#記事タイトル:高圧ガス工業転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、高圧ガス工業株式会社 の有価証券報告書(第92期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 高圧ガス工業ってどんな会社?
産業用ガスの製造販売と接着剤等の化成品事業を両輪とする化学メーカーです。溶解アセチレンで高いシェアを持ちます。
■(1) 会社概要
同社は1958年に中部ガス産業として設立され、溶解アセチレンの販売を開始しました。1962年に現在の高圧ガス工業へ商号変更し、1978年には東京証券取引所及び大阪証券取引所の市場第一部に指定されました。2013年にはベトナムに現地法人を設立し海外展開を推進しています。2022年の市場区分見直しに伴い、プライム市場へ移行しました。
2025年3月31日現在の連結従業員数は2,000名、単体では611名です。主要株主の構成は、筆頭株主が取引先等で構成される持株会のこうあつ共栄会、第2位が同社と取引関係および人的関係を有する化学メーカーのデンカ、第3位が共栄火災海上保険となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| こうあつ共栄会 | 13.19% |
| デンカ | 11.45% |
| 共栄火災海上保険 | 7.25% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は黒木幹也氏が務めています。社外取締役比率は44.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 黒木幹也 | 代表取締役取締役社長 | 1988年同社入社。ガス事業本部関東地区長、専務取締役等を経て2021年6月より現職。 |
| 説田和洋 | 代表取締役取締役副社長兼化成品事業本部長 | 1988年同社入社。化成品事業本部長、専務取締役等を経て2021年6月より現職。 |
| 森本孝 | 取締役経営企画本部長兼経営企画部長兼ガス事業本部長 | 1986年同社入社。ガス事業本部東海地区長、常務取締役等を経て2023年6月より現職。 |
| 池田佳弘 | 取締役管理本部長 | 1989年同社入社。経営企画本部経営企画部長、取締役等を経て2023年6月より現職。 |
| 松井良佑 | 取締役(常勤監査等委員) | 1985年同社入社。管理本部長、常務取締役、常勤監査役を経て2021年6月より現職。 |
社外取締役は、吉髙紳介(元デンカ代表取締役会長)、山村忠夫(弁護士)、長島広明(公認会計士)、西片和代(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ガス事業」、「化成品事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) ガス事業
建設、橋梁、造船、機械等に向けた溶解アセチレンを主力に、酸素、窒素、アルゴン、炭酸ガス等の各種高圧ガスやLPガス、溶接溶断関連機器等の製造・販売を行っています。特に溶解アセチレンについては国内シェアが高く、同部門の主力分野と位置付けられています。
主な収益源は、各種高圧ガスや関連機器の販売代金です。運営は主に高圧ガス工業が担うほか、製造を高圧昭和ボンベや地域のアセチレン会社が、販売を宇野酸素、KGKサービス、中国酸素などのグループ会社が担当しています。
■(2) 化成品事業
接着用、塗料用、建材用などの合成樹脂系接着剤を主体に、瞬間接着剤、塗料、および化成品関連の原材料、副資材等の製造・仕入販売を行っています。また、塗装・防水工事も手掛けています。生活に密着した紙工、木工分野から、住宅、自動車、電子部品分野まで幅広く製品を提供しています。
製品の販売および工事の施工に対する対価が収益となります。運営は、高圧ガス工業のほか、塗料製造を行うスズカファイン、スズカケミー、ベトナムでの製造販売を担うKoatsu Gas Kogyo Vietnam Co.,Ltd.などの子会社が行っています。
■(3) その他事業
LSIカードを主体に、ディスプレイタグ等の電子ペーパー応用製品やその周辺機器の販売、食品添加物の販売を行っています。また、同社製品や仕入商品の海外への販売もこの事業に含まれます。
顧客への商品販売が収益源となります。運営は主に高圧ガス工業および株式会社スミコエアーが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は毎期増加傾向にあり、事業規模の拡大が続いています。利益面では、経常利益率は6%台から7%台で安定的に推移しており、底堅い収益性を維持しています。当期純利益も概ね増加基調にあり、堅調な業績と言えます。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 766億円 | 821億円 | 909億円 | 926億円 | 983億円 |
| 経常利益 | 48億円 | 54億円 | 58億円 | 67億円 | 66億円 |
| 利益率(%) | 6.2% | 6.6% | 6.4% | 7.2% | 6.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 27億円 | 30億円 | 33億円 | 35億円 | 43億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加し、売上総利益も増加しましたが、売上総利益率は若干低下しました。営業利益については増益を確保しており、本業の収益力は維持されています。営業利益率は6%台前半で推移しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 926億円 | 983億円 |
| 売上総利益 | 247億円 | 256億円 |
| 売上総利益率(%) | 26.7% | 26.1% |
| 営業利益 | 57億円 | 60億円 |
