共同印刷 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

共同印刷 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する総合印刷会社です。出版・商業印刷、データプリント、ICカード、包装資材などを展開し、情報コミュニケーション、情報セキュリティ、生活・産業資材の3部門を柱としています。直近の決算では、インバウンド需要による乗車券類の好調などにより、増収増益となりました。


※本記事は、株式会社共同印刷 の有価証券報告書(第145期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 共同印刷ってどんな会社?


創業120年超の歴史を持ち、出版印刷からICカード、高機能包材まで手掛ける総合印刷企業です。

(1) 会社概要


同社は1897年に博文館印刷工場として創業し、1925年に精美堂と合併して現在の共同印刷となりました。1963年に東京証券取引所市場第一部に上場しています。2019年には日本写真印刷コミュニケーションズの情報コミュニケーション事業を承継しました。2022年の市場区分見直しに伴い、プライム市場へ移行しています。

2025年3月31日現在、連結従業員数は3,215名、単体では1,907名です。筆頭株主は信託銀行ですが、第2位は化学メーカーであるDICの退職給付信託口(議決権はDICが留保)であり、第3位にはインキ製造の東京インキが名を連ねています。これら事業会社とは原材料の取引等の関係があります。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 9.35%
日本マスタートラスト信託銀行(退職給付信託口・DIC口) 8.23%
東京インキ 8.00%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役会長は藤森 康彰氏、代表取締役社長は大橋 輝臣氏です。社外取締役は3名選任されています。

氏名 役職 主な経歴
藤森 康彰 代表取締役会長 1976年入社。技術統括本部長、専務取締役などを経て2013年代表取締役社長に就任。2025年4月より現職。
大橋 輝臣 代表取締役社長 1987年入社。経営企画本部総合企画部長、情報セキュリティ事業本部長などを歴任。2025年4月より現職。
渡邉 秀典 取締役副社長執行役員グループコーポレート本部長 1982年第一勧業銀行入行。2011年同社入社。経理部長、経営管理本部長、経営企画本部長などを経て2024年4月より現職。
髙橋 孝治 取締役常務執行役員 1985年入社。出版商印製造事業部製造本部長、生産統括本部長などを歴任。2023年4月より現職。


社外取締役は、髙岡 美佳(立教大学経営学部教授)、内藤 常男(元住商グローバル・ロジスティクス社長)、光定 洋介(あすかアセットマネジメント入社)です。

2. 事業内容


同社グループは、「情報コミュニケーション部門」「情報セキュリティ部門」「生活・産業資材部門」および「その他」事業を展開しています。

情報コミュニケーション部門


出版印刷や商業印刷、プロモーション関連サービスを提供しています。主な製品は週刊誌、月刊誌、単行本、教科書、ポスター、カレンダー、電子書籍などです。出版社や一般企業を顧客とし、紙媒体の製造だけでなくデジタルコンテンツの制作も行っています。

収益は、顧客からの製品製造受託や企画制作費などから得ています。運営は主に共同印刷が担い、子会社の共同印刷メディアプロダクトが製版・印刷・製本などの生産工程を、デジタルカタパルトが電子書籍関連事業を担当するなど、グループ各社が連携しています。

情報セキュリティ部門


データプリントやBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)、セキュリティ関連製品を提供しています。ビジネスフォーム、証券類、各種カード、決済ソリューションなどを取り扱い、官公庁や金融機関、交通事業者などが主な顧客です。

収益は、データ処理や印刷物の製造受託、システム開発・運用費などから構成されています。運営は共同印刷を中心に行われ、共同印刷西日本が西日本エリアでの製造・販売を担当し、TOMOWEL Payment Serviceが決済ソリューションを提供するなど、専門性を持った子会社が事業を展開しています。

生活・産業資材部門


パッケージや高機能材料の製造・販売を行っています。紙器、軟包装用品、各種チューブ、ブローボトル、金属印刷、建材用品印刷、電子機器部品などを提供し、食品、化粧品、医薬品メーカーなどが主な顧客です。

収益は、各種包材や産業資材の製品販売によって得ています。運営は共同印刷に加え、常磐共同印刷、共同NPIパッケージ、共同ブローボトルなどの国内子会社や、KYODO PRINTING (VIETNAM)、PT. Arisu Graphic Primaなどの海外子会社が製造・販売を担っています。

その他


上記報告セグメントに含まれない事業として、物流業や不動産管理業などを展開しています。グループ内の物流機能や不動産資産の有効活用を目的としています。

収益は、物流業務の受託料や不動産賃貸料などから得ています。運営は、物流事業を共同物流が、不動産管理事業などをTOMOWELビジネスパートナーが担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は緩やかな増加傾向にあり、直近では1,000億円に迫る規模となっています。利益面では、経常利益率が1%台から2%台後半へと改善しており、当期純利益も増加傾向にあります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 910億円 884億円 934億円 970億円 1,000億円
経常利益 13億円 13億円 13億円 21億円 27億円
利益率(%) 1.5% 1.5% 1.4% 2.1% 2.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 11億円 11億円 6億円 8億円 45億円

