ユニチカ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ユニチカ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社グループは、東京証券取引所プライム市場に上場しており、高分子事業、機能資材事業、繊維事業を主な事業内容としています。当連結会計年度の業績は、売上高が1,264億円で増収、営業利益は59億円で黒字転換しましたが、事業構造改善費用の計上等により当期純利益は大幅な赤字となりました。


※本記事は、株式会社ユニチカ の有価証券報告書(第215期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ユニチカってどんな会社?


高分子、機能資材、繊維の3分野を展開する素材メーカーです。事業再生計画のもと、ポートフォリオ変革を進めています。

(1) 会社概要


1889年に有限責任尼崎紡績会社として創立し、1969年にニチボーと日本レイヨンが合併してユニチカとなりました。1999年に繊維事業等を分社化するなど再編を進め、2009年にはユニチカファイバーから産業資材事業を承継しました。2022年に東京証券取引所プライム市場へ移行し、現在は高分子事業等への変革を図っています。

連結従業員数は2,663名、単体では1,218名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位は取引金融機関である三菱UFJ銀行、第3位は従業員持株会となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.28%
三菱UFJ銀行 4.08%
ユニチカ従業員持株会 2.93%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名(社外含む)の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長執行役員には藤井 実氏が就任しています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
藤井 実 代表取締役社長執行役員監査室、技術統括部担当 1987年同社入社。ガラス繊維事業部長、ユニチカグラスファイバー社長、技術開発本部長などを経て、2025年4月より現職。
柏木 寿深 代表取締役副社長執行役員構造改革推進室、産業繊維事業、不織布事業担当 2000年大和証券入社。地域経済活性化支援機構執行役員マネージング・ディレクターなどを経て、2025年4月より現職。
三須 修一 取締役常務執行役員経理部、法務コンプライアンス部、情報システム部、サステナビリティ推進室担当 1991年三和銀行(現三菱UFJ銀行)入行。三菱UFJニコス執行役員などを経て、2024年4月同社入社。2025年4月より現職。
小林 瑛二 取締役常務執行役員経営企画部、繊維セグメント担当 2004年商工組合中央金庫入社。デロイトトーマツ等を経て、地域経済活性化支援機構シニアディレクター。2025年4月より現職。
藤本 慎司 取締役常務執行役員高分子セグメント、ガラス繊維事業、ACF事業、ガラスビーズ事業、購買物流部担当 2007年アーサー・ディ・リトル・ジャパン入社。PwCアドバイザリー等を経て、地域経済活性化支援機構シニアディレクター。2025年4月より現職。
奥 大和 取締役上席執行役員人事総務部担当経理部副担当 2011年日本生命保険入社。あずさ監査法人等を経て、地域経済活性化支援機構シニアマネージャー。2025年4月より現職。


社外取締役は、古川 実(元日立造船会長)、石川 路子(甲南大学教授)、堀野 桂子(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「高分子事業」「機能資材事業」「繊維事業」および「その他」事業を展開しています。

高分子事業


ナイロンやポリエステル等のフィルム、およびナイロン、ポリエステル、ポリアリレート等の樹脂製品を製造・販売しており、食品包装や工業用途などに利用されています。

製品販売による代金を収益源としています。運営は主にユニチカ、日本エステル、テラボウおよび海外子会社などが行っています。

機能資材事業


ガラス繊維製品、ガラスビーズ、活性炭繊維、不織布(ポリエステル、コットン)などの製造・販売を行っており、産業資材や電子材料、土木・建築資材として利用されています。

製品販売による代金を収益源としています。運営は主にユニチカ、ユニチカグラスファイバー、ユニチカガラスビーズ、ユニチカスパークライトなどが行っています。

繊維事業


各種繊維(糸・綿・織物等)や繊維二次製品の製造・販売を行っており、衣料用や産業用として展開しています。

製品販売による代金を収益源としています。運営は主にユニチカテキスタイル、ユニチカトレーディング、大阪染工および海外子会社などが行っています。

その他


上記報告セグメントに含まれない事業として、不動産賃貸業やソフトウエア開発、設備保全業務などを行っています。

サービスの提供や賃貸料などを収益源としています。運営は主にユニチカおよびグループ各社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は1,100億円台から1,200億円台で緩やかに増加傾向にあります。利益面では、2024年3月期に営業赤字・経常赤字となりましたが、当期は価格改定やコスト削減効果等により黒字回復しました。一方、当期純利益は構造改革に伴う巨額の特別損失計上により、2期連続で大幅な赤字となっています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,104億円 1,147億円 1,179億円 1,183億円 1,264億円
経常利益 54億円 64億円 11億円 -10億円 47億円
利益率(%) 4.9% 5.6% 0.9% -0.9% 3.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 33億円 16億円 18億円 -26億円 -289億円

