東洋紡 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東洋紡 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の東洋紡は、フィルム、ライフサイエンス、環境・機能材、機能繊維・商事、不動産事業を展開する高機能製品メーカーです。2025年3月期の連結業績は、売上高4,220億円(前期比1.9%増)、営業利益167億円(同85.1%増)と増収増益を達成しました。


※本記事は、東洋紡株式会社 の有価証券報告書(第167期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 東洋紡ってどんな会社?


創業140年を超える歴史を持ち、現在はフィルムやライフサイエンス等の高機能製品へ事業転換した企業です。

(1) 会社概要


同社のルーツは1882年に発足した大阪紡績会社に遡り、1914年に東洋紡績が設立されました。1949年には株式を上場し、日本の繊維産業を牽引してきました。2012年に現在の東洋紡へ社名を変更し、脱・繊維の姿勢を明確化しました。2023年には三菱商事との合弁会社である東洋紡エムシーが事業を開始しています。

2025年3月31日現在、連結従業員数は9,976人、単体では3,030人です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位も同様に日本カストディ銀行(信託口)となっており、機関投資家が上位を占めています。第3位には東洋紡従業員持株会が入っています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 15.48%
日本カストディ銀行(信託口) 10.19%
東洋紡従業員持株会 2.87%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性2名の計13名で構成され、女性役員比率は15.4%です。代表取締役社長は竹内 郁夫氏です。社外取締役比率は53.8%(取締役13名中7名)です。

氏名 役職 主な経歴
楢原 誠慈 取締役会長 1988年同社入社。財務部長、執行役員、取締役社長兼社長執行役員を経て2021年4月より現職。
竹内 郁夫 取締役社長 兼社長執行役員(代表取締役)内部監査部統括 1985年同社入社。経営企画室長、常務執行役員などを経て2021年4月より現職。
酒井 太市 取締役 兼専務執行役員(代表取締役)環境安全防災本部長生産技術部門、調達・物流総括部統括 1986年同社入社。生産技術統括部長、常務執行役員などを経て2024年4月より現職。
相良 誉仁 取締役 兼常務執行役員ライフサイエンス本部長 1990年同社入社。メディカル事業総括部長、執行役員などを経て2024年6月より現職。
稲田 武彦 取締役 兼常務執行役員人事・総務・法務部門統括 1988年同社入社。経営企画部取締役会担当部長、執行役員などを経て2024年6月より現職。


社外取締役は、磯貝 恭史(流通科学大学非常勤講師)、桜木 君枝(会津大学大学院特任教授)、播磨 政明(弁護士)、福士 博司(元味の素代表取締役)、髙瀬 正子(テクノプロ・ホールディングス社外取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「フィルム」「ライフサイエンス」「環境・機能材」「機能繊維・商事」「不動産」および「その他」事業を展開しています。

(1) フィルム


包装用フィルムや工業用フィルム等の製造・加工および販売を行っています。顧客は食品包装資材メーカーや電機・電子部品メーカー等が中心です。特に液晶偏光子保護フィルムやセラミックコンデンサ用離型フィルムなどの高機能製品を展開しています。

収益は製品の販売による対価です。運営は主に東洋紡、東洋クロス、ゼノマックスジャパンなどが担っています。

(2) ライフサイエンス


診断薬用酵素等のバイオ製品、医薬品、医用膜、医療機器等の製造・加工および販売を行っています。主な顧客は医療機関、検査薬メーカー、製薬会社等です。

収益は製品の販売による対価です。運営は主に東洋紡、Spinreact, S.A.U.等の連結子会社が行っています。

(3) 環境・機能材


エンジニアリングプラスチック、工業用接着剤、光機能材料、機能フィルター、スーパー繊維、アクア膜、不織布等の製造・販売を行っています。自動車、電機・電子、水処理関連企業など幅広い顧客に製品を提供しています。

収益は製品の販売による対価です。運営は主に東洋紡エムシー等の連結子会社が行っています。

(4) 機能繊維・商事


エアバッグ用基布等の製造・加工および販売、衣料テキスタイル、衣料ファイバーの製造・販売を行っています。自動車部品メーカーやアパレル企業等が主な顧客です。

収益は製品の販売による対価です。運営は主にTOYOBO INDUSTRIAL MATERIAL (THAILAND) LTD.、東洋紡せんい、東洋紡STCなどが担当しています。

(5) 不動産


不動産の販売・賃貸・管理等を行っています。同社グループが保有する不動産の有効活用を図っています。

収益は不動産の賃貸料や管理料等です。運営は主に東洋紡不動産などが担っています。

(6) その他


建物・機械等の設計・施工および機器の販売、物流サービス等を行っています。グループ内の設備工事や物流も受託しています。

収益は工事請負代金や物流サービス料等です。運営は東洋紡エンジニアリング、東洋紡ロジスティクスなどが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は増加傾向にあり、事業規模は拡大しています。利益面では、2023年3月期に大きく落ち込みましたが、その後は回復基調にあり、2025年3月期には経常利益が100億円台に回復しました。利益率は低い水準で推移しており、収益性の向上が課題となっています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 3,374億円 3,757億円 3,999億円 4,143億円 4,220億円
経常利益 207億円 231億円 66億円 70億円 106億円
利益率(%) 6.1% 6.1% 1.6% 1.7% 2.5%
当期利益(親会社所有者帰属) -48億円 62億円 -20億円 0.4億円 31億円