| 営業利益率(%) | 6.2% | 6.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給料が53億円(構成比26%)、その他が54億円(同26%)を占めています。売上原価については、商品及び製品の仕入等が主な構成要素となっています。
■(3) セグメント収益
ガス事業と化成品事業ともに売上高は増加しました。特に主力であるガス事業が増収を牽引しています。化成品事業も堅調に推移しています。なお、以下の表における利益情報は、公開データに含まれていないため記載していません。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| ガス事業 | 683億円 | 728億円 |
| 化成品事業 | 205億円 | 216億円 |
| その他事業 | 37億円 | 39億円 |
| 連結(合計) | 926億円 | 983億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
高圧ガス工業は、中期経営計画に基づき、コア事業の持続的成長と新規事業拡大への投資に取り組んでいます。
営業活動では、売上債権や仕入債務の減少があったものの、法人税等の支払額増加により、前年比で得られた資金は減少しました。投資活動では、有形固定資産の取得による支出が減少したため、使用した資金は前年比で減少しました。財務活動では、長期借入による収入が減少したため、使用した資金は前年比で減少しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 81億円 | 64億円 |
| 投資CF | -58億円 | -51億円 |
| 財務CF | 4億円 | -11億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「人と技術と環境の調和。無限の可能性に挑む。」という理念を掲げています。創業の精神を忘れず、「アセチレンバウム(アセチレンの樹)の夢」を追求し続けることを目指しています。また、株主、取引先、従業員を三位一体と考え、社会に貢献できる経営を行うことを方針としています。
■(2) 企業文化
「安全・安心をすべての基本姿勢」とし、創業以来一貫してこの姿勢を貫いています。また、地域に密着した企業ブランドを構築し、存在感のあるグループ企業を目指すことをバリューとしています。コンプライアンスや倫理基準に基づいた公正な事業活動を通じて、社会との調和を重視する文化があります。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画「チェンジ&チャレンジstageⅡ」(2021年4月~2026年3月)を推進しています。株主価値の最大化を図るため、資本効率を高め、売上高経常利益率および株主資本利益率(ROE)を現在の水準よりさらに向上させることを経営指標の目標として掲げています。
■(4) 成長戦略と重点施策
持続的成長に向け、「事業拡大」「人材育成」「機能整備」「戦略投資」「社会調和」の5つの戦略を実行します。ガス事業では新規用途開発や環境負荷の低いガス(液化アンモニア・水素等)の拡販、化成品事業では環境配慮型製品や高付加価値製品の販売に注力します。また、海外市場への展開や物流体制の強化も重要な課題としています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
事業の安定と拡大のため、継続的な採用と育成を重視しています。多様な人材の確保に加え、教育研修制度の整備、福利厚生の充実、女性活躍の推進を図ることで、社員が長く安心して働ける環境整備に取り組んでいます。また、働きがいのある企業風土の醸成にも注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 41.0歳 | 14.2年 | 6,077,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | - |
| 男性育児休業取得率 | 36.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 73.6% |
| 男女賃金差異(正規) | 74.5% |
| 男女賃金差異(非正規) | 64.3% |
※女性管理職比率については、公表を行っていない項目として記載を省略しています。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性総合職割合(3.9%)、年次有給休暇取得率(57%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 市場の需要・競争によるリスク
同社グループの売上は国内需要が中心ですが、鉄鋼や自動車などの主要顧客市場は成長の限界が見込まれています。需要の著しい鈍化により競争が激化した場合、製品やサービスの競争優位性を維持できず、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 価格変動のリスク
石油系ガスや化学品原料であるナフサの仕入価格は原油価格の影響を受けます。原油価格は産出国の情勢や需給バランスにより変動するため、これにより原料仕入価格が大きく変動し、業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 原料供給元への依存のリスク
原材料の調達を複数の外部供給元に依存しています。輸入原料の地政学的リスクや国内供給元の撤退、事故などにより供給不足や価格高騰が生じた場合、生産遅延や原価上昇を引き起こし、業績に悪影響を与える可能性があります。
■(4) 火災・爆発事故に関するリスク
可燃性ガスや支燃性ガスを取り扱っているため、漏洩による火災・爆発のリスクがあります。安全教育や設備管理を徹底していますが、想定外の事由により事故が発生した場合、経営成績や財務状況に損害を与える可能性があります。



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