※本記事は、株式会社巴川コーポレーション の有価証券報告書(第166期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 巴川コーポレーションってどんな会社?
電気特性の制御技術を核に、トナーや半導体・ディスプレイ部材、機能性シート等の高機能製品を開発・製造する技術開発型企業です。
■(1) 会社概要
同社は1914年に巴川製紙所として創業し、電気絶縁紙の研究試作を開始しました。1917年に設立され、1961年に東京証券取引所市場第一部に上場しました。1978年には米国に現地法人を設立しトナー生産を開始するなどグローバル展開を進め、2024年1月に商号を現在の巴川コーポレーションに変更しました。
現在、同社グループは連結従業員数1,312名、単体394名の体制で事業を展開しています。筆頭株主は同社との業務提携先でもある事業会社のTOPPANホールディングスで、第2位は紙・板紙の専門商社である栄紙業、第3位は代表取締役社長の井上善雄氏が代表を務める資産管理会社の井上ホールディングスです。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| TOPPANホールディングス | 11.30% |
| 栄紙業 | 6.94% |
| 井上ホールディングス | 6.26% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長CEOは井上善雄氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 井上 善雄 | 代表取締役社長CEO | 1987年4月日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。1998年3月同社入社。常務等を経て2002年6月社長、2003年1月より現職。 |
| 山口 正明 | 取締役専務執行役員CFO経営戦略本部長 | 1986年4月新日本製鐵(現日本製鉄)入社。2006年7月同社入社。常務執行役員CFO等を経て2021年4月より現職。 |
| 井上 雄介 | 取締役専務執行役員CTOiCasカンパニー長 | 1997年4月三菱商事入社。2006年4月同社入社。常務執行役員CTO等を経て2022年4月より現職。 |
| 古谷 治正 | 取締役 | 1984年4月松下電工(現パナソニックホールディングス)入社。パナソニックR&D本部戦略担当理事等を経て2017年同社入社。専務執行役員を経て2020年6月より現職。 |
| 林 隆一 | 取締役 | 1987年2月デュポンジャパンリミテッド入社。デュポン常務執行役員等を経て2016年同社顧問。専務執行役員を経て2019年6月より現職。 |
| 大室 のり子 | 取締役(監査等委員) | 1987年4月都築電気工業入社。1998年4月公認会計士登録。同社経営戦略本部経理グループ等を経て2024年6月より現職。 |
社外取締役は、遠藤仁(TOPPANホールディングス常務執行役員)、鮫島正洋(内田・鮫島法律事務所代表パートナー)、鈴木健一郎(鈴与代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「トナー事業」、「半導体・ディスプレイ関連事業」、「機能性シート事業」、「セキュリティメディア事業」、「新規開発事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) トナー事業
複合機・プリンター用トナー、粉体関連製品等の化成品を、事務機器メーカーや複合機メーカー等へ販売しています。
収益は、製品の販売対価として顧客から得ています。運営は、同社のほか、米国、欧州、香港、中国の各販売子会社(TOMOEGAWA(U.S.A.)INC.等)および中国の製造子会社(巴川影像科技(恵州)有限公司等)が行っています。国内では新巴川加工が製造等を担当しています。
■(2) 半導体・ディスプレイ関連事業
FPD向け光学フィルム等をフィルムメーカーへ、半導体実装用テープや半導体関連部品等をICメーカーやリードフレームメーカーへ販売しています。
収益は、製品の販売対価として顧客から得ています。運営は、同社および新巴川加工が行っているほか、関連会社のTOPPAN・TOMOEGAWAオプティカルフィルムが製品を製造・販売しています。
■(3) 機能性シート事業
木材パルプ由来の洋紙、電気絶縁紙、セラミック繊維シート、塗工紙(磁気記録関連製品等)、ガムテープ、クラフト重袋等を代理店や需要家へ販売しています。
収益は、製品の販売対価として顧客から得ています。運営は、同社および新巴川加工、三和紙工、NichiRica等の子会社が行っており、各社で製品供給や加工を分担しています。
■(4) セキュリティメディア事業
有価証券、カード、帳票、磁気記録関連製品等の製造・加工および情報処理関連事業を行っており、これらを需要家へ販売しています。
収益は、製品の販売対価や加工サービスの対価として顧客から得ています。運営は、子会社の昌栄印刷等が担当しています。
■(5) 新規開発事業
同社グループが保有する基礎・要素技術の融合を行い、新製品開発と需要家への販売を行っています。
収益は、開発製品の販売対価として顧客から得ています。運営は、同社グループが連携して行っています。
■(6) その他
不動産賃貸や物流サービス等を行っています。
収益は、賃貸料やサービス対価として得ています。運営は、同社および子会社の巴川物流サービスが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は300億円台前半で安定的に推移していますが、利益面では変動が見られます。2021年3月期は赤字でしたが、翌期に黒字転換し、その後は黒字を維持しています。利益率は一時7%台まで上昇しましたが、直近では4%台で推移しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 308億円 | 328億円 | 342億円 | 337億円 | 344億円 |
| 経常利益 | 1億円 | 23億円 | 22億円 | 16億円 | 16億円 |
| 利益率(%) | 0.5% | 7.0% | 6.3% | 4.9% | 4.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -18億円 | 17億円 | 15億円 | 6億円 | 7億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、売上高は微増しましたが、売上総利益率の改善に対し、営業利益率は低下しました。売上原価率は依然として高い水準にあり、利益確保にはコストコントロールが重要です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 337億円 | 344億円 |
