TOPPANホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

TOPPANホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場のTOPPANホールディングスは、情報コミュニケーション、生活・産業、エレクトロニクスの3分野で事業を展開する総合印刷会社です。DXとSXを成長の柱に掲げ、当期はセキュアビジネスや海外パッケージが伸長し、売上高2.4%増、営業利益13.1%増の増収増益を達成しました。



※本記事は、TOPPANホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第179期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. TOPPANホールディングスってどんな会社?


印刷テクノロジーを基盤に、情報コミュニケーション、生活・産業、エレクトロニクス分野で多角的に事業を展開する企業グループです。

(1) 会社概要


同社は1900年に凸版印刷合資会社として設立され、1949年に東京証券取引所へ上場しました。2000年には「トッパンホール」等をオープンし文化事業も推進しています。2023年10月に持株会社体制へ移行し、現社名に変更しました。2025年にはSONOCO社から軟包装事業等を取得するなど、グローバル展開を加速させています。

2025年3月31日現在、連結従業員数は51,988名、単体従業員数は1,723名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行株式会社信託口で、第3位には日本生命保険相互会社が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行信託口 16.46%
日本カストディ銀行信託口 5.99%
日本生命保険相互会社 5.12%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性4名の計14名で構成され、女性役員比率は28.0%です。代表取締役社長CEOは麿秀晴氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
麿 秀晴 代表取締役社長CEO 1979年同社入社。国際事業部長、経営企画本部長等を歴任。2019年社長就任、2023年より現職。タマポリ代表取締役を兼務。
金子 眞吾 代表取締役会長 1973年同社入社。商印事業部長、経営企画本部長等を歴任。2010年社長就任を経て、2019年より現職。
坂井 和則 代表取締役副社長執行役員CHRO 1985年同社入社。経営企画本部長、情報セキュリティ本部長等を歴任。2025年より現職。TOPPANデジタル社長等を兼務。
黒部 隆 取締役専務執行役員CFO 1986年同社入社。Toppan Interamerica Inc. CFO、財務本部長等を歴任。2025年より現職。
齊藤 昌典 取締役専務執行役員 1983年同社入社。西日本事業本部長、情報コミュニケーション事業本部長等を歴任。TOPPAN社長を経て、2025年より現職。
添田 秀樹 取締役 1984年トッパン・ムーア(現TOPPANエッジ)入社。同社社長を経て2023年より現職。TOPPANエッジ取締役相談役を兼務。


社外取締役は、遠山亮子(中央大学大学院教授)、中林美恵子(早稲田大学教授)、竹内明日香(アルバ・パートナーズ代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「情報コミュニケーション事業分野」「生活・産業事業分野」「エレクトロニクス事業分野」の3つの報告セグメントで事業を展開しています。

(1) 情報コミュニケーション事業分野


証券類、カード、ビジネスフォーム、出版印刷物、販促ツール等の製造販売に加え、BPOサービスやデジタルマーケティング、電子書籍等のデジタルコンテンツを提供しています。主要顧客は金融機関、出版社、官公庁など多岐にわたります。

収益は、製品の製造販売による代金や、システム開発・BPO業務の受託料、サービス利用料等から得ています。運営は主にTOPPAN、TOPPANエッジ、TOPPANデジタル、TOPPANクロレ、BookLive等が担っています。

(2) 生活・産業事業分野


軟包材、紙器、プラスチック成形品などのパッケージ製品や、化粧シート、床材などの建装材を製造販売しています。また、透明バリアフィルムやリチウムイオン二次電池用外装材なども提供し、食品、トイレタリー、住宅関連業界等を顧客としています。

収益は、パッケージ製品や建装材、産業資材等の製造販売による代金から得ています。運営は主にTOPPAN、タマポリ、InterFlex Investment Holdings, Inc.、INTERPRINT GmbH等が担っています。

(3) エレクトロニクス事業分野


液晶カラーフィルタ、反射防止フィルム、TFT液晶パネルなどのディスプレイ関連製品や、フォトマスク、半導体パッケージ基板などの半導体関連製品を製造販売しています。電機メーカーや半導体メーカー等を主要顧客としています。

収益は、電子部品や部材の製造販売による代金から得ています。運営は主にTOPPAN、テクセンドフォトマスク、TOPPAN America Inc.等が担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は緩やかな右肩上がりで推移しており、1兆7000億円規模に達しています。利益面でも、経常利益は安定して800億円台を維持しており、当期は増益となりました。当期利益についても変動はあるものの、当期は前期比で増加し、堅調な推移を示しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 14,669億円 15,475億円 16,388億円 16,782億円 17,180億円
経常利益 581億円 763億円 812億円 825億円 886億円
利益率(%) 4.0% 4.9% 5.0% 4.9% 5.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 820億円 1,232億円 609億円 742億円 893億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高の増加に伴い売上総利益も増加しています。売上総利益率は約23〜24%で安定的に推移しています。営業利益率は4%台後半となっており、当期は前期に比べて利益率が改善しました。コストコントロールが進み、収益性が向上している傾向が見られます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 16,782億円 17,180億円
売上総利益 3,874億円 4,130億円
売上総利益率(%) 23.1% 24.0%
営業利益 743億円 841億円
営業利益率(%) 4.4% 4.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当等が1,347億円(構成比41%)、研究開発費が205億円(同6%)を占めています。

