AHCグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

AHCグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース市場に上場し、福祉事業、介護事業、外食事業を展開しています。直近の業績は、新規事業所の開設や既存事業所の稼働率向上により売上高は増収となりましたが、利益面では新規開設費用やのれん償却費の増加、減損損失の計上などが響き、営業利益、経常利益、当期純利益はいずれも減益となりました。


※本記事は、株式会社AHCグループ の有価証券報告書(第16期、自 2024年12月1日 至 2025年11月30日、2026年02月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. AHCグループってどんな会社?


障害福祉サービス、通所介護事業所の運営、飲食店の経営などを柱に、社会課題の解決に取り組む企業です。

(1) 会社概要


2010年に記帳代行等の業務受託を目的として設立され、同年より外食事業を開始しました。2014年以降、放課後等デイサービスなどの福祉事業を本格化させ、2017年には介護事業会社を子会社化しました。2020年に東京証券取引所マザーズへ上場し、2022年の市場区分見直しによりグロース市場へ移行しました。

連結従業員数は489名、単体では287名です。筆頭株主は同社代表取締役社長の資産管理会社であるYHCで、第2位は代表取締役社長の荒木喜貴氏本人、第3位は同社社員持株会となっており、経営陣および従業員による持株比率が高い構成です。

氏名 持株比率
YHC 27.62%
荒木 喜貴 22.06%
AHCグループ社員持株会 3.01%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は荒木喜貴氏が務めています。社外取締役比率は11.1%です。

氏名 役職 主な経歴
荒木 喜貴 代表取締役社長 1998年ウシオ電機入社。ワタミを経て、2007年介護ジャパン設立代表取締役。2010年1月同社設立代表取締役社長。2010年1月より現職。
土山 茂太 取締役副社長 1998年ワタミ入社。介護ジャパン設立取締役などを経て、2010年1月同社取締役。管理本部長などを歴任し、2023年2月より現職。
吉元 幸次郎 取締役介護本部長 兼西日本福祉本部長 2000年フィース入社。ワタミなどを経て、2010年1月同社取締役。介護ジャパン代表取締役などを兼務し、2022年12月より現職。
武藤 輝一 取締役経営管理本部長 1986年丸井入社。船井総合研究所、ワタミなどを経て、2016年同社入社。経営管理部長などを歴任し、2023年2月より現職。
濵田 友則 取締役東日本福祉本部長 2000年プラザ商事入社。2012年10月同社入社。執行役員福祉本部長、取締役福祉本部長を経て、2022年12月より現職。


社外取締役は、寺部達朗(Rights and Business Management Japan代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「福祉事業」「介護事業」「外食事業」を展開しています。

(1) 福祉事業


放課後等デイサービス、児童発達支援、就労移行支援、就労継続支援B型、相談支援、共同生活援助(グループホーム)、生活介護事業所等の運営を行っています。障害を持つ児童や成人に対して、療育支援や就労支援、日常生活の援助などを提供しています。

収益は、事業所を設置している都道府県の国民健康保険連合会およびサービス利用者から受領するサービス対価などから成り立っています。運営は同社、SLカンパニー、テラスワールド、RAISE、CONFEL、パパゲーノ、Aネクストワークスが行っています。

(2) 介護事業


要介護認定者や要支援認定者を対象とした通所介護事業所(デイサービス)の運営を行っています。身体機能の維持・回復・改善を支援するリハビリ機器の導入や、個別に入浴できる設備の提供などを行っています。

収益は、事業所を設置している都道府県の国民健康保険連合会およびサービス利用者から受領するサービス対価などから成り立っています。運営は同社および介護ジャパンが行っています。

(3) 外食事業


居酒屋やビストロなどの飲食店運営を行っています。「ねぎま三ぞう」などのブランドを展開し、伝統的な和食と創作料理を提供しています。また、飲食店向けのセントラルキッチン運営や食料品の加工・販売も行っています。

収益は、来店客からの飲食代金や食料品の販売代金などから成り立っています。運営は同社およびセンターネットワークが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は増加傾向にあり、事業規模の拡大が続いています。一方、利益面では経常利益や当期純利益が変動しており、特に直近の期では増収ながらも減益となっています。利益率は低水準で推移しており、安定的な収益確保が課題といえます。

項目 2021年11月期 2022年11月期 2023年11月期 2024年11月期 2025年11月期
売上高 41億円 49億円 59億円 63億円 67億円
経常利益 0.4億円 -2億円 0.7億円 2億円 1億円
利益率(%) 1.0% -4.1% 1.2% 2.5% 1.9%
当期利益(親会社所有者帰属) -0.6億円 -2億円 1億円 1億円 0.2億円

