イビデン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

イビデン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場及び名古屋証券取引所プレミア市場に上場するイビデンは、パッケージ基板などの電子事業と、ディーゼル・パティキュレート・フィルターなどのセラミック事業を主力とする企業です。直近の業績では、電子事業における生成AI用サーバー向けの需要が好調に推移し、増収及び大幅な増益を達成しました。


※本記事は、イビデン株式会社の有価証券報告書(第173期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. イビデンってどんな会社?


電子部品やセラミック製品の製造・販売をグローバルに展開するメーカーです。

(1) 会社概要


1912年に揖斐川電力として設立され、1949年に株式を上場しました。1972年に電子回路製品の製造・販売を開始し、1982年にイビデンへ商号を変更しています。2000年代以降はアジアや欧米などに多数の現地法人を設立して事業のグローバル化を推進し、2022年には東京証券取引所のプライム市場へと移行しました。

現在の従業員数は連結で11,105名、単体で4,036名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位も同様に信託業務を行う日本カストディ銀行、第3位には豊田自動織機などの事業会社が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 22.24%
日本カストディ銀行(信託口) 10.70%
豊田自動織機 4.45%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性3名の計12名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役会長は青木武志氏、代表取締役社長は河島浩二氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
青木武志 代表取締役会長 1981年同社入社。セラミック事業本部長、技術開発担当などを経て、2017年に代表取締役社長に就任。2024年より現職。
河島浩二 代表取締役社長 1987年同社入社。PKG事業本部長、経営企画本部人事部長、電子事業本部長などを歴任し、2024年より現職。
鈴木歩 取締役 1989年同社入社。DPF事業本部品質保証部長、イビデンハンガリー社長などを経て、2023年より現職。
加藤久始 取締役 1988年同社入社。イビデンエレクトロニクスマレーシア副社長、電子事業本部長などを歴任し、2024年より現職。


社外取締役は、小池利和氏(ブラザー工業会長)、浅井紀子氏(中京大学教授)、丸山晴也氏(ヤマザキマザック副社長)、堀江正樹氏(堀江正樹会計事務所所長)、籔ゆき子氏(古河電気工業社外取締役)、後藤もゆる氏(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「電子」「セラミック」および「その他」事業を展開しています。

電子


生成AI用サーバーや汎用サーバー、パソコンなどのエレクトロニクス製品向けに、高機能なICパッケージ基板の製造および販売を行っています。急速に進化するデジタル社会の基盤を支える重要部品を提供し、世界の主要な半導体メーカーを顧客としています。

半導体メーカー等の顧客に対する製品の販売を通じて収益を得ています。国内での製造販売は同社およびイビデン樹脂などが担うほか、海外では米国、シンガポール、台湾、フィリピン、中国、韓国、マレーシアに拠点を持ち、グローバルな生産・販売体制を構築しています。

セラミック


自動車メーカー向けに、環境関連セラミック製品(ディーゼル・パティキュレート・フィルターなど)のほか、特殊炭素製品やファインセラミックス製品、セラミックファイバーなどの製造および販売を行っています。近年は電動車向けのバッテリー安全部材の開発と供給にも注力しています。

自動車関連メーカーなどへの製品販売によって収益を確保しています。製造販売は同社のほか、イビデンケミカルなどの国内子会社が担当しています。海外では、米国、メキシコ、ハンガリー、イタリア、韓国、中国などの現地法人がグローバルに製品を供給しています。

その他


主力2事業のほか、設備の設計や施工、住宅設備機器やメラミン化粧板の製造販売、法面工事や造園工事などの土木工事、合成樹脂や農畜水産物の加工などを展開しています。さらに、情報サービスや自動車運送、石油製品販売、事務代行などの多角的なサービスを提供しています。

各分野での製品販売や工事の請負、サービス提供により収益を得ています。イビデンエンジニアリングが設備工事を、イビケンが建材などを、イビデングリーンテックが土木工事を担うほか、イビデン産業が運送業務を、イビデンヒューマンネットワークが人材派遣などを行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は4,000億円前後で堅調に推移し、直近では生成AI用サーバー向けの需要増や為替の好影響などにより増収増益となっています。経常利益率は13%から18%台を維持しており、安定した収益性を確保しながら事業の成長を続けていることがわかります。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 4,011億円 4,175億円 3,705億円 3,694億円 4,162億円
経常利益 744億円 762億円 511億円 479億円 608億円
利益率(%) 18.5% 18.2% 13.8% 13.0% 14.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 369億円 551億円 336億円 452億円 723億円

