※本記事は、SEホールディングス・アンド・インキュベーションズ株式会社 の有価証券報告書(第40期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. SEホールディングス・アンド・インキュベーションズってどんな会社?
出版事業を行う翔泳社を中核に、ソフトウェア開発や人材関連サービス、投資運用事業を展開する持株会社です。
■(1) 会社概要
1985年に株式会社翔泳社として設立し、ソフトウェアマニュアル制作や出版事業を開始しました。2004年にジャスダック証券取引所へ上場し、2006年には会社分割により純粋持株会社体制へ移行して現商号に変更しました。2022年の市場区分見直しに伴い、スタンダード市場へ移行しています。
連結従業員数は299名、単体従業員数は12名です。筆頭株主は代表取締役社長の速水浩二氏で、第2位は取締役副社長の篠﨑晃一氏、第3位は証券金融業務を行う日本証券金融株式会社となっています。創業以来のIT関連事業を軸に、多角的な事業展開を行っています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 速水浩二 | 16.76% |
| 篠﨑晃一 | 5.49% |
| 日本証券金融株式会社 | 5.38% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は速水浩二氏です。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 速水 浩二 | 代表取締役社長 | 1989年株式会社協和銀行入行。1993年同社入社。ゲーム開発局長等を経て1996年より現職。グループ会社であるSEモバイル・アンド・オンライン等の代表も兼務。 |
| 佐々木 幹夫 | 取締役副社長 | 1985年株式会社平沢コミュニケーションズ入社。1988年同社入社。出版局長等を経て1999年より現職。翔泳社代表取締役社長も務めた。 |
| 篠﨑 晃一 | 取締役副社長 | 1978年有限会社向井周太郎デザイン研究所入社。1988年同社入社。1993年より現職。株式会社SEデザイン代表取締役社長を兼務。 |
| 佐多 俊一 | 取締役(監査等委員) | 1992年株式会社住友銀行入行。1997年同社入社。管理部長等を経て、2003年株式会社コンポーネントソース代表取締役社長就任。2018年より現職。 |
社外取締役は、飯塚孝徳(弁護士)、廣岡穣(公認会計士・税理士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「出版事業」「コーポレートサービス事業」「ソフトウェア・ネットワーク事業」「教育・人材事業」「投資運用事業」を展開しています。
■(1) 出版事業
IT・ビジネス・デザイン・カルチャー関連等の一般書籍、海外翻訳書籍、電子書籍の発行・販売を行っています。また、書籍等の直販サイト運営、Webマガジン運営などのWebメディア事業、IT技術者向けのイベント事業も手掛けています。
主な収益源は、書籍や電子書籍の販売による対価、イベント参加料、Web広告収入などです。運営は主に株式会社翔泳社が行っています。
■(2) コーポレートサービス事業
マーケティングコンサルティング、Webコンテンツ制作、オウンドメディア構築、マーケティングオートメーションの導入・運用支援、ブランドローカライズなどのコンテンツマーケティング支援事業を行っています。
主な収益源は、企業クライアントからのマーケティング支援やコンテンツ制作等の業務受託料です。運営は主に株式会社SEデザインが行っています。
■(3) ソフトウェア・ネットワーク事業
Webサービスの企画・開発・運営や、ソーシャルゲーム・スマートフォンアプリの開発を行っています。これには自社サービスのほか、顧客からの受託開発も含まれます。
主な収益源は、ゲームやアプリの利用者からの課金収入、企業からのシステム開発受託料などです。運営は主にSEモバイル・アンド・オンライン株式会社が行っています。
■(4) 教育・人材事業
医療業界に関連する転職支援や求人サイトの運営、およびIT人材向けの教育・研修サービスを提供しています。
主な収益源は、人材紹介による紹介手数料、研修サービスの受講料などです。運営は主に株式会社SEプラスが行っています。
■(5) 投資運用事業
有価証券への投資や不動産賃貸事業を行っています。グループ全体の資産運用としての側面も持ち合わせています。
主な収益源は、有価証券の売却益や配当金収入、保有不動産からの賃貸収入です。運営は主にSEインベストメント株式会社および同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は70億円台前半で安定的に推移していますが、直近では微減となっています。利益面では、経常利益率が低下傾向にあり、当期は減益となりました。利益率は以前として10%を超えており、一定の収益性は維持していますが、コスト増などの影響が見られます。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 63億円 | 71億円 | 73億円 | 73億円 | 72億円 |
| 経常利益 | 9億円 | 14億円 | 14億円 | 11億円 | 8億円 |
| 利益率(%) | 14.3% | 20.1% | 19.0% | 15.6% | 11.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 3億円 | 4億円 | 8億円 | 6億円 | 6億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は微減となりましたが、売上原価の増加に伴い売上総利益率は低下しています。販売費及び一般管理費も増加しており、結果として営業利益率は前期比で低下しました。利益確保に向けたコストコントロールが課題となっています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 73億円 | 72億円 |
| 売上総利益 | 37億円 | 35億円 |
| 売上総利益率(%) | 51.0% | 48.9% |
| 営業利益 | 12億円 | 8億円 |
| 営業利益率(%) | 16.6% | 11.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が10億円(構成比38%)、販売印税が3億円(同10%)を占めています。売上原価については、商品及び製品の仕入や制作コスト等が主要な構成要素となっています。
