ラクト・ジャパン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ラクト・ジャパン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所(プライム)に上場する食品専門商社です。乳製品原料や食肉加工品等の輸入卸売に加え、アジア等でチーズの製造・販売を行っています。直近の業績は、売上高1828億円(前期比7.0%増)、経常利益58億円(同34.1%増)と増収増益で推移しています。


※本記事は、株式会社ラクト・ジャパン の有価証券報告書(第28期、自 2024年12月1日 至 2025年11月30日、2026年2月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ラクト・ジャパンってどんな会社?


乳製品原料や食肉、機能性食品原料を取り扱う独立系専門商社です。海外でのチーズ製造などメーカー機能も有しています。

(1) 会社概要


1998年に設立され、農産物および農産物加工品の輸出入・販売を開始しました。2003年にはシンガポールに現地法人を設立し、チーズ製造事業へ進出しています。2015年に東京証券取引所市場第二部へ上場し、2017年には同市場第一部銘柄に指定されました。2020年には事業開発本部を立ち上げ、機能性食品原料の輸入・販売を開始するなど事業領域を拡大しています。

連結従業員数は424名、単体では151名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は日本カストディ銀行(信託口)、第3位は個人株主の八住繁氏です。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 10.70%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 4.69%
八住 繁 2.82%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は小島 新氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
小島 新 代表取締役社長経営全般内部監査室担当 1994年東食入社。1999年同社入社。乳原料第一本部長、LACTO ASIA PTE.LTD.社長、取締役などを経て2024年12月より現職。
三浦 元久 取締役会長社長補佐 1978年東食入社。1999年同社入社。営業第一本部長、LACTO ASIA PTE.LTD.社長、代表取締役社長などを経て2024年12月より現職。
分銅 健二 取締役副社長社長補佐管理部門・海外事業管掌経営戦略部門担当兼コーポレートスタッフ部門長 1992年東食入社。2003年同社入社。人事総務部長、IR広報部長、上席執行役員コーポレートスタッフ部門長などを経て2024年2月より現職。
阿部 孝史 専務取締役アジア事業管掌兼LACTO ASIA PTE LTD.社長 1991年東食入社。1998年同社入社。チーズ事業本部長、上席執行役員営業部門統括兼事業開発本部長などを経て2025年2月より現職。
木幡 智徳 取締役営業管掌兼チーズ事業本部長 1994年東食入社。2001年同社入社。乳原料第一本部長、上席執行役員乳原料第一本部長などを経て2025年2月より現職。


社外取締役は、池田 泰弘(元株式会社ニチレイフーズ代表取締役社長)、齊藤 裕子(元ユニゾホールディングス株式会社常務取締役)、寶賀 寿男(元財務省東京税関長)、藤川 裕紀子(藤川裕紀子公認会計士事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「食品事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 乳原料・チーズ部門


乳製品原料(脱脂粉乳、バター、ホエイなど)およびナチュラルチーズを主に取り扱っています。これらはアイスクリーム、ヨーグルト、乳飲料、加工食品などの原料として、国内の乳製品メーカーや食品メーカー等に販売されています。

収益は、主に海外の乳原料メーカーから仕入れた原料を国内メーカー等へ販売する際の卸売によるものです。運営は主にラクト・ジャパンが行っています。

(2) 食肉食材部門


チルドおよび冷凍の豚肉を中心に、鶏肉、生ハム・サラミ等の食肉加工品の輸入販売を行っています。主な販売先は国内のハム・ソーセージメーカー、外食企業、食品スーパー等です。

収益は、海外(主に米国や欧州)から仕入れた食肉及び食肉加工品を国内顧客へ販売することで得ています。運営は主にラクト・ジャパンが行っています。

(3) 機能性食品原料部門


プロテイン市場の拡大や健康志向の高まりを受け、乳由来の高たんぱく食品原料、大豆たんぱく、ゼラチン、コラーゲンなどを取り扱っています。販売先はスポーツニュートリション業界、美容・健康業界、介護業界など多岐にわたります。

収益は、機能性が訴求できる各種食品原料の輸入販売によるものです。運営は主にラクト・ジャパンが行っています。なお、同部門は2025年12月より「ライフサイエンス事業部門」に改称されました。

(4) アジア事業


シンガポール、マレーシア、タイ、中国、インドネシア、フィリピン等のアジア市場において、乳製品原料の販売およびチーズ製品の製造・販売を行っています。特にチーズ製造販売部門では、自社ブランドでの製品展開も行っています。

収益は、日系および現地企業への乳原料販売と、業務用プロセスチーズやナチュラルチーズ加工品の製造販売から得ています。運営はLACTO ASIA PTE.LTD.(シンガポール)をはじめとする現地子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は着実な増加傾向にあります。利益面では、第26期に一時的な減少が見られましたが、その後は回復し、第28期には経常利益および当期純利益ともに過去最高水準に達しています。利益率も改善傾向にあります。

