津田駒工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

津田駒工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場の津田駒工業は、繊維機械及び工作用機器の製造販売を行う企業です。第115期は売上高354億円と減収となり、経常損益は2億円の赤字、当期純損益も3億円の赤字となりました。財務基盤の立て直しを最重要課題とし、中期経営計画に基づき収益改善に取り組んでいます。


※本記事は、津田駒工業株式会社の有価証券報告書(第115期、自 2024年12月1日 至 2025年11月30日、2026年2月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 津田駒工業ってどんな会社?

繊維機械の世界的メーカーとして、新興国市場を中心に超高速ジェットルームなどを展開する老舗企業です。

(1) 会社概要

明治42年に創業し、絹・人絹織機の製造を開始しました。昭和14年に現在の会社を設立し、昭和36年に東証二部へ上場、昭和43年には東証一部へ指定されました。昭和52年にはエアジェットルームの製造を開始し、技術力を高めてきました。令和4年の市場区分見直しに伴い、スタンダード市場へ移行しています。

連結従業員数は1,103名、単体では751名です。筆頭株主は取引先で構成される持株会で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は個人株主となっています。安定株主として取引先や従業員持株会が上位を占める構成です。

氏名 持株比率
津田駒取引先持株会 21.78%
日本カストディ銀行(信託口) 10.26%
HSU CHENG CHUNG 7.05%

(2) 経営陣

同社の役員は男性11名、女性0名、計11名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役会長兼社長は高納伸宏氏です。取締役7名中3名が社外取締役であり、社外取締役比率は42.9%です。

氏名 役職 主な経歴
高納 伸宏 代表取締役会長兼社長 丸紅入社後、海外現地法人社長や丸紅テクマテックス社長を歴任。同社入社後は営業・事業統括を経て、2022年より代表取締役会長、2023年4月より現職。
北野 浩司 代表取締役常務 1986年同社入社。製造部長、品質保証部長、工作機械関連事業統括などを経て、2023年より管理部門統括、2025年2月より現職。
寺田 武志 取締役 1990年同社入社。繊維機械販売部長、執行役員を経て、2019年より取締役繊維機械事業統括。中国現地法人董事長も務める。
大河 哲史 取締役 1988年同社入社。工機販売部長、執行役員、ツダコマテクノサポート社長を経て、2023年より取締役工作機械関連事業統括。


社外取締役は、松原和弘(元中部電力代表取締役副社長)、河村肇(元丸紅専務執行役員)、下川広佳(元川崎重工業専務執行役員)です。

2. 事業内容

同社グループは、「繊維機械事業」および「工作機械関連事業」を展開しています。

(1) 繊維機械事業

超高速ジェットルーム(エアジェットルーム、ウォータジェットルーム)及びその周辺の準備機械(サイジングマシン等)を提供しています。中国やインドを中心とした新興国市場が大きな比率を占めており、顧客は現地の繊維メーカー等が中心です。

製品及び部品の販売、アフターサービスの提供等により、顧客から対価を受け取っています。運営は主に津田駒工業が行い、一部の電装部品製造を共和電機工業が、中国での製造・販売を津田駒機械製造(常熟)有限公司等が担当しています。

(2) 工作機械関連事業

工作機械に取り付けて使用するNC円テーブルやマシンバイス等の工作用機器を提供しています。工作機械業界、自動車業界、電子機器・通信等のEMS業界を主力市場とし、高精度な加工を支える機器を販売しています。

製品の販売及び修理・アフターサービスにより、顧客から対価を受け取っています。運営は津田駒工業が主体となり、一部製品の製造を共和電機工業に委託し、修理・アフターサービスをツダコマテクノサポートが担当しています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近5期間の推移を見ると、売上高は300億円台で推移していますが、損益面では不安定な状況が続いています。前期に一度黒字転換を果たしたものの、当期は再び赤字に転落しました。原材料価格やエネルギーコストの高騰、一部子会社の業績不振などが影響しています。

項目 2021年11月期 2022年11月期 2023年11月期 2024年11月期 2025年11月期
売上高 278億円 312億円 393億円 364億円 354億円
経常利益 -36億円 -26億円 -13億円 3億円 -2億円
利益率 -13.0% -8.3% -3.3% 0.8% -0.6%
当期利益(親会社所有者帰属) -45億円 -26億円 -12億円 5億円 -3億円