(2) 損益計算書


売上総利益率は30%台を保っており、営業利益率も12%台から14%台へと改善傾向にあります。増収に伴って売上総利益や営業利益がしっかりと拡大しており、強固なビジネスモデルに基づく効率的な事業運営が行われていることがうかがえます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 3,694億円 4,162億円
売上総利益 1,133億円 1,317億円
売上総利益率(%) 30.7% 31.6%
営業利益 476億円 620億円
営業利益率(%) 12.9% 14.9%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が299億円(構成比43%)と最も大きく、次いで従業員給料手当が109億円(同16%)を占めています。売上原価は2,845億円で、売上高に対する構成比は68%となっています。

(3) セグメント収益


主力である電子事業は生成AI用サーバー向けの需要が堅調に推移したことに加え、製造原価低減活動の効果もあり、大幅な増収を牽引しました。一方、セラミック事業は自動車向けの需要減などにより微減収となりました。その他事業は大型工事の進捗などにより増収となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
電子 1,972億円 2,433億円
セラミック 841億円 826億円
その他 881億円 903億円
連結(合計) 3,694億円 4,162億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFと財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 1,189億円 1,064億円
投資CF -1,642億円 -52億円
財務CF -71億円 -1,575億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.3%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も57.3%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「私たちは、人と地球環境を大切にし、革新的な技術で、豊かな社会の発展に貢献します」という企業理念を掲げています。社会に有用な技術や製品の開発・提供を通じて、すべてのステークホルダーから信頼され評価される企業経営を目指しています。

(2) 企業文化


企業理念の実現に向けて、全役職員の行動の柱として「共有すべき行動精神」を定めています。具体的には、「誠実」「和」「積極性」および「イビテクノの進化」を掲げ、ナレッジワーカーの育成や自立型人財の活躍を促す柔軟な組織風土の醸成に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


2023年度から始動した5ヵ年の中期経営計画「Moving on to our New Stage 115 Plan」に基づき、事業環境変化への対応と持続可能な成長の両立を目指しています。

・売上高:4,100億円
・営業利益:480億円
・経常利益:440億円
(※2026年3月期の計画値として記載)

(4) 成長戦略と重点施策


事業の競争力を強化する「稼ぐ力」や新規製品を事業化する「伸ばす力」、モノづくりを改革する「継続する力」などを軸に戦略を展開しています。電子事業では生成AIや汎用サーバー向けの成長を取り込み、セラミック事業では電動車向けのバッテリー安全部材の受注拡大に注力します。

・2026年度から2028年度で電子事業へ総額約5,000億円規模の投資
・中国やインドを中心とした新興国市場の産業用車両向け需要の確実な取り込み
・エネルギー(原子力)分野などへの計画的な投資による事業拡大

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


自ら課題を発見し機敏に行動する「自立型人財」の育成を人的資本経営の中核に据えています。個人の知識やスキルを向上させる教育体系の整備や、キャリア面談を通じた自律的なキャリア形成を支援し、多様な人材が能力を最大限に発揮できる組織・環境づくりを推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.2歳 16.9年 7,663,191円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.5%
男性育児休業取得率 82.8%
男女賃金差異(全) 75.7%
男女賃金差異(正規) 76.3%
男女賃金差異(非正規) 82.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、一人当たり教育時間(19.4時間/年)、労働災害度数率(0.60)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 地政学上のリスク


特定地域の政治的、社会的な緊張から生じる制度や法規則の変更によって、突発的な調達・出荷・操業の停止が発生するリスクがあります。グローバルな生産体制や代替調達などの柔軟な運用で影響の緩和を図っていますが、予期せぬ事態が業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(2) サイバーリスク


事業活動を管理・支援する情報システムの障害や、外部からのサイバー攻撃によって操業が一時的に停止するリスクがあります。また、技術情報や営業・個人情報が外部に流出した場合、多額の対応費用が発生し、社会的な信頼を失墜するおそれがあります。

(3) その他財務上のリスク


海外での事業展開に伴う為替相場の変動により、円換算時の収益や資産額が影響を受けるリスクがあります。また、政策上の投資として保有する株式の価格変動や、将来の事業計画に基づく繰延税金資産の回収可能性の見直し、減損損失の発生なども財務上のリスクとして認識されています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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