イビデン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

イビデン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場、名古屋証券取引所プレミア市場に上場。主要事業はICパッケージ基板などを手掛ける電子事業と、自動車排気系部品などを製造するセラミック事業です。直近の業績は、売上高は前期比でほぼ横ばいでしたが、経常利益は減益、当期利益は増益となりました。


※本記事は、イビデン株式会社 の有価証券報告書(第172期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. イビデンってどんな会社?


電子関連製品とセラミック製品を主軸に展開する技術開発型企業。世界的な半導体・自動車市場を支えています。

(1) 会社概要


1912年に揖斐川電力として設立され電力供給を開始しました。1949年に株式を上場し、1972年には現在の主力である電子回路製品の製造・販売を開始しました。1982年にイビデンへ商号を変更し、事業の多角化を推進。2000年代にはハンガリーやマレーシア、メキシコなどに製造子会社を設立し、グローバル展開を加速させています。

連結従業員数は11,168名、単体では3,920名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第3位には事業上の取引関係があり提携関係も深い豊田自動織機が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 14.07%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 8.34%
株式会社豊田自動織機 4.45%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名(HTML情報による補完含む)の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は河島浩二氏です。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
河島 浩二 代表取締役社長 1987年入社。PKG事業本部長、経営企画本部人事部長、電子事業本部長などを経て、2024年4月より執行全般統括及び技術開発担当。2024年6月より現職。
青木 武志 代表取締役会長 1981年入社。セラミック事業本部長、代表取締役社長などを歴任。2019年より監査統括部担当も兼務。2024年6月より現職。
鈴木 歩 取締役 1989年入社。イビデンハンガリー社長、セラミック事業本部ECP事業部生産部長などを経て、2023年4月よりGX推進担当及び生産推進本部長。2023年6月より現職。
加藤 久始 取締役 1988年入社。イビデンエレクトロニクスマレーシア副社長、PKG事業本部生産技術統括部長などを経て、2024年4月より電子事業本部長。2025年6月より電子事業本部品質統括部長。


社外取締役は、山口千秋(トヨタ不動産元代表取締役社長)、小池利和(ブラザー工業取締役会長)、浅井紀子(中京大学経営学部教授)、加藤文夫(加藤文夫税理士事務所代表)、堀江正樹(公認会計士堀江正樹会計事務所所長)、籔ゆき子(古河電気工業社外取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「電子」「セラミック」および「その他」事業を展開しています。

電子事業

ICパッケージ基板やプリント配線板などの製造・販売を行っています。主な顧客は半導体メーカーや電子機器メーカーであり、パソコンやサーバー、スマートフォンなどの高性能化を支える重要部品を提供しています。
収益は、顧客への製品販売による対価から得ています。運営は、親会社のイビデンを中心に、イビデン樹脂、イビデンエレクトロニクスマレーシア、イビデンフィリピンなどが製造を担い、各国の販売子会社を通じてグローバルに展開しています。

セラミック事業

自動車排気ガス浄化用DPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルター)や触媒担体保持・シール材(AFP)、特殊炭素製品(FGM)などを製造・販売しています。主な顧客は自動車メーカーや半導体製造装置メーカーです。
収益は、製品の販売代金から得ています。運営は、イビデンに加え、イビデンハンガリー、イビデンメキシコなどの海外拠点が製造を行い、イビデンケミカルなどの関連会社とも連携して事業を行っています。

その他事業

設備の設計・施工、住宅設備機器やメラミン化粧板の販売、法面工事、合成樹脂加工、農畜水産物加工、石油製品販売、情報サービスなど多岐にわたる事業を行っています。
収益は、工事請負代金、製品・商品の販売代金、サービス利用料などから得ています。運営は、イビデンエンジニアリング、イビケン、イビデングリーンテック、イビデン産業などのグループ各社がそれぞれの専門分野を担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は2023年3月期をピークに一服感があり、直近2期は3700億円前後で推移しています。利益面では、利益率が低下傾向にありましたが、直近では当期利益が増益に転じています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 3,235億円 4,011億円 4,175億円 3,705億円 3,694億円
経常利益 407億円 744億円 762億円 511億円 479億円
利益率(%) 12.6% 18.5% 18.2% 13.8% 13.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 199億円 369億円 551億円 336億円 452億円

