象印マホービン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

象印マホービン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の家庭用品メーカー。炊飯ジャーや電気ポットなどの調理家電製品、ステンレスマホービンなどのリビング製品を主力事業としています。第81期連結会計年度は、国内の高付加価値商品の販売好調や価格転嫁の進展により、売上高は912億円、経常利益は83億円と増収増益を達成しました。


※本記事は、象印マホービン株式会社 の有価証券報告書(第81期、自 2024年11月21日 至 2025年11月20日、2026年02月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 象印マホービンってどんな会社?


魔法瓶の製造から始まり、炊飯ジャー等の調理家電で高いシェアを持つ家庭用品メーカーです。

(1) 会社概要


同社は1948年に株式会社協和製作所として設立され、1961年に現在の商号へ変更しました。1970年には電子ジャーを開発し家庭用電気製品分野へ進出、1981年にはステンレス製マホービンの販売を開始しました。1986年に大阪証券取引所市場第二部へ上場し、2018年には東京証券取引所市場第一部へ指定されました。現在は東証プライム市場に上場しています。

同社グループの連結従業員数は1,515名、単体では527名です。筆頭株主はCLEARSTREAM BANKING S.A(海外法人)で、第2位は社長の市川典男氏、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。創業家出身の市川家が主要株主に名を連ねており、安定した株主構成となっています。

氏名 持株比率
CLEARSTREAM BANKING S.A(常任代理人 香港上海銀行東京支店) 16.01%
市川典男 8.50%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.18%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性3名の計14名で構成され、女性役員比率は21.4%です。代表取締役社長執行役員は市川典男氏です。社外取締役比率は42.9%です。

氏名 役職 主な経歴
市川 典男 代表取締役社長執行役員 1981年入社。商品第一開発部長等を経て2001年社長に就任。2020年より現職。
松本 龍範 取締役常務執行役員国内営業担当 1984年入社。営業部長、国内営業本部長等を歴任。2024年より現職。
宮越 芳彦 取締役常務執行役員国際営業本部長 1984年入社。国際部長等を経て2025年より現職。米国子会社等の会長も兼任。
真田 修 取締役常務執行役員管理担当 1984年入社。経理部長、人事部長、管理本部長等を歴任。2024年より現職。
造田 英治 取締役常務執行役員経営企画部長 1990年入社。経営企画部長、新事業開発室長等を歴任。2025年より現職。
大上 純 取締役常務執行役員国内営業本部長 1986年入社。営業推進部長、営業企画部長、東京支社長等を歴任。2025年より現職。
山根 博志 取締役常務執行役員生産開発本部長 1993年入社。第一事業部長、生産開発本部副本部長等を歴任。2025年より現職。
上原 正義 取締役〔常勤監査等委員〕 1984年入社。監査部長、人事総務部長等を経て2024年より現職。


社外取締役は、伊住弘美(株式会社ミリエーム相談役)、戸田奨(元エノテカ社長)、金井宏彰(金井ホールディングス社長)、塩野香苗(税理士)、宇都宮一志(弁護士)、西村智子(公認会計士・税理士)です。

2. 事業内容


同社グループは、家庭用品等の製造、販売及びこれらの付随業務を営んでいますが、重要性が乏しいため報告セグメントは省略されています。以下は製品区分ごとの事業内容です。

(1) 調理家電製品


炊飯ジャー、電気ポット、ホットプレート、オーブンレンジなどの調理用家電製品を提供しています。主力の炊飯ジャー「炎舞炊き」シリーズなど、家庭での食生活を豊かにする製品を展開しており、一般消費者が主な顧客です。

収益は、国内外の家電量販店や販売代理店等への製品販売により得ています。国内では同社、象印フレスコ、象印特販などが販売を行い、海外ではZojirushi America Corporationや上海象印家用電器有限公司などの販売子会社が各地域での販売を担っています。製造は象印ファクトリー・ジャパンや新象製造廠有限公司が行っています。

(2) リビング製品


ステンレスマホービン、ガラスマホービン、ステンレスボトル(マグ)、ステンレスランチジャーなどの保温・保冷製品を提供しています。環境配慮意識の高まりに対応したマイボトルなど、日常生活に密着した製品を展開しています。

収益は製品の販売によるものです。調理家電製品と同様に、国内では同社および国内販売子会社、海外では各国の販売子会社を通じて販売されています。製造は象印ファクトリー・ジャパンのほか、タイの関連会社Union Zojirushi Co., Ltd.も担っています。

(3) 生活家電製品


空気清浄機、加湿器、ふとん乾燥機などの生活環境を改善する家電製品を提供しています。快適で健康的な暮らしをサポートする製品群を展開しています。

収益は製品の販売によるものです。他の製品区分と同様の販売網を通じて提供されています。製造は主に象印ファクトリー・ジャパンが担当しています。

(4) その他製品


産業用機械などのその他製品に加え、飲食事業として「象印食堂」の運営を行っています。象印食堂では、同社の高級炊飯ジャーで炊き上げたごはんを提供し、製品の良さを体験できる場を提供しています。

収益は、製品販売および飲食サービス等の対価として得ています。国内での飲食事業運営は同社グループが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は増加傾向にあり、直近では900億円台に達しています。利益面では、経常利益が安定して推移しており、当期純利益も堅調です。全体として増収基調を維持しつつ、安定した収益性を確保しています。

