日置電機 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日置電機 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場に上場する電気測定器メーカーです。主要事業として電気測定器の開発、製造、販売をグローバルに展開しています。第74期の連結業績は、売上高が前期比3.2%増の405億円と伸長したものの、利益面では先行投資等の影響により経常利益が11.1%減の71億円となり、増収減益でした。


※本記事は、日置電機株式会社の有価証券報告書(第74期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年2月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日置電機ってどんな会社?


電気測定器の開発、製造、販売を主力とし、産業のマザーツールとして脱炭素化や電動化を支える長野県拠点の研究開発型企業です。

(1) 会社概要


同社は1952年1月に電気計測器の製造販売を目的として設立されました。1991年7月に店頭登録銘柄として株式を公開し、2003年12月には東京証券取引所市場第一部へ上場しました。研究開発体制の強化に取り組み、2015年3月に研究棟「HIOKIイノベーションセンター」を竣工しています。2022年4月の市場区分見直しに伴い、プライム市場へ移行しました。

2025年12月31日現在の連結従業員数は1,153名(単体809名)です。大株主構成については、筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口)で、第2位は従業員持株会である日置電機社員持株会、第3位は個人株主の日置恒明氏となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.55%
日置電機社員持株会 6.18%
日置恒明 5.84%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性3名の計13名で構成され、女性役員比率は23.1%です。代表取締役社長は岡澤尊宏氏が務めています。取締役9名のうち5名が社外取締役であり、社外取締役比率は55.6%です。

氏名 役職 主な経歴
岡澤 尊宏 代表取締役社長品質保証管掌 1987年同社入社。製造部長、営業本部長、日置(上海)測量技術有限公司董事長などを歴任。2021年1月より現職。
巣山 芳計 取締役専務執行役員総務本部長生産管掌 1987年同社入社。総務部長、製造部長、最高財務責任者(CFO)などを歴任。2024年10月より現職。
久保田 訓久 取締役専務執行役員R&D本部長兼最高情報責任者(CIO) 1990年同社入社。イノベーションセンター長、最高技術責任者(CTO)などを歴任。2025年1月より現職。
鷹野 保直 取締役常務執行役員グローバル営業本部長兼欧州統括 1985年同社入社。HIOKI USA CORPORATION社長、最高マーケティング責任者(CMO)などを歴任。2025年1月より現職。


社外取締役は、田村義晴(元NECカシオモバイルコミュニケーションズ社長)、丸田由香里(弁護士)、馬渡修(元アナログ・デバイセズ社長)、牧辰人(公認会計士)、渡瀬ひろみ(元アーレア社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「電気測定器事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 電気測定器事業


電気測定器の開発、製造、販売を行っています。主な顧客は電機、自動車、電子部品、環境・新エネルギーなどの製造業です。製品は自動試験装置、記録装置、電子測定器、現場測定器、周辺装置などに分類され、脱炭素化や電動化シフトを支えるツールとして利用されています。

製品販売による収益が主たる収益源です。開発、製造、販売は主に日置電機が行い、海外市場においてはHIOKI USA CORPORATION、日置(上海)測量技術有限公司、HIOKI EUROPE GmbHなどの連結子会社が各地域での販売を担当しています。

(2) その他


電気測定器事業をサポートするためのサービス等を行っています。具体的には、損害保険代理業および同社グループが所有する不動産の管理業務が含まれます。

これらのサービス提供による手数料収入や管理料等が収益源となります。運営は連結子会社である日置フォレストプラザが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は着実に増加傾向にあり、第74期には405億円に達しました。利益面では、経常利益率が20%前後で推移していましたが、第74期は17.5%に低下しています。当期純利益も安定して確保していますが、直近では減益となりました。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 293億円 344億円 392億円 393億円 405億円
経常利益 60億円 73億円 82億円 80億円 71億円
利益率(%) 20.5% 21.2% 21.0% 20.3% 17.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 45億円 53億円 63億円 62億円 55億円