(3) セグメント収益


各セグメントともに前期比で増収となりました。情報コミュニケーション事業分野はデジタルビジネスやセキュア関連が伸長しました。生活・産業事業分野は海外パッケージ等が好調でした。エレクトロニクス事業分野は半導体関連の需要回復等により増収となり、全セグメントで事業が拡大しています。

項目 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
情報コミュニケーション事業分野 8,826億円 8,984億円 457億円 457億円 5.1%
生活・産業事業分野 5,294億円 5,400億円 274億円 333億円 6.2%
エレクトロニクス事業分野 2,662億円 2,796億円 496億円 521億円 18.6%
調整額 -億円 -億円 -484億円 -470億円 -%
連結(合計) 16,782億円 17,180億円 743億円 841億円 4.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業活動によるキャッシュ・フローと財務活動によるキャッシュ・フロー(借入等)で資金を調達し、投資活動によるキャッシュ・フローもプラス(資産売却等)となっていることから、事業構造の転換や積極的な投資に向けた資金確保を進めている「再建・転換型」の状況にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 1,571億円 648億円
投資CF -83億円 470億円
財務CF -857億円 1,203億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.6%で市場平均(9.4%)を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は51.4%で市場平均(46.8%)を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「TOPPAN's Purpose & Values」をグループ理念として掲げています。Purpose(存在意義)として「人を想う感性と心に響く技術で、多様な文化が息づく世界に。」を定め、社会的価値創造の推進と持続可能な社会の実現を目指しています。

(2) 企業文化


Purpose実現のため、「Integrity(誠意を持って行動し、信頼関係を築く)」「Passion(情熱を持ち、積極果敢に挑戦する)」「Proactivity(周囲に先駆けて考え、スピーディーに行動する)」「Creativity(創造力を駆使して、新しい価値を生み出す)」の4つのValues(価値観)を共有しています。

(3) 経営計画・目標


「Digital & Sustainable Transformation」をキーコンセプトに、事業ポートフォリオ変革、経営基盤強化、ESGの取り組み深化を中期的な経営課題としています。成長事業で利益の過半を稼ぐ事業構造への転換を目指し、経営資源の最適配分と有効活用を進めています。

(4) 成長戦略と重点施策


DX、SX・海外生活系、新事業、エレクトロニクス重点事業を成長事業と位置づけ、注力しています。DXでは「Erhoeht-X」をコンセプトに業務プロセス全体の受託を推進し、SX・海外生活系では環境配慮型製品やグローバル展開を加速させます。また、シナジー創出のため、子会社3社(TOPPAN、TOPPANエッジ、TOPPANデジタル)の合併を決議しました。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人間尊重」の理念のもと、人財を「人的資本」と捉え、多様な人財が能力を発揮できる環境づくりを推進しています。DXやグローバル事業を牽引する人財の強化に向け、次期人事システムの構築や「TOPPAN UNIVERSITY」等の育成プログラムを導入し、適所適材の配置と自律的なキャリア形成を支援しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.0歳 15.4年 8,167,997円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 15.0%
男性育児休業取得率 87.1%
男女賃金差異(全労働者) 78.7%
男女賃金差異(正規雇用) 77.6%
男女賃金差異(非正規) 56.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、Erhoeht-X従事人財数(9,773名)、エンゲージメントスコア(2.65)、健康リスク値(92)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 気候変動及び生物多様性の損失に関するリスク


気候変動による環境規制強化や激甚災害の増加は、コスト増や操業停止のリスクとなります。また、原材料である紙や水への依存度が高いため、生物多様性の損失は調達や生産に影響を及ぼす可能性があります。同社はSBT認定目標に基づく排出削減やBCP対策、サプライチェーン全体での環境配慮に取り組んでいます。

(2) 人権に関するリスク


グローバル展開において、サプライチェーンを含む人権問題への対応は重要課題です。ハラスメントや強制労働等の問題が発生した場合、社会的信用の失墜や業績への悪影響が懸念されます。同社は人権方針の策定やデューデリジェンスの実施、相談窓口の設置などを通じ、リスクの軽減と是正に努めています。

(3) 情報セキュリティに関するリスク


DX事業の推進に伴い、機密情報や個人情報の取り扱いが増加しており、サイバー攻撃や不正行為による情報漏洩、システム停止のリスクが高まっています。これらの事象が発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償等により業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は専門組織による監視体制の強化や従業員教育を徹底しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。