※本記事は、チタン工業株式会社 の有価証券報告書(第127期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. チタン工業ってどんな会社?
酸化チタンの国産化を目的に創業された老舗化学メーカー。化粧品や電子材料向けの機能性材料に強みを持ちます。
■(1) 会社概要
1936年に酸化チタンの国産化を目的に創立し、1938年に宇部工場を完成させました。1962年に東証市場第二部に上場し、1987年には第一部へ指定替えとなりました。2019年には東芝とチタン酸リチウム合弁事業を開始し、子会社のTBMを設立しています。市場区分の見直しに伴い、2023年にスタンダード市場へ移行しました。
2025年3月31日時点で、連結従業員数は288名(単体256名)です。大株主の筆頭は、合弁パートナーである事業会社の東芝で、第2位は主要取引先である専門商社の稲畑産業、第3位はメインバンクの山口銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 東芝 | 6.74% |
| 稲畑産業 | 4.98% |
| 山口銀行 | 4.32% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名、計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長執行役員は井上保雄氏です。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 井上保雄 | 代表取締役社長執行役員 | 1984年入社。執行役員宇部開発センター長、取締役常務執行役員生産本部長などを経て、2019年より現職。 |
| 長岡佳孝 | 取締役専務執行役員(販売管掌) | 1984年入社。執行役員販売部長、取締役販売本部長などを経て、2019年より現職。 |
| 長岡茂 | 取締役専務執行役員(技術管掌) | 1985年入社。執行役員研究開発部長、取締役常務執行役員研究開発本部長などを経て、2019年より現職。 |
| 千々松義人 | 取締役常務執行役員 | 1988年入社。執行役員財務・経営企画部長などを経て、2024年より現職。 |
| 西田敦 | 取締役常務執行役員 | 1991年入社。内部監査室長、執行役員総務部長などを経て、2019年より現職。 |
| 松崎正人 | 取締役(常勤監査等委員) | 1982年入社。購買・物流部長、常務執行役員などを経て、2024年より現職。 |
社外取締役は、大田明登(弁護士)、佐藤久典(弁護士)、松野文子(税理士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「酸化チタン関連事業」「酸化鉄関連事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 酸化チタン関連事業
酸化チタン、超微粒子酸化チタン、チタン酸リチウム等の製造および販売を行っています。これらは化粧品、化学繊維、電子材料などの原料として使用されています。
主な収益は製品の販売による対価です。運営は主にチタン工業が行っていますが、チタン酸リチウムの製造および販売については、子会社のTBMが担当しています。
■(2) 酸化鉄関連事業
酸化鉄等の製造および販売を行っています。主な用途には、トナー用材料、塗料、舗装材などの着色顔料、環境浄化材などがあります。
主な収益は製品の販売による対価です。運営はチタン工業が行っています。
■(3) その他
報告セグメントに含まれない事業として、製造過程で発生する副産物の販売や、工場構内での物流業務などを行っています。
主な収益は副産物の販売対価や物流サービスの提供対価です。運営はチタン工業および子会社のTKサービスが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2024年3月期に大幅な赤字を計上しましたが、直近の2025年3月期には黒字回復を果たしています。売上高は80億円前後で推移しているものの、利益面では変動が見られます。特に当期は価格改定やコスト削減効果により、経常利益および当期利益ともにプラス転換しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 63億円 | 81億円 | 81億円 | 80億円 | 78億円 |
| 経常利益 | -1.5億円 | 2.9億円 | 3.4億円 | -6.7億円 | 1.1億円 |
| 利益率(%) | -2.4% | 3.5% | 4.2% | -8.4% | 1.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -1.9億円 | 2.4億円 | 3.0億円 | -17.4億円 | 1.7億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は微減となりましたが、売上総利益が大幅に改善し、営業損益は赤字から黒字へと転換しました。原価低減や価格転嫁が進んだことで収益構造が良化しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 80億円 | 78億円 |
| 売上総利益 | 3.6億円 | 12億円 |
| 売上総利益率(%) | 4.5% | 15.1% |
| 営業利益 | -7.3億円 | 1.7億円 |
| 営業利益率(%) | -9.1% | 2.1% |
販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が2.4億円(構成比23%)、運賃及び荷造費が1.6億円(同15%)を占めています。売上原価については、製造コストの削減が進んだことで原価率が改善しています。
■(3) セグメント収益
