食、介護食などを提供しています。一般消費者が主な顧客です。

収益は、スーパーマーケットや小売店などへの商品販売による売上で構成されます。運営は主にキユーピー、デリア食品、サラダクラブなどが担っています。

(2) 業務用

外食・中食産業や食品メーカー向けに、マヨネーズ・ドレッシング類、食酢、液卵、凍結卵、乾燥卵などの素材食品を提供しています。

収益は、飲食店、食品加工メーカーなどへの製品販売により得ています。運営は主にキユーピー、キユーピータマゴ、キユーピー醸造などが行っています。

(3) 海外

中国、東南アジア、北米などの市場において、各地域の食文化に合わせたマヨネーズ・ドレッシング類などを製造・販売しています。

収益は、現地の小売店や飲食店などへの商品販売から得ています。運営は杭州丘比食品、Q&B FOODS, INC.、KEWPIE (THAILAND) CO.,LTD.などの現地法人が行っています。

(4) フルーツ ソリューション

家庭用のジャム類や、産業用のフルーツ加工品などを製造・販売しています。一般消費者および食品メーカー等が顧客です。

収益は、小売店やメーカーへの商品・加工品販売によるものです。運営は主にアヲハタが担っています。

(5) ファインケミカル

医薬品、化粧品、食品などの原料として、ヒアルロン酸や卵黄レシチンなどの機能性素材を製造・販売しています。

収益は、医薬品・化粧品・食品メーカーへの素材販売から得ています。運営は主にキユーピーが行っています。

(6) 共通

食品製造機械の販売や、グループ内の共通機能などを提供しています。

収益は、食品製造機械の販売などから得ています。運営は株式会社芝製作所などが担っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に増加傾向にあり、特に直近の2025年11月期は5,000億円を突破しました。利益面では、原材料価格高騰の影響等により変動が見られますが、直近2期は回復傾向にあり、当期純利益も過去最高水準となっています。

項目 2021年11月期 2022年11月期 2023年11月期 2024年11月期 2025年11月期
売上高 4,070億円 4,303億円 4,551億円 4,840億円 5,134億円
経常利益 297億円 272億円 205億円 369億円 374億円
利益率(%) 7.3% 6.3% 4.5% 7.6% 7.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 110億円 126億円 98億円 134億円 252億円

(2) 損益計算書

売上高は前期比で増加し、売上総利益も増加しましたが、売上総利益率は若干低下しました。営業利益は微増し、営業利益率は横ばい傾向です。コスト増を吸収しつつ、安定した収益性を維持しています。

項目 2024年11月期 2025年11月期
売上高 4,840億円 5,134億円
売上総利益 1,478億円 1,509億円
売上総利益率(%) 30.5% 29.4%
営業利益 343億円 346億円
営業利益率(%) 7.1% 6.7%


販売費及び一般管理費のうち、運送費及び保管料が313億円(構成比27%)、給料手当及び賞与が250億円(同21%)を占めています。

(3) セグメント収益

全セグメントで増収となりました。特に業務用と海外事業の売上伸長が顕著です。利益面では、海外、フルーツソリューション、ファインケミカルが増益となった一方、市販用は原材料高の影響で減益となりました。

区分 売上(2024年11月期) 売上(2025年11月期) 利益(2024年11月期) 利益(2025年11月期) 利益率
市販用 1,867億円 1,898億円 143億円 126億円 6.6%
業務用 1,701億円 1,856億円 120億円 119億円 6.4%
海外 922億円 1,003億円 125億円 136億円 13.6%
フルーツ ソリューション 170億円 176億円 2.0億円 6.8億円 3.9%
ファインケミカル 114億円 118億円 5.7億円 7.1億円 6.0%
共通 66億円 83億円 14億円 14億円 16.3%
その他 - - - - -
調整額 - - -65億円 -61億円 -
連結(合計) 4,840億円 5,134億円 343億円 346億円 6.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年11月期 2025年11月期
営業CF 631億円 318億円
投資CF -239億円 -169億円
財務CF -211億円 -301億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は67.4%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同グループは、社是「楽業偕悦」と社訓を大切にしながら、「おいしさ・やさしさ・ユニークさ」で世界の人々の食と健康に貢献することをめざしています。「2030ビジョン」と「中期経営計画」に基づき、独自の商品とサービスを提供するとともに、社会課題の解決にも積極的に取り組む方針です。

(2) 企業文化

社是である「楽業偕悦(らくぎょうかいえつ)」は、志を同じくする人と、仕事を楽しみ、困難や苦しみを分かち合いながら悦びを共にするという考え方です。この精神を継承し、創業以来の社是・社訓を大切にする風土が根付いています。

(3) 経営計画・目標

2025-2028年度中期経営計画では、「成熟市場での経営効率化と成長領域への投資加速」をテーマとしています。経済価値と社会価値の双方の創出をめざし、以下の経営数値目標を掲げています。
* ROE:8.5%以上
* 国内事業利益率:8.0%以上
* 海外売上高伸長率(現地通貨ベース):年率二桁%以上

(4) 成長戦略と重点施策

「国内事業の構造改革」と「グローバル展開の加速」を軸に、「食と健康への貢献」「環境への配慮」「人的資本の価値拡大」を推進します。国内では高付加価値商品の展開や生産自働化を進め、海外では中国、アジアパシフィック、米州を重点エリアとして需要拡大に取り組みます。また、設備投資や成長投資、株主還元も強化する方針です。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

「一人ひとりの生き方と向き合い、自己実現への挑戦を成長の原動力とする」という人材ポリシーを掲げています。グローバル化やDX推進に向け、社内公募による配置や研修プログラムの拡充を通じて、自律的なキャリア形成を支援しています。また、多様な人材が活躍できる環境づくりや、エンゲージメント向上にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年11月期 42.1歳 16.1年 6,888,822円


※平均年間給与は税込み実績であり、基準外賃金および賞与を含めています。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 19.9%
男性育児休業取得率 102.4%
男女賃金差異(全労働者) 72.8%
男女賃金差異(正規雇用) 60.3%
男女賃金差異(非正規雇用) 62.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメントスコア(70点)、新卒総合職入社3年の定着率(95.8%)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場の動向

国内人口減少による市場縮小や、野菜価格変動、消費者意識の変化によるサラダ市場の縮小がリスクとして挙げられます。これに対し、内食・中食・外食への展開力を活かしたサラダとタマゴの可能性拡大、ウェルネス領域の拡大、海外での中間層開拓などを進めています。

(2) 原材料の調達

食油、鶏卵などの主要原材料の価格変動や調達困難リスクがあります。鳥インフルエンザの発生や地政学リスクも影響します。対策として、価格改定や付加価値化、調達先の分散、持続可能な調達の推進などに取り組んでいます。

(3) 海外展開

海外事業においては、地政学リスクや、法規制、カントリーリスク、模倣品の流通などが想定されます。現地の情勢確認や対応、内部統制システムの整備、情報管理の強化などを通じて、リスクの低減に努めています。

(4) 地球環境問題、気候変動

気候変動による原材料の収量減少や品質低下、価格高騰などが懸念されます。原料相場に強い体質への転換や、TCFD・TNFDに基づくリスクと機会の分析、環境負荷低減への取り組みを進めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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