フィル・カンパニー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フィル・カンパニー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場の空間ソリューション企業です。駐車場上空を活用する「フィル・パーク」やガレージ付賃貸住宅「プレミアムガレージハウス」の企画・開発・運営を行っています。2025年11月期は、請負受注の好調や開発物件の販売により、売上高14.6%増、営業利益38.8%増の大幅な増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社フィル・カンパニー の有価証券報告書(第21期、自 2024年12月1日 至 2025年11月30日、2026年2月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. フィル・カンパニーってどんな会社?


駐車場の「上」や「スキマ」などの未活性空間を活用し、空中店舗やガレージハウス等の企画・建築を行う企業です。

(1) 会社概要


2005年に設立され、駐車場上空を活用する空中店舗「フィル・パーク」事業を開始しました。2016年に東証マザーズへ上場し、2019年にはガレージ付賃貸住宅事業を行う株式会社プレミアムガレージハウスを完全子会社化しました。同年12月に東証一部へ市場変更し、現在は東証スタンダード市場に上場しています。

連結従業員数は126名、単体では101名です。筆頭株主は創業者であり現取締役会長の髙橋伸彰氏で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は髙橋氏の資産管理会社である合同会社NOBとなっています。

氏名 持株比率
髙橋 伸彰 20.80%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 12.42%
合同会社NOB 6.51%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は外山晋吾氏が務めています。社外取締役比率は57.1%です。

氏名 役職 主な経歴
外山 晋吾 代表取締役社長 エディオン取締役、リクルートホールディングス等を経て、トラスト・テック(現オープンアップグループ)執行役員を歴任。2023年フィル・カンパニー入社、2025年2月より現職。公認会計士。
髙橋 伸彰 取締役会長 オリックス等を経て、2005年フィル・カンパニー設立に関わり取締役に就任。代表取締役社長等を歴任し、2023年12月より代表取締役会長。2025年2月より現職。
金子 麻理 取締役 日本IBM等を経て、米国公認会計士登録。2014年フィル・カンパニー入社、常勤監査役、取締役(監査等委員)、代表取締役社長を経て、2025年2月より現職。


社外取締役は、柳澤大輔(カヤック代表取締役)、松本直人(ABAKAM代表取締役)、川中浩平(弁護士)、矢本浩教(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「空中店舗フィル・パーク事業」および「プレミアムガレージハウス事業」等を展開しています。

(1) 空中店舗「フィル・パーク」事業


コインパーキング等の駐車場の上空空間を活用し、1階を駐車場として残しつつ上層階に店舗などを誘致する「空中店舗」を企画・建築する事業です。土地オーナーに対し、土地活用の企画・提案から設計・施工、テナント誘致までをワンストップで提供します。

収益は、土地オーナーから受け取る企画料や設計・施工費等の請負収入(請負受注スキーム)が中心です。また、自社で土地を仕入れて開発し、投資家へ販売することで売却益を得るビジネス(開発販売スキーム)も展開しており、運営は主にフィル・カンパニーと子会社のフィル・コンストラクションが行っています。

(2) ガレージ付賃貸住宅「プレミアムガレージハウス」事業


1階をガレージ、2階を居住空間とした賃貸住宅を企画・提供する事業です。駅から遠い土地や住宅街などの未活性空間を対象とし、車やバイクなどの趣味を持つ入居者のニーズに応える空間を提供しています。

収益は、土地オーナーに対する企画・コンサルティング料や建築請負収入に加え、入居者募集業務等による手数料収入があります。また、独自システムによる入居待ち登録者を活用した安定的な土地活用を提案しており、運営は主に子会社のプレミアムガレージハウスが行っています。

(3) その他事業


上記の主要事業に関連する周辺領域や新規事業の開発を行っています。具体的には、クラウドファンディングの運営や、事業承継支援、まちづくりのための空間ソリューション開発などが含まれます。

収益源は、クラウドファンディング運営業務やコンサルティング業務による手数料収入などです。運営は、子会社のフィルまちづくりファンディングや、フィル事業承継・地域活性化プロジェクト、フィル・イノベーション・ラボなどが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年11月期から2025年11月期までの推移を見ると、売上高は一時的な減少を経て直近では増加傾向にあり、82億円規模に達しています。利益面では、2023年11月期に利益率が低下しましたが、その後回復し、当期は経常利益率が約7%まで改善しています。当期利益も増益基調にあります。

項目 2021年11月期 2022年11月期 2023年11月期 2024年11月期 2025年11月期
売上高 54億円 44億円 60億円 72億円 82億円
経常利益 7.1億円 2.0億円 1.4億円 4.1億円 5.7億円
利益率(%) 13.1% 4.6% 2.3% 5.7% 6.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 4.1億円 1.4億円 0.4億円 2.6億円 4.0億円

