※本記事は、田岡化学工業株式会社の有価証券報告書(第126期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 田岡化学工業ってどんな会社?
同社グループは化学工業を基盤とし、精密化学品や樹脂添加剤などを国内外に提供する化学メーカーです。
■(1) 会社概要
1919年4月に田岡商店として創業し、1934年10月に田岡染料製造を設立しました。1955年5月に住友化学工業(現 住友化学)が資本参加しています。2013年7月に東京証券取引所へ株式を上場しました。その後、2020年9月に営業本部および本社部門を大阪市淀川区に移転し、現在の体制となっています。
従業員数は連結で482名、単体で412名です。筆頭株主は事業会社の住友化学で、第2位は資産管理業務を行うモルガン・スタンレーMUFG証券、第3位も同じく資産管理業務を行う香港上海銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 住友化学 | 50.58% |
| MSIP CLIENT SECURITIES(常任代理人 モルガン・スタンレーMUFG証券) | 2.60% |
| NORTHERN TRUST CO.(AVFC) RE U.S. TAX EXEMPTED PENSION FUNDS SEC LENDING (常任代理人 香港上海銀行東京支店) | 1.56% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.0%です。代表取締役社長は岩崎明氏が務めています。社外取締役比率は36.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 岩崎 明 | 取締役社長(代表取締役) | 住友化学経営管理部長、同社執行役員を経て、取締役副社長等を歴任。2025年より現職。 |
| 松尾 俊二 | 常務取締役営業本部長、営業本部東京支店長 | 同社事業支援室部長、田岡化工材料董事長・総経理などを歴任。2025年より現職。 |
| 伊美 勝治 | 常務取締役技術本部長、研究所統括 | 住友化学エネルギー・機能材料業務室部長を経て、同社技術本部副本部長を歴任。2025年より現職。 |
| 伊瀨 基之 | 常務取締役生産本部長、生産本部淀川工場長 | 同社生産本部播磨工場副工場長、技術本部技術室長を経て、生産本部長等を歴任。2026年より現職。 |
| 岡嶋 謙 | 取締役総務人事室長、内部統制・監査部統括 | 住友化学千葉工場総務部長などを経て、同社総務人事室長を歴任。2023年より現職。 |
| 福田加奈子 | 取締役 | 住友化学CSR推進部長、常務執行役員サステナビリティ推進部長などを歴任。2024年より現職。 |
社外取締役は、田辺陽(元関西学院大学教授)、小西弘之(元国税庁大阪国税局)、藤咲雄司(元天馬代表取締役社長)、矢倉昌子(元大阪弁護士会副会長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「化学工業」および「化学分析受託事業」を展開しています。
■(1) 化学工業
精密化学品(農薬中間体や樹脂原料)、機能材(接着剤やゴム薬品)、樹脂添加剤(加工樹脂や可塑剤)等の各種化学製品を国内外の顧客向けに製造および販売しています。光学レンズ用樹脂モノマーや生分解性・バイオマス可塑剤などの開発にも取り組んでいます。
製品の販売を通じて顧客から代金を受け取る収益モデルです。製品の引渡しやリスク負担の移転時に収益を認識しています。主に田岡化学工業が運営を行っており、一部のゴム薬品や加工樹脂については田岡化工材料(上海)やインドのタオカケミカルインドが事業を担当しています。
■(2) 化学分析受託事業
各種環境分析、材料分析、土壌調査、石綿分析などを幅広く受託する事業です。多様な分析ニーズを持つ企業や自治体などの顧客に対し、専門的な化学分析サービスを提供することで事業を展開しています。
顧客からの化学分析業務の受託および完了報告に伴い、サービス提供の対価として分析手数料等の料金を受け取る収益モデルです。事業の運営は、田岡化学工業の連結子会社である田岡化学分析センターが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は一時的な落ち込みを経て回復傾向にあり、直近では樹脂原料の出荷増加などが寄与し増収となっています。経常利益と当期利益についても、直近2期間は連続して増益を達成しており、利益率も回復基調にあることが読み取れます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 324億円 | 302億円 | 285億円 | 299億円 | 332億円 |
| 経常利益 | 28億円 | 5億円 | 11億円 | 20億円 | 21億円 |
| 利益率(%) | 8.6% | 1.5% | 4.0% | 6.6% | 6.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 20億円 | 2億円 | 7億円 | 13億円 | 14億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益ともに増加しています。一方で、利益率の観点では、売上総利益率と営業利益率はともに前期間からわずかに低下しており、固定費等の負担増や原材料価格の影響などが伺えます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 299億円 | 332億円 |
| 売上総利益 | 55億円 | 58億円 |
| 売上総利益率(%) | 18.3% | 17.4% |
| 営業利益 | 19億円 | 20億円 |
| 営業利益率(%) | 6.3% | 6.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び福利費が9億円(構成比24%)、研究開発費が8億円(同23%)、運送費及び保管費が7億円(同20%)を占めています。売上原価は274億円で、売上原価合計の構成比として大部分を占めています。
