田岡化学工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

田岡化学工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場する化学メーカーで、精密化学品、機能材、樹脂添加剤等の製造・販売を主力事業としています。直近の業績は、樹脂原料やワニスの出荷増加等により売上高は前期比4.9%増の299億円、経常利益は同72.0%増の20億円となり、増収増益を達成しました。


※本記事は、田岡化学工業株式会社 の有価証券報告書(第125期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 田岡化学工業ってどんな会社?


合成染料の製造から始まり、現在は精密化学品や樹脂添加剤などを手がける住友化学グループの化学メーカーです。

(1) 会社概要


1919年に田岡商店として創業し、1922年に合成染料の製造に着手しました。1949年に大阪証券取引所に上場し、1955年には住友化学工業(現 住友化学)が資本参加しました。2013年に東京証券取引所へ上場し、2022年の市場区分見直しに伴いスタンダード市場へ移行しています。

同社の連結従業員数は467名、単体では397名です。筆頭株主は親会社である総合化学メーカーの住友化学で、発行済株式の50.58%を保有しています。第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)となっています。

氏名 持株比率
住友化学 50.58%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 3.09%
MSIP CLIENT SECURITIES 3.09%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は17.0%です。代表取締役社長は佐々木 康彰氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
佐々木 康彰 取締役社長(代表取締役) 1985年住友化学工業(現 住友化学)入社。同社常務執行役員などを経て、2021年6月より現職。
岩崎 明 取締役副社長事業支援室長 1987年住友化学工業(現 住友化学)入社。同社執行役員などを経て、2023年6月より現職。
松尾 俊二 常務取締役営業本部長、営業本部東京支店長、精密化学品事業部長、機能材事業部長 1988年同社入社。事業支援室部長、田岡化工材料(上海)董事長などを経て、2024年6月より現職。
伊美 勝治 取締役技術本部長、研究所統括 1987年住友化学工業(現 住友化学)入社。同社エネルギー・機能材料業務室部長などを経て、2022年6月より現職。
伊瀨 基之 取締役生産本部長 1985年同社入社。生産本部播磨工場製造部長、生産本部淀川工場長などを経て、2022年6月より現職。
岡嶋 謙 取締役総務人事室長、内部統制・監査部統括 1990年住友化学工業(現 住友化学)入社。同社千葉工場総務部長などを経て、2023年6月より現職。
福田 加奈子 取締役 1988年住友化学工業(現 住友化学)入社。同社常務執行役員などを経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、田辺 陽(関西学院大学名誉教授)、乾 禄治(元日本メジフィジックス執行役員)、小西 弘之(小西弘之税理士事務所代表)、藤咲 雄司(元天馬代表取締役社長)、矢倉 昌子(アスカ法律事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「化学工業」および「化学分析受託事業」事業を展開しています。

(1) 化学工業


医・農薬中間体や電子材料、樹脂原料などの「精密化学品」、瞬間接着剤やゴム薬品などの「機能材」、加工樹脂やワニス、可塑剤などの「樹脂添加剤」を製造・販売しています。幅広い産業分野に向けて、中間素材や高機能材料を提供しています。

製品販売による対価を主な収益源としています。運営は主に同社が行っているほか、インドにおけるゴム薬品等はタオカ ケミカル インド プライベート リミテッドが、中国における樹脂添加剤等は田岡化工材料(上海)が担っています。

(2) 化学分析受託事業


環境計量証明事業や作業環境測定、材料分析、構造解析など、各種化学分析の受託サービスを提供しています。顧客からの依頼に基づき、専門的な分析技術を用いてデータや報告書を提供しています。

分析サービスの提供による受託料を収益源としています。運営は連結子会社の田岡化学分析センターが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2023年3月期に利益率が大きく低下しましたが、その後は回復傾向にあります。直近の2025年3月期においては、原料価格高騰への対応や出荷数量の増加により、売上高・利益ともに伸長し、利益率は6.6%まで改善しました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 321億円 324億円 302億円 285億円 299億円
経常利益 41億円 28億円 5億円 11億円 20億円
利益率(%) 12.7% 8.6% 1.5% 4.0% 6.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 26億円 20億円 3億円 8億円 15億円

