チタン工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

チタン工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

チタン工業はスタンダード市場に上場し、酸化チタン関連事業や酸化鉄関連事業を展開しています。化粧品向けやトナー向けの無機化合物を製造・販売し、直近の連結業績では販売価格の値上げやコスト削減の効果により、増収増益を達成しました。長年培った技術を強みに、グローバル展開と持続的成長を目指す企業です。


※本記事は、チタン工業株式会社の有価証券報告書(第128期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. チタン工業ってどんな会社?


無機化学工業品の製造・販売を主力とし、酸化チタンや酸化鉄を用いた製品を提供する企業です。

(1) 会社概要


1936年に酸化チタンの国産化を目的に創立され、1938年に宇部工場を完成させました。1962年に東京証券取引所市場第二部に株式を上場し、1965年には酸化鉄工場を完成させています。2019年にはチタン酸リチウム合弁事業を開始するなど、化学工業の分野で長い歴史と実績を積み重ねています。

同社グループの従業員数は連結で272名、単体で245名です。筆頭株主は事業会社の東芝で、第2位も事業会社の稲畑産業となっています。第3位には金融機関である山口銀行が名を連ねています。

氏名 持株比率
東芝 6.72%
稲畑産業 4.96%
山口銀行 4.31%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長執行役員は井上保雄氏が務めています。社外取締役は2名です。

氏名 役職 主な経歴
井上保雄 代表取締役社長執行役員 1984年入社。宇部開発センター長や生産本部長、技術管掌などを経て、2019年6月より現職。
長岡佳孝 取締役専務執行役員(販売管掌)兼 販売部長 1984年入社。販売部長や販売本部長などを歴任し、2019年6月より現職。
長岡茂 取締役専務執行役員(技術管掌) 1985年入社。研究開発部長や研究開発本部長などを経て、2019年6月より現職。
千々松義人 取締役常務執行役員(経営企画・経理財務・購買物流管掌)兼 経営企画部長 1988年入社。財務・経営企画部長などを経て、2024年6月より現職。
西田敦 取締役常務執行役員(総務・環境安全管掌)兼 総務部長、内部監査室長 1991年入社。総務部長や内部監査室長などを歴任し、2019年6月より現職。
松崎正人 取締役(常勤監査等委員) 1982年入社。購買・物流部長などを歴任し、2024年6月より現職。


社外取締役は、佐藤久典氏(宇部・山陽小野田総合法律事務所開設)、松野文子氏(野村義夫税理士事務所所属税理士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「酸化チタン関連事業」「酸化鉄関連事業」および「その他」事業を展開しています。

酸化チタン関連事業


酸化チタンや超微粒子酸化チタン、チタン酸リチウムなどの製造および販売を行っています。主に化粧品向けや電池向けの無機化合物を各種企業に提供しています。

収益源はこれらの製品の販売代金です。同社が主体となって事業を運営しているほか、チタン酸リチウムの製造および販売については連結子会社のTBMが担っています。

酸化鉄関連事業


酸化鉄などの製造および販売を行っています。トナー向けやブレーキパッド向けなどの用途に向けた製品を顧客企業に提供しています。

収益源は製品の販売代金です。同セグメントの事業運営は、主に同社が主体となって行っています。

その他


製造過程で発生する副産物などの販売を行っています。

収益源はこれらの製品の販売代金です。事業の運営は同社が行っているほか、場内の物流業務等については連結子会社のTKサービスが受託しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の業績を見ると、売上高は80億円前後で推移しています。一時的に大幅な経常赤字を計上した時期がありましたが、直近では製品価格の改定やコスト削減策の奏功により、収益状況は改善に向かっています。利益面でも黒字基調を取り戻し、安定した水準を維持しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 81億円 81億円 80億円 78億円 81億円
経常利益 3億円 3億円 -7億円 1億円 2億円
利益率(%) 3.5% 4.2% -8.4% 1.4% 3.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 2億円 3億円 -17億円 2億円 2億円

