※本記事は、株式会社キユーソー流通システム の有価証券報告書(第60期、自 2024年12月1日 至 2025年11月30日、2026年2月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. キユーソー流通システムってどんな会社?
食品物流に特化したキユーピーグループの中核企業です。4温度帯(常温・定温・冷蔵・冷凍)の技術を活かし、食品の保管から配送までを一貫して提供しています。
■(1) 会社概要
1966年にキユーピー倉庫として設立され、1989年に現社名の前身となるキユーピー流通システムへ商号変更し、共同配送便「キユーソー便」の名称を統一しました。2000年に現在のキユーソー流通システムへ商号変更し、2010年には多機能車両の開発など技術革新も推進しています。2022年の市場区分見直しに伴い、スタンダード市場へ移行しました。
同社グループの従業員数は連結7,971名、単体646名です。筆頭株主は親会社の食品メーカーであるキユーピーで、第2位はキユーピーグループの資産管理等を行う中島董商店、第3位は倉庫・港湾運送業の三菱倉庫です。キユーピーグループおよび協力会社との強固な関係性が特徴です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| キユーピー | 43.29% |
| 中島董商店 | 5.93% |
| 三菱倉庫 | 5.10% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性3名の計14名で構成され、女性役員比率は21.4%です。代表取締役社長は富田仁一氏が務めています。社外取締役比率は21.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 富田 仁一 | 代表取締役社長 | 三英食品販売、キユーピーを経て、2020年キユーソーエルプラン社長。同年同社取締役執行役員共同物流事業担当などを歴任し、2024年2月より現職。 |
| 犬塚 英作 | 取締役執行役員専用物流事業担当兼開発本部管掌 | 1986年同社入社。倉庫事業部長、施設管理部長、開発本部長などを経て、2021年取締役。2024年9月より現職。 |
| 岡田 敦 | 取締役執行役員共同物流事業担当兼業務本部長 | 1993年同社入社。営業本部長、東日本支社長などを経て、2024年2月取締役執行役員。同年9月より現職。 |
| 髙山 典之 | 取締役執行役員関連事業担当兼海外推進室長 | 1994年同社入社。経営企画室長、海外推進部長などを経てインドネシア現地法人幹部を歴任。2025年2月より現職。 |
| 山本 幸喜 | 取締役執行役員管理担当兼人事本部長 | 1994年同社入社。人事部長、経営推進本部長などを経て、2025年2月より現職。 |
| 渡邊 龍太 | 取締役 | 1987年キユーピー入社。同社生産本部長、取締役上席執行役員を経て、2023年常務執行役員。2024年2月より現職。 |
社外取締役は、大槻啓子(元モルガン・スタンレー・ジャパン マネージングディレクター)、川又義寛(ビジョナリーボード代表取締役)、濱岡健(元京セラ有機材料事業本部本部室室長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「共同物流事業」「専用物流事業」「関連事業」の3つの報告セグメントで事業を展開しています。
■(1) 共同物流事業
食品メーカーや卸売業などを主な顧客とし、食品の保管・荷役および全国共同配送サービスを提供しています。複数の顧客の荷物を積み合わせる「キユーソー便」などの共同配送システムにより、効率的な物流を実現しています。
収益は、顧客から受け取る保管料、荷役料、および運送料から構成されています。運営は、同社を中心に、キユーソーティス、エスワイプロモーション、キユーソーエルプランなどの連結子会社が担っています。
■(2) 専用物流事業
コンビニエンスストアや外食チェーンなどの特定顧客に対し、物流センターの運営や配送業務を提供しています。顧客ごとのニーズに合わせた専用の物流システムを構築し、効率的なサプライチェーンを支援しています。
収益は、顧客であるコンビニエンスストア本部や外食企業等から受け取る物流センター運営受託料や配送委託料などです。運営は、サンファミリー、アクシアロジなどの連結子会社が主に行っています。
■(3) 関連事業
物流事業を支える付帯サービスとして、車両・物流機器・燃料等の販売を行うほか、中国およびインドネシアにおいて倉庫・輸配送・フォワーディング業務を展開しています。近年は特に海外展開を強化しています。
収益は、物品の販売代金や、海外における物流サービス料などです。運営は、国内ではキユーソーサービス、海外では上海丘寿儲運有限公司やインドネシアのKIAT ANANDA GROUP各社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に増加傾向にあります。特に直近では2,000億円台に到達しました。経常利益も安定して推移しており、一時的な赤字期間を除き黒字を維持しています。利益率は低水準ながらも回復傾向にあります。
| 項目 | 2021年11月期 | 2022年11月期 | 2023年11月期 | 2024年11月期 | 2025年11月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,760億円 | 1,796億円 | 1,846億円 | 1,952億円 | 2,026億円 |
| 経常利益 | 33億円 | 33億円 | 35億円 | 49億円 | 48億円 |
| 利益率(%) | 1.9% | 1.8% | 1.9% | 2.5% | 2.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 16億円 | 15億円 | -13億円 | 27億円 | 26億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加し、増収となりました。売上総利益率は一定水準を維持しています。営業利益も微増しており、コストコントロールが図られている様子がうかがえます。
