※本記事は、株式会社学研ホールディングス の有価証券報告書(第80期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2026年2月13日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 学研ホールディングスってどんな会社?
教育と医療福祉を中核事業とし、教室・塾、出版、高齢者住宅など多角的に展開する持株会社です。
■(1) 会社概要
1947年に株式会社学習研究社として設立され、「科学」「学習」等の教育雑誌や教材販売で成長しました。1984年に東京証券取引所市場第一部に上場。2009年に持株会社体制へ移行し、現在の商号に変更しました。その後、高齢者福祉事業や子育て支援事業への参入を進め、2022年の市場区分見直しによりプライム市場へ移行しました。近年では、株式会社市進ホールディングスや株式会社桐原書店を連結子会社化するなど、M&Aによる事業拡大も積極的に行っています。
2025年9月30日現在、連結従業員数は10,120名、単体では85名です。筆頭株主は創業者が設立した公益財団法人古岡奨学会で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。また、学研従業員持株会が第3位となっており、安定的な株主構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 公益財団法人古岡奨学会 | 13.41% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 10.98% |
| 学研従業員持株会 | 2.93% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性13名、女性3名の計16名で構成され、女性役員比率は18.8%です。代表取締役社長は宮原博昭氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 宮原 博昭 | 代表取締役社長 | 1986年同社入社。学研教室事業部長等を経て2010年より現職。公益財団法人古岡奨学会代表理事、日本雑誌協会理事長も務める。 |
| 福住 一彦 | 取締役副社長 | 神戸教育研究センター(現・創造学園)入社。学研塾ホールディングス社長等を経て2023年より現職。市進ホールディングス社長を兼任。 |
| 小早川 仁 | 取締役常務執行役員 | 1990年同社入社。学研ココファン社長等を経て2024年より現職。学研ココファン代表取締役CEOを兼任。 |
| 安達 快伸 | 取締役上席執行役員 | 1990年同社入社。財務戦略室長、学研プロダクツサポート社長等を経て2024年より現職。 |
| 五郎丸 徹 | 取締役上席執行役員 | 1991年同社入社。学研ココファン社長、Gakken社長等を経て2024年より現職。桐原書店会長、Gakken SEED会長を兼任。 |
| 百田 顕児 | 取締役上席執行役員 | 三菱総合研究所を経てアイ・シー・ネット入社。同社社長に就任(現任)。2024年より現職。 |
| 山本 教雄 | 取締役上席執行役員 | American Life Insurance Company Japanを経てメディカル・ケア・サービス入社。同社社長に就任(現任)。2024年より現職。 |
| 細谷 仁詩 | 取締役上席執行役員 | JPモルガン証券、マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て2021年同社入社。Gakken LEAP CEO等を経て2024年より現職。 |
| 山田 徳昭 | 取締役 | 公認会計士。クリフィックス税理士法人代表社員、クリフィックス・コンサルティング社長等を経て2010年より現職。 |
社外取締役は、城戸真亜子(画家・タレント)、伊能美和子(元タワーレコード副社長)、Caroline F. Benton(筑波大学学長補佐)です。
2. 事業内容
同社グループは、「教育分野」「医療福祉分野」および「その他」事業を展開しています。
■教育分野
幼児から高校生までを対象とした教室・進学塾の運営、出版物の発行、園・学校向け用品の製作販売などを行っています。主な顧客は、幼児、児童、生徒、保護者、社会人、学校、幼稚園・保育所など多岐にわたります。教科書や学習参考書のほか、オンライン英会話サービスや看護師向けeラーニングなども提供しています。
収益は、教室・塾の受講料、出版物や教材・用品の販売代金、サービスの利用料などから得ています。運営は、株式会社学研エデュケーショナル、株式会社学研スタディエ、株式会社市進ホールディングス、株式会社Gakken、株式会社地球の歩き方、株式会社桐原書店など、多数のグループ会社がそれぞれの専門領域を担当しています。
■医療福祉分野
サービス付き高齢者向け住宅や認知症グループホームを中心とした介護施設の企画・開発・運営を行っています。また、保育園、こども園、学童施設の運営などの子育て支援事業も展開しています。高齢者やその家族、乳幼児を持つ保護者などが主な顧客です。
収益は、介護保険法等に基づく介護報酬、利用者の自己負担金、保育料、施設の入居一時金や月額利用料などから得ています。運営は、主に株式会社学研ココファン、メディカル・ケア・サービス株式会社、株式会社学研ココファン・ナーサリーなどが担っています。
■その他
グループ全体の物流事業、システム開発・運営、業務受託などの専門サービスを提供しています。また、海外での事業展開支援なども含みます。グループ会社や外部企業が顧客となります。
収益は、物流業務やシステム関連業務の受託料などから得ています。運営は、株式会社学研ロジスティクス、株式会社学研プロダクツサポート、アイ・シー・ネット株式会社、DTP Education Solutions JSCなどが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5期間の業績を見ると、売上高は着実に増加傾向にあり、直近の2025年9月期には約1,991億円に達しています。経常利益も概ね安定して推移しており、直近では約78億円となりました。利益率は3〜4%台で推移しています。当期純利益についても、2025年9月期は前期から大きく増加し、約36億円となっています。
| 項目 | 2021年9月期 | 2022年9月期 | 2023年9月期 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,503億円 | 1,560億円 | 1,641億円 | 1,856億円 | 1,991億円 |
| 経常利益 | 61億円 | 69億円 | 65億円 | 69億円 | 78億円 |
| 利益率(%) | 4.1% | 4.4% | 3.9% | 3.7% | 3.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 26億円 | 34億円 | 32億円 | 23億円 | 36億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高は前期比で増加し、増収となっています。利益面でも、売上総利益、営業利益ともに増加しており、増益基調です。売上原価率や販管費率に大きな変動はなく、安定した収益構造を維持しながら事業規模を拡大させていることが読み取れます。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,856億円 | 1,991億円 |