項目 2021年11月期 2022年11月期 2023年11月期 2024年11月期 2025年11月期
売上高 777億円 825億円 835億円 872億円 912億円
経常利益 68億円 58億円 65億円 74億円 83億円
利益率(%) 8.7% 7.0% 7.8% 8.5% 9.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 45億円 37億円 44億円 65億円 60億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し、売上総利益率、営業利益率ともに改善しています。原価率の抑制や販管費のコントロールが機能し、収益性が向上していることが読み取れます。

項目 2024年11月期 2025年11月期
売上高 872億円 912億円
売上総利益 283億円 304億円
売上総利益率(%) 32.4% 33.4%
営業利益 60億円 74億円
営業利益率(%) 6.8% 8.2%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が49億円(構成比21%)、広告宣伝費が28億円(同12%)を占めています。

(3) セグメント収益


調理家電製品は炊飯ジャーやオーブンレンジの好調により増収となりました。生活家電製品も加湿器などが好調で大幅な増収となっています。一方、リビング製品はステンレス製品の販売が振るわず減収となりました。その他(飲食事業等)は好調に推移しています。

区分 売上(2024年11月期) 売上(2025年11月期)
調理家電製品 612億円 644億円
リビング製品 181億円 164億円
生活家電製品 56億円 77億円
その他製品 23億円 27億円
連結(合計) 872億円 912億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業で稼いだ資金で借入返済を行いつつ、投資も自己資金で賄う健全型(営業CF+、投資CF-、財務CF-)です。

項目 2024年11月期 2025年11月期
営業CF 55億円 99億円
投資CF -0億円 -21億円
財務CF -64億円 -91億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は75.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、創業以来の企業理念として「暮らしをつくる」を定めています。これは経営の根底にある不変の価値観を表しています。また、経営方針として「BRAND INNOVATION(ブランド革新)~家庭用品ブランドの深化と「食」と「暮らし」のソリューションブランドへの進化~」を掲げ、従来の家庭用品メーカーの枠を超え、商品やサービスを通じて生活者の不満や負担を解決することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、時代の変化に適応し、「食」と「暮らし」の課題を解決するソリューションブランドへの進化を目指しています。また、ESGにおける重要課題として「価値創造にチャレンジする人材/職場づくり」を掲げ、人権の尊重、ダイバーシティ&インクルージョンの推進、健康経営の推進などを重視しています。従業員の多様性や個性を尊重し、働きがいのある職場環境づくりに取り組む文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社は、2026年11月期から2028年11月期までの3ヵ年を対象とする新中期経営計画『BEYOND』を策定しました。この期間を、既存の枠組みを越えた施策を実行し、成長の壁を越えていく期間と位置付けています。

* 連結売上高 1,000億円
* 連結営業利益 90億円(利益率9.0%)
* ROE 8.0%

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画『BEYOND』では、「コア領域の高成長と新規マーケットの開拓」、「人材・組織の強靭化、それを支えるDX」、「ブランドを軸とした企業価値の持続的向上」の3つを重点課題として掲げています。

* 炊飯ジャーブランドのグローバル浸透
* レンジ事業の成長によるコア領域の拡大
* マホービンを基礎としたリビング事業の再成長
* 国内市場攻略および海外重点地域のマーケティング強化
* 飲食事業・製品などの新規領域拡大
* 人的資本経営の推進とDXによる生産性向上

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人材は経営活動の源である」という考えのもと、人材を最も重要な経営資源と位置付けています。中期経営計画において「人的資本経営の推進」を重要課題とし、若年時の複数業務経験や専門職制度の導入による自律的な人材育成、ジョブローテーションによる適正配置、タレントマネジメントシステムの活用などを通じて、人材と組織の強靭化を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年11月期 39.8歳 14.2年 8,350,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 5.9%
男性労働者の育児休業取得率 104.5%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 67.3%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) 73.9%
労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用労働者) 75.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者法定雇用率の確保(2.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 新製品開発について


新規カテゴリーや高付加価値製品の開発を目指していますが、市場の支持を得られない場合や販売が成功しない場合、将来の成長と収益性が低下し、業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。このリスクに対し、製品の基本性能向上に加え、使用時の不満解決や安全性・使いやすさにこだわり、付加価値の高い製品を提供することで対応しています。

(2) 製品価格の下落について


競争力のある新製品投入等で価格維持・上昇を図っていますが、市場からの値下げ圧力やリベート要求は強まっています。想定を上回る価格下落が長期化した場合、業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。

(3) 為替変動による影響について


海外事業の資産等は換算時の為替レートの影響を受けます。また、海外からの輸入製品や部材は外貨決済されており、予測を超えた円安進行などは業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。輸出による外貨収入を支払いに充てるほか、為替予約によるリスクヘッジを行っています。

(4) 競合他社との競争について


主力製品は家電メーカー等と競合しており、一部にはより多くの経営資源を持つ企業もあります。競争激化によりシェアが低下した場合、業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。商品ラインアップ拡充や既存商品の活性化、新たな価値やライフスタイルの提案により、売上やシェアの拡大を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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