(2) 損益計算書


売上高は増加し、事業規模は拡大しています。しかし、売上原価の増加により売上総利益率は低下傾向にあります。また、販売費及び一般管理費も増加しており、結果として営業利益および営業利益率は低下しました。

項目 2024年11月期 2025年11月期
売上高 63億円 67億円
売上総利益 7億円 7億円
売上総利益率(%) 10.9% 10.6%
営業利益 1億円 1億円
営業利益率(%) 2.0% 1.6%


販売費及び一般管理費のうち、役員報酬が1億円(構成比22%)、給与手当が0.9億円(同15%)を占めています。

(3) セグメント収益


福祉事業は新規事業所の開設や既存事業所の稼働率向上により増収となりました。一方、介護事業は事業所の閉鎖や譲渡の影響で減収となりました。外食事業は客単価の増加や食品加工・物流事業の取引増により増収となりました。

区分 売上(2024年11月期) 売上(2025年11月期)
福祉事業 34億円 37億円
介護事業 16億円 16億円
外食事業 12億円 13億円
連結(合計) 63億円 67億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

AHCグループは、営業活動により資金を獲得し、投資活動で設備投資や子会社株式取得を行い、財務活動では借入と返済、自己株式取得や配当金の支払いを行いました。営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益やのれん償却費の計上、利息の支払い、助成金の受取、法人税等の支払いの影響を受けました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得、貸付け、貸付金の回収、子会社株式の取得による支出により、前年度より増加しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入れによる収入と返済、自己株式の取得、配当金の支払いにより、前年度より減少しました。

項目 2024年11月期 2025年11月期
営業CF 4億円 2億円
投資CF -4億円 -4億円
財務CF 3億円 2億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「人を想う」をグループ共通理念として掲げています。障害者福祉事業所、高齢者介護事業所、飲食店舗等の運営を通じて、地域の顧客に安全・安心・信頼のサービスを継続して提供し、より豊かな社会の実現を目指しています。

(2) 企業文化


共通理念である「人を想う」に基づき、事業活動を展開しています。地域の顧客へのサービス提供を通じて社会貢献を目指す姿勢や、人材の確保・育成における働きがいのある職場づくり、コンプライアンス遵守の意識向上など、人を中心とした価値観を重視しています。

(3) 経営計画・目標


継続的な事業発展のため、適正な売上高と利益の確保を重視しています。当面の重要な経営指標として以下の数値を掲げ、その向上を図る経営に努めています。

* 売上高伸長率10%
* 経常利益率10%
* ROE20%

(4) 成長戦略と重点施策


福祉事業ではワンストップサービス体制の強化、介護事業では収益改善と他サービスへの展開検討、外食事業では既存店の維持と業務効率改善に注力します。また、人材の確保と育成、継続的な事業所開設、管理体制の強化、事業所の運営レベル向上を重点課題として取り組みます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


慢性的な労働力不足に対応するため、新卒・中途採用の多様化により人材を確保し、階層別研修や資格取得推進、評価制度により個々の成長を支援しています。また、ICT活用による業務負担軽減や職場環境の改善を進め、働きがいのある職場づくりを通じて定着率の安定化を図る方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年11月期 39.6歳 4.1年 3,936,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 11.8%
男性育児休業取得率 0.0%
男女賃金差異(全労働者) 81.6%
男女賃金差異(正規雇用) 82.5%
男女賃金差異(非正規) 102.1%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 法的規制等について


福祉・介護事業は「障害者総合支援法」「介護保険法」等の適用を受け、行政の指定や基準に基づき運営されています。法律の改廃や報酬改定による収益への影響、指定取消等のリスクがあります。また、利用定員の超過や自己負担割合の変更等が経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 人材の確保・育成について


各事業において人材確保が必須であり、特に福祉・介護事業では有資格者の確保が重要です。採用手法の多様化や育成に取り組んでいますが、採用環境の悪化や計画通りの人材確保・育成が困難な場合、退職者が想定以上に発生した場合等は、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 市場環境の変化及び競合について


福祉事業では人材要件の厳格化、介護事業では事業所数の推移や競争激化、外食事業では市場成熟や価格競争等の厳しい環境にあります。競合他社の参入や事業拡大、市場環境の悪化が進んだ場合、利用者の獲得競争等により経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 自然災害・感染症について


事業所・店舗が首都圏に集中しているため、地震や台風等の大規模な自然災害や感染症の流行が発生した場合、運営の休止や利用者・従業員の減少等により、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。