(2) 損益計算書

売上高は減少傾向にあり、売上総利益率も16.3%と横ばいで推移しています。販管費の負担が重く、営業損益は赤字となりました。販売価格への転嫁や原価低減活動を進めていますが、安定的な利益確保には至っていません。

項目 2024年11月期 2025年11月期
売上高 364億円 354億円
売上総利益 59億円 58億円
売上総利益率(%) 16.3% 16.3%
営業利益 4億円 -1億円
営業利益率(%) 1.1% -0.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が11億円(構成比18%)、荷造運送費が10億円(同17%)を占めています。

(3) セグメント収益

繊維機械事業は売上が微減し、営業利益も減少しました。工作機械関連事業も売上・利益ともに減少しています。全社費用の負担もあり、全体として厳しい収益状況となっています。

区分 売上(2024年11月期) 売上(2025年11月期) 利益(2024年11月期) 利益(2025年11月期) 利益率
繊維機械事業 309億円 302億円 9億円 7億円 2.2%
工作機械関連事業 56億円 52億円 6億円 3億円 6.0%
調整額 - - -11億円 -11億円 -
連結(合計) 364億円 354億円 4億円 -1億円 -0.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社グループは、事業運営に必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、主に繊維機械や工作機械事業における製品開発・販売活動から生み出されています。投資活動によるキャッシュ・フローは、将来の成長に向けた戦略製品の開発投資などに充てられています。財務活動によるキャッシュ・フローは、事業運営に必要な資金調達や返済などにより変動します。

項目 2024年11月期 2025年11月期
営業CF 8億円 10億円
投資CF 5億円 -1億円
財務CF -10億円 -3億円

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社は「われわれはつねに最高の品質をめざし社会に貢献する」を社是としています。世界最高の技術と品質を究めたモノづくりと、公正な企業活動を通じて産業の発展に寄与し、安全で豊かな市民生活の実現と持続可能な世界の実現を経営の基本方針としています。

(2) 企業文化

これまでの企業風土を変えていくとともに、組織体制を見直し活性化を進めることを重視しています。法令遵守と透明性の高い職務執行を基本とし、「ツダコマ倫理規範」を定めています。また、人的資本の充実を目指した人事制度改革や育成プログラムの構築を図るなど、変革への意識を持った組織運営を行っています。

(3) 経営計画・目標

2024年度から2026年度をターゲットとした「中期経営計画2026」を推進しています。利益の追求とキャッシュ・フローの改善による財務基盤の立て直しを最重要課題とし、継続的に利益確保ができる事業体質の構築に注力しています。

(4) 成長戦略と重点施策

繊維機械事業では、産業資材、高級スポーツブランド、一般衣料の3市場をターゲットとし、売価改善と原価低減を両立させています。工作機械関連事業では、自動車業界の駆動要素多様化に対応したNC円テーブルの拡販や、自動化・省人化ニーズに対応した新製品開発を進めています。全社的にDXに取り組み、生産・業務効率の向上を図ります。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

管理職への登用にあたっては、性別、国籍、年齢を問わず、スキル・経験等を総合的に判断し、公平性を重視することを基本方針としています。新卒採用における女性割合を25%以上にする目標を掲げ、女性管理職向けの専門教育も実施しています。また、健康経営として従業員の心身の安全・安心、健康管理に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年11月期 47.2歳 23.8年 5,348,882円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 80.8%
男女賃金差異(正規雇用) 80.4%
男女賃金差異(非正規雇用) 114.8%


※女性管理職比率は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」の規定に基づき公表する情報として選択していないため、男性育児休業取得率は「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」の規定による公表義務の対象ではないため、記載を省略しています。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒採用における女性割合(25%以上)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 日中間の政治対立

主力市場の一つである中国との関係変化により、中国における事業環境が停滞し、同社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 米中間の政治・経済対立

中国から米国への繊維製品輸出が、米中間の政治的対立や貿易摩擦等により減少した場合、中国での設備投資に影響が及ぶ可能性があります。

(3) 中国経済の景気低迷リスク

主力市場である中国において景気が停滞した場合、顧客の設備投資計画の延期等が発生し、同社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。

(4) 継続企業の前提に関する重要事象等

過去からの営業損失等の計上により、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる事象が存在しています。これに対し、繊維機械事業および工作機械関連事業の採算性向上、キャッシュ・フロー確保に向けた施策に取り組んでいます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。