※本記事は、共同印刷の有価証券報告書(第146期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 共同印刷ってどんな会社?
出版・商業印刷からパッケージ、情報セキュリティまで幅広い領域で事業を展開する総合印刷企業です。
■(1) 会社概要
1897年に博文館印刷工場として創業し、1925年に精美堂との合併を経て現在の共同印刷となりました。1961年に東京証券取引所市場第二部へ上場、1963年に同第一部へ指定替されました。近年は電子書籍関連のデジタルカタパルトの子会社化や、海外への事業展開、米国での新会社設立など事業領域を拡大しています。
現在の同社グループは、連結従業員数3,136名、単体従業員数1,912名の体制で事業を運営しています。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位には原材料の取引などを通じて事業上の関係を強化している事業会社の東京インキが名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 8.50% |
| 東京インキ | 7.16% |
| 日本カストディ銀行(信託E口) | 3.26% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性3名の計11名で構成され、女性役員比率は27.3%です。代表取締役社長は大橋輝臣氏が務めています。社外取締役は3名選任されています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 大橋 輝臣 | 代表取締役社長 | 1987年同社入社。ビジネスメディア事業部長や情報セキュリティ事業本部長などを歴任。2024年より取締役副社長執行役員を務め、2025年より現職。 |
| 藤森 康彰 | 取締役会長 | 1976年同社入社。技術統括本部長などを歴任し、2013年より代表取締役社長を務めたのち、2025年に代表取締役会長に就任。2026年より現職。 |
| 渡邉 秀典 | 取締役副社長執行役員 | 1982年第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。2011年に同社入社後、経営企画本部長などを歴任。2024年に取締役副社長執行役員に就任し、2026年より現職。 |
| 髙橋 孝治 | 取締役専務執行役員 | 1985年同社入社。製造本部長や生産統括本部長などを歴任し、2021年より取締役常務執行役員生産統括本部長を務める。2026年より現職。 |
社外取締役は、髙岡美佳(立教大学経営学部教授)、光定洋介(あすかコーポレイトアドバイザリー取締役)、大内智重子(元電通第3CRプランニング局長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「情報コミュニケーション部門」、「情報セキュリティ部門」、「生活・産業資材部門」および「その他」事業を展開しています。
■情報コミュニケーション部門
週刊誌、月刊誌、単行本、教科書などの出版物や、ポスター、カレンダー、広告宣伝媒体などの商業印刷、および電子書籍等の企画・制作・販売を提供しています。出版社や一般企業を主な顧客としています。
顧客企業からの印刷代金や企画制作費、電子書籍の販売代金を主な収益源としています。運営は同社のほか、共同印刷メディアプロダクトやデジタルカタパルトなどの子会社が行っています。
■情報セキュリティ部門
各種ビジネスフォーム、証券類、各種カード、データプリント、BPO業務、決済ソリューションなどを提供しています。金融機関や官公庁、各種一般企業を主な顧客として事業を展開しています。
顧客企業からの印刷代金やカード製造代金、データプリントおよびBPO業務の受託費などを収益源としています。運営は同社や共同印刷西日本、TOMOWEL Payment Serviceなどが行っています。
■生活・産業資材部門
紙器、軟包装用品、各種チューブ、ブローボトル、金属印刷、建材用品印刷、電子機器部品、高機能材料などの製造・販売を行っています。食品、化粧品、日用品メーカーなどを主な顧客としています。
顧客企業からの包装資材や産業資材の製造・販売代金を収益源としています。運営は同社をはじめ、常磐共同印刷、共同NPIパッケージ、共同ブローボトル、および海外子会社などが行っています。
■その他
報告セグメントに含まれない事業として、グループ製品を中心とする物流業や、不動産管理業、保険取扱業、システム開発などの付帯サービスを提供しています。
製品の梱包・輸送費や不動産の賃貸収入、システム開発の受託費などを収益源としています。運営は共同物流やTOMOWELビジネスパートナー、共同印刷ビジネスソリューションズなどの子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5年間の業績推移を見ると、売上高は800億円台から一時1,000億円規模まで拡大したものの、直近ではわずかに減少しています。経常利益は緩やかな改善傾向にあり、利益率は1%台から2%台後半へと上昇しています。継続的な構造変革や成長領域へのシフトにより、一定の収益力改善が見受けられます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 884億円 | 934億円 | 970億円 | 1,000億円 | 982億円 |
| 経常利益 | 13億円 | 13億円 | 21億円 | 27億円 | 27億円 |
| 利益率(%) | 1.5% | 1.4% | 2.1% | 2.7% | 2.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 11億円 | 6億円 | 8億円 | 45億円 | 41億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、売上高は減少したものの、売上総利益は増加し、売上総利益率も20%台に乗せています。一方で、人件費などの増加により販売費及び一般管理費が膨らみ、結果として営業利益は減少しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,000億円 | 982億円 |
| 売上総利益 | 201億円 | 209億円 |
| 売上総利益率(%) | 20.1% | 21.3% |
| 営業利益 | 23億円 | 21億円 |
