広済堂ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

広済堂ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

広済堂ホールディングスは東京証券取引所プライム市場に上場し、火葬場や総合斎場を運営するエンディング事業を中核に、情報ソリューションや人材サービスを展開しています。直近の業績は、M&Aや新式場開設の一方、火葬件数の減少や大型金融案件の終了が響き減収減益ですが、特別損失の減少により純利益は増益を確保しました。


※本記事は、株式会社広済堂ホールディングス の有価証券報告書(第62期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 広済堂ホールディングスってどんな会社?


火葬場・総合斎場運営を中核に、印刷やBPO、人材領域まで幅広く事業を展開する企業です。

(1) 会社概要


1949年に櫻井謄写堂として創業し、1997年に東証二部、2000年に東証一部(現プライム市場)へ上場しました。1994年に東京博善を子会社化して葬祭事業を強化し、2021年に持株会社体制へ移行して広済堂ホールディングスに社名変更しています。直近では納骨堂事業や葬儀業のM&Aを進めています。

同社グループの従業員数は連結で1,002名、単体で73名です。大株主については、筆頭株主は投資業を行うR&Lホールディングスで、第2位はグローバルワーカー派遣、第3位は麻生となっています。

氏名 持株比率
R&Lホールディングス 21.78%
グローバルワーカー派遣 13.30%
麻生 9.13%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役会長CEOは羅怡文氏、代表取締役社長COOは常盤誠氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
羅怡文 代表取締役会長CEO(最高経営責任者) 中文産業創立、ラオックス代表取締役社長、R&Lホールディングス設立などを経て、2024年6月より現職。
常盤誠 代表取締役社長COO(最高執行責任者) 第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行、みずほ銀行枚方支店長などを経て同社に入社し、2025年6月より現職。


社外取締役は、渡邉雅之(弁護士法人三宅法律事務所シニアパートナー弁護士)、上村明(上村・太平・水野法律事務所マネージングパートナー)、竹村滋幸(元ANAホールディングス副社長)、中井川俊一(ラス・カーズ・キャピタル代表取締役社長)、相澤茜(グローバル・ネットワーク代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「葬祭公益」「葬祭収益」「情報」「人材」「資産コンサルティング」事業を展開しています。

葬祭公益


火葬事業を展開し、東京23区内の約7割に相当する火葬を担い、社会インフラの一端を支えています。
収益源は火葬場の利用料などであり、運営は100年を超える社歴を持つ東京博善が行っています。

葬祭収益


総合斎場における貸し式場や付帯サービスの提供に加え、葬儀サービスや納骨堂の運営を行っています。
式場利用料や葬儀費用、飲食等の付帯サービス料から収益を得ており、運営は東京博善のほか、広済堂ライフウェル、横濱聖苑、セレモライフなどが担っています。

情報


出版・商業印刷を始めとする印刷関連ソリューションや、ITソリューション、事務局代行などのBPOサービスを提供しています。
印刷物の製造販売代金や受託開発費、BPO業務の受託料から収益を得ており、主に広済堂ネクストが運営しています。

人材


人材派遣や外国人材を中心とした人材紹介、語学教育、ハウスキーピング事業など、採用から教育まで一体的な人材ソリューションを提供しています。
企業からの派遣料金や紹介手数料などが主な収益源であり、広済堂ビジネスサポートやキャリアステーションなどが運営を担っています。

資産コンサルティング


エンディングにまつわる事業領域の拡大として、金融サービス業や相続相談、不動産仲介業などを提供しています。
貸付金利息や不動産仲介手数料などから収益を得ており、運営は広済堂ファイナンスや東京博善あんしんサポートなどが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の売上高は350億円から380億円の範囲で安定して推移しています。経常利益と利益率は改善傾向にありましたが、当期は大型案件の終了や火葬件数の減少等の影響で前年を下回りました。一方で純利益は特別損失の減少等により増益を確保しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 354億円 367億円 355億円 383億円 362億円
経常利益 36億円 42億円 53億円 80億円 66億円
利益率(%) 10.2% 11.4% 15.0% 21.0% 18.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 36億円 46億円 29億円 37億円 38億円

