三光産業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

三光産業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

三光産業は東証スタンダード上場企業です。特殊印刷製品の企画・製造・販売を主力とし、野菜調理器の製造・販売も手掛けます。当期の業績は、売上高が前期比6.7%減の97億円、経常利益が同33.5%減の1.3億円と減収減益でしたが、親会社株主に帰属する当期純利益は前期の赤字から0.9億円の黒字へ転換しました。


※本記事は、三光産業株式会社 の有価証券報告書(第65期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 三光産業ってどんな会社?


特殊印刷製品の企画・製造・販売を主力とし、近年はM&Aを通じて野菜調理器や空調家電分野にも事業領域を広げています。

(1) 会社概要


同社は1960年に設立され、接着剤付きラベル・ステッカーの製造販売を開始しました。1988年にはマレーシアに子会社を設立し、海外展開を本格化させました。2004年にジャスダック証券取引所へ上場し、2022年の市場区分見直しに伴い東京証券取引所スタンダード市場へ移行しました。同年には野菜調理器を製造する株式会社ベンリナーを完全子会社化するなど、事業の多角化を進めています。

同社グループは連結従業員数335名、単体従業員数167名で構成されています。筆頭株主は法人株主の株式会社エス・ワイ・エスであり、第2位は株式会社エツミ光学、第3位は取引先持株会となっています。創業家や特定の大手事業会社が圧倒的な支配権を持つ構造ではなく、複数の法人や持株会が主要株主として名を連ねています。

氏名 持株比率
株式会社エス・ワイ・エス 10.91%
株式会社エツミ光学 6.41%
三光産業取引先持株会 5.75%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長執行役員は石井正和氏です。社外取締役比率は28.6%です。

氏名 役職 主な経歴
石井 正和 代表取締役社長執行役員 1978年入社。第一営業部長、執行役員営業統括部長、取締役執行役員海外統括室長を経て、2018年6月より現職。
北村 眞一 取締役執行役員営業統括本部長 1989年入社。第一営業部長、取締役執行役員グローバル統括本部長などを歴任し、2021年4月より現職。株式会社アクシストラス代表取締役も兼任。
岡田 豊 取締役執行役員製造統括本部長 1989年入社。営業技術部長、執行役員東日本統括本部長兼国内営業部長兼生産管理部長などを経て、2025年1月より現職。
矢野 恵美子 取締役執行役員営業統括副本部長兼営業業務推進部長 1989年入社。営業業務部長、執行役員営業統括副本部長などを経て、2022年4月より現職。株式会社ベンリナー取締役も兼任。
高橋 光弘 取締役(監査等委員) 1987年入社。経理部長、常務取締役執行役員総務・経理担当などを経て、2021年6月より現職。


社外取締役は、大津素男(大津公認会計士事務所設立)、川添啓明(横濱啓明法律事務所設立)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」、「中国」、「アセアン」の3つの報告セグメントで事業を展開しています。

(1) 日本


特殊印刷製品(ラベル・ステッカー・パネル等)の企画・製造・販売を主力としています。これに加え、野菜調理器の製造・販売を行う株式会社ベンリナー、ノベルティグッズの企画等を行う株式会社トムズ・クリエイティブ、空調家電等を販売する株式会社アクシストラスがこのセグメントに含まれます。

収益は、特殊印刷製品や野菜調理器、ノベルティグッズ、家電製品等の販売代金として顧客から受領します。運営は主に三光産業が行うほか、連結子会社の株式会社ベンリナー、株式会社トムズ・クリエイティブ、株式会社アクシストラスがそれぞれの事業を担当しています。

(2) 中国


中国国内および近隣諸国の日系家電メーカー等に対し、接着剤付きラベル・ステッカー・パネル等の特殊印刷製品を企画・販売しています。2019年に製造工場を閉鎖し、現在はファブレス形態での販売活動に注力しています。

収益は、日系家電メーカー等への製品販売代金です。運営は、香港に拠点を置く光華産業有限公司と、その子会社である燦光電子(深圳)有限公司が担っており、生産提携先との連携を通じて製品を供給しています。