(2) 損益計算書


前期と比較して売上高が増加するとともに、売上原価率の改善により売上総利益率が上昇しました。販売費及び一般管理費は微増にとどまり、営業利益率は3.8%から6.3%へと改善しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 285億円 299億円
売上総利益 46億円 55億円
売上総利益率(%) 16.0% 18.3%
営業利益 11億円 19億円
営業利益率(%) 3.8% 6.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び福利費が9億円(構成比25%)、研究開発費が8億円(同23%)を占めています。

(3) セグメント収益


化学工業セグメントは、精密化学品の樹脂原料や電子材料、樹脂添加剤のワニス等の出荷数量増加により増収増益となりました。化学分析受託事業は、売上高・利益ともに前期並みで推移しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
化学工業 279億円 293億円 10億円 19億円 6.4%
化学分析受託事業 6億円 6億円 0.6億円 0.2億円 3.7%
調整額 -0.6億円 -0.8億円 0.0億円 0.0億円 -
連結(合計) 285億円 299億円 11億円 19億円 6.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 36億円 44億円
投資CF -11億円 -14億円
財務CF -24億円 -10億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は60.8%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「化学技術を基盤として時代が求める新たな価値を創造し、生み出された化学製品を社会に供給することで、快適で豊かな暮らしの実現と社会の持続的な発展に貢献します。」という経営理念を掲げています。

(2) 企業文化


同社グループは、「TCG as one 2027」をスローガンとして掲げ、グループ一丸となって中長期ビジョンの実現を目指しています。また、コンプライアンスの徹底と安全・安定操業の継続を最優先事項とし、働きやすい職場風土の醸成や多様な価値観を認め合い創造性を発揮することを重視しています。

(3) 経営計画・目標


2025年度を初年度とする新中期経営計画において、2030年代初頭のありたい姿として以下の数値目標を掲げています。また、KPIとしてROICと戦略投資を経営課題として設定しています。

* 売上高:500億円
* 営業利益:40億円
* ROIC:10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


新中期経営計画「TCG as one 2027」では、収益力の向上、生産体制の拡充、研究開発の強化、DX推進、従業員エンゲージメントの向上、サステナビリティ製品の開発を基本戦略としています。既存事業の深耕に加え、新規開発品の早期上市や海外事業の拡大に取り組みます。

* 設備投資計画(3か年累計):160億円
* 新製品売上高率目標:20%

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を最重要の経営資源と位置づけ、働きやすい職場風土の醸成、自律的なキャリア形成支援、多様な価値観の尊重を推進しています。経営戦略に必要な人材ポートフォリオを策定し、採用と育成を計画的に行うとともに、ダイバーシティ&インクルージョンや健康経営にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.9歳 14.7年 6,866,401円


※平均年間給与は、賞与および基準外賃金を含んでいます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.2%
男性育児休業取得率 73.0%
男女賃金差異(全労働者) 81.9%
男女賃金差異(正規雇用) 82.5%
男女賃金差異(非正規) 52.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、課長相当職以上の女性社員の割合(7.2%)、男性社員の育児休業取得率(112.5%)、日本国内で勤務する外国出身者数(6名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定の取引先等への高い依存度


一部の取引先への売上依存度が高く、これらの取引先とは長期納入契約等を締結していないため、取引先の事情による製品需要の減退が生じた場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 国内および海外市場での需要変動


製品を国内外に供給しているため、日本国内やアジア等の主要市場の景気動向の影響を受けます。市場環境の変化により需要が変動した場合、業績等に影響を与える可能性があります。

(3) 原材料の価格の変動や調達


原油・ナフサ価格に連動する石油化学製品などの原材料を国内外から調達しており、市況変動や調達難が生じた場合、業績に影響する可能性があります。価格転嫁や複数調達ルートの確保等の対策を行っていますが、影響を完全に回避できる保証はありません。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。