※本記事は、住友ベークライト株式会社の有価証券報告書(第135期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はIFRSです。
1. 住友ベークライトってどんな会社?
同社は、半導体関連材料や高機能プラスチックなどの製造と販売を手がける総合化学メーカーです。
■(1) 会社概要
1932年に日本ベークライトとして設立され、1955年に住友化工材工業と合併して現在の住友ベークライトとなりました。1949年に株式上場を果たし、その後北米や欧州でのM&A等を通じてグローバル展開を推進しています。2025年にはAGCからポリカーボネート事業を買収するなど事業領域を拡大しています。
現在の従業員数は連結で7,524名、単体で1,684名体制となっています。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位には提携関係にもある事業会社の住友化学が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 13.39% |
| 住友化学 | 10.55% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 8.10% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性2名の計13名で構成され、女性役員比率は15.0%です。代表取締役会長は藤原一彦、代表取締役社長社長執行役員は鍜治屋伸一が務めています。社外取締役比率は23.1%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 藤原一彦 | 代表取締役会長 | 1980年同社入社。S-バイオ事業部長、高機能プラスチック製品事業本部長、代表取締役社長などを経て、2025年より現職。 |
| 鍜治屋伸一 | 代表取締役社長社長執行役員 | 1989年同社入社。情報通信材料営業本部長、マテリアルズソリューション営業本部長などを歴任し、2025年より現職。 |
| 稲垣昌幸 | 代表取締役副社長執行役員 | 1982年同社入社。宇都宮工場長、研究開発本部長などを経て、2021年副社長執行役員に就任。2022年より現職。 |
| 小林孝 | 取締役専務執行役員 | 1987年同社入社。南通住友電木総経理、医療機器事業本部長などを歴任し、2023年より現職。 |
| 倉知圭介 | 取締役専務執行役員 | 1985年同社入社。宇都宮工場長、台湾拠点董事長などを経て、2023年より現職。 |
| 平井俊也 | 取締役常務執行役員 | 1986年住友化学工業(現住友化学)入社。同社経営戦略企画室長を経て、2023年より現職。 |
社外取締役は、松田和雄(元みずほ証券常務執行役員)、永島惠津子(永島会計事務所代表)、若林宏之(元デンソー代表取締役副社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、半導体関連材料、高機能プラスチック、クオリティオブライフ関連製品およびその他事業を展開しています。
■半導体関連材料
この事業では、半導体封止用エポキシ樹脂成形材料、半導体用感光性材料、半導体用ボンディングペースト、半導体基板材料などを提供しており、国内外の半導体メーカーや電子部品メーカーを主要な顧客としています。
収益は、これらの半導体関連製品を顧客へ販売することによる製品代金から得ています。事業の運営は同社のほか、九州住友ベークライト、台湾住友培科、蘇州住友電木など、国内外の製造・販売子会社が共同で担っています。
■高機能プラスチック
このセグメントでは、工業用樹脂、成形材料、成形品、積層板、航空機部品などを幅広く提供しています。自動車産業や電機分野、航空機メーカーなど、多様な産業分野の顧客に向けた高耐熱・高機能な部材を展開しています。
収益源は、顧客企業に対する高機能プラスチック製品の販売代金です。事業運営は同社に加え、秋田住友ベーク、サンベークなどの国内子会社のほか、北米や欧州、アジア地域に展開する多数の海外子会社が行っています。
■クオリティオブライフ関連製品
医療機器および医薬品、産業機能性材料、フィルム・シート、防水シート関連、診断薬およびバイオ関連製品などを提供しています。医療機関や食品・医薬品メーカー、住宅関連企業などを顧客としています。
これらの製品を顧客へ販売することで収益を得ています。運営主体は同社のほか、SBカワスミ、住ベシート防水などの国内子会社と、北米やアジアに拠点を置く複数の海外関係会社がそれぞれ担当領域を持っています。
■その他
上記報告セグメントに含まれない事業として、外部からの各種試験・研究の受託や基礎研究の受託、さらには分析調査等のサービスを提供しています。
収益は、これらの受託サービスに対する手数料や委託費用として得ています。この事業の運営は、主に子会社である住ベリサーチや海外子会社のPromerusが主体となって行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上収益は安定した成長を続けており、継続して増収を達成しています。利益面でも一時的な変動はあるものの概ね堅調に推移し、利益率は継続して9%以上の安定した水準を確保しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 2,631億円 | 2,849億円 | 2,873億円 | 3,048億円 | 3,199億円 |
| 税引前利益 | 259億円 | 267億円 | 315億円 | 286億円 | 388億円 |
| 利益率(%) | 9.8% | 9.4% | 11.0% | 9.4% | 12.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 183億円 | 203億円 | 218億円 | 193億円 | 280億円 |
■(2) 損益計算書
売上収益は順調に拡大しており、それに伴い売上総利益および営業利益も増加傾向にあります。特に営業利益率は大きく改善し、高付加価値製品への注力や価格適正化の成果が利益の拡大に寄与していることが伺えます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 3,048億円 | 3,199億円 |
| 売上総利益 | 364億円 | 391億円 |