(2) 損益計算書


売上高は増加しましたが、売上総利益率はほぼ横ばいから微減となりました。一方、営業利益率は低下しており、販管費の増加が利益を圧迫している構造が見て取れます。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 393億円 405億円
売上総利益 196億円 204億円
売上総利益率(%) 49.8% 50.4%
営業利益 75億円 68億円
営業利益率(%) 19.2% 16.8%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が46億円(構成比34%)、賞与引当金繰入額が10億円(同7%)を占めています。売上原価の内訳については詳細な記載がありませんでした。

(3) セグメント収益


同社は単一セグメントですが、製品区分別の売上高を見ると、電子測定器が全体の約半数を占め、堅調に推移しています。記録装置も増加傾向ですが、自動試験装置や現場測定器は横ばいの状況です。利益データがないため、売上高のみを表示します。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
自動試験装置 35億円 35億円
記録装置 58億円 62億円
電子測定器 194億円 202億円
現場測定器 84億円 84億円
周辺装置他 21億円 23億円
連結(合計) 393億円 405億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業で稼いだ資金で借入金の返済や株主還元を行いつつ、将来のための投資も自己資金で賄えている「健全型」の状態です。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 89億円 75億円
投資CF -37億円 -47億円
財務CF -36億円 -27億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は85.4%で市場平均を大きく上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「HIOKIの理念」である「人間性の尊重」と「社会への貢献」を掲げています。社会に受け入れられる高品質の製品と最高のサービスを提供し、顧客満足を追求すると同時に、持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています。また、地域社会の一員として教育文化等の発展に役立つ活動を支援する方針です。

(2) 企業文化


「人間性の尊重」をベースに、社員の性格や適性を尊重し、能力を育成することによって企業価値の向上を図る文化があります。また、先進の研究開発と新分野の確立に挑戦する研究開発型企業を目指し、自主的な成長発展を図る姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


2030年までの長期経営方針「ビジョン2030」のもと、以下の経営指標を目標として設定しています。

* 売上高営業利益率20%
* 海外売上高比率70%以上
* 自己資本当期純利益率(ROE)15%以上(2030年まで)

(4) 成長戦略と重点施策


「ビジョン2030」に基づき、脱炭素化および電動化シフトを後押しする計測ソリューションの提供に注力しています。研究開発では売上高の10%を目途に投資し、顧客密着型でオンリーワン製品の開発を進めます。販売面ではアジア地域を中心にグローバル展開を加速し、欧米市場の開拓も強化します。生産面では品質向上とコストダウンに加え、短納期化による競争優位性の確保を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人事ポリシー」に基づき、社員を長期的・継続的に育成し、将来的に新たな価値創造を期待される存在と位置づけています。働きがいを感じながら定年まで長く働ける環境整備、フレックスタイムや在宅勤務等の柔軟な働き方の導入、法定を上回る育児介護休業制度などを推進しています。また、DE&I(多様性・公平性・包摂性)を重視し、女性・外国人・中途採用者の中核人材登用を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 46.7歳 21.3年 10,345,989円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.7%
男性育児休業取得率 56.6%
男女賃金差異(全労働者) 72.1%
男女賃金差異(正規雇用) 71.9%
男女賃金差異(非正規雇用) 93.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、外国人管理職登用数(4人)、中途採用者管理職登用数(6人)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 人材に係るリスク


同社グループの成長は社員に依存しており、人材の採用・育成が計画通り進まない場合、業績や財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。ビジョン実現に向けた自律的な職場環境の整備を進めていますが、人材確保の競争激化などがリスク要因となります。

(2) 人権に係るリスク


事業活動における人権尊重を推進していますが、人権侵害等の事象が発生した場合、社会的信用の喪失や顧客との取引停止、損害賠償責任の発生などにより、業績や財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。サプライチェーンを含めた取り組み強化を図っています。

(3) 設備投資動向に係るリスク


主要顧客である製造業の設備投資動向に売上高が左右されやすい傾向があります。自動車、電子部品、環境・新エネルギー等の市況を注視し対策を講じていますが、金融市場の不安定化などで予測を超える変動が生じた場合、業績に影響を与える可能性があります。

(4) 海外売上高に係るリスク


海外売上高比率が6割を超えており、特に中国を中心とするアジア地域の比率が高くなっています。各地域の地政学的リスク、経済動向、法規制の変更、および大幅な為替変動が、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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