※本記事は、朝日印刷株式会社の有価証券報告書(第110期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 朝日印刷ってどんな会社?
医薬品・化粧品向けの印刷包材の製造販売と、包装機械などのシステム販売を主力とする企業です。
■(1) 会社概要
1946年5月に印刷・包装資材の製造販売を目的に富山市で設立。1993年8月に株式を店頭登録し、2002年11月に東京証券取引所市場第二部へ上場しました。近年は東南アジア等への海外展開を推進しており、2022年4月の市場区分見直しにより、現在は東京証券取引所スタンダード市場に上場しています。
従業員数は連結で1,760名、単体で1,111名です。筆頭株主は事業会社のサンワールドで、第2位は役員や従業員向けの資産管理を行う持株会、第3位は生産設備等の仕入先である小森コーポレーションです。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| サンワールド | 10.18% |
| 朝日印刷持株会 | 7.69% |
| 小森コーポレーション | 5.90% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性14名、女性1名の計15名で構成され、女性役員比率は6.7%です。代表取締役社長は朝日重紀氏が務めています。取締役11名のうち、社外取締役は3名です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 朝日 重紀 | 代表取締役社長 | 2001年入社。2014年専務取締役、2020年代表取締役副社長を経て、2021年より現職。 |
| 広田 敏幸 | 代表取締役副社長管理本部長品質保証部担当 | 1979年入社。2014年取締役経理部長、2022年取締役副社長を経て、2026年より現職。 |
| 佐藤 和仁 | 常務取締役生産本部長工場再編推進室長購買管理部長情報システム室担当 | 1991年入社。2017年取締役営業副本部長、2021年常務取締役を経て、2026年より現職。 |
| 西田 良弘 | 取締役財務部長 | 1989年入社。2015年ニッポー代表取締役社長、2023年取締役管理本部副本部長を経て、2025年より現職。 |
| 塚田 武 | 取締役経営戦略室担当 | 1989年入社。2021年海外事業開発室長、2022年Shin-Nippon Industries CEOを経て、2026年より現職。 |
| 佐々木 昌太郎 | 取締役西日本営業本部長富山営業部長営業企画室長包装システム販売部担当 | 1990年入社。2013年富山営業部長、2021年取締役を経て、2024年より現職。 |
| 保木 秀之 | 取締役東日本営業本部長企画開発本部担当 | 1995年入社。2017年社長室長、2021年取締役総務部長を経て、2026年より現職。 |
| 若林 和人 | 取締役 | 1987年入社。2019年経営戦略室長、2022年取締役を経て、2026年より現職。 |
社外取締役は、高田忠直(ジェック経営コンサルタント取締役)、水波悟(水波ソリューション代表取締役)、鮎川裕美(日本カーバイド工業社外監査役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「印刷包材事業」「包装システム販売事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 印刷包材事業
主に医薬品や化粧品メーカーを顧客とし、パッケージや添付文書、ラベルといった印刷包材の製造および販売を行っています。近年は環境に配慮したサステナブルな製品開発にも取り組んでいます。
顧客に対する印刷包材の販売代金が主な収益源です。運営は同社のほか、子会社の阪本印刷やニッポー、またマレーシアの海外子会社群などが担っており、協和カートンへは製品の製造を委託しています。
■(2) 包装システム販売事業
印刷包材と連携したトータル提案を強みとし、顧客のニーズに合致した包装機械や包装ラインの企画提案、仕入、販売を展開しています。省人化や省力化に対応するシステム開発に注力しています。
顧客に対する包装機械やシステムラインの販売代金、および関連するサービス提供の対価が主な収益源です。当事業の運営は主に同社が主体となって行っています。
■(3) その他(人材派遣事業)
同社グループ内のみならず、地域企業からの求人需要に対応して人材の派遣サービスを行っています。
派遣先企業からの人材派遣手数料が主な収益源です。運営は子会社の朝日人材サービスが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は一貫して増加傾向にあり、直近5年間で着実な増収を達成しています。一方、経常利益および利益率は、原材料価格の高騰や減価償却費の増加などの影響により、緩やかな低下傾向で推移しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 388億円 | 403億円 | 419億円 | 439億円 | 446億円 |
| 経常利益 | 25億円 | 25億円 | 23億円 | 22億円 | 19億円 |
| 利益率(%) | 6.5% | 6.3% | 5.5% | 4.9% | 4.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 15億円 | 15億円 | 14億円 | 13億円 | 16億円 |
■(2) 損益計算書
売上高が増加したものの、原材料価格や物価の上昇、工場再編に伴う減価償却費の増加により売上原価率が上昇し、売上総利益は減少しました。さらに販売費及び一般管理費も増加したため、営業利益は前期を下回る結果となりました。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 439億円 | 446億円 |
| 売上総利益 | 99億円 | 97億円 |
| 売上総利益率(%) | 22.5% | 21.8% |
| 営業利益 | 21億円 | 16億円 |