| 営業利益率(%) | 2.3% | 2.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が62億円(構成比33%)、発送費が34億円(同18%)を占めています。
■(3) セグメント収益
セグメント別の売上高を見ると、チューブや軟包装などのパッケージ需要を取り込んだ生活・産業資材部門が堅調に推移し増収となりました。一方で、情報コミュニケーション部門や情報セキュリティ部門では、一部案件の減少や不採算案件の見直し等により減収となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 情報コミュニケーション部門 | 347億円 | 323億円 |
| 情報セキュリティ部門 | 308億円 | 305億円 |
| 生活・産業資材部門 | 323億円 | 332億円 |
| その他 | 22億円 | 22億円 |
| 連結(合計) | 1,000億円 | 982億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 67億円 | 66億円 |
| 投資CF | -9億円 | -11億円 |
| 財務CF | -46億円 | -54億円 |
企業の財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は52.7%で市場平均を上回る一方、収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.2%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
経営理念「創意と熱意で新たな価値を生み出し、共にある未来を実現する」のもと、持続的な成長と企業価値の向上を目指しています。多様なステークホルダーとの関係性を通じて有形・無形の資本を維持・強化し、事業活動を通じた社会課題の解決による新たな価値の創出に努める姿勢を明確にしています。
■(2) 企業文化
同社は、社会・環境問題をはじめとするサステナビリティ課題を重要な経営課題と認識し、「サステナビリティ経営」を推進しています。また、「すべての事業活動は人の上に成り立つ」という考えのもと、従業員や顧客、取引先の人権を尊重し、公正で信頼される企業グループを目指す価値観を重視して事業を行っています。
■(3) 経営計画・目標
長期ビジョン「NexTOMOWEL2034 共に挑もう、共に超えよう。」を掲げ、2025年度を起点とする3カ年の中期経営計画を推進しています。既存事業の基盤強化と成長に向けた足場固めを行い、事業ポートフォリオの変革により、情報系事業と生活・産業資材系事業の売上高比率を1対1とすることを目指しています。
* 2027年度:連結営業利益45億円以上、ROE8.0%以上
* 2034年度:売上高1.5倍(2024年度比)、営業利益120億円
■(4) 成長戦略と重点施策
情報系事業では、事業の重心を印刷から情報加工サービスを中心とした非印刷領域へと移行し、オリジナルコンテンツ事業や情報サービスBPOに注力します。生活・産業資材系事業では、環境に配慮した包材の開発や産業用包材分野の開拓、東南アジアを中心とした海外市場での事業拡大を協業も視野に入れつつ推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
事業ポートフォリオ変革の推進を担う価値創造人材の確保・育成及びマネジメントを不可欠と位置づけ、「人材ポートフォリオに基づく人事運営強化」と「人材を活かす制度基盤・組織力の向上」を柱とした人的資本への戦略的投資を進めています。デジタル人材やグローバル人材の確保・育成、処遇制度の高度化に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 45.6歳 | 16.3年 | 6,711,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 10.5% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 67.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 69.7% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 62.2% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメント調査回答率(91.0%)、デジタルを作れる人材(10.3%)、デジタルを活かせる人材(5.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 価値創造を担う人材基盤の確保
同社グループは、価値創造人材を確保・強化する環境の整備に努めています。しかし、少子化や雇用環境の変化等で労働力の確保が年々困難になる中、事業環境に即した多様な人材の確保・育成・定着が図れなかった場合、必要な人材リソースの不足や競争力低下により、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 自然災害およびパンデミックの影響
事業継続マネジメントシステムの認証取得や生産協力体制の整備、防火・耐震対策を通じて有事における対応力を強化しています。しかし、大規模な自然災害の発生や感染症の流行等により従業員や施設・設備等が想定を超える被害を受けた場合、製品供給への支障や修復コストの発生により、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 法的規制の変更とコンプライアンス対応
環境法や独占禁止法などさまざまな法的規制の適用を受けており、法令順守の徹底や内部通報窓口の適正運用に努めています。しかし、規制の改廃や新設、適用基準の変更があった場合や、ガバナンス体制の形骸化等で法的規制に抵触する事態が生じた場合、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) サイバー攻撃と情報セキュリティ
個人情報や機密情報を扱うため、各種外部認証の維持や「TOMOWEL-CSIRT」を中心とした予防対策を講じています。しかし、サイバー攻撃などを含む意図的、または過失による情報の紛失・改ざんおよび漏洩が万が一発生した場合には、同社グループに対する信用低下や事後対応コストの増加により、業績に影響を及ぼす可能性があります。



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