(2) 損益計算書


当期は前期と比較して増収となり、売上総利益率も改善しました。営業利益は前期の赤字から黒字に転換し、営業利益率は4.6%となりました。売上原価率は低下傾向にあり、収益性の改善が見られます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,183億円 1,264億円
売上総利益 189億円 257億円
売上総利益率(%) 16.0% 20.3%
営業利益 -25億円 59億円
営業利益率(%) -2.1% 4.6%


販売費及び一般管理費のうち、運送費及び保管料が50億円(構成比25%)、賃金が48億円(同24%)、技術研究費が30億円(同15%)を占めています。

(3) セグメント収益


全セグメントで増収となりました。高分子事業は価格改定や販売量回復により増収増益、機能資材事業も電子材料等の回復で黒字転換しました。繊維事業は増収ながらも営業損失が継続しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
高分子事業 511億円 554億円 6億円 60億円 10.8%
機能資材事業 342億円 370億円 -25億円 3億円 0.8%
繊維事業 330億円 339億円 -5億円 -4億円 -1.1%
その他 0.5億円 0.6億円 -0.9億円 -0.8億円 -143.9%
調整額 - - 0.1億円 -0.1億円 -
連結(合計) 1,183億円 1,264億円 -25億円 59億円 4.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

ユニチカは、事業構造改善費用などの非資金項目が貢献し、営業活動によるキャッシュ・フローは増加しました。一方で、設備投資に伴う支出により、投資活動によるキャッシュ・フローは減少しました。また、リース債務の返済などにより、財務活動によるキャッシュ・フローも減少しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 82億円 63億円
投資CF -75億円 -31億円
財務CF -3億円 -4億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「暮らしと技術を結ぶことによって社会に貢献する」という経営理念のもと、「お客様から選ばれ続ける企業」を目指しています。この理念に基づき、災害や環境問題などの社会的課題に対し、独自の技術を用いた製品を提供することで解決を図ることをミッションとしています。

(2) 企業文化


同社は「ユニチカグループ企業行動憲章」を制定し、法令遵守や人権尊重、環境保全などを重視する企業風土を醸成しています。また、具体的な行動指針として「ユニチカグループ行動基準」を定め、従業員一人ひとりが高い倫理観を持って業務に取り組むことを求めています。

(3) 経営計画・目標


2024年11月に策定した事業再生計画に基づき、2030年3月期を最終年度とする経営目標を掲げています。構造改革を遂行し、高分子等の将来性のある事業を中心とするポートフォリオへの変革を目指します。

* 売上高700億円
* 営業利益65億円

(4) 成長戦略と重点施策


事業再生計画の確実な遂行を最優先課題としています。具体的には、不採算事業の撤退・縮小による構造改革、コスト削減によるローコスト運営体制の確立、付加価値の高い製品の販売拡大、および組織運営体制の強化に取り組みます。特に高分子事業や無機系素材事業などに経営資源を集中させ、収益力の強化を図る方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人権の尊重」「働きがいのある会社づくり」「ダイバーシティの推進」を優先課題として掲げています。人材育成においては、経営人材、生産幹部人材、DX人材の3つの「中核人材プール」を策定し、計画的な育成と登用を進めています。また、多様な人材が活躍できる環境整備や、従業員の健康保持増進にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.1歳 21.0年 4,946,863円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.7%
男性育児休業取得率 93.8%
男女賃金差異(全労働者) 77.7%
男女賃金差異(正規雇用) 80.3%
男女賃金差異(非正規雇用) 64.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、人権関連教育の実施率(76%)、総合職本社新卒採用女性比率(40%)、中核人材プールの年次レビュー実施率(100%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 法令等の順守に関するリスク


同社グループ製品(高伸度防砂シート)に関して、空港や港湾工事における不具合を理由とした損害賠償請求訴訟が提起されています。これらの訴訟の結果によっては、多額の賠償費用が発生し、業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 製品の安全・品質保証に関するリスク


製品の品質管理には万全を期していますが、予期せぬ原因により製品に重大な欠陥が発生する可能性があります。その場合、回収費用や補償・訴訟費用、社会的信用の毀損などにより、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 原燃料価格の変動リスク


高分子事業や繊維事業の製品はナフサ由来の化学原料を主に使用しています。原油価格やナフサ価格の変動を製品価格へ転嫁できない場合や、生産性向上で吸収できない場合、十分なスプレッドが確保できず、業績が悪化する可能性があります。

(4) 固定資産の減損リスク


事業環境の著しい変化や収益性の低下により、保有する固定資産等の帳簿価額を回収できないと判断された場合、減損損失の計上が必要となり、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。当期においても構造改革に伴う多額の減損損失を計上しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。