| 営業利益率(%) | 4.7% | 3.6% |
販売費及び一般管理費のうち、荷造運送費が22億円(構成比27.3%)、給与賞与が21億円(同25.8%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の印刷包材事業は、原材料価格の上昇や海外での受注減により減収減益となりました。一方、包装システム販売事業は省人化ニーズの高まりを背景に受注が好調に推移し、大幅な増収増益を達成しました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 印刷包材事業 | 403億円 | 400億円 | 93億円 | 89億円 | 22.3% |
| 包装システム販売事業 | 32億円 | 41億円 | 5億円 | 7億円 | 16.6% |
| その他 | 5億円 | 5億円 | 1億円 | 1億円 | 26.3% |
| 調整額 | -2億円 | -2億円 | - | - | - |
| 連結(合計) | 439億円 | 446億円 | 99億円 | 97億円 | 21.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 45億円 | 32億円 |
| 投資CF | -35億円 | -29億円 |
| 財務CF | -0.5億円 | -38億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.6%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は51.5%であり、いずれも市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「お客様本位を基本とし、企業の永続成長と従業員の幸福とが一致する経営を目指します」という経営理念を掲げています。また、「使命(Mission)」として包むこころを大切にし、安心・安全と美を追求した商品・サービスを提供することで社会に貢献することを信念としています。
■(2) 企業文化
同社は、会社の発展だけを優先するのではなく、従業員が仕事にやりがいと幸せを感じて成長し、その結果が会社の成長につながっていくという不易流行の精神を受け継いでいます。また、グループ共通の「価値観(Core Value)」および「5つの行動指針(Value)」に基づいた活動を推進しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、2026年度からスタートした5カ年の中期経営計画「中期経営計画2030」を策定し、収益性および資本効率の向上を重要な経営テーマと位置づけています。最終年度に向けた具体的な数値目標は以下の通りです。
・売上高:470億円
・営業利益率:4.1%
・連結純資産配当率:2.4%
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は長年培ってきた事業を基盤に、「新たなパッケージングソリューション企業」への進化を目指しています。既存事業の収益構造改革を進めるとともに、「ラベル事業」「包装システム販売事業」「海外事業」の拡大に取り組みます。あわせて、人的資本の強化やDX推進、環境対応の強化を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「企業の永続成長と従業員の幸福とが一致する経営」を実践するため、多様な人材の獲得と育成に注力しています。性別や国籍にとらわれない採用を行い、ワーク・ライフバランスの充実した働きやすい職場づくりを推進しています。また、女性やグローバル人材、障がい者の活躍を支援する環境整備を行っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 37.4歳 | 14.3年 | 5,031,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.0% |
| 男性育児休業取得率 | 87.5% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 66.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 68.5% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 61.4% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理・監督職(係長クラス以上)に占める女性労働者の割合(8.9%)、育児休業取得率(92.6%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
(1) 原材料の供給状況と価格変動リスク
印刷包材の製造に使用する板紙などの原材料は特定の地域からの供給に依存しており、天災などで供給不足が生じる恐れがあります。また、原油価格や為替レートの変動によって原材料価格が高騰し、販売価格に転嫁できない場合には、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 取引先の特定業種への偏重リスク
同社の主力である印刷包材事業は売上高の大部分を占めており、その顧客の大半が医薬品メーカーおよび化粧品メーカーに集中しています。薬機法の改正や薬事行政の指導、取引先各社の事業方針など、当該市場を取り巻く事業環境の変化が同社の業績に直接的な影響を及ぼす可能性があります。
(3) 電力供給およびコスト上昇リスク
同社の生産設備の動力源は主に電力に依存しています。電力の供給不足による工場操業の停止や、電力料金の値上げによる製造原価の著しい上昇が発生し、省エネや原価低減といった対策で吸収しきれない場合には、同社の経営成績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。



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