酸化チタン関連事業は売上が減少したものの、価格改定やコスト削減により損益が均衡しました。酸化鉄関連事業はトナー向け製品の出荷増により増収となり、営業利益も黒字転換しました。両セグメントともに収益性が改善しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 酸化チタン関連事業 | 52億円 | 46億円 | -3.7億円 | 0.0億円 | 0.0% |
| 酸化鉄関連事業 | 28億円 | 32億円 | -3.7億円 | 1.5億円 | 4.8% |
| その他 | 0.0億円 | 0.0億円 | 0.0億円 | 0.0億円 | -20.0% |
| 連結(合計) | 80億円 | 78億円 | -7.3億円 | 1.7億円 | 2.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、酸化鉄関連事業においてトナー向け製品の出荷増と価格改定、コスト削減、棚卸資産評価損の戻入により、営業利益が大幅に改善しました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益や売上債権の減少が主な増加要因となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出があったものの、投資有価証券の売却収入により増加しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金や長期借入金の返済による支出が大きかったものの、長期借入れによる収入もありました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 7.3億円 | 8.2億円 |
| 投資CF | 1.9億円 | 1.3億円 |
| 財務CF | -5.1億円 | -9.1億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「顧客本位」「効率経営」「社会貢献」を企業理念として掲げています。常に顧客第一で事業活動を行うことで信頼を獲得し、最高品質の製品提供と原価低減による適正利潤の確保を両立させることを目指しています。また、事業を通じて社会に必要とされる存在となることを志向しています。
■(2) 企業文化
企業理念と現状を踏まえ、「変革」「信頼」「迅速」を行動指針としています。独自の技術力や販売網、生産力を強みとし、顧客目線でのきめ細かく迅速な対応を重視する文化があります。また、社会とともに繁栄する持続可能な社会の実現を追求する姿勢を持っています。
■(3) 経営計画・目標
第7次中期経営計画(2024~2026年度)を策定しており、創立100年となる2036年を見据えた中長期目標を設定しています。2024年度は短期集中の業績改善策により黒字化を達成しました。
* 2036年目標:売上高150億円
* 資本収益性目標:ROE 8%を常に意識し実現を目指す
* 2025年度見通し:売上高87億円、営業利益2.4億円
■(4) 成長戦略と重点施策
「化粧品向け製品の拡販と収益性の向上」「リスク耐性の強化」「持続可能な社会への貢献」を基本方針としています。独自の技術力を活かし、グローバル市場でのシェア獲得を目指します。
* 製品戦略:酸化チタン・酸化鉄関連製品および新製品の開発
* 市場地域:日本、東アジア、北米、欧州に加え、東南アジア、インド、南米を開拓
* 市場用途:トナー、化粧品、電池、塗料に加え、電子材料(MLCC等)、環境・エネルギー分野へ展開
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
中長期的な企業価値向上と持続可能な社会の実現に向け、自ら考え積極的に行動する人材の育成に取り組んでいます。多様な人材が能力を発揮し成長できる環境づくり、心身ともに健康で働ける職場環境の整備、働きがいと成長の両立支援を方針として掲げています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 43.5歳 | 16.7年 | 5,062,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外給与を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.1% |
| 男性育児休業取得率 | 33.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 79.7% |
| 男女賃金差異(正規) | 85.8% |
| 男女賃金差異(非正規) | 48.8% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(92.0%)、直近3事業年度の女性採用割合(50%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 原燃料調達と価格変動リスク
製品製造に必要な原燃料は複数の外部供給者から調達していますが、国際情勢等の影響で調達が遅延・困難になる可能性があります。また、市況の影響を受ける原燃料もあり、価格変動がコスト増につながり、業績に影響を与える可能性があります。
■(2) 特定販売先への依存と信用リスク
製品販売は主として特約店を通じて行われており、特定の販売先への売上割合が高くなっています。販売先の経営状況悪化や破綻等により債権回収に支障が生じた場合、業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 新製品開発と事業化の遅延
蓄積した技術を活かした新技術・新製品の研究開発に注力していますが、開発や市場への展開が計画通りに進まない場合、将来の成長や業績に影響を与える可能性があります。
■(4) 設備投資と操業度に関するリスク
成長戦略実現のために生産設備の増強投資を実施していますが、計画通りの操業度が達成できない場合や、設備の老朽化・故障による操業停止が発生した場合、業績に影響を与える可能性があります。



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