朝日印刷 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

朝日印刷 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場。主力の印刷包材の製造・販売に加え、包装システムの販売や人材派遣事業を展開しています。当連結会計年度は、国内外での受注増や価格改定効果、子会社化の影響等により、売上高は増収となりました。利益面では、営業利益と当期純利益は増益、経常利益は減益となりました。


※本記事は、株式会社朝日印刷の有価証券報告書(第109期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 朝日印刷ってどんな会社?


医薬品や化粧品向けの印刷包材を主力とし、包装システム販売も手掛ける「包装」のトータル・プランナーです。

(1) 会社概要


1946年に富山市で朝日印刷紙器として設立され、1993年に日本証券業協会へ株式を店頭登録しました。2002年には東京証券取引所市場第二部へ株式を上場。海外展開も進めており、2019年にはマレーシアのHarleigh (Malaysia) Sdn.Bhd.等を子会社化、2023年には同じくマレーシアのKinta Press & Packaging (M) Sdn.Bhd.を子会社化するなど、ASEAN地域での事業基盤を強化しています。

連結従業員数は1,850名、単体では1,138名です。筆頭株主は株式会社サンワールドで、第2位は朝日印刷持株会、第3位は生産設備等の仕入先でもある株式会社小森コーポレーションとなっています。

氏名 持株比率
株式会社サンワールド 9.91%
朝日印刷持株会 7.27%
株式会社小森コーポレーション 5.74%

(2) 経営陣


同社の役員は男性17名、女性1名の計18名で構成され、女性役員比率は5.6%です。代表取締役社長は朝日 重紀氏が務めています。社外取締役比率は16.7%です。

氏名 役職 主な経歴
朝日 重剛 代表取締役会長 1970年入社。1986年社長就任。1997年会長就任。2012年より公益財団法人朝日国際教育財団代表理事を兼務。
朝日 重紀 代表取締役社長 2001年入社。2014年専務取締役、2020年代表取締役副社長を経て、2021年より現職。マレーシア子会社の取締役も兼務。
広田 敏幸 取締役副社長管理本部長 1979年入社。社長室長、経営戦略室長、経理部長、財務部長等を歴任。2022年取締役副社長に就任し、2025年1月より現職。
佐藤 和仁 常務取締役生産本部長工場再編推進室長 1991年入社。大阪支店長、営業本部長、企画開発本部担当等を歴任。2024年4月より現職。
野村 良三 取締役経営戦略室担当 1986年入社。品質保証部長、富山工場長、経営戦略室長、生産本部長等を歴任。2025年1月より現職。
西田 良弘 取締役財務部長 1989年入社。名古屋支店長、生産管理部長、株式会社ニッポー社長、京都クリエイティブパーク長等を歴任。2025年1月より現職。
塚田  武 取締役 1989年入社。メーク営業部長、海外事業開発室長等を歴任。マレーシア子会社3社のDirectorを兼務。
佐々木 昌太郎 取締役西日本営業本部長富山営業部長営業企画室長 1990年入社。富山営業部長、大阪支店長、包装システム販売部担当等を歴任。2024年7月より現職。
保木 秀之 取締役東日本営業本部長新宿支店長企画開発本部担当 1995年入社。社長室長、総務部長、人事部長・CSR推進室長等を歴任。2025年4月より現職。
若林 和人 取締役経営管理部長品質保証部担当 1987年入社。販売推進部長、しごとチェンジ推進室長、経営戦略室長・DX推進室長等を歴任。2025年1月より現職。


社外取締役は、高田 忠直(黒部フーズサプライ代表取締役)、水波 悟(税理士)、鮎川 裕美(味の素トレーディング取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「印刷包材事業」、「包装システム販売事業」および「その他」事業を展開しています。

印刷包材事業


主に医薬品や化粧品向けのパッケージ、添付文書、ラベルなどの製造・販売を行っています。顧客は製薬メーカーや化粧品メーカーなどが中心です。

製品を顧客に引き渡した時点で収益を認識します。運営は、同社のほか、阪本印刷、株式会社ニッポー、およびマレーシアのHarleigh (Malaysia) Sdn.Bhd.、Shin-Nippon Industries Sdn.Bhd.、Kinta Press & Packaging (M) Sdn.Bhd.が行っており、協和カートンへは製造を委託しています。

包装システム販売事業


印刷包材と連携したトータル提案により、顧客ニーズに合わせた包装機械や包装ラインの企画提案・仕入・販売を行っています。

包装機械等の引き渡し時点で収益を認識しますが、サービス提供が複数期間にわたる場合は進捗に応じて収益を認識します。運営は同社が行っています。

その他


人材派遣事業を行っています。同社グループ内および地域企業からの求人に応じて人材を派遣しています。

派遣サービスの提供により収益を得ています。運営は子会社の朝日人材サービスが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は400億円台前半で推移していましたが、直近では増加傾向にあり、当期は439億円に達しました。経常利益は20億円台前半から半ばで推移しており、比較的安定しています。当期利益も10億円台後半を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 401億円 388億円 403億円 419億円 439億円
経常利益 24億円 25億円 25億円 23億円 22億円
利益率(%) 6.0% 6.5% 6.3% 5.5% 4.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 13億円 15億円 15億円 14億円 17億円

