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日本フイルコン転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、日本フイルコン株式会社 の有価証券報告書(第126期、自 2024年12月1日 至 2025年11月30日、2026年2月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 日本フイルコンってどんな会社?
産業用機能フィルターやコンベア、電子部材等の製造販売を行う企業です。製紙用網などのニッチな分野で強みを持ちます。
■(1) 会社概要
1916年に東京金網として創業し、1936年に日東金網(後の日本金網)が設立されました。1961年に東京証券取引所市場第二部に上場し、1972年に現社名である日本フイルコンへ商号変更しました。2001年には東京証券取引所市場第一部へ指定替えとなり、2025年には欧州での販売強化のためドイツに現地法人を設立しています。
連結従業員数は1,273名、単体では433名です。筆頭株主は事業会社(取引先)の王子ホールディングスで、第2位も同業界の大王製紙となっており、主要顧客である製紙会社が安定株主として名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 王子ホールディングス | 13.85% |
| 大王製紙 | 9.32% |
| 日本フイルコングループ従業員持株会 | 7.58% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長社長執行役員は名倉宏之氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 名倉 宏之 | 代表取締役社長社長執行役員 | 1982年入社。総合研究開発部長、エレクトロニクスソリューション事業部長などを経て、2014年より社長を務める。 |
| 齋藤 芳治 | 専務取締役専務執行役員管理・経営企画管掌 | 1984年入社。企画財務部長、管理本部長、経営企画室長などを歴任。2026年より現職。 |
| 佐野 明宣 | 常務取締役常務執行役員製紙・機能ファブリック事業管掌 | 1989年入社。製紙・機能ファブリックカンパニー長や米国・欧州現地法人の代表などを経て、2024年より現職。 |
| 野村 国大 | 常務取締役常務執行役員総合研究開発室・ファインエレクトロニクス事業管掌兼イノベーション成長戦略担当 | 1988年入社。総合研究開発室長やファインエレクトロニクスカンパニー長などを歴任。2024年より現職。 |
| 久慈 健仁 | 取締役上席執行役員ファインエレクトロニクス事業担当兼ファインエレクトロニクスカンパニー長 | 1988年入社。ファインエレクトロニクスカンパニー営業部長などを経て、2024年より現職。 |
| 青木 豊 | 取締役監査等委員(常勤) | 1985年入社。管理本部長やタイ現地法人社長などを歴任し、2024年より現職。 |
社外取締役は、阿部稔(元三井物産金属資源本部部長)、伊能優子(弁護士)、佐々木章浩(菱進ホールディングス社長)、木村尚子(公認会計士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「産業用機能フィルター・コンベア事業」、「電子部材・フォトマスク事業」、「環境・水処理関連事業」、「不動産賃貸事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 産業用機能フィルター・コンベア事業
紙やパルプを製造する際に使用される抄造用網や、各種工業用特殊網、コンベアベルトなどを製造・販売しています。製紙業界向け製品では、顧客ごとの条件に合わせた製品を提供しています。また、不織布製造向けフィルターや食品用コンベヤーベルトなども取り扱っています。
製品の販売対価を主な収益源としています。運営は、日本フイルコン、FILCON FABRICS & TECHNOLOGY CO.,LTD.(タイ)、斉藤特殊金網、Filcon America,Inc.(北米販売)、FILCON Germany GmbH(欧州販売)、関西金網などが主に行っています。
■(2) 電子部材・フォトマスク事業
半導体や電子部品の製造プロセスで使用されるフォトマスクや、金属材料等を加工したフォトエッチング製品などを製造・販売しています。高精細な加工技術を活かし、AI関連や通信デバイス向けなどの需要に対応しています。
製品の販売対価を主な収益源としています。運営は、日本フイルコンおよび関連会社の徳輝科技股份有限公司(台湾)が行っています。また、エスデイアイ・エレクトロニクス・ジャパンが電子部品の輸入販売を行っています。
■(3) 環境・水処理関連事業
プールの本体やろ過装置、その他環境関連製品の設計・販売を行っています。学校用プールやホテル・マンション向けプールなどを手掛けるほか、海外メーカーとの協業による排水処理装置やガス絶縁継手なども取り扱っています。
製品および工事の対価を主な収益源としています。運営は、主に株式会社アクアプロダクトが行っています。
■(4) 不動産賃貸事業
同社が保有する工場や社宅の跡地などを有効活用し、商業施設やマンション、駐車場などとして賃貸しています。東京都内などに複数の物件を所有しています。
テナントからの賃料収入を収益源としています。運営は日本フイルコンが行っています。
■(5) その他
ワインの輸入販売などを行っています。
商品の販売対価を収益源としています。運営はフイルコンサービスが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は200億円台後半で推移していますが、当期は微減となりました。利益面では、原材料価格やエネルギーコストの高騰等の影響を受け、経常利益は減少傾向にあります。当期は減損損失や特別退職金の計上により、最終損益が赤字に転落しました。
| 項目 | 2021年11月期 | 2022年11月期 | 2023年11月期 | 2024年11月期 | 2025年11月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 248億円 | 260億円 | 280億円 | 286億円 | 278億円 |
| 経常利益 | 16億円 | 17億円 | 10億円 | 11億円 | 9億円 |
| 利益率(%) | 6.5% | 6.5% | 3.6% | 3.9% | 3.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 7億円 | 9億円 | 9億円 | 5億円 | -10億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は減少しましたが、売上原価も抑制されたため、売上総利益率は若干の低下にとどまりました。一方、販管費は高止まりしており、営業利益率は低下しています。
| 項目 | 2024年11月期 | 2025年11月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 286億円 | 278億円 |
