ラサ工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ラサ工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場に上場する同社は、化成品、機械、電子材料の3事業を柱に展開しています。半導体向け高純度燐酸や掘進機などを主力製品とし、第157期は半導体市場の回復等により増収増益(売上高6.2%増、経常利益35.5%増)となりました。


※本記事は、ラサ工業株式会社の有価証券報告書(第157期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ラサ工業ってどんな会社?


同社は、肥料原料の探鉱から始まり、現在は半導体向け高純度薬品や掘進機などを手掛ける多角化企業です。

(1) 会社概要


1913年にラサ島燐砿として設立され、1919年に東京証券取引所へ上場しました。1934年に現在のラサ工業へ社名を変更し、1954年には大阪工場にて黄燐・燐酸の製造を開始しています。その後、1980年に掘進機の製造を開始し、1985年には電子材料事業部を設置するなど、時代の変化に合わせて事業ポートフォリオを変革してきました。

2025年3月31日時点の従業員数は連結628名、単体455名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位も同様に信託銀行の信託口となっています。第3位には同社の取引先持株会が名を連ねており、安定株主が上位を占める構成となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 12.71%
日本カストディ銀行(信託口) 8.00%
ラサ工業取引先持株会 5.57%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長執行役員は坂尾 耕作氏が務めています。なお、社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
坂尾 耕作 代表取締役社長執行役員 1983年同社入社。化成品事業部技術・開発担当部長、電子材料事業部長兼営業部長等を経て、2019年代表取締役社長に就任。2024年6月より現職。
望月 哲夫 代表取締役常務執行役員経理部長、IR担当、総務部管掌 1984年日本興業銀行入行。みずほ銀行等を経て2011年同社入社。経営企画室長、取締役経理部長等を歴任し、2022年代表取締役常務に就任。2024年6月より現職。
上田 秀紀 取締役 常務執行役員研究開発担当、化成品事業部・機械事業部・電子材料事業部・NCRI営業部管掌 1984年同社入社。理盛精密科技股份有限公司総経理、同社化成品事業部長兼営業部長等を歴任。2024年6月より現職。
北田 勝誠 取締役 上席執行役員経営企画室長、DX推進担当 1995年同社入社。化成品事業部営業部東京営業所主査、大阪工場業務課長、大阪工場長を経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、齊藤 隆(元農林中央金庫参事役)、山本 卓司(元三菱銀行金融法人部長)、菊池 達也(元朝日生命保険代表取締役)、藤田 美穂(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「化成品事業」「機械事業」「電子材料事業」および「その他の事業」を展開しています。

(1) 化成品事業


燐酸及び燐系二次塩類、水処理用凝集剤、電子工業向け高機能高純度薬剤、消臭・抗菌剤などを製造・販売しています。半導体や液晶などの電子産業分野や、上下水道処理などの環境分野を顧客としています。

収益は、製品の販売対価として顧客から受け取ります。運営は主にラサ工業が行っていますが、子会社のラサ晃栄が一部販売や二次製品の製造・販売を行い、台湾の子会社である理盛精密科技股份有限公司が高純度品の製造・販売を行っています。

(2) 機械事業


掘進機、破砕関連機械、都市ごみ・産業廃棄物処理機械の製造・販売および精密機械加工を行っています。建設・土木業界や環境リサイクル関連施設などが主な顧客です。

収益は、機械装置の販売代金やレンタル料、加工賃などです。運営は主にラサ工業が行っていますが、鋳鋼品については子会社のラサスティールが製造し、同社が販売を行っています。

(3) 電子材料事業


高純度無機素材、塗布剤、放射性ヨウ素吸着剤などを製造・販売しています。半導体デバイスメーカーや原子力関連施設などが顧客となります。

収益は、製品の販売対価として受け取ります。運営は主にラサ工業が行っていますが、塗布剤の一部販売については子会社の理盛精密科技股份有限公司も行っています。

(4) その他の事業


石油精製用触媒の再生受託加工および不動産の賃貸を行っています。石油精製会社や不動産テナントが顧客です。

収益は、触媒再生の加工賃や不動産賃貸料として受け取ります。運営はラサ工業が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は300億円台から400億円台へと拡大基調にあります。特に2023年3月期には売上高が約500億円に達し、経常利益も高い水準を記録しました。2024年3月期は一時的な調整局面が見られましたが、2025年3月期には売上高・利益ともに回復し、経常利益率は10%を超える水準に戻っています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 290億円 354億円 496億円 428億円 454億円
経常利益 26億円 36億円 47億円 34億円 46億円
利益率(%) 9.1% 10.1% 9.5% 7.9% 10.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 13億円 17億円 20億円 20億円 16億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益が増加しています。売上総利益率は19.3%から21.2%へ改善しました。販売費及び一般管理費は増加しましたが、売上高の伸びがそれを上回り、営業利益率は8.4%から10.4%へと向上しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 428億円 454億円
売上総利益 83億円 96億円
売上総利益率(%) 19.3% 21.2%
営業利益 36億円 47億円
営業利益率(%) 8.4% 10.4%