(2) 損益計算書


直近2年間の損益構成を見ると、売上高の増加に加えて売上総利益率が改善していることがわかります。製品単価の引き上げや効率化により利益率が向上し、営業利益も堅調に伸びています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 78億円 81億円
売上総利益 12億円 14億円
売上総利益率(%) 15.1% 16.7%
営業利益 2億円 3億円
営業利益率(%) 2.1% 3.7%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が2億円(構成比23%)、運賃及び荷造費が2億円(同15%)を占めています。

(3) セグメント収益


酸化チタン関連事業は、化粧品向け製品の出荷増加や販売価格値上げの効果により、増収および大幅な増益となりました。一方、酸化鉄関連事業は、トナー向け製品の出荷減少があったものの、ブレーキパッド向けなどの新規採用や価格改定により、売上水準を維持しつつ堅調な利益を確保しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
酸化チタン関連事業 46億円 50億円 - 1億円 2.2%
酸化鉄関連事業 32億円 32億円 2億円 2億円 5.7%
その他 - - - - -
調整額 - - 0.1億円 0.1億円 -
連結(合計) 78億円 81億円 2億円 3億円 3.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業活動で得た資金を投資や借入金の返済に充当する健全型のパターンを示しています。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.9%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は38.5%であり、いずれも市場平均を下回っています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 8億円 10億円
投資CF 1億円 -3億円
財務CF -9億円 -7億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「顧客本位」「効率経営」「社会貢献」を企業理念に掲げて事業を展開しています。常に顧客を第一に考えて高い信頼を得るとともに、最高品質の製品を提供しつつ適正利潤を確保する効率的な経営を目指しています。これらの事業活動を通じて社会に貢献し、必要とされる存在となることを目標としています。

(2) 企業文化


同社は、企業理念と現状の事業環境を踏まえ、「変革」「信頼」「迅速」を行動指針として定めています。長年の歴史で培った技術力を基盤としながらも、社会環境の変化にスピーディに対応し、ステークホルダーからの確かな信頼を築き上げる組織文化を重視して事業活動を進めています。

(3) 経営計画・目標


同社は第7次中期経営計画を策定し、規模と資本収益性に着目した中長期的な目標を掲げています。創立100周年となる2036年に向け、以下の数値を意識した経営を推進しています。

・売上高150億円
・安定してROE8%

(4) 成長戦略と重点施策


「化粧品向け製品の拡販と収益性の向上」「リスク耐性の強化」「持続可能な社会への貢献」を基本方針としています。独自の技術力と販売網を生かし、グローバル市場におけるプレゼンスを高めるとともに、棚卸資産や借入金の削減といった財務体質の改善も並行して進める戦略です。

・売上高85億円(2026年度)
・営業利益4億円(同)
・経常利益3億円(同)

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは、国籍、性別、職歴、年齢などにかかわらず、社員一人ひとりがその能力を生かし、自ら成長できる環境づくりを推進しています。社員が心身ともに健康で個々の能力を最大限に発揮できる職場環境の整備に努め、働きがいと成長の両立を支援することで、中長期的な企業価値向上を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.2歳 17.3年 5,310,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外給与を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.9%
男性育児休業取得率 37.5%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 80.1%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) 84.4%
労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) 49.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性の採用割合(50.0%)、年次有給休暇取得率(98.0%)、パート労働者の社員登用(1名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 新規製品の開発と市場展開


同社グループは新技術や新製品の研究開発に注力し、新規事業の育成に努めています。しかし、新規製品の開発や市場への展開が計画通りに進まない場合、将来の成長や経営成績に影響を与える可能性があります。

(2) 原燃料価格の変動と調達


製造に必要な原燃料を複数の外部供給者から調達していますが、国際情勢などの外部要因により調達が遅延または困難になるリスクがあります。また、市況による原燃料価格の変動が収益性に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 設備の老朽化および操業度


同社は装置産業であり、生産設備の維持や増強投資が重要です。設備の老朽化や故障によって操業が停止した場合、あるいは新設した設備が計画通りのフル操業に達しない場合、業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。