(3) アセアン


マレーシアおよびタイを中心としたアセアン地域において、日系家電メーカー等に対してラベル・ステッカー等の企画・製造・販売を行っています。

収益は、現地の日系家電メーカー等への製品販売代金です。運営は、マレーシアのサンコウサンギョウ(マレーシア)SDN.BHD.が製造・販売を行い、タイのサンコウサンギョウ(バンコク)CO.,LTD.が企画・販売を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は96億円から106億円の範囲で推移しており、直近では減少傾向にあります。利益面では、原材料高騰等の影響により低収益が続いており、第64期には営業損失等は回避したものの当期純損失を計上しました。しかし、第65期は不採算事業の整理やコスト削減効果により、当期純利益が黒字に回復しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 106億円 96億円 98億円 104億円 97億円
経常利益 1.2億円 1.2億円 0.4億円 1.9億円 1.3億円
利益率(%) 1.1% 1.2% 0.5% 1.8% 1.3%
当期利益(親会社所有者帰属) -1.3億円 0.4億円 0.9億円 -0.9億円 0.9億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で減少しましたが、売上原価の低減により売上総利益率は改善しています。営業利益は増益となりましたが、経常利益は減少しました。当期純利益は、退職給付制度終了益などの特別利益計上が寄与し、黒字転換を果たしました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 104億円 97億円
売上総利益 20億円 21億円
売上総利益率(%) 19.6% 21.7%
営業利益 0.7億円 0.8億円
営業利益率(%) 0.7% 0.9%


販売費及び一般管理費のうち、その他が8.5億円(構成比42%)、役員報酬・給与手当が7.7億円(同38%)を占めています。売上原価に関しては、詳細な内訳データはありません。

(3) セグメント収益


日本セグメントは売上高が減少しましたが、工場統合等の効果で大幅な増益となりました。中国セグメントは売上高が大きく減少し、減益となりました。アセアンセグメントは売上が微増したものの、赤字幅は縮小しましたが損失が継続しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
日本 81億円 78億円 0.2億円 0.9億円 1.2%
中国 16億円 12億円 0.5億円 0.2億円 2.0%
アセアン 6.3億円 6.4億円 -0.4億円 -0.0億円 -0.4%
連結(合計) 104億円 97億円 0.7億円 0.8億円 0.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


**勝負型**(本業は赤字だが、将来成長のため借入で投資を継続)

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 7.3億円 -1.5億円
投資CF -1.7億円 -10.4億円
財務CF 2.9億円 3.7億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は74.1%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは「高い技術力と高い品質力で社会に貢献すること」を社会的使命としています。この理念の下、素材と印刷のコンビネーションの極大値を実現する技術を蓄積すると同時に、地球環境問題を直視した経営を目標としています。

(2) 企業文化


「顧客企業における最高のサプライヤーになる基盤を整備する」を基本方針とし、研究・開発による技術蓄積、品質保証体制の確立と生産設備の充実、営業力の向上によるマーケットリーダーの追求、組織の効率化を経営行動の指針として掲げています。環境変化へのスピーディーな対応と、顧客からの信頼向上を重視する文化です。

(3) 経営計画・目標


将来の安定的な事業成長と株主への安定配当の継続を目標としています。重要な経営指標として「連結営業利益率」を位置付けており、中期的な目標として以下の数値を掲げています。

* 連結営業利益率:4.1%

(4) 成長戦略と重点施策


「顧客企業における最高のサプライヤーになる基盤を整備する」ため、パネル事業の業界内地位安定化を図り、成長分野であるパネル関連製品のシェア拡大を目指します。また、シール・ラベル事業では工程改善や新規分野(メディカル、食品等)への展開による収益性改善を進め、海外事業では中国での販売強化とアセアンでの生産効率化を推進します。

* 子会社(株)ベンリナー:設備増強による生産量増大と市場開拓
* 子会社(株)トムズ・クリエイティブ:新規コラボレーション開拓等によるノベルティ受注拡大
* 子会社(株)アクシストラス:新商品開発とマーケティング強化

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは「高い技術力、品質力で社会に貢献する」という企業理念のもと、サステナブル委員会を中心に人材に関する取り組みを進めています。「人財の確保と成長を支える環境整備」を重要なサステナビリティ項目の一つとして位置づけ、働き方改革の推進や労働安全衛生の向上に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.3歳 15.5年 5,271,762円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.0%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(非正規雇用) -


同社および連結子会社は従業員規模が300人以下のため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 顧客企業の業績への依存


同社グループの事業は、家電製品やIT機器等の外構部品としてのラベル・パネル類の提供が主であり、顧客企業の業績や製造拠点の海外移転等の影響を受けやすくなっています。また、顧客からの値下げ要求は利益率を低下させる可能性があります。このため、パネル部材業界でのシェア拡大等により、特定顧客への依存度を下げることでリスク低減を図っています。

(2) 材料費及び外注費の高騰


材料価格や外注費単価が著しく上昇し、製品価格への転嫁が困難な場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、原材料の購買先や委託先を複数確保することや、需要動向に応じた調達時期の見直しを行うことでリスクの低減に努めています。

(3) 為替レートの変動


海外子会社は原材料の一部を日本から調達しており、円高局面では調達コストが増加し利益率が低下する可能性があります。また、連結財務諸表作成時の円換算により、為替レートの変動が財務状況に影響を与える可能性があります。これに対し、常に為替動向を注視し、為替予約取引等を活用することでリスク低減を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。