(2) 損益計算書


売上高は増加しましたが、売上原価および販売費及び一般管理費も増加しました。売上総利益率はほぼ横ばいから微減傾向にあります。営業利益率は4.7%となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 419億円 439億円
売上総利益 95億円 99億円
売上総利益率(%) 22.6% 22.5%
営業利益 20億円 21億円
営業利益率(%) 4.9% 4.7%


販売費及び一般管理費のうち、荷造運送費が21億円(構成比27%)、給与賞与が20億円(同25%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の印刷包材事業は増収増益となりました。包装システム販売事業は大幅な増収増益を達成し、全体の業績向上に寄与しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
印刷包材事業 387億円 403億円 90億円 93億円 23.0%
包装システム販売事業 26億円 32億円 4億円 5億円 16.1%
その他 5億円 5億円 1億円 1億円 24.7%
調整額 7億円 7億円 1億円 1億円 18.0%
連結(合計) 419億円 439億円 95億円 99億円 22.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


**健全型**
営業CFがプラスで、投資CFと財務CFがマイナスです。本業で稼いだ現金を、設備投資や借入金の返済、株主還元に充てている健全な状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 35億円 45億円
投資CF -50億円 -35億円
財務CF -5億円 -0.5億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.1%で市場平均(7.2%)を下回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は48.6%で市場平均(57.5%)を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「お客様本位を基本とし、企業の永続成長と従業員の幸福とが一致する経営」を目指しています。これは、お客様本位を最優先としつつ、従業員が仕事にやりがいと幸せを感じて成長し、その結果が会社の成長につながっていくという精神です。また、包むこころを大切にし、安心・安全と美を追求した商品・サービスを提供することで社会に貢献することを信念としています。

(2) 企業文化


同社は、代々受け継がれてきた「不易流行」の精神を大切にしています。また、グループ共通の「12の行動指針:Value」を定めており、従業員それぞれがこの指針に基づいた活動を推進しています。これにより、お客様への貢献と社会の発展に寄与するとともに、企業のアイデンティティの発信に努め、企業価値の向上と持続的成長を図る文化があります。

(3) 経営計画・目標


2026年3月期を最終年度とする経営数値目標として、以下を掲げています。
* 売上高:450億円
* 営業利益率:5.0%
* 連結配当性向:40%以上

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画「AX2024+1」において、5つの戦略を推進しています。「市場深耕拡大」では全国営業拠点でのシェア拡大や高機能ラベル開発、「付加価値最大化」では省人化設備導入やAI活用による品質向上を目指します。「ワークエンゲージメント」ではダイバーシティ推進や従業員の成長支援、「海外事業推進」ではマレーシア新工場建設やシナジー創出、「経営資源活用」ではCO2削減や人材育成に取り組みます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは、成長の原動力を「人財」と位置づけ、多様な人財の獲得と育成を目指しています。採用においては性別や国籍にとらわれず意欲ある人財を確保し、育成面では「朝日教育委員会」や「人材委員会」を通じて研修の充実や全社的な活用を図っています。また、ワーク・ライフバランスの充実やダイバーシティ推進により、誰もが働きやすい環境整備に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均(598万円)を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 37.0歳 14.0年 4,715,308円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.1%
男性育児休業取得率 84.2%
男女賃金差異(全労働者) 66.7%
男女賃金差異(正規雇用) 69.2%
男女賃金差異(非正規雇用) 58.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理・監督職(係長クラス以上)に占める女性労働者の割合(7.9%)、育児休業取得率(93.3%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料の供給状況による影響


主力の印刷包材事業で使用する原材料等は、供給元と基本取引契約を締結し安定調達を図っていますが、主原材料である板紙の供給元地域は東海(富士地区)へ偏っています。供給元地域における天災や事故、または取引関係の変化が生じた場合、原材料の不足により同社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 電力の供給状況による影響


同社グループ各社の生産設備の動力源は電力であり、供給不足や電力料金の値上げが発生した場合には、工場の操業への影響や製造原価の上昇が生じることがあります。省エネや原価低減等の対応策を推進していますが、これらの影響を吸収できない場合、経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 特定業種への取引先偏重


印刷包材事業の売上高の大半は医薬品向けおよび化粧品向け包材が占めています。取引先1社当たりの売上割合は低く分散されていますが、製薬・化粧品業界の市場環境や動向、薬機法改正などの行政指導、取引先各社の事業方針や経営施策の変化により、同社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 特有の法的規制および製品責任


印刷包材事業ではISO9001に基づく品質管理を行っていますが、医薬品包材の表示誤り等により製品回収が発生した場合、そのコスト負担が生じる可能性があります。また、製造・販売した製品の不具合に起因して得意先で改修費用が発生した場合、責任割合に応じた費用請求を受けることがあり、経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。