■(3) セグメント収益
主力である化学工業セグメントは、精密化学品事業における樹脂原料の販売増加や、樹脂添加剤事業における可塑剤の販売増が牽引し、増収となっています。一方で、化学分析受託事業は土壌調査や石綿分析などが減少したため減収となりました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 化学工業 | 293億円 | 326億円 |
| 化学分析受託事業 | 6億円 | 6億円 |
| 連結(合計) | 299億円 | 332億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業で稼いだ資金を元に、借入の返済や将来に向けた設備投資などを自前の資金で賄うことができている、健全で安定した財務状態と言えます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 44億円 | 21億円 |
| 投資CF | -14億円 | -9億円 |
| 財務CF | -10億円 | -12億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.1%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は63.2%で、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「田岡化学は、化学技術を基盤として時代が求める新たな価値を創造し、生み出された化学製品を社会に供給することで、快適で豊かな暮らしの実現と社会の持続的な発展に貢献します。」という経営理念を掲げています。長年培ってきた有機合成技術を基に、暮らしと環境のイノベーションに貢献することを使命として事業活動を展開しています。
■(2) 企業文化
同社は社員一人ひとりが自律的にキャリアを実現できるよう、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンを推進する企業文化を醸成しています。性別や年齢、国籍によらず多様な価値観を認め合い創造性を発揮することや、自ら学び成長するキャリア支援、健康経営の推進などを通じて、働きやすい職場風土づくりを重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、2025年度を初年度とする中期経営計画「TCG as one 2027」を策定し、中長期ビジョンとして事業規模の拡大と企業価値の向上を目指しています。グループ一丸となって持続的な成長を推進し、以下の数値目標の達成を掲げています。
* 売上高500億円
* 営業利益40億円
* ROIC(投下資本利益率)10%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
目標達成に向けて、同社は既存事業の深耕や新規開発品の早期上市による収益構造の改善、プラント再編を含めた生産体制の拡充に注力しています。また、マテリアルズインフォマティクスを活用したDX推進や、サステナビリティ製品(生分解性・バイオマス可塑剤など)の開発を通じた研究開発の強化を重点施策として位置づけています。
* 新製品売上高率20%
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は持続的な成長の源泉となる「人材」を重要視し、多様な人材の確保と一人ひとりが働きがいを感じる環境整備を最重要戦略としています。公平公正な人事制度のもと、従業員の自律的な学習・成長を支援する教育投資の拡充や、副業・在宅勤務等の柔軟な働き方の実現を通じ、エンプロイアビリティの高い人材の育成と定着を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 40.8歳 | 14.3年 | 7,141,781円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 11.5% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | 81.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 83.1% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 74.0% |
※男性育児休業取得率は、配偶者が出産した男性労働者がいなかったため算定されていません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定取引先への高い依存度によるリスク
同社グループの売上高は一部の特定取引先への依存度が高く、これらの取引先とは長期納入契約等を結んでいません。取引先の製法転換等による製品の需要減退や方針変更が発生した場合、同社グループの財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 原材料価格の高騰および調達リスク
同社グループは原油・ナフサ価格に連動する石油化学製品のほか、数多くの原材料を直接または間接的に調達しています。イラン情勢等を中心とした国際的な混乱や異常気象など、予測困難な問題により原材料価格の上昇や調達制限が生じた場合、事業活動に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 国内外の市場需要および為替相場の変動リスク
同社グループの製品は直接的または間接的に国内外の市場に供給されているため、日本国内やアジア等の主要市場の景気動向の影響を受けます。さらに外貨建て取引においても、為替レートの変動(特に円安への振れ)や海外子会社の円換算による影響が、経営成績等に影響を及ぼすリスクが存在します。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。