ラサ工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ラサ工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場するラサ工業は、電子工業用高純度リン酸などを扱う化成品事業や、機械事業、電子材料事業を展開する企業です。直近の業績は、化成品事業における半導体向け高純度品の販売が堅調に推移したことなどにより、売上高477億円、営業利益60億円と増収増益を達成しています。


※本記事は、ラサ工業株式会社の有価証券報告書(第158期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ラサ工業ってどんな会社?


同社は、半導体から社会インフラまで多様な産業を支える化成品や機械装置を提供する素材メーカーです。

(1) 会社概要


1913年に設立され、1919年に東京証券取引所へ上場しました。1954年にリン酸の製造を開始し、1985年には電子材料事業部を設置して高純度無機素材の拠点を開設しました。2003年には台湾に子会社を設立するなど、長年にわたり事業領域の拡大とグローバル展開を進めています。

従業員数は連結で631名、単体で453名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は外資系金融機関、第3位には取引先持株会が名を連ねており、機関投資家や取引先等による安定した株主構成となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 9.14%
GOLDMAN SACHS INTERNATIONAL(常任代理人 ゴールドマン・サックス証券) 6.05%
ラサ工業取引先持株会 5.65%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長執行役員は坂尾耕作氏が務めており、社外取締役の比率は50.0%となっています。

氏名 役職 主な経歴
坂尾 耕作 代表取締役社長執行役員 1983年に入社後、化成品事業部大阪工場長などを歴任。2011年に取締役に就任し、2019年に代表取締役社長となりました。2024年より現職。
望月 哲夫 代表取締役常務執行役員経理部・IR担当、総務部管掌 1984年に日本興業銀行に入行し、2011年に経営企画室長として入社。2013年に取締役に就任し、経理部長などを経て2026年より現職。
上田 秀紀 取締役 常務執行役員研究開発担当、化成品事業部・機械事業部・電子材料事業部・NCRI営業部管掌 1984年に入社後、化成品事業部の営業を中心に歩み、台湾の子会社で総経理などを経験。2020年に取締役に就任し、2024年より現職。
北田 勝誠 取締役 上席執行役員経営企画室長、DX推進担当 1995年に入社し、化成品事業部の営業推進などを経験。2022年に大阪工場長となり、2024年より取締役上席執行役員として現職。


社外取締役は、齊藤隆氏(元農林中央金庫参事役)、山本卓司氏(元債権回収会社常務執行役員)、菊池達也氏(元朝日生命保険専務執行役員)、藤田美穂氏(米国カリフォルニア州弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「化成品事業」「機械事業」「電子材料事業」および「その他の事業」を展開しています。

化成品事業


電子工業用高純度リン酸、リン酸、無水リン酸、水処理用凝集剤、消臭剤などの製造・販売を行う事業です。顧客は半導体製造メーカーや水処理施設、コンデンサーメーカーなど多岐にわたります。

製品の販売代金が主な収益源です。運営は主に同社が行っていますが、子会社のラサ晃栄が一部製品の販売や二次製品の製造を担い、台湾の子会社である理盛精密科技が高純度品の製造・販売を行っています。

機械事業


破砕機や選別機、都市ごみ・産業廃棄物処理機械などの各種プラント、下水道関連向け掘進機の製造・販売を行う事業です。主に建設業や土木関連、リサイクル関連業者などが顧客となります。

機械本体や消耗部品の販売代金、プラント設備の販売、掘進機のレンタル料、電子ビーム溶接の受託加工料が収益源です。同社が主体となって運営し、鋳鋼品の製造は子会社のラサスティールが担当しています。

電子材料事業


化合物半導体向けの高純度無機素材、レジスト剥離剤、IC・液晶用塗布剤、放射性ヨウ素吸着剤などの製造・販売を行っています。主に電子部品・デバイス市場のメーカーが顧客です。

機能性素材や塗布剤などの製品販売代金が主な収益源となります。事業の運営は同社を中心に行われており、塗布剤の販売については台湾子会社の理盛精密科技も一部担っています。

その他の事業


主力3セグメントに含まれない事業として、石油精製用触媒の受託再生加工や、商業施設などの不動産賃貸事業を展開しています。

石油精製メーカーからの触媒再生受託加工料や、所有する不動産のテナントからの賃貸料が収益源です。これらの事業はすべて同社単体で運営されています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、電子部品・デバイス市場の需要変動等の影響を受けつつも、全体として成長基調を維持しています。特に直近の事業年度では、半導体向け高純度リン酸や化合物半導体向け素材の販売が堅調に推移し、増収増益を達成しました。経常利益率も10%を超える水準まで改善しており、主力事業の収益力強化が進んでいることがうかがえます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 354億円 496億円 428億円 454億円 477億円
経常利益 36億円 47億円 34億円 46億円 62億円
利益率(%) 10.1% 9.5% 7.9% 10.1% 13.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 17億円 20億円 20億円 16億円 22億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益ともに順調に拡大しています。売上原価率の改善が進んだことや、販売費および一般管理費の増加を小幅に抑えたことにより、各段階の利益率が向上しており、高付加価値製品へのシフトやコスト管理の成果が表れています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 454億円 477億円
売上総利益 96億円 110億円
売上総利益率(%) 21.2% 23.0%
営業利益 47億円 60億円
営業利益率(%) 10.4% 12.6%


