SEホールディングス・アンド・インキュベーションズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

SEホールディングス・アンド・インキュベーションズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

SEホールディングス・アンド・インキュベーションズは、東京証券取引所スタンダード市場に上場する企業です。出版事業やコーポレートサービス事業、ソフトウェア・ネットワーク事業などを幅広く展開しています。直近の業績は売上高70億円で減収、経常利益8億円で減益の一方、当期純利益は4億円で減益となりました。


※本記事は、SEホールディングス・アンド・インキュベーションズ株式会社の有価証券報告書(第41期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. SEホールディングス・アンド・インキュベーションズってどんな会社?


同社グループは、出版やITソリューション、教育人材、投資運用など幅広い事業を展開する企業です。

(1) 会社概要


1985年に翔泳社として設立され、ソフトウェアマニュアルの制作から事業を開始しました。1998年に株式を店頭登録し、2006年には会社分割により持株会社体制へ移行して現在の社名となりました。その後も投資運用事業を行う子会社の設立やグループ内の組織再編を行い、多様な市場で事業領域を拡大しています。

現在の従業員数は連結で270名、単体で6名です。大株主の状況としては、筆頭株主が創業メンバーであり代表取締役社長を務める速水浩二氏、第2位が金融機関のINTERACTIVE BROKERS LLC、第3位が取締役副社長の篠﨑晃一氏となっています。

氏名 持株比率
速水浩二 18.26%
INTERACTIVE BROKERS LLC(常任代理人 インタラクティブ・ブローカーズ証券) 14.81%
篠﨑晃一 6.13%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は速水浩二氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
速水浩二 代表取締役社長 1989年協和銀行入行。1993年同社入社。1996年より同社代表取締役社長。SEモバイル・アンド・オンライン代表取締役社長などを経て、2011年よりSEインベストメント代表取締役社長を兼任。
佐々木幹夫 取締役副社長 1985年平沢コミュニケーションズ入社。1988年同社入社。1999年より同社取締役副社長。翔泳社人材センター代表取締役社長などを経て、2006年より翔泳社代表取締役社長。
篠﨑晃一 取締役副社長 1978年向井周太郎デザイン研究所入社。アーツ取締役等を経て1988年同社入社。1993年より同社取締役副社長。2006年よりSEデザイン代表取締役社長。
佐多俊一 取締役(監査等委員) 1992年住友銀行入行。1997年同社入社。同社取締役等を経て2002年退社。2003年コンポーネントソース代表取締役社長。2006年同社取締役に復帰し、2018年より現職。


社外取締役は、飯塚孝徳(飯塚総合法律事務所所属)、廣岡穣(廣岡公認会計士事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「出版事業」「コーポレートサービス事業」「ソフトウェア・ネットワーク事業」「教育・人材事業」「投資運用事業」の5つの報告セグメントで事業を展開しています。

出版事業


ITやビジネス、デザインなどの分野における一般書籍や電子書籍の発行および販売を行っています。また、直販サイトやWebマガジンの運営、IT技術者向けのイベント開催など、多様なメディアを通じたコンテンツ提供も手掛けています。

主な収益源は、取次会社や書店を通じた書籍の販売代金、直販サイトでの販売収入、電子書籍の販売代金、およびWebメディアでの広告収入やイベント参加費です。事業の運営は主に翔泳社が行っています。

コーポレートサービス事業


顧客企業のマーケティング活動を支援するコンテンツマーケティング支援事業を展開しています。具体的には、マーケティングコンサルティング、Webコンテンツの制作、オウンドメディアの構築、ブランドローカライズなどを提供しています。

国内外の顧客企業から受託するマーケティングや販促に係るコンテンツ企画および制作の対価が主な収益源です。顧客が成果物を検収した時点で収益を認識します。事業の運営はSEデザインが行っています。

ソフトウェア・ネットワーク事業


スマートフォンアプリやソーシャルゲームなどのソフトウェアの企画・開発・運営を行っています。また、Webサービスの企画開発や法人向けの受託開発など、多層的なITソリューションも提供しています。

自社で運営するアプリやゲームを通じたユーザーからの課金収入、および法人顧客から受託するシステム開発やソフトウェア制作の対価が主な収益源です。事業の運営は主にSEモバイル・アンド・オンラインが行っています。

教育・人材事業


IT技術者向けの教育および研修サービスの提供を行っています。また、医療関連業界に向けた転職支援サービスや求人サイトの運営など、専門性の高い人材のキャリア支援も手掛けています。

企業や個人からの研修受講料、および医療機関等からの人材紹介に係る成果報酬が主な収益源です。紹介した人材の入社時点で収益を認識します。事業の運営は主にSEプラスが行っています。

投資運用事業


有価証券に対する投資と運用を行っています。分散投資および長期投資を基本方針とし、国内外のスタートアップ企業から大手金融機関、一般事業法人まで幅広い対象に対して投資活動を展開しています。

