※本記事は、日本化学工業株式会社の有価証券報告書(第168期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 日本化学工業ってどんな会社?
化学品や機能品の製造販売を主力とし、電子セラミック材料などの高付加価値製品をグローバルに展開する企業です。
■(1) 会社概要
同社は1893年に棚橋製薬所として創業し、1915年に日本製錬を設立して組織を変更しました。1949年には東京証券取引所に上場を果たし、無機化学品を中心に事業を拡大してきました。1996年の米国法人設立や2024年の台湾法人設立など、積極的なグローバル展開を進め、事業領域を広げています。
現在の従業員数は連結で735名、単体で691名体制となっています。筆頭株主は取引先で構成される日本化学工業取引先持株会で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本化学工業取引先持株会 | 10.50% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 10.31% |
| 明治安田生命保険相互会社 | 4.07% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は16.6%です。代表取締役社長は棚橋洋太氏が務めています。社外取締役の比率は50%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 棚橋 洋太 | 代表取締役社長取締役会議長及び経営会議議長 | 2000年住友スリーエム入社。2007年日本化学工業入社。営業本部副本部長、執行役員兼経営企画室長、専務執行役員等を経て2017年より現職。 |
| 愛川 浩功 | 取締役兼常務執行役員生産技術本部管掌兼研究開発本部管掌 | 1981年日本化学工業入社。徳山工場長、執行役員兼研究開発本部長、生産技術本部長等を経て2022年より現職。 |
| 佐藤 学 | 取締役(常勤監査等委員) | 1987年日本化学工業入社。2012年に同社経理部長に就任し、経理・財務部門で長年の経験を積んだのち、2021年より現職。 |
社外取締役は、多田智子(多田国際社会保険労務士法人代表社員)、剱持健(剱持健公認会計士事務所代表)、戸木眞吾(元NRS代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「化学品事業」「機能品事業」「賃貸事業」および「その他」事業を展開しています。
■化学品事業
クロム製品、シリカ製品、燐製品等の無機化学品の製造・販売を行っており、めっき、耐火レンガ、顔料、土壌硬化材などの用途で幅広い法人の顧客に対して提供しています。
顧客に対する製品の販売対価が主な収益源です。運営は主に日本化学工業が担うほか、子会社のJCI USA Inc.や関連会社の京葉ケミカルなどが製造や販売を担当しています。
■機能品事業
電子セラミック材料、電池・電子デバイス材料、ホスフィン誘導体等の機能性化学品の製造・販売を行っており、電子部品や半導体、自動車関連のメーカー向けに素材として提供しています。
付加価値の高い化学品の販売対価が主な収益源です。運営は主に日本化学工業が担い、海外子会社のJCI USA Inc.や捷希艾(上海)貿易有限公司、台灣日本化學工業などもグローバルに販売を展開しています。
■賃貸事業
大阪府大阪市西淀川区や福島県郡山市などにおいて、病院や小売業等の事業者向けに自社保有の土地および建物の賃貸事業を行っています。
賃貸先である法人顧客からの不動産賃貸料が主な収益源です。同事業の運営および物件の管理は主に日本化学工業が直接担っています。
■その他
報告セグメントに含まれない事業として、不動産管理やコンサルティング、環境測定、電子材料の原材料や製品等の分析業務などのサービスを提供しています。
顧客からのサービス提供対価が主な収益源です。運営は主に子会社のニッカシステムや日本化学環境センターが担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は緩やかな増加傾向にあり、直近5期間で373億円から402億円へと着実に成長しています。一方、経常利益や当期利益は原材料価格の変動や市場環境の影響を受け増減を繰り返しており、直近では減益の局面となっています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 373億円 | 381億円 | 385億円 | 388億円 | 402億円 |
| 経常利益 | 39億円 | 14億円 | 24億円 | 32億円 | 24億円 |
| 利益率(%) | 10.4% | 3.7% | 6.2% | 8.2% | 5.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 63億円 | 7億円 | 15億円 | 26億円 | 27億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増収となったものの、原材料市況価格の変動や販売価格への転嫁の遅れなどが影響し、売上総利益および営業利益は減少しました。利益率も全体的に低下傾向にあります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 388億円 | 402億円 |
| 売上総利益 | 88億円 | 80億円 |
| 売上総利益率(%) | 22.5% | 19.9% |
| 営業利益 | 33億円 | 24億円 |