(2) 損益計算書


売上高は微増し、売上総利益率は改善傾向にあります。これは製品価格改定の効果などが寄与したためです。営業利益は大きく増加し、本業の収益力が回復しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 4,143億円 4,220億円
売上総利益 880億円 971億円
売上総利益率(%) 21.2% 23.0%
営業利益 90億円 167億円
営業利益率(%) 2.2% 3.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料賃金賞与等が187億円(構成比23%)、研究開発費が144億円(同18%)、運送・保管費が133億円(同17%)を占めています。

(3) セグメント収益


フィルム事業が大幅な増益となり、全社の利益回復を牽引しました。環境・機能材事業も増益となりましたが、ライフサイエンス事業は減益となりました。機能繊維・商事事業は黒字転換を果たしました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
フィルム 1,565億円 1,668億円 27億円 69億円 4.1%
ライフサイエンス 346億円 343億円 44億円 20億円 5.9%
環境・機能材 1,153億円 1,108億円 47億円 80億円 7.2%
機能繊維・商事 957億円 981億円 -10億円 5億円 0.5%
不動産 41億円 41億円 20億円 18億円 42.8%
その他 81億円 78億円 10億円 8億円 9.9%
調整額 - - -48億円 -33億円 -
連結(合計) 4,143億円 4,220億円 90億円 167億円 3.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業活動で得た資金に加え、財務活動(借入等)による資金調達を行い、投資活動に充当する「積極型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 216億円 301億円
投資CF -588億円 -464億円
財務CF 83億円 105億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.0%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は31.6%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、創立者である渋沢栄一の座右の銘『順理則裕(じゅんりそくゆう)』を企業理念としています。これは「なすべきことをする、なすべからざることはしない。順理を貫くことで、世の中をゆたかにし、自らも成長する。」という精神です。また、企業理念体系「TOYOBO PVVs」を制定し、社会課題の解決と企業価値向上を目指しています。

(2) 企業文化


「TOYOBO PVVs」において、「Values:大切にすること」として「変化を恐れず、変化を楽しみ、変化をつくる」ことを掲げています。また、「TOYOBO Spirit~9つの約束」として、「挑戦(先取、創造、遂行)」「信頼(安全へのこだわり、お客さま満足、現場・現物・現実)」「協働(双方向の意思疎通、多様性の確保・活用、やってみる機会の提供)」を行動指針としています。

(3) 経営計画・目標


「2025中期経営計画」を推進しており、2025年度を最終年度としています。2025年度の財務目標として以下の数値を掲げています。

* 営業利益:300億円以上
* ROE:5%
* ROIC:5.0%

(4) 成長戦略と重点施策


「安全・防災、品質の徹底」「事業ポートフォリオの組替え」「未来への仕込み」「土台の再構築」の4つの施策に取り組んでいます。特に事業ポートフォリオの組替えでは、フィルム事業およびライフサイエンス事業を「重点拡大事業」と位置づけ、積極的な投資を行っています。また、環境・機能材事業は三菱商事との合弁会社による運営で成長を目指し、要改善事業については収益性改善策を実行しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人」を最も重要な経営資本と位置づける「人材マネジメント方針」のもと、「TOYOBO PVVs」を体現する人材の育成と組織開発を推進しています。具体的には、次世代経営人材やモノづくり現場リーダーの育成、ダイバーシティの推進、健康経営などに注力し、従業員の幸せとグループの持続的成長を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.0歳 13.9年 6,420,290円


※平均年間給与は、賞与および基準外賃金を含んでいます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.6%
男性育児休業取得率 86.3%
男女賃金差異(全労働者) 66.0%
男女賃金差異(正規雇用) 68.2%
男女賃金差異(非正規) 47.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年休取得率(79.0%)、過重労働者比率(0.26%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 災害・事故・感染症の発生


国内外の拠点で生産活動を行っており、大規模な地震や風水害等の自然災害、火災事故、感染症の流行等が発生した場合、事業に重大な影響を及ぼす可能性があります。特に過去の火災事故を踏まえ、安全文化の醸成と安全基盤の整備に取り組んでいますが、リスクを完全に排除することは困難です。

(2) 原材料の購入


主要製品の原材料として石油化学製品などを使用しており、原油価格の変動や需給バランスの変化により購入価格が高騰するリスクがあります。また、自然災害やサプライチェーンの混乱により必要量の原材料が確保できなくなる可能性もあります。

(3) 製品の欠陥等


自動車の安全に関わるエアバッグ用基布や医薬品製造受託など、製品の安全性や品質が極めて重要な事業を展開しています。製品の欠陥や品質問題が発生した場合、多額の損害賠償や製品回収費用が発生するだけでなく、社会的信用の失墜につながる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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