販売費及び一般管理費のうち、出荷費・運賃が16億円(構成比33%)、給料諸手当が8億円(同16%)を占めています。

(3) セグメント収益


当期は主力の化成品事業が半導体向け高純度品の好調等により増収増益となりました。一方、機械事業は大型プラント案件の反動減等により減収減益、電子材料事業も減収減益となっています。その他の事業は概ね横ばいで推移しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
化成品事業 344億円 382億円 30億円 48億円 12.7%
機械事業 56億円 45億円 6億円 1億円 2.6%
電子材料事業 16億円 16億円 4億円 2億円 15.5%
その他 12億円 12億円 8億円 8億円 64.4%
調整額 -0億円 -0億円 -11億円 -12億円 -
連結(合計) 428億円 454億円 36億円 47億円 10.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業活動で得た資金を借入金の返済や配当支払い、および設備投資に充当しており、本業で稼いだキャッシュで財務基盤の強化と投資を両立させる**健全型**のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 50億円 50億円
投資CF -19億円 -18億円
財務CF -47億円 -16億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は60.8%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「信頼と誠実を大切にし、ものづくりを通じて新たな価値の創造と豊かな社会の実現に貢献する」という企業理念を掲げています。また、パーパスとして『産業を「モト」から支え、共に未来を築く』を定め、産業のイノベーションを基礎素材や機械装置等を通じて支え、社会の発展に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


創業以来の数多くの事業経験を財産としつつ、時代の変化に対して常に前向きでしなやかに対応する姿勢を重視しています。「先見性と進取の気質」を持った活力ある企業体としての発展を目指しており、資源開発会社として創業した背景から、「資源リサイクル」を絶えず意識した事業活動に取り組む文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社は、10年後のありたい姿を示した長期ビジョン「Rasa Vision 2033」の実現に向け、2024年度を初年度とする3ヶ年の「中期経営計画2026」を策定しています。

* 連結売上高:520億円
* 連結営業利益:48億円
* ROE(自己資本利益率):10%
* ROIC(投下資本利益率):9%
* 配当性向:30%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「電子産業分野」「ファインケミカル分野」「リサイクル分野」をターゲットとした商品展開を志向しています。また、経営資源の最適化と収益力強化を推進し、企業価値向上を図るため、以下の重点施策に取り組んでいます。

* 化成品事業:燐系製品の拡販、高純度リン酸のリサイクル実用化など
* 機械事業:掘進機の市場深耕、新規市場開拓など
* 電子材料事業:高純度無機素材のシェア拡大、次世代半導体用材料の開発など
* 全社:ROIC管理の導入、DX推進、気候変動への対応など

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「中期経営計画2026」において「人材戦略への注力」を掲げています。人材育成体制の見直しやナレッジマネジメントを推進し、人材の底上げを図る方針です。また、多様な人材の活躍を目指し、女性従業員の採用増加や働きやすい職場環境の整備、労働災害ゼロを目指した安全衛生管理の強化にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.4歳 19.4年 6,500,219円


※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.7%
男性育児休業取得率 75.0%
男女賃金差異(全労働者) 82.1%
男女賃金差異(正規雇用) 85.8%
男女賃金差異(非正規) 59.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性採用比率実績(19%)、有給休暇取得率(75%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済情勢および電子部品市場の変動


同社グループは各分野で事業を展開しており、世界各地の経済情勢の影響を受ける可能性があります。特に、半導体製造工程向けの高純度燐酸などを扱うため、電子部品・デバイス市場の急激な需要変動の影響を受けやすく、需要減少時には業績に影響を与える可能性があります。

(2) 原料価格の変動及び調達


化成品事業では主原料である黄燐を海外から輸入していますが、各国の制度変更や電力事情、世界的な需給により価格が変動するリスクがあります。調達ルートの分散や価格転嫁に努めていますが、原料価格の高騰や在庫評価減などにより、業績に悪影響を与える可能性があります。

(3) 資金調達に係るリスク


借入による資金調達を行っているため、金利等の市場環境変化により調達コストが増加する可能性があります。また、金融機関からの借換えや新規借入が困難になった場合、資金調達に重大な影響を及ぼす可能性があります。これに対し、複数の金融機関と取引を行い、情報交換を密にするなどの対策を講じています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。