| 営業利益率(%) | 8.6% | 6.0% |
販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が16億円(構成比28%)、運送費及び保管費が10億円(同17%)、給料が8億円(同15%)を占めています。
■(3) セグメント収益
電子セラミック材料が好調に推移した機能品事業が大幅な増収を達成し、全体の売上成長を牽引しました。一方、化学品事業は燐製品の落ち込みにより減収となりました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 化学品事業 | 183億円 | 179億円 |
| 機能品事業 | 189億円 | 210億円 |
| 賃貸事業 | 9億円 | 9億円 |
| その他 | 8億円 | 3億円 |
| 連結(合計) | 388億円 | 402億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である健全型に分類されます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 64億円 | 54億円 |
| 投資CF | -51億円 | -34億円 |
| 財務CF | -24億円 | -19億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は64.1%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
経営理念として「人を大切に、技を大切に」を掲げています。130年以上の伝統と実績を受け継ぎ、長年蓄積してきた人と技術を通して高品質の製品とサービスを提供することで、いかなる市場環境の変化においても高収益体質企業を実現し、価値創造企業へ向けた更なる挑戦を行うことを経営方針としています。
■(2) 企業文化
サステナビリティ経営の実践において、環境・社会・経済のバランスが不可欠であるという考えを重視しています。「人を大切に、技を大切に」の理念に基づき、多様な働き方やワークライフバランスを推進し、社員一人ひとりが主体的に考え行動できる自律的な組織文化の醸成に努めています。
■(3) 経営計画・目標
2030年のありたい姿として、連結営業利益60億円、ROE8%を長期的な目標に掲げています。また、2026年度を最終年度とする中期経営計画では、以下の数値を目標として設定しています。
・売上高:490億円
・営業利益:33億円
・EBITDA:80億円
・ROE:6%
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画において「成長戦略の推進と新たな価値の創造」を基本方針とし、事業拡大と体質強化、グローバル化の推進、新たな価値の創造に取り組んでいます。電子部品や半導体市場向け材料の需要拡大への対応や、オープンイノベーションを通じた高付加価値製品の創出に注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「多様な人材の確保」「人材の育成」「職場環境の整備」を人材戦略の基本方針としています。女性や外国人、キャリア人材の採用を推進するとともに、体系的教育制度や独自のコーチングプログラムを通じて社員の自律的な成長を支援し、ワークライフバランスや健康経営を重視した環境構築を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 41.9歳 | 19.1年 | 7,200,000円 |
※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.2% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 77.8% |
| 男女賃金差異(正規) | 78.9% |
| 男女賃金差異(非正規) | 75.5% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性採用比率(50%)、キャリア採用比率(57%)、有給休暇取得率(79%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済変動に係るリスク
同社グループは多種多様な化学製品をグローバルに展開しており、最終用途である自動車や電子部品業界の生産動向等、販売地域の経済状況が大きく変化した場合、製品の需要減退を通じて業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 国内外の事業継続に係るリスク
国内外に生産や販売拠点を有しており、地震や台風等の自然災害、感染症の流行、地政学的リスクや物流網の混乱などが発生した場合、サプライチェーンの分断や操業停止を余儀なくされ、事業継続に支障を来す可能性があります。
■(3) 原材料調達及び価格変動に係るリスク
製品の製造に必要な原材料について、調達先の事業停止や需給逼迫による価格高騰が生じた場合、安定的な調達が困難となるほか、コスト上昇分を販売価格へ十分に転嫁できず、収益性が悪化する可能性があります。
■(4) 情報セキュリティーに係るリスク
事業活動において情報システムを利用しており、サイバー攻撃や不正アクセス、ウイルス感染等によりシステムの停止や重要情報の漏洩が発生した場合、業務の停滞や社会的信用の低下を招き、事業運営に影響を及ぼす可能性があります。



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