| 売上総利益 | 499億円 | 550億円 |
| 売上総利益率(%) | 26.9% | 27.6% |
| 営業利益 | 69億円 | 82億円 |
| 営業利益率(%) | 3.7% | 4.1% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び手当が98億円(構成比21.0%)、委託作業費が46億円(同9.9%)を占めています。売上原価については、内訳の記載がないため詳細は不明ですが、商品やサービスの提供に係る原価が大半を占めていると考えられます。
■(3) セグメント収益
各セグメントともに前期比で増収となっており、特に「その他」セグメントの大幅な増収が目立ちます。利益面では、「教育分野」と「その他」が増益となった一方、「医療福祉分野」は微増にとどまりました。「その他」セグメントは利益率が比較的高く、全体の利益押し上げに寄与しています。
| 区分 | 売上(2024年9月期) | 売上(2025年9月期) | 利益(2024年9月期) | 利益(2025年9月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 教育分野 | 919億円 | 954億円 | 41億円 | 50億円 | 5.2% |
| 医療福祉分野 | 875億円 | 951億円 | 42億円 | 43億円 | 4.5% |
| その他 | 62億円 | 86億円 | 5億円 | 12億円 | 13.9% |
| 調整額 | - | - | -20億円 | -22億円 | - |
| 連結(合計) | 1,856億円 | 1,991億円 | 69億円 | 82億円 | 4.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動によるキャッシュ・フローがプラスで、投資活動によるキャッシュ・フローもプラス、財務活動によるキャッシュ・フローがマイナスであることから、改善型(営業利益+資産売却で借入返済を進める改善局面)と考えられます。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 72億円 | 78億円 |
| 投資CF | 18億円 | 4億円 |
| 財務CF | -94億円 | -56億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は36.9%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「すべての人が心ゆたかに生きることを願い 今日の感動・満足・安心と 明日への夢・希望を提供します」という理念を掲げています。この理念のもと、社会・環境への配慮や人権尊重の精神を持ち、誰一人取り残さない持続可能な社会の実現を目指しています。
■(2) 企業文化
同社グループは、「学研グループ価値創造プロセス」に基づき、事業活動を通じて社会課題を解決し、社会的価値の創造(CSV)に取り組む文化を持っています。また、多様な人材が活躍できる環境整備や、サステナビリティ・マネジメントシステム(SMS)の運用などを通じ、持続可能な成長と社会貢献の両立を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
新中期経営計画「Gakken2027」の1年目である2026年9月期に向け、具体的な数値目標を掲げています。また、資本コストや株価向上を意識した経営を行い、資本効率の向上と財務健全性の確保を目指しています。
* 売上高:2,050億円
* 営業利益:85億円
* EBITDA:135億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:40億円
* ROE:8%
■(4) 成長戦略と重点施策
2030年の目指すポートフォリオ実現に向け、グローバル事業、リカレント・リスキリング領域、メディカル/ウェルネス事業への戦略領域拡大に積極投資を行います。また、高付加価値サービスの拡大やLTV最大化、コスト効率改善による収益性向上、事業ポートフォリオの最適化、政策保有株式の圧縮等による資本効率向上を推進します。ガバナンス強化のため、監査等委員会設置会社への移行も予定しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社グループは、「明日を創る人を創る」を人事ポリシーとし、人材の多様性、知識・技能の高度化、エンゲージメント向上を重視しています。女性管理職比率向上や男性育休取得促進、リスキリング、DXスキル向上などの施策を推進し、多様なバックグラウンドを持つ従業員が能力を最大限発揮できる環境整備に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年9月期 | 44.3歳 | 11.7年 | 9,634,329円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 26.1% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | 111.1% |
| 男女賃金差異(正規) | 94.4% |
| 男女賃金差異(非正規) | 175.4% |
※男性労働者の育児休業取得率は、対象者がいないため「-」となっています。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、学研ホールディングスの女性役員比率(18.8%)、学研グループ全社(連結)の男性労働者の育児休業取得率(73.6%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 法的規制等に関するリスク
教育・医療福祉事業は各種法令・諸規則の適用を受けており、これらの改正や解釈変更、新規制の導入が経営成績に影響を及ぼす可能性があります。コンプライアンス経営の確立に努め、全従業員への研修や法的規制の順守強化を進めています。
■(2) 自然災害や感染症に関するリスク
主要事業所や施設が全国に点在しており、地震、風水害、感染症の蔓延などの不測の事態により事業活動が停止した場合、経営成績に影響を与える可能性があります。これに対し、対策マニュアルや事業継続計画(BCP)を整備し、緊急時の体制構築に努めています。
■(3) 個人情報の管理に関するリスク
事業活動において多くの個人情報を取り扱っており、情報流出が発生した場合、社会的信用の失墜とともに経営成績に影響を及ぼす可能性があります。関連法令の順守、社内規程の整備、不正アクセス防止対策の強化など、個人情報の適正な管理に努めています。



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