(2) 損益計算書


売上高は増加し、利益率も改善しています。特に当期純利益の大幅な増加が目立ちますが、これは特別利益の計上などが影響しています。営業利益率も上昇しており、本業の収益性も向上しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 970億円 1,000億円
売上総利益 192億円 201億円
売上総利益率(%) 19.8% 20.1%
営業利益 16億円 23億円
営業利益率(%) 1.6% 2.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が71億円(構成比40%)、発送費が32億円(同18%)を占めています。売上原価においては、材料費や労務費などが主要な構成要素となっています。

(3) セグメント収益


情報セキュリティ部門と生活・産業資材部門が増収増益となり、全社の業績を牽引しました。情報コミュニケーション部門は売上が横ばいで営業損失を計上しています。全体として、成長分野へのシフトが進んでいる状況です。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
情報コミュニケーション部門 347億円 347億円 -3億円 -2億円 -0.5%
情報セキュリティ部門 287億円 308億円 13億円 20億円 6.4%
生活・産業資材部門 315億円 323億円 11億円 12億円 3.7%
その他 21億円 22億円 2億円 2億円 7.2%
調整額 - - -8億円 -8億円 -
連結(合計) 970億円 1,000億円 16億円 23億円 2.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業で獲得した資金の範囲内で借入金の返済や投資を行っており、財務体質は安定的と言える「健全型」です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 31億円 67億円
投資CF -29億円 -9億円
財務CF 3億円 -46億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.3%で市場平均(9.4%)を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は49.8%で市場平均(製造業46.8%)を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、新しい経営理念として「創意と熱意で新たな価値を生み出し、共にある未来を実現する」を掲げています。また、10年後のありたい姿として長期ビジョン「NexTOMOWEL2034 共に挑もう、共に超えよう。」を定めています。これらを通じて、ステークホルダーと共に持続的な成長を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「誠実なコミュニケーション」と「市場をリードする技術力」を重視しています。また、社会環境の変化に対応し、ステークホルダーの期待に応えるために、成長戦略の明確化や価値観の見直しを行っています。挑戦を促し、既存事業の収益性向上と成長事業の育成に取り組む姿勢を持っています。

(3) 経営計画・目標


2025年度からの3カ年の中期経営計画では、長期戦略のファーストステップとして足場固めを行います。最終年度にあたる2027年度の数値目標は以下の通りです。

* 営業利益:45億円以上
* ROE:8%以上
* 配当:DOE3.5%を目安

(4) 成長戦略と重点施策


長期戦略では「情報系事業」と「生活・産業資材系事業」を二本柱とし、事業ポートフォリオの変革を進めます。情報系事業では印刷から情報サービスへの重心移行、生活・産業資材系事業では独自製品の開発による成長市場への展開を強化します。2034年度までに総額700億円規模の投資を計画しています。

* 営業利益目標(長期):120億円以上
* 成長投資:400億円程度
* 既存事業への投資:300億円程度

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は人材を重要な経営資本と位置づけ、「価値創造人材」の育成と確保に注力しています。多様な価値観を持つ人材の確保、デジタル人材の育成、女性管理職比率の向上などを推進しています。また、自律的なキャリア形成支援や、働きやすく生産性の高い職場環境の整備にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 45.1歳 16.4年 6,375,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 9.4%
男性育児休業取得率 103.7%
男女賃金差異(全労働者) 66.4%
男女賃金差異(正規) 68.8%
男女賃金差異(非正規) 58.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、デジタル人材比率(デジタルを活かせる人材1.9%、デジタルを作れる人材10.0%)、年次有給休暇平均取得率(65.6%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 人材基盤


少子化や雇用環境の変化により、労働力の確保が困難になっています。事業環境に即した多様な人材の確保・育成・定着が図れない場合、人材リソースの不足や競争力の低下を招き、同社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 気候変動


脱炭素社会への移行に伴い、炭素税の導入やエネルギー価格の変動などが経営に影響を与える可能性があります。適切な対応が遅れた場合、コスト増加や投資対象からの除外、資金調達の困難化などが生じ、業績に影響を及ぼすリスクがあります。

(3) 原材料の調達


製品供給の安定化には原材料の安定調達が不可欠ですが、調達競争の激化による価格高騰やサプライチェーンの停滞による調達遅延のリスクがあります。コスト削減や販売価格への転嫁が不十分な場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 法的規制・コンプライアンス


環境法、下請法、製造物責任法など多くの法的規制の適用を受けています。規制の変更や新設、あるいはガバナンス体制の不備により法的規制に抵触する事態が生じた場合、社会的信用の失墜や業績への悪影響が生じる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。