(2) 損益計算書


売上高は横ばいですが、売上原価率の改善により売上総利益は増加しました。一方で販売費及び一般管理費が増加したため、営業利益は前期並みとなりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 3,705億円 3,694億円
売上総利益 1,025億円 1,133億円
売上総利益率(%) 27.7% 30.7%
営業利益 476億円 476億円
営業利益率(%) 12.8% 12.9%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が275億円(構成比42%)、従業員給料手当が98億円(同15%)を占めています。

(3) セグメント収益


電子事業は生成AIサーバー向け需要が好調で増収となりました。セラミック事業は中国経済の減速等の影響で減収となりました。その他事業は住宅関連や建設関連が堅調で増収となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
電子 1,907億円 1,972億円
セラミック 965億円 841億円
その他 833億円 881億円
連結(合計) 3,705億円 3,694億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

イビデンは、積極的な設備投資により、投資活動での資金使用額が増加しました。営業活動では、前受金の増加額減少や棚卸資産の変動により、資金の減少が見られました。財務活動では、転換社債型新株予約権付社債の発行収入減少が、資金使用額の減少に影響しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 1,452億円 1,189億円
投資CF -773億円 -1,642億円
財務CF 675億円 -71億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「私たちは、人と地球環境を大切にし、革新的な技術で、豊かな社会の発展に貢献します」という企業理念を掲げています。この理念のもと、社会に有用な技術・製品の開発・提供を行い、全てのステークホルダーから信頼・評価される企業経営を目指しています。

(2) 企業文化


企業理念の実現のために、「誠実」「和」「積極性」及び「イビテクノの進化」を「共有すべき行動精神」として掲げています。これらを全役職員の行動の柱とし、革新的な技術開発への挑戦や、ステークホルダーとの調和を重視する風土があります。

(3) 経営計画・目標


2023年度より5か年の中期経営計画「Moving on to our New Stage 115 Plan(MNS115Plan)」を推進しています。5本の活動の柱(強化していく力)を軸に、事業環境の変化に対応し、持続可能な成長の実現に取り組んでいます。

(4) 成長戦略と重点施策


電子事業では、AI分野の成長やデータ量増加に伴う高機能ICパッケージ基板の需要回復を見据え、大野事業場の量産立ち上げによる高付加価値製品の受注拡大を図ります。また、「One Factory構想」に基づき、デジタル技術を活用したグローバルでの品質力強化と人材育成を推進します。セラミック事業では、新興国市場の産業用車両向け需要を取り込むとともに、EV化再加速に備えたNEV向け安全部材の量産体制を整備します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


中期経営計画において企業文化の変革を掲げ、人的資本経営を推進しています。「経営」と「従業員(ウェルビーイング)」の視点から、自立型人財の育成と柔軟な組織編成を進めています。多様な社員が活躍できる環境整備や、DX人財の確保によるデジタル技術活用を通じて、社員一人ひとりの能力を最大限に引き出し、会社の成長と個人のワークライフバランスの充実を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.3歳 17.0年 7,360,580円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.4%
男性育児休業取得率 66.7%
男女賃金差異(全労働者) 73.9%
男女賃金差異(正規雇用) 74.7%
男女賃金差異(非正規雇用) 85.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、一人当たり教育時間(18.7時間/年)、労働災害度数率(0.30)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) テクノロジーの変革・移行

電子部門の主要市場であるサーバー・パソコン分野では技術革新やニーズの変化が激しく、これらに対応できなければ業績に影響が及ぶ可能性があります。セラミック部門でもEV化など自動車市場の変化に対応した製品開発が求められます。

(2) 品質管理について

高い信頼性が求められる製品を生産しており、品質データの自動検証システムなどで対策を講じていますが、万が一製品欠陥が発生した場合、大規模な賠償責任や信用の失墜により、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 地政学上のリスクについて

海外に生産・販売拠点を展開しているため、各地域の政治的・社会的な緊張による制度変更や突発的な事象が発生した場合、調達や操業に支障をきたし、経営成績に影響を与える可能性があります。

(4) インフレーション/原材料・エネルギーの高騰について

原材料やエネルギーの一部を特定の供給元に依存しているため、需給バランスの変化や供給遅延により価格が高騰した場合、生産活動への支障や製造原価の上昇を招き、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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