(2) 損益計算書


当期は売上高が減少したことに加え、収益性の高い大型貸付案件の終了や、火葬事業における休憩室貸出・飲食売上などの付随収益が減少したことで、売上総利益および営業利益がともに前年を下回りました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 383億円 362億円
売上総利益 161億円 138億円
売上総利益率(%) 42.2% 38.1%
営業利益 83億円 67億円
営業利益率(%) 21.7% 18.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料が21億円(構成比30%)、支払手数料が7億円(同10%)を占めています。

(3) セグメント収益


葬祭収益と情報は新規式場の開業やBPO案件の受注増で増収となりましたが、葬祭公益は死亡者数の減少に伴い火葬件数が落ち込み減収となりました。資産コンサルティングも大型貸付案件が終了し大幅な減収を記録しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
葬祭公益 60億円 54億円
葬祭収益 104億円 105億円
情報 148億円 150億円
人材 53億円 50億円
資産コンサルティング 18億円 3億円
連結(合計) 383億円 362億円


営業利益+資産売却等で借入返済を進める改善局面です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -85億円 209億円
投資CF 41億円 7億円
財務CF -29億円 -108億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.8%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も68.5%といずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、社名にある「広済(広く社会に貢献する)」を経営理念として掲げています。印刷、IT、人材、葬祭などの各事業を通じ、社会の発展と人々の豊かな暮らし創りの担い手として、社会から必要とされ、また社会的責任を果たせる、信頼される企業グループを目指しています。

(2) 企業文化


同社グループは、社会環境やライフスタイル、価値観の変化の中で、お客様に真に必要とされる商品やサービスを探り、提供していく「お客様第一主義」を追求しています。また、ニーズの一歩先を読みながら、常に新しいものに挑戦する「進取の精神」を大切にし、事業展開を進める文化があります。

(3) 経営計画・目標


従来の数値積上げ型の計画から脱却し、長期的な事業ポートフォリオの在り方を見据えた新たな中期経営計画の策定を進めています。併せて、5年以上先を見据えた長期ビジョンを策定して経営の方向性を明確化し、資本市場との対話を通じた企業価値向上に取り組むとしています。

(4) 成長戦略と重点施策


エンディング事業領域を中核的な成長領域と位置付け、収益力強化と事業拡大を図ります。情報ソリューションおよび人材サービス事業では、事業構造の見直しと成長領域へのシフトを進めます。具体的には、印刷事業の高付加価値化、人材事業における外国人材領域の強化等により、持続的な成長が可能な事業ポートフォリオを構築します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


フィロソフィーである「進取の精神」をもとに変革に挑戦し、社会に貢献する人材の育成を重視しています。若手・中堅社員の育成やリスキリング支援を通じて自律的な成長を促すほか、女性活躍の推進、柔軟な働き方の提供、公正な評価と労務管理の徹底により、コア人材が長く働き続けられる社内環境の整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 45.3歳 11.8年 6,548,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 15.4%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全) 72.7%
男女賃金差異(正規) 73.3%
男女賃金差異(非正規) 47.8%


また、同社は「人材戦略に関する基本方針等」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、定期面談・キャリア面談実施率(中期目標100%)、研修受講率(中期目標100%)、主要4社依願離職率(中期目標11.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 競合増加による価格競争激化


葬儀業においては、低価格サービスを提供する競合が増加しており、価格引き下げ圧力が強まっています。急激な景気後退や需要縮小に伴う価格競争の激化により利益率が低下し、同社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 人口動態や価値観などの市場変化


中長期的には東京都の死亡者数はピークを迎えた後に減少に転じる見込みであり、家族葬や直葬などの増加により従来型サービスの需要が減少する可能性があります。また、印刷事業でのペーパーレス化や人材事業での雇用情勢の変化もリスクとなります。

(3) 法的規制や法改正による影響


同社グループは火葬場を運営しているため「墓地、埋葬等に関する法律」の規制を受けています。また、人材サービス事業においては労働関連法令の規制を受けます。今後、新たに法的規制が設けられた場合、事業展開や業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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