販売費及び一般管理費のうち、出荷費・運賃が16億円(構成比33%)、給料諸手当が8億円(同16%)、研究開発費が4億円(同9%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力事業である化成品事業は、半導体向け高純度品の海外向け販売や上水道向け凝集剤が堅調に推移し増収を牽引しました。電子材料事業も化合物半導体市況の回復により大きく売上を伸ばしています。一方、機械事業は建設機械関連の需要低下により減収となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
化成品事業 382億円 400億円
機械事業 45億円 42億円
電子材料事業 16億円 24億円
その他 12億円 12億円
連結(合計) 454億円 477億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは「健全型」に分類されます。本業で稼いだ資金(プラスの営業CF)の範囲内で、設備投資(マイナスの投資CF)と借入金の返済や株主還元(マイナスの財務CF)を賄えている安定した財務状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 50億円 61億円
投資CF -18億円 -45億円
財務CF -16億円 -20億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.6%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は63.7%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「信頼と誠実を大切にし、ものづくりを通じて新たな価値の創造と豊かな社会の実現に貢献する」という企業理念を掲げています。また、企業の存在意義を示すパーパスとして「産業を『モト』から支え、共に未来を築く」と定め、基礎素材や機械装置の提供を通じて産業のイノベーションを根底から支え、社会の発展に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、長年の事業経験を財産としつつ、時代の流れとともに変化する事業環境に対して「常に前向きでしなやかな対応を心掛ける」ことを重視しています。先見性と進取の気質を持った活力ある企業体としての発展を目指し、ステークホルダーと共に明るく豊かな未来を築き上げる行動様式を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


10年後のありたい姿を示す長期ビジョン「Rasa Vision 2033」に向けた第一段階として、3カ年の「中期経営計画2026」を推進しています。本計画の最終年度目標として以下の数値を掲げています。

* 連結売上高:520億円
* 連結営業利益:48億円
* ROE(自己資本利益率):10%
* ROIC(投下資本利益率):9%
* 配当性向:30%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「電子産業分野」「ファインケミカル分野」「リサイクル分野」をターゲットとした商品展開を成長戦略の軸に据えています。中計の基本方針として「経営資源の最適化と収益力強化を推進し、企業価値向上への基盤強化を図る」ことを掲げ、ROIC管理の導入による経営資源の最適化や、研究開発の強化による新規事業の創出、人材育成体制の見直しといった施策に注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「一人ひとりが自分らしく働く」企業の実現を目指し、人材育成環境の整備やナレッジマネジメントの推進に取り組んでいます。OJTを基本としつつ、階層別研修や通信教育などの外部プログラムを活用して知識・スキルの向上を図り、従業員の自律的なキャリア形成を支援しています。また、多様な人材の確保に向けて働きやすい職場環境の整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.8歳 19.8年 6,708,649円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.6%
男性育児休業取得率 60.0%
男女賃金差異(全労働者) 83.1%
男女賃金差異(正規雇用) 83.9%
男女賃金差異(非正規雇用) 62.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性採用比率実績(16.0%)、有給休暇取得率(74.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 電子部品・デバイス市場の変動


半導体製造工程向けの高純度リン酸など、電子部品・デバイス市場向け製品を販売しているため、同市場における急激な需要増減の影響を受けます。これに対し、市場動向の慎重な見極めと新製品開発による需要の取り込みを進めていますが、需要が急減した場合は業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 原料価格の変動及び調達


化成品事業の主原料である黄燐を海外から輸入しており、各国の制度変更や電力事情による価格変動リスクが内在しています。調達ルートの分散化や価格上昇時の製品価格転嫁を図っていますが、市況の急変に伴う原価上昇や在庫評価減が発生する可能性があります。

(3) 為替相場の影響


製品の輸出や原材料の輸入において外貨建て取引を行っており、為替相場の大幅な変動は業績に影響を与えます。為替予約等による一定のリスクヘッジを実施していますが、売上単価の下落や原価の上昇につながる可能性があります。

(4) 情報セキュリティ・サイバーリスク


事業活動の多くを情報システムに依存しており、通信ネットワークの障害やハードウェア・ソフトウェアの不具合、ランサムウェア等のサイバー攻撃が発生した場合、生産・出荷の停止やサービス提供の中断を招き、事業活動に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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