※本記事は、イーサポートリンク株式会社 の有価証券報告書(第28期、自 2024年12月1日 至 2025年11月30日、2026年2月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. イーサポートリンクってどんな会社?
生鮮青果物流通に特化したシステム開発と業務受託、および農産物の生産・販売を行う企業です。
■(1) 会社概要
同社は2000年に生鮮青果流通業界向けのシステム提供および事務代行を目的として営業を開始しました。2002年には主力となる「イーサポートリンクシステム」の提供を開始し、2006年に大証ヘラクレス(現・東証スタンダード)へ上場しました。その後、農業支援事業の強化や有機農産物販売会社の連結子会社化を進め、2024年には青果売場構築支援事業を譲り受けるなど、青果流通における事業領域を拡大しています。
現在の従業員数は連結174名、単体166名です。大株主の筆頭は、青果物の輸入・加工・販売等を行う事業会社であるファーマインドで、第2位は資産管理会社とみられる法人、第3位はシステム開発を行う事業会社となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ファーマインド | 10.08% |
| FRACORA | 7.04% |
| フォーカスシステムズ | 2.31% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名、計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役会長兼CEOは堀内信介氏、社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 堀内信介 | 代表取締役会長兼 CEO | 協和薬品専務、ケーアイ・フレッシュアクセス副社長を経て2004年同社社長。2022年より現職。 |
| 相原徹 | 代表取締役社長執行役員 兼 COO | ケーアイ・フレッシュアクセス専務執行役員を経て2018年同社入社。専務執行役員などを歴任し2024年より現職。 |
| 深津弘行 | 取締役副社長執行役員経営戦略本部長 | 協和薬品、ケーアイ・フレッシュアクセスを経て2003年同社入社。経営企画室長、常務執行役員などを歴任し2026年より現職。 |
社外取締役は、細川昌彦(明星大学教授(特別顧問))、豊島正明(元イオン専務執行役)、白石真澄(関西大学名誉教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、「オペレーション支援事業」および「農業支援事業」を展開しています。
■(1) オペレーション支援事業
生鮮青果物の流通に関わる事業者に対し、流通システム「イーサポートリンクシステム」や商品調達支援システム「生鮮MDシステム」、地場商品取引支援「es-Marché」などを提供しています。また、これらのシステムを基盤とした受発注・計上・請求管理などの業務受託サービスや、小売店向けの青果売場構築支援も行っています。
収益は、システム利用者からのシステム使用料や、業務代行に対する受託手数料などを受け取るモデルです。システム使用料や業務受託料は、データ量や処理量に応じた従量課金制が中心です。運営は主にイーサポートリンクが行っています。
■(2) 農業支援事業
りんごや国産農産物の仕入販売、有機農産物の仕入販売、および農産物の生産事業を行っています。生産者の高齢化や異常気象による供給不足リスクに対応するため、自社グループでの生産や調達力の強化に取り組んでいます。
収益は、小売店や流通業者への農産物の販売代金です。運営はイーサポートリンクのほか、連結子会社のシェアガーデンホールディングス傘下のオーガニックパートナーズや、生産事業を行うシェアガーデン、オーガニックファームつくばの風などが担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は直近の期間において増加傾向にあり、特に最新期では大きく伸長しています。利益面では、過去に赤字を計上した時期もありましたが、その後は黒字転換し、直近2期は安定して利益を確保しています。経常利益率は2〜4%台で推移しています。
| 項目 | 2021年11月期 | 2022年11月期 | 2023年11月期 | 2024年11月期 | 2025年11月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 52億円 | 49億円 | 46億円 | 54億円 | 65億円 |
| 経常利益 | -1.3億円 | 2.2億円 | 0.8億円 | 1.8億円 | 1.6億円 |
| 利益率(%) | -2.4% | 4.5% | 1.7% | 3.4% | 2.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -9.0億円 | 1.4億円 | 0.5億円 | 1.3億円 | 1.3億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で約2割増加し、それに伴い売上総利益も増加しました。一方で、販売費及び一般管理費も増加したため、営業利益は前期に比べて減少しています。売上総利益率は30%台前半で推移しています。
| 項目 | 2024年11月期 | 2025年11月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 54億円 | 65億円 |
| 売上総利益 | 19億円 | 21億円 |
| 売上総利益率(%) | 35.2% | 33.2% |
| 営業利益 | 1.6億円 | 1.4億円 |
| 営業利益率(%) | 3.0% | 2.2% |
販売費及び一般管理費のうち、人件費が10億円(構成比51%)、保守管理費が2億円(同8%)を占めています。売上原価においては、労務費が8億円(構成比19%)、保守管理費が5億円(同13%)となっています。
■(3) セグメント収益
オペレーション支援事業は、システム利用や業務受託の拡大により増収増益となりました。農業支援事業は、主要商材の取扱高伸長により大幅な増収となりましたが、利益面では赤字が拡大しました。