| 項目 | 2024年11月期 | 2025年11月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,952億円 | 2,026億円 |
| 売上総利益 | 122億円 | 123億円 |
| 売上総利益率(%) | 6.2% | 6.1% |
| 営業利益 | 56億円 | 56億円 |
| 営業利益率(%) | 2.8% | 2.8% |
販売費及び一般管理費のうち、給与が23億円(構成比35%)、役員報酬が7億円(同10%)を占めています。物流事業のため、売上原価の多くは労務費や傭車費などが占める構造となっています。
■(3) セグメント収益
共同物流事業は適正料金施策や既存取引の拡大により増収となりました。専用物流事業は一部取引の減少があったものの、適正料金施策の進捗により利益面での改善が見られます。関連事業は国内での販売増やインドネシアでの取引拡大により大幅な増収となりました。
| 区分 | 売上(2024年11月期) | 売上(2025年11月期) |
|---|---|---|
| 共同物流事業 | 1,326億円 | 1,371億円 |
| 専用物流事業 | 400億円 | 399億円 |
| 関連事業 | 226億円 | 256億円 |
| 連結(合計) | 1,952億円 | 2,026億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
キユーソー流通システムは、財務活動において短期借入金の純増減額の減少がありつつも、長期借入による収入が増加したことで、前年度比で収入が増加しました。営業活動によるキャッシュ・フローは、売上債権の増減や仕入債務の増減、法人税等の支払額の増加などが影響し、前年度比で減少しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、関係会社株式の取得による支出の増加が主な要因となり、前年度比で支出が増加しました。
| 項目 | 2024年11月期 | 2025年11月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 123億円 | 96億円 |
| 投資CF | -126億円 | -126億円 |
| 財務CF | 19億円 | 21億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「わたしたちは 人と食を笑顔で結び いつも信頼される企業グループです」を経営理念に掲げています。ステークホルダーの信頼を高める誠実な企業活動を実践し、持続的な企業価値の向上を目指すことを経営の基本方針としています。
■(2) 企業文化
社是として「楽業偕悦(らくぎょうかいえつ)」を掲げています。これは、同じ志を持って協力し、個人の意欲とやりがいを大切にして仕事を楽しみ、困難や喜びを分かち合うという価値観です。また、社訓である「創意工夫」を重ねながら、従業員一人ひとりの個性や能力を尊重し、チームワークを重視する風土があります。
■(3) 経営計画・目標
2036年に向けた「グループビジョン2036」を策定し、その第一歩として2025年度から2028年度までの中期経営計画を推進しています。最終年度となる2028年11月期には以下の数値目標を掲げています。
* 営業収益:2,100億円
* 営業利益:73億50百万円
* 営業利益率:3.5%
* 自己資本利益率(ROE):6%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
「物流の持続性確保と新たな価値創出」をテーマに、「国内事業の整備」「新領域の拡充と更なる開拓」「経営基盤の強化」の3つを基本方針としています。具体的には、物流基盤の最適化、海外における新地域への進出、サステナビリティ経営の推進などに注力していく方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「従業員の成長=企業価値の向上」と捉え、従業員の成長を促す企業風土づくりに取り組んでいます。「人材育成方針」および「社内環境整備方針」を定め、教育研修制度の拡充や、多様な価値観を持つ人材が能力を発揮できる環境づくりを推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年11月期 | 40.1歳 | 15.1年 | 6,070,143円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 9.0% |
| 男性育児休業取得率 | 13.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 50.2% |
| 男女賃金差異(正規) | 60.6% |
| 男女賃金差異(非正規) | 77.8% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 物流関連規制とコスト変動
貨物自動車運送事業法などの法的規制や環境規制を受けており、これらへの対応コストが発生する可能性があります。また、原油価格の変動による燃料価格の高騰や、電力料金の引き上げが発生した場合、十分な価格転嫁が困難であれば業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 物流人材の確保・育成
ドライバーや倉庫内スタッフ等の専門的な人材の確保が課題となっています。人材確保や労働環境向上のための人件費負担が増加する可能性があるほか、必要な人材が確保できない場合や適切な人員配置ができない場合、業務運営に支障をきたす恐れがあります。
■(3) 海外事業のカントリーリスク
中国およびインドネシアで事業を展開しており、予期せぬ法律・規制の変更、政治・経済情勢の悪化、為替相場の変動などのリスクがあります。これらの要因により、海外事業の遂行や業績に影響が出る可能性があります。



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