※本記事は、ユニチカ株式会社の有価証券報告書(第216期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ユニチカってどんな会社?
同社グループは、高分子や機能資材、繊維などの素材を幅広く提供する企業です。
■(1) 会社概要
1889年に有限責任尼崎紡績会社として創立され、1969年にニチボーと日本レイヨンが合併してユニチカに改称しました。1999年に化合繊事業を分離するなど組織再編を進め、2021年には本店を大阪市に移転しました。2025年には地域経済活性化支援機構の支援を受け、事業構造の抜本的な改革を進めています。
現在の従業員数は連結で1692名、単体で847名です。筆頭株主は事業再生支援を行う地域経済活性化支援機構で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は金融機関となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 地域経済活性化支援機構 | 66.70% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 2.99% |
| 三菱UFJ銀行 | 1.34% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長執行役員は藤井実が務めています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 藤井 実 | 代表取締役社長執行役員 | 1987年同社入社。ガラス繊維事業部長等を経て、2023年技術開発本部長。2025年より現職。 |
| 柏木 寿深 | 代表取締役副社長執行役員 | 地域経済活性化支援機構等を経て、2025年より現職。 |
| 三須 修一 | 取締役常務執行役員 | 三和銀行(現三菱UFJ銀行)、三菱UFJニコス等を経て、2024年同社入社。2025年より現職。 |
| 小林 瑛二 | 取締役常務執行役員 | 商工組合中央金庫、地域経済活性化支援機構等を経て、2025年より現職。 |
| 藤本 慎司 | 取締役常務執行役員 | アーサー・ディ・リトル・ジャパン、地域経済活性化支援機構等を経て、2025年より現職。 |
| 中野 信介 | 取締役上席執行役員 | 有限責任監査法人トーマツ、地域経済活性化支援機構等を経て、2025年同社入社。2026年より現職。 |
社外取締役は、古川実(元日立造船社長)、箱守一昭(元中山製鋼所社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「高分子事業」「機能資材事業」「繊維事業」および「その他」事業を展開しています。
■高分子事業
ナイロンフィルム、ポリエステルフィルム、各種樹脂などの製造・販売を行っています。包装分野や電子材料分野、自動車部品用途などを中心に顧客へ製品を提供しています。
製品の販売による対価が主な収益源です。運営は同社や日本エステル、テラボウなどの子会社が行っています。
■機能資材事業
ガラス繊維製品の販売や活性炭繊維の製造・販売などを行っています。産業資材分野や電気電子分野向けに製品を展開しています。
製品の販売により収益を得ています。運営は同社やユニチカグラスファイバー、ユニチカガラスビーズなどの子会社が行っています。
■繊維事業
天然繊維や化学繊維を使用した織編物の染色や整理加工、紡績糸の製造・販売を行っています。土木資材や生活関連用品向けに展開しています。
製品の販売や加工手数料から収益を得ています。運営は大阪染工やP.T.UNITEXなどの子会社が行っています。
■その他
報告セグメントに含まれないその他の事業を展開しています。
各サービスの提供や製品の販売により収益を得ています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は1100億円から1200億円台で推移していますが、経常利益は一時赤字を計上するなどの変動が見られます。当期は不採算事業からの撤退を進めたことで減収となったものの、高付加価値製品の拡販やコスト削減により経常利益は大幅に改善し、黒字転換を果たしています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1147億円 | 1179億円 | 1183億円 | 1264億円 | 1186億円 |
| 経常利益 | 64億円 | 11億円 | -10億円 | 47億円 | 104億円 |
| 利益率(%) | 5.6% | 0.9% | -0.9% | 3.7% | 8.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 16億円 | 18億円 | -26億円 | -289億円 | 66億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は減少したものの、売上総利益および営業利益はともに前年を上回っています。価格改定や高付加価値製品の販売増加により、利益率が大きく改善していることがわかります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1264億円 | 1186億円 |
| 売上総利益 | 257億円 | 293億円 |
| 売上総利益率(%) | 20.3% | 24.7% |
| 営業利益 | 59億円 | 105億円 |
| 営業利益率(%) | 4.6% | 8.9% |
販売費及び一般管理費のうち、運送費及び保管料が45億円(構成比24%)、賃金が42億円(同22%)、技術研究費が30億円(同16%)を占めています。
■(3) セグメント収益
高分子事業は電子材料分野の需要が堅調に推移し増収となりました。一方で機能資材事業および繊維事業は、事業構造改革に伴う不採算事業の譲渡や撤退を進めた影響により、いずれも前年から減収となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 高分子事業 | 554億円 | 564億円 |
| 機能資材事業 | 370億円 | 337億円 |
| 繊維事業 | 339億円 | 284億円 |
| その他 | 0.6億円 | 0.7億円 |
| 連結(合計) | 1264億円 | 1186億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFと投資CFがプラス、財務CFがマイナスとなっており、営業利益と資産売却等によって得た資金で借入の返済を進める改善局面にあるといえます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 63億円 | 56億円 |
| 投資CF | -31億円 | 343億円 |
| 財務CF | -4億円 | -61億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は52.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は35.7%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「暮らしと技術を結ぶことによって社会に貢献する」という経営理念のもと、「お客様から選ばれ続ける企業」を目指して事業活動を展開しています。
■(2) 企業文化
サステナビリティに関する方針として、災害や事故から人々を守る製品の提供、全てのステークホルダーの人権の尊重、多様な人材がやりがいを感じて働くことのできる環境の整備などを優先課題として掲げています。
■(3) 経営計画・目標
事業再生計画を着実に遂行し、最終年度である2030年3月期には以下の数値目標の達成を目指しています。
* 売上高:700億円
* 営業利益:65億円
■(4) 成長戦略と重点施策
事業再生計画の骨子として、構造改革による不採算事業からの撤退、ローコスト運営体制の確立、高分子事業およびガラス繊維事業を中心とした高付加価値製品の販売拡大を掲げています。また、意思決定のスピードを高めるための組織運営体制の強化や、全社的なコスト構造改革による筋肉質な事業体質の構築を進めていきます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「Governance/事業基盤の整備」を基本方針として、組織風土改革や人材育成、技術伝承に取り組んでいます。多様な人材を活かすダイバーシティ経営を推進し、次世代リーダーとなる中核人材について独自のプール制度を設けて育成を図るなど、個々の従業員の能力向上とキャリア開発を支援しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 44.1歳 | 22.0年 | 5,857,875円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.5% |
| 男性育児休業取得率 | 85.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 75.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 78.7% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 62.5% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、人権関連教育の実施率(76.0%)、休業度数率(0.65)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 法令等の順守に関するリスク
事業を遂行していく上で、取引先や第三者との間で損害賠償請求訴訟等が発生した場合、業績や財政状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 製品の安全・品質保証に関するリスク
予測できない原因により製品に重大な欠陥が発生した場合、回収費用や社会的信用の毀損、多大な賠償費用の負担などにより業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 原燃料価格の変動に関するリスク
石化原燃料などの購入価格の変動をタイムリーに製品価格へ転嫁できず、十分なスプレッドを確保できなかった場合、収益の維持や確保に悪影響を及ぼす可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。