項目 2021年11月期 2022年11月期 2023年11月期 2024年11月期 2025年11月期
売上高 1,109億円 1,474億円 1,583億円 1,709億円 1,828億円
経常利益 27億円 31億円 28億円 43億円 58億円
利益率(%) 2.4% 2.1% 1.8% 2.5% 3.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 20億円 23億円 20億円 31億円 43億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し、売上総利益および営業利益も大きく伸長しています。売上総利益率は改善しており、収益性が向上していることがうかがえます。営業利益率も上昇しており、効率的な事業運営が進んでいる様子が見て取れます。

項目 2024年11月期 2025年11月期
売上高 1,709億円 1,828億円
売上総利益 101億円 123億円
売上総利益率(%) 5.9% 6.7%
営業利益 45億円 59億円
営業利益率(%) 2.6% 3.3%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が20億円(構成比32%)、発送配達費が8億円(同12%)を占めています。

(3) セグメント収益


全ての部門で売上高が増加しました。特に機能性食品原料部門は大幅な増収となり、成長ドライバーとなっています。乳原料・チーズ部門やアジア事業・その他も堅調に推移しました。

区分 売上(2024年11月期) 売上(2025年11月期)
乳原料・チーズ部門 1,142億円 1,187億円
食肉食材部門 218億円 228億円
機能性食品原料 51億円 96億円
乳原料販売部門 216億円 228億円
チーズ製造販売部門 56億円 64億円
その他 26億円 26億円
連結(合計) 1,709億円 1,828億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業は赤字(または運転資金増加等によるマイナス)だが、将来成長のため借入で投資を継続している「勝負型」です。

項目 2024年11月期 2025年11月期
営業CF 6億円 -3億円
投資CF -6億円 -15億円
財務CF 11億円 24億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は35.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「世界を食でつなぎ、人々を健康に、そして笑顔にする」というパーパス(ありたい姿)を掲げています。また、ミッション(未来に向けた使命)として「食の基盤である一次産業の未来に貢献する」「乳製品の新たな需要を創造する」「ステークホルダーすべての豊かな生活を実現する」を定めています。

(2) 企業文化


同社は「みらいを育む」というコーポレートブランドを掲げています。これには、食を通じて人々の健康的な未来や一次産業の未来に貢献し、株主、取引先、従業員などすべてのステークホルダーの豊かな未来をともに育んでいきたいという想いが込められています。また、バリュー(大切にする価値観)として「フェアであれ」を掲げています。

(3) 経営計画・目標


長期ビジョン「LACTO VISION 2032」において、2032年11月期に以下の目標を掲げています。
* 連結経常利益:60億円
* 海外比率(連結経常利益ベース):40%
* 乳製品取扱高(グループ合計):45万トン

また、中期経営計画「NEXT-LJ 2028」では、最終年度となる2028年11月期に向けて、国内・海外事業ともに3年間でそれぞれ10億円超の利益拡大を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


新中期経営計画「NEXT-LJ 2028」では、「未来成長に向けた基盤づくり」をテーマとしています。国内事業では、成長が期待される食品分野への取り組み強化や新規商品開発を推進します。アジア事業では、シンガポール新工場の立ち上げをはじめとする製造体制の強化を通じてチーズ製造販売事業を拡大し、「複合型食品企業」への進化を目指します。

* 機能性食品原料部門における高たんぱく原料以外の新規原料開発と、東南アジアでの拡販
* アジアにおける販売力の強化と安定供給可能なサプライヤーの確保
* シンガポール新工場の2026年11月期稼働開始と生産効率改善

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「専門性を持ち、失敗を恐れずに挑み、自分と会社の成長に誇りを持って働く個人」を求める人材像としています。人事制度では役割と等級を明確化し、成果とプロセスの両面を評価します。また、階層別研修や海外拠点での研修、自己啓発支援などを通じて、従業員の能力開発をサポートしています。ダイバーシティの推進にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年11月期 37.6歳 8.0年 9,815,298円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.3%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(非正規雇用) -


※同社は女性活躍推進法の規定における労働者の男女の賃金の差異を公表しないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職比率(連結)(21.3%)、一人当たり教育研修費(単体)(37,705円)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業環境に関するリスク


主要市場である日本、アジア、北米等の政治・経済動向や、気候変動による生乳生産量への影響が業績に影響する可能性があります。また、酪農畜産業における環境規制の強化や地政学リスクによるサプライチェーンの混乱も懸念されます。これに対し、サプライソースの多様化や代替原料の開発等でリスク軽減を図っています。

(2) 商品の製造及び販売・調達に関するリスク


取扱商品である食肉等は、家畜の疾病発生に伴う輸入規制の影響を受ける可能性があります。また、食品原料商社およびメーカーとして、異物混入や表示ミス等の品質問題が発生した場合、商品回収や損害賠償請求を受けるリスクがあります。製造にあたっては安全管理を徹底し、品質確保に努めています。

(3) 経営、財務等に関するリスク


海外取引が多いため、為替相場の変動が業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。仕入契約時の為替予約等でリスク回避を図っていますが、急激な変動は影響を与える可能性があります。また、事業拡大に伴う運転資金需要により営業キャッシュ・フローがマイナスとなる場合があり、金利上昇や資金調達環境の変化がリスク要因となります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。