| 売上総利益率(%) | 11.9% | 12.2% |
| 営業利益 | 248億円 | 355億円 |
| 営業利益率(%) | 8.1% | 11.1% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給付費用が285億円(構成比43%)、荷造運搬費が125億円(同19%)を占めています。
■(3) セグメント収益
半導体関連材料はAIおよび次世代通信技術向けの需要拡大により大幅な増収となりました。高機能プラスチックとクオリティオブライフ関連製品はほぼ横ばいですが、全体としては半導体分野が牽引して増収となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 半導体関連材料 | 913億円 | 1,064億円 |
| 高機能プラスチック | 1,056億円 | 1,057億円 |
| クオリティオブライフ関連製品 | 1,072億円 | 1,072億円 |
| その他 | 8億円 | 8億円 |
| 調整額 | -2億円 | -2億円 |
| 連結(合計) | 3,048億円 | 3,199億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、本業で稼いだ利益で借入金の返済を進めつつ、投資も手元資金で賄っている健全型のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 437億円 | 350億円 |
| 投資CF | -156億円 | -79億円 |
| 財務CF | -449億円 | -136億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は65.0%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、住友の事業精神に沿った基本方針として「我が社は、信用を重んじ確実を旨とし、事業を通じて社会の進運及び民生の向上に貢献することを期する。」を経営理念として掲げています。また、「プラスチックの可能性を広げることで、持続可能な社会を実現する」を存在意義(パーパス)に定めています。
■(2) 企業文化
同社は、多様な人材が個性や能力を発揮し、相互の理解と尊重のもとで生き生きと活躍できる環境づくりを重視する「DE&I」を企業文化の基盤としています。また、常に変革を志向し、自身の力と周囲の力を合わせて高い成果を生み出すチーム志向のプロフェッショナル人材を求める文化が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、中長期的な経営目標として「2030年ありたい姿」を掲げ、そこからのバックキャストで「中期経営計画2024-26」を策定しています。持続的成長と資本コストを意識し、以下の数値を2030年および2026年度の目標に設定しています。
・2030年度目標:事業利益550億円、事業利益率13%、ROE10%
・2026年度目標:事業利益400億円、事業利益率11.5%、ROE9%
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、“ニッチ&トップシェア”を目指し、価値創造につながる事業ポートフォリオ改革を進めています。製品構成の最適化による既存事業の収益力強化や、環境的・社会的価値を有する新商品・ソリューションの創出を重点施策としています。また、将来の成長を見据えて設備投資やM&Aなどの戦略的投資を積極的に実施します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「社員が生き生きと活躍できる会社」を掲げ、人的資本経営を重視しています。多様性の推進、自律性の強化、組織力の向上の3つを方針とし、公正かつ透明な人事評価と処遇の反映を行っています。また、デジタル人材の育成やマネジメント層のリーダーシップ強化を通じて、持続的な企業価値の向上を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 46.7歳 | 22.0年 | 8,170,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.9% |
| 男性育児休業取得率 | 95.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 70.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 70.6% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 67.9% |
また、同社はサステナビリティのセクション等において、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、データサイエンティスト認定者(78名)、データサイエンススキル保有者(239名)、障がい者雇用率(2.78%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 地政学リスク
米中貿易摩擦や中東情勢などの国際関係の変化に伴い、各国の経済安全保障政策が強化されています。輸出入規制や経済制裁、物流・調達・インフラの寸断により、事業活動の混乱や経営成績への悪影響が生じる可能性があります。同社は情報収集を強化し、マルチファブ化やマルチソース化を進めて対策しています。
■(2) 情報セキュリティインシデント
サイバー攻撃の巧妙化や工場OT機器のデジタル化が進む中、不正アクセスにより重要なシステムが停止したり機密情報が流出したりするリスクがあります。社会的信用の失墜や事業活動の停滞を防ぐため、同社は組織横断的なセキュリティ対策機関を設置し、脆弱性対応や監視、従業員教育などの防御体制を強化しています。
■(3) 原材料の供給問題や価格変動
地政学要因や自然災害、物流問題、環境規制の強化などにより、主要な原材料の入手困難や供給不安、相場に連動した価格高騰が生じるリスクがあります。これにより収益性の悪化や事業継続に支障をきたす可能性があるため、同社は調達先の複数化や適正在庫の確保、代替品の選定などによりリスクの低減に努めています。



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