(2) 損益計算書


前期と比較すると、売上高は約10億円増加し、売上総利益率は25.2%から27.0%へ改善しました。これに伴い営業利益も約1.6億円増加し、営業利益率は5.9%から7.1%へと上昇しています。増収効果に加え、採算性の向上が利益拡大に寄与していることが伺えます。

項目 2024年11月期 2025年11月期
売上高 72億円 82億円
売上総利益 18億円 22億円
売上総利益率(%) 25.2% 27.0%
営業利益 4.2億円 5.9億円
営業利益率(%) 5.9% 7.1%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が6.2億円(構成比38%)、業務委託費が1.1億円(同7%)、役員報酬が0.9億円(同5%)を占めています。

(3) セグメント収益


請負受注は受注が好調で大幅な増収となりました。開発販売は前期比で減少しましたが、大型案件を含む販売引渡により一定の規模を維持しています。その他事業も増加傾向にあります。

区分 売上(2024年11月期) 売上(2025年11月期)
請負受注 38億円 49億円
開発販売 29億円 27億円
その他 5.0億円 5.9億円
連結(合計) 72億円 82億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

フィル・カンパニーは、事業活動を通じて資金を創出し、将来の成長に向けた投資を行い、必要な資金調達を財務活動で行うことで、安定的な事業運営と拡大を図っています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、主に税金等調整前当期純利益や前受金の増加により資金が増加した一方、棚卸資産の増加や仕入債務の減少により資金が支出されました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券や定期預金の取得、有形固定資産の取得により、主に資金が支出されました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入れや短期借入金の増加により資金が得られましたが、長期借入金の返済により資金が支出されました。

項目 2024年11月期 2025年11月期
営業CF 21億円 -4.4億円
投資CF 3.5億円 -8.6億円
財務CF 2.4億円 14億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「Phil=共存共栄」を企業理念とし、土地オーナー・入居者・地域にとって「三方良し」となる企画を提供することを目指しています。パーパスとして「まちのスキマを、「創造」で満たす。」、ビジョンとして「「まちづくり」をオーダーメイド。」を掲げ、未活性空間の価値最大化を通じて街の活性化を推進しています。

(2) 企業文化


同社は、バリュー(価値観)として「「地域」と「お客様」のために全てのチカラを尽くす。」を掲げています。このバリューに基づき、地域のニーズをくみ取り、土地オーナーや入居者を含む全てのステークホルダーが幸せになれるような空間活用を追求する姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


2026年11月期の経営目標として、以下の数値目標を掲げています。
* 連結売上高:100億円
* 連結営業利益:8億円
* 問合数:1,900件
* 提案数:380件
* 請負受注件数:74件

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、既存ビジネスのスケール化と事業ポートフォリオの変革を推進しています。具体的には、関西・中部エリアへの展開拡大や金融機関等との協業強化による請負受注の拡大、および借地権スキームや一括借り上げスキーム等の拡充によるストック収入の拡大を目指しています。また、組織開発やDXによる生産性向上にも注力します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「創造」の源泉は人であると考え、プロフェッショナル人材の採用と育成に注力しています。多様な専門性を持つ人材の確保や、新卒・若手の早期戦力化を推進するとともに、人事評価制度の改定により成果と報酬の連動性を高めています。また、動画コンテンツ化によるナレッジ共有など、自律的な成長を支援する環境整備も進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年11月期 35.5歳 2.4年 7,000,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 30.8%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(非正規雇用) -


※男性育児休業取得率および男女賃金差異については、同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、定着率(91.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済情勢について


同社の事業は景気動向の影響を受けやすく、景気後退や金利上昇、消費税増税などが業績に影響する可能性があります。特に主要テナントである商業施設運営企業等の需要は景気に左右されやすいため、不動産市況の下落により土地オーナーが建築を控えた場合、同社の経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 業績の変動について


「開発販売スキーム」における売上高は、販売時期や案件規模の大小によって変動しやすく、四半期や年度ごとの業績に偏りが生じる可能性があります。同社は、土地仕入と販売を安定的に積み重ねることで変動リスクへの対応を図っています。

(3) 各種法規制及び許認可によるリスク


建設業法、建築基準法、宅地建物取引業法などの法的規制を受けて事業を行っています。法令の変更や強化により義務や費用負担が増加する可能性があるほか、何らかの理由で免許や許認可が取り消された場合、事業活動に支障をきたし、業績に重大な影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。