保有する株式などからの配当金収入や、市場動向を勘案した一部保有株式の売却による売却益が主な収益源です。事業の運営は主にSEインベストメントが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は70億円台で安定して推移していますが、直近では微減傾向にあります。経常利益はインフレに伴うコスト増加やコロナ特需の終息などの影響を受け、減少傾向が続いており、利益率も低下しています。一方、当期純利益は年度ごとに変動が見られます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 71億円 73億円 73億円 72億円 70億円
経常利益 14億円 14億円 11億円 8億円 8億円
利益率(%) 20.1% 19.0% 15.6% 11.2% 11.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 4億円 8億円 6億円 6億円 4億円

(2) 損益計算書


売上高および売上総利益はともに前年度から微減となっています。しかし、販売費及び一般管理費の削減を進めたことにより、営業利益および営業利益率は前年度を上回る結果となりました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 72億円 70億円
売上総利益 35億円 34億円
売上総利益率(%) 48.9% 48.4%
営業利益 8億円 10億円
営業利益率(%) 11.3% 13.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が10億円(構成比40%)、販売印税が2億円(同9%)を占めています。

(3) セグメント収益


出版事業やコーポレートサービス事業では事業のスリム化や人員整理等の再構築を進めた影響で減収となりました。一方、ソフトウェア・ネットワーク事業や教育・人材事業は底堅く推移し、投資運用事業は配当金収入や株式売却益により大幅な増収を達成しました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
出版事業 44億円 40億円
コーポレートサービス事業 8億円 7億円
ソフトウェア・ネットワーク事業 8億円 8億円
教育・人材事業 9億円 9億円
投資運用事業 4億円 6億円
連結(合計) 72億円 70億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は60.1%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「情報産業をはじめとする市場の成長に積極的に寄与することで、社会に貢献しながら自らも成長していくこと」を目標として掲げています。対象市場全体にわたって事業基盤を構築し、インキュベーションを積極的に行うことで、個別事業のリスクを減らしつつ成長効率を向上させる方針です。

(2) 企業文化


同社グループは、「本当に正しいことに取り組み続けていくこと」を基本的な価値観として重視しています。事業活動を通じた経済成長への貢献、業績向上への努力による資本市場への寄与、納税や雇用の創出による社会基盤への寄与など、社会的価値と企業価値を永続的に実現できる企業集団を目指す文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標


既存の概念にとらわれない広い視点で収益チャンスを捉え、既存事業の成長に加えて新規事業を積極的に展開していくことを目標としています。企業への戦略的投資や育成、M&Aも積極的に活用し、グループ全体の価値向上を図ることを目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


今後の持続的な成長に向けて、「事業会社各社の再建」「新規収益基盤の創出」「事業会社経営人材の拡充と育成」「収益基盤の質の多様化による長期成長基盤の充実」の4点を重点課題として掲げています。さらに、労働供給制約や生成AIの進展など、新たな経済・経営環境の変化に的確に適応するための準備を進めています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは、一人ひとりの個性と能力を尊重し、女性や中途採用者、外国人などを差別することなく公正な評価に基づく登用を行っています。また、多様な働き方を支援する環境整備や、社員の自律的なキャリア形成、スキルアップ、リスキリングなどの能力開発を積極的に支援し、社員の安全と心身の健康を重視しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 53.6歳 15.2年 7,989,862円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 38.0%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用労働者) -
男女賃金差異(非正規雇用労働者) -


※女性管理職比率以外の項目については、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の規定に基づく公表をしていないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 書籍の委託販売制度に関するリスク


出版事業において、取次会社や書店に配本した出版物のほとんどは一定期間内の返品を受け入れる委託販売制度を採用しています。返品のないオンライン直販や電子書籍の販売を強化していますが、想定を上回る返品が発生した場合、売上高の減少を通じて業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 再販売価格維持制度の運用に関するリスク


出版物について再販売価格維持制度が認められていますが、ネット販売や電子書籍の増加により同制度は揺らぎつつあります。今後、消費者利益のために同制度の弾力的運用が求められたり、廃止されたりした場合、価格競争の激化により業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 変化する出版事業環境におけるリスク


紙の出版市場は縮小傾向にあり、電子コミックの伸び率も鈍化しています。質の高いコンテンツの提供やオンライン媒体の強化に努めていますが、消費者の購買力低下、書店の減少、物流コストの高騰、および生成AIの利活用による需要減退などが業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) Webサービス市場の競争激化リスク


ゲームアプリやWeb上のマッチングサービスなど多様な事業を展開していますが、有力メーカーによる市場寡占化や開発コストの増大が進んでいます。多くの新規参入が予想される中、提供するサービスがユーザーニーズに対応できず利用者が減少した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。