■(3) セグメント収益
主力の出版事業は増収となったものの、コスト増により減益となりました。コーポレートサービス事業とソフトウェア・ネットワーク事業は減収となり、営業損失を計上しています。教育・人材事業は増収でしたが減益、投資運用事業は減収減益となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 出版 | 42億円 | 44億円 | 9億円 | 7億円 | 16.8% |
| コーポレートサービス | 10億円 | 8億円 | 1億円 | -0.3億円 | -3.1% |
| ソフトウェア・ネットワーク | 8億円 | 8億円 | 1億円 | -0.1億円 | -1.3% |
| 教育・人材 | 9億円 | 9億円 | 2億円 | 2億円 | 21.3% |
| 投資運用 | 4億円 | 4億円 | 3億円 | 3億円 | 71.7% |
| 調整額 | -1億円 | -1億円 | -3億円 | -3億円 | - |
| 連結(合計) | 73億円 | 72億円 | 12億円 | 8億円 | 11.3% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
なお、同社は投資運用事業を展開しており、営業CFのマイナスは主に営業投資有価証券の増加によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 5億円 | -3億円 |
| 投資CF | 0.5億円 | -0.2億円 |
| 財務CF | -2億円 | -0.2億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.1%で市場平均(7.2%)を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は58.2%で市場平均(57.5%)をやや上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、情報産業をはじめとする市場の成長に積極的に寄与し、社会に貢献しながら自らも成長することを目指しています。また、対象市場を活性化させるため事業者のインキュベーションを積極的に行い、市場全体にわたる事業基盤を構築することで、個別事業のリスクを減少しつつ全体の成長効率を向上させる方針です。
■(2) 企業文化
「本当に正しいことに取り組み続けていくこと」を基本的な価値観としています。長期にわたり持続可能な社会への貢献と自らの発展を実現させるため、人材を重視し、多様な個性の尊重や働き方の実現、キャリア形成の支援などをグループ全体の指針として掲げています。
■(3) 経営計画・目標
事業会社各社の再建、新規収益基盤の創出、事業会社経営人材の拡充と育成、収益基盤の質の多様性による長期成長基盤の充実を重点課題としています。具体的な数値目標は記載されていませんが、既存事業の成長に加え、M&Aや戦略的投資を活用してグループ全体の価値向上を図る方針です。
■(4) 成長戦略と重点施策
情報産業市場(IT市場)の成長を背景に、デジタルトランスフォーメーションの潮流に対応した事業展開を進めます。出版事業では電子書籍やWebメディア等のオンライン媒体の強化、コーポレートサービス事業ではデジタルマーケティングのサポート拡大を図ります。また、事業会社の成長基盤整備や新規収益基盤の創出、経営人材の育成に注力します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
多様な個性と能力を尊重し、属性理由による差別なく公正な評価に基づく登用・処遇を行う方針です。また、育児や介護などのライフイベントと仕事の両立支援、自律的なキャリア形成やスキルアップのための教育研修など、成長機会の提供と安全で健全な職場環境の整備に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 52.2歳 | 10.7年 | 7,670,178円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。なお、下記の数値(女性管理職比率)は連結子会社である株式会社翔泳社の実績です。同社および他の連結子会社については、公表をしていないため記載を省略しています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 27.0% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用) | - |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | - |
※男性労働者の育児休業取得率、労働者の男女の賃金の差異については、公表をしていないため記載を省略しています。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 委託販売制度について
出版事業では、業界慣行として委託販売制度を採用しており、一定期間内に限り返品を受け入れています。返品抑制対策を行っていますが、想定以上の返品増加は売上の減少を通じて業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 再販売価格維持制度について
出版物は独占禁止法の例外として再販制度が認められていますが、公正取引委員会による弾力的運用の要請や電子書籍の普及などにより制度が揺らぎつつあります。制度の変更や廃止があった場合、価格競争の激化などにより業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 出版事業環境について
出版市場はマイナス成長が続いており、編集意図と読者ニーズの乖離、他社との競争激化、消費者の購買力低下、書店数の減少、原材料価格の高騰などの要因が業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) Webサービス事業環境について
オンラインゲームやモバイルゲーム市場は成熟化が進んでおり、ヒットタイトルの創出難度や開発コストが増大しています。競争が激しい分野であり、サービス内容がユーザーニーズに対応できない場合、利用者の減少等により業績に影響が出る可能性があります。



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