| 区分 | 売上(2024年11月期) | 売上(2025年11月期) | 利益(2024年11月期) | 利益(2025年11月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| オペレーション支援事業 | 36億円 | 40億円 | 12億円 | 13億円 | 32.6% |
| 農業支援事業 | 18億円 | 25億円 | -1億円 | -2億円 | -8.1% |
| 調整額 | - | - | -9億円 | -10億円 | - |
| 連結(合計) | 54億円 | 65億円 | 2億円 | 1億円 | 2.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
イーサポートリンクのキャッシュ・フローの状況についてご説明します。
営業活動によるキャッシュ・フローは、主に売上債権や棚卸資産の増加により、資金の使用となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、事業譲受による支出が主な要因となり、資金の使用となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の純増加等により、資金の獲得となりました。
| 項目 | 2024年11月期 | 2025年11月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -2.2億円 | -2.3億円 |
| 投資CF | -4.6億円 | -4.5億円 |
| 財務CF | -3.8億円 | 1.2億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「全ては生産者と生活者のために」を掲げ、食の流通情報を活用することで生産者の暮らしを支えるとともに、生活者の食生活に貢献する企業グループを目指しています。食に携わる人が正しく評価され、生活者が安全な食品を適正価格で入手できるよう、流通を情報面で支えることを使命としています。
■(2) 企業文化
生産者と生活者の双方への貢献を重視する価値観を持っています。環境配慮型事業の志向や、持続可能な地域社会づくりへの貢献を経営戦略の一部として位置づけ、生鮮品流通におけるロス削減や効率化、サステナビリティに関連するリスクと機会を捉えた事業展開を行う姿勢を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
2025年11月期から2027年11月期までの3か年の中期経営計画を策定しています。顧客ニーズへの柔軟な対応とサービスレベル・生産性の向上により企業価値を高めることを目指し、以下の指標を重要視しています。
* 売上高
* 営業利益
* 営業利益率
* EBITDA(営業利益+減価償却費)
■(4) 成長戦略と重点施策
「基幹事業の収益維持」「積極的な投資」「事業ポートフォリオの組み換え」の3つを基本方針としています。既存のシステム・業務受託サービスの収益極大化を図りつつ、AI技術活用やM&Aなどの投資を実行します。また、地産地消の促進や、青果物を取り扱っていない業態への売場構築支援などにより、新たな収益基盤の構築を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
2024年に「人材ポリシー」を策定し、これを基盤とした人事戦略や制度の見直しを進めています。社員の人権や価値観を尊重し、差別やハラスメントのない職場環境を整備することを目指しています。また、次世代人材の育成や獲得により人的資本を拡充し、従業員エンゲージメントを高める取り組みを行っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年11月期 | 42.1歳 | 10.2年 | 6,249千円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 19.3% |
| 男性育児休業取得率 | 50.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 69.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 73.3% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 59.8% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員比率(45.8%)、次期管理職候補における女性社員比率(77.8%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 自然災害等の影響
大規模な地震や感染症の発生により、事業活動の縮小を余儀なくされる可能性があります。特に昨今の気候変動に伴う災害の大規模化は、想定外の被害をもたらす恐れがあり、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 特定の取引先への依存
システム利用料や業務受託料はデータ量等に応じた従量課金制であり、大口取引先の利用状況に業績が左右されやすい構造です。主要顧客が内製化やシステム利用の見直しを行った場合、データ量や業務量が減少し、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 取引先情報の管理
顧客の重要な情報や個人情報をシステムで管理しているため、サイバー攻撃やシステム障害による情報漏洩、データ消失のリスクがあります。これらが発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償により、経営成績に影響を与える可能性があります。
■(4) 生鮮青果物の流通量及び価格変動
同社のサービスは青果物の流通量に連動する従量課金制を採用しているため、天候不順や自然災害による不作で流通量が減少すると、収益が悪化する恐れがあります。また、自社での農産物販売においても、仕入価格の高騰や販売価格の下落が業績に影響します。



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