| 売上総利益 | 99億円 | 95億円 |
| 売上総利益率(%) | 34.4% | 34.3% |
| 営業利益 | 9億円 | 7億円 |
| 営業利益率(%) | 3.2% | 2.4% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当・賞与が32億円(構成比36%)、製品運賃が6億円(同7%)を占めています。
■(3) セグメント収益
産業用機能フィルター・コンベア事業は売上がほぼ横ばいでしたが、コスト増により大幅な減益となりました。電子部材・フォトマスク事業は増収となったものの、製造経費の増加で減益でした。環境・水処理関連事業は売上が減少しましたが、黒字転換を果たしました。
| 区分 | 売上(2024年11月期) | 売上(2025年11月期) | 利益(2024年11月期) | 利益(2025年11月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 産業用機能フィルター・コンベア事業 | 201億円 | 200億円 | 11億円 | 8億円 | 3.9% |
| 電子部材・フォトマスク事業 | 44億円 | 46億円 | 5億円 | 4億円 | 8.1% |
| 環境・水処理関連事業 | 32億円 | 22億円 | -0.6億円 | 0.6億円 | 2.9% |
| 不動産賃貸事業 | 10億円 | 10億円 | 8億円 | 8億円 | 75.5% |
| 調整額 | -0.3億円 | -0.3億円 | -14億円 | -13億円 | - |
| 連結(合計) | 286億円 | 278億円 | 9億円 | 7億円 | 2.4% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
日本フイルコンは、営業活動により潤沢な資金を生み出し、事業活動の基盤を強化しています。投資活動では、将来の成長に向けた設備投資を積極的に行いました。財務活動では、借入と返済、配当金の支払いを行い、安定的な資金繰りを維持しています。
| 項目 | 2024年11月期 | 2025年11月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 20億円 | 30億円 |
| 投資CF | -10億円 | -24億円 |
| 財務CF | -6億円 | -3億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「夢を持ち一生懸命を楽しもう」「総力で一歩先行くものづくり」「感謝と誠意をかたちで社会へ」を企業理念として掲げています。これらを基本に、ステークホルダーへの社会的責任を全うし、社会から信任される企業を目指しています。また、長期ビジョンとして「100年超え企業として、次の100年も社会が必要とする製品・サービスを生み出し続ける企業集団」を掲げています。
■(2) 企業文化
同社は「行動指針」や「行動規範」のもと、グループ全体で事業活動を推進しています。コンプライアンスの徹底やリスク管理体制の充実、環境活動への積極的な取り組みを継続する方針を持っています。また、人を活かす経営に向け、従業員が自ら考えて動けるような育成や、チャレンジできる機会の提供を重視する風土の醸成を進めています。
■(3) 経営計画・目標
2026年度から2028年度までの中期経営計画では、収益力の回復を最優先課題としています。2028年度の中期目標として以下の数値を掲げています。
* 売上高:289億円
* 営業利益:15億円
* ROE:6.0%
* 配当性向:30%以上かつDOE2.4%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
「収益力の回復」「人的資本の開発」「グループガバナンスの強化」を経営重点課題としています。事業ポートフォリオの見直しを行い、収益性の高いエリアや製品への注力、不採算事業の整理を進めます。
* 産業用機能フィルター・コンベア事業:海外販売での利益拡大、高付加価値製品(駆動負荷低減網など)の拡販、生産性向上によるコスト削減。
* 電子部材・フォトマスク事業:AI普及等に伴う高集積製品需要への対応、フォトマスク主要設備の順次更新、試作から量産への移行強化。
* 環境・水処理関連事業:学校プールの需要取り込みと、中長期的にはホテル・マンションプールへのシフト。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は人的資本の開発を経営重点課題の一つとしており、与えられた仕事をこなすだけでなく、自ら考えて動ける人材の育成を目指しています。チャレンジできる機会の提供、次世代育成支援、女性活躍推進などに取り組み、従業員が能力を発揮しやすい環境整備を進めています。また、中途採用やシニア社員の活用などにより人材の多様性確保にも努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年11月期 | 44.6歳 | 20.3年 | 5,601,015円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 9.5% |
| 男性育児休業取得率 | 111.1% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 74.2% |
| 男女賃金差異(正規) | 76.4% |
| 男女賃金差異(非正規) | 70.8% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇平均取得率(76.9%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 市場リスク
同社グループの売上高は国内比率が高く、人口減少による国内市場の縮小が業績に影響を及ぼす可能性があります。特に産業用機能フィルター・コンベア事業では、ペーパーレス化による国内の紙需要減少が継続しており、主要顧客である製紙会社の生産能力削減などの動きがリスク要因となっています。
■(2) 為替の変動に関するリスク
海外での製品販売や原材料調達を行っているため、為替レートの変動が業績に影響を与える可能性があります。特に円安は海外売上高の円換算額増加などのプラス面がある一方、海外からの資材輸入コストや海外設備の調達・保守費用の増加要因となります。円高局面に転じた場合の収益性低下リスクにも留意が必要です。
■(3) 資源・エネルギーの高騰リスク
世界的なインフレによる資源・エネルギー価格の高騰や、物流の混乱、部材・原材料の調達遅延などが業績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社は設備産業であるため、生産設備の取得価額や保守費用の高騰も負担となります。販売価格への転嫁が進まない場合、収益を圧迫するリスクがあります。



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