| 売上総利益 | 74億円 | 80億円 |
| 売上総利益率(%) | 21.9% | 23.2% |
| 営業利益 | 13億円 | 13億円 |
| 営業利益率(%) | 4.0% | 3.7% |
■(3) セグメント収益
当期はトナー事業と機能性シート事業が増収を牽引しました。特に半導体・ディスプレイ関連事業は高い利益率を維持し、利益貢献度が大きくなっています。一方、セキュリティメディア事業は減収減益となり、新規開発事業は先行投資により赤字が継続しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| トナー事業 | 117億円 | 124億円 | 8億円 | 8億円 | 6.8% |
| 半導体・ディスプレイ関連事業 | 65億円 | 65億円 | 6億円 | 8億円 | 12.3% |
| 機能性シート事業 | 108億円 | 112億円 | -0.4億円 | 0.6億円 | 0.5% |
| セキュリティメディア事業 | 44億円 | 40億円 | 4億円 | 3億円 | 7.9% |
| 新規開発事業 | 0.7億円 | 0.4億円 | -6億円 | -8億円 | -1863.6% |
| その他 | 2億円 | 2億円 | 0.8億円 | 0.5億円 | 21.3% |
| 調整額 | 9億円 | 9億円 | 0.4億円 | 0.2億円 | 2.5% |
| 連結(合計) | 337億円 | 344億円 | 13億円 | 13億円 | 3.7% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
巴川コーポレーションのキャッシュ・フローの状況についてご説明します。
営業活動によるキャッシュ・フローは、棚卸資産の増加や仕入債務の減少があったものの、税金等調整前当期純利益や売上債権の減少などにより、前期に比べて減少しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産や無形固定資産の取得による支出が増加したため、前期に比べて使用額が増加しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済や自己株式の取得による支出があったものの、短期借入金の増加や長期借入れによる収入があったため、前期の支出から収入に転じました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 42億円 | 18億円 |
| 投資CF | -17億円 | -28億円 |
| 財務CF | -16億円 | 5億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「感動こそが、持続可能な価値と考える。」をミッションとし、新製品・新技術開発への挑戦を通じて人や社会に新しい喜びを提案し続けることを目指しています。ビジョンとして「グローバル視点の提案型ソリューションパートナー」を掲げ、組織の壁を超えたチームと個の力で新たな感動の創造に取り組んでいます。
■(2) 企業文化
同社は「誠実」「社会貢献」「開拓者精神」という創業精神を「バリュー(価値観)」として位置づけています。事業に対しても人に対しても誠実であり、事業を通じて社会に貢献すること、そして開拓者精神を持って事業に挺身することを重視する文化があります。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、2026年3月期を最終年度とする第8次中期経営計画を推進しています。「事業ポートフォリオの転換による新たな成長と企業体質の変革」を主題とし、5GやDXを支える事業展開や構造改革に取り組んでいます。
* 連結売上高:360億円
* 営業利益:14億円
* ROE:5.1%以上
* 新製品売上高比率:20%
■(4) 成長戦略と重点施策
安定収益源であるトナー事業と市場での地位を確立した半導体実装用テープビジネスを基盤としつつ、成長分野である半導体関連事業や機能性不織布事業への経営資源投入を継続します。製紙事業では構造改革を進め、低収益ビジネスの採算性改善を図ります。また、アライアンス戦略やDXによる業務革新も推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
経営戦略の基本を人財戦略と捉え、「人財の価値を最大限に引き出す」ことを重視しています。異業種経験者や外国籍人材等の多様な人財の確保・活用、製造プロフェッショナル人財の育成を進めるとともに、能力を発揮できる職場環境づくりに取り組んでいます。特に子育て世代への支援拡充など、仕事と育児の両立支援に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 44.3歳 | 16.4年 | 6,939,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.2% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 63.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 67.2% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 68.8% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、中途採用者の管理職比率(39%)、営業職の外国籍人財比率(9%)、平均残業時間(14.7h/月・名)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 市場の変動及び技術革新による影響
同社グループ製品は顧客業界の市場変化や競合との価格競争の影響を受け、需要が急速に減少する可能性があります。また、技術革新による既存製品の陳腐化や市場縮小が業績に影響を及ぼすリスクがあります。これに対し、市場動向の見極めや新製品開発の促進に取り組んでいます。
■(2) 主要原材料、燃料価格の変動による影響
プラスチックフィルム等の石油化学製品、原紙、パルプ等の原材料や、燃料としてのLNG等の購入価格が急激に変動した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、エネルギー供給リソースの多元化や市場動向の見極めを行っています。
■(3) 海外の事業展開に伴う影響
北米、欧州、アジアへグローバルに事業展開しており、テロ、治安悪化、紛争、法令・税制変更等の事象が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、対応マニュアルの制定や海外拠点への安全情報提供、現地の法令・税制動向の把握を行っています。



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