※本記事は、フクビ化学工業株式会社 の有価証券報告書(第91期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. フクビ化学工業ってどんな会社?
プラスチックを中心とする異形押出成形技術をコア技術とし、住宅・非住宅建材や産業用部材を開発・製造・販売する化学メーカーです。
■(1) 会社概要
1953年に福井ビニール工業として設立され、1970年に現商号へ変更しました。1997年に株式を上場しています。2013年にベトナム、2016年にタイへ子会社を設立しグローバル展開を加速させました。近年では2018年に積水化学工業よりフェノールフォーム断熱ボード事業を承継するなど、事業基盤の強化を進めています。
連結従業員数は983名、単体では755名です。筆頭株主は創業家関連企業の株式会社八木熊で13.05%を保有し、第2位は主要取引先である化学品専門商社の長瀬産業株式会社(12.49%)です。また、第3位には資産管理業務を行う信託銀行が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 八木熊 | 13.05% |
| 長瀬産業 | 12.49% |
| 日本カストディ銀行 (三井住友信託銀行再信託分・三井化学退職給付信託口) | 9.41% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長執行役員COOは森克則氏です。社外取締役比率は30.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 八木 誠一郎 | 代表取締役会長CEO | 1985年同社入社。社長、社長執行役員、建材事業本部管掌などを歴任。2024年6月より現職。 |
| 森 克 則 | 代表取締役社長執行役員COO | 三井物産出身。同社機能化学品本部業務部長、三井物産プラスチック社長などを経て、2024年6月より現職。 |
| 多比良 幸 一 | 取締役専務執行役員経営戦略本部長CFO | 北陸銀行出身。同社武生支店統括副支店長等を経て、2021年同社入社。経営戦略本部長などを歴任し、2025年6月より現職。 |
| 小 林 俊 幸 | 取締役常務執行役員生産イノベーション本部長CTO | 1987年同社入社。生産技術センター長、タイ現地法人社長などを経て、2025年4月より現職。 |
社外取締役は、岩淵滋(元プライムポリマー社長)、諫山滋(三井化学参与)、南保勝(仁愛大学特任教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、「建材事業」「CSE事業」「精密事業」「グローバル事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 建材事業
外装建材、内装建材、床関連材、システム建材などの開発・製造・販売を行っています。また、建設工事の設計施工も手掛けています。
製品・商品の販売は商社や代理店、販売店を通じて行われています。製造販売は、フクビ化学工業、フクビハウジング、リフォジュール、アリス化学、フクビ岡山などの連結子会社および関連会社が担っています。
■(2) CSE事業
主に住宅設備や車両分野において、顧客からの受注によるOEM製品・ODM製品などを開発・製造・販売しています。CSEとは「Customer Satisfaction & Expectation」の略で、顧客ニーズに対応した製品提供を行っています。
この事業の運営は、フクビ化学工業に加え、フクビハウジング、アリス化学、フクビ岡山、および海外子会社のFUKUVI VIETNAM、FUKUVI (THAILAND)などが担っています。
■(3) 精密事業
反射防止機能などを付与した樹脂シートを主とする機能性コーティング製品を開発・製造・販売しています。
同社が製造を行い、主に商社を通じて販売を行っています。
■(4) グローバル事業
海外市場向けに外装建材や内装建材などを開発・製造・販売しています。
運営は、フクビ化学工業および海外子会社であるFUKUVI USA, INC.、FUKUVI VIETNAM CO.,LTD.、FUKUVI (THAILAND) CO.,LTD.が行っています。
■(5) その他
上記報告セグメントに含まれない新規事業などが含まれています。
運営は主に同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は300億円台後半で推移しており、直近では約400億円に達しています。利益面では、経常利益率が4%〜5%程度で安定的に推移しています。当期は売上高が微増したものの、経常利益および当期純利益は減少しました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 356億円 | 367億円 | 396億円 | 397億円 | 400億円 |
| 経常利益 | 14億円 | 16億円 | 19億円 | 21億円 | 19億円 |
| 利益率(%) | 3.9% | 4.4% | 4.8% | 5.3% | 4.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 8億円 | 10億円 | 13億円 | 14億円 | 12億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は微増しましたが、売上原価および販売費・一般管理費の増加により、営業利益は減少しました。売上総利益率はほぼ横ばいですが、営業利益率は低下傾向にあります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 397億円 | 400億円 |
| 売上総利益 | 121億円 | 120億円 |
| 売上総利益率(%) | 30.4% | 30.0% |
| 営業利益 | 18億円 | 16億円 |
| 営業利益率(%) | 4.4% | 3.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給与及び賞与が27億円(構成比26%)、運送諸掛費が26億円(同25%)を占めています。
■(3) セグメント収益
当期よりセグメント区分が変更されています。主力である建材事業が売上の過半を占め、高い利益率を確保しています。CSE事業も一定の収益貢献をしていますが、グローバル事業は営業損失となりました。精密事業は黒字を確保しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|
| 建材事業 | 257億円 | 36億円 | 13.9% |
| CSE事業 | 101億円 | 3億円 | 3.2% |
| 精密事業 | 16億円 | 2億円 | 9.9% |
| グローバル事業 | 25億円 | -1億円 | -4.8% |
| その他 | 1億円 | -3億円 | -285.3% |
| 調整額 | -億円 | -21億円 | -% |
| 連結(合計) | 400億円 | 16億円 | 3.9% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFはプラス、投資CFと財務CFはマイナスで推移しており、本業で得た現金を投資や借入返済・株主還元に充てる「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。営業CFは前期比で大幅に増加しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 8億円 | 44億円 |
| 投資CF | -8億円 | -4億円 |
| 財務CF | -10億円 | -12億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は68.7%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「化学に立脚し、新たな価値を創造、提案する」、「企業経営を通じて、地域に貢献し、環境共生型社会形成に寄与する」を企業理念として掲げています。プラスチックを中心とする異形押出成形技術をコアとし、新しい技術と製品の開発を通じて企業価値向上を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は「フクビの絶対主義」、すなわち「絶対品質、絶対スピード、絶対コスト」を重視しています。これらに裏付けられた製品とサービスの提供を通じて顧客の企業価値増大に貢献し、開発型メーカーとしての事業基盤を強化する方針を持っています。
■(3) 経営計画・目標
2023年度より5カ年の第7次中期経営計画を推進しています。「新たな技術開発と市場創造に絶え間なく挑戦し、快適な社会の実現に貢献する」というビジョンのもと、現状とのギャップを埋めるための戦略を実行しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は「循環型ビジネス拡大」「強靭な収益基盤構築」「成長を後押しする組織づくり」を基本戦略としています。具体的には、プラスチックリサイクル事業の拡大や環境配慮型商品の展開、材料配合・成形加工技術の強化による付加価値向上、人的資本への投資による組織改革などを推進しています。
重点施策として以下に取り組んでいます。
1. 社会課題解決型ビジネスの拡大:資源循環や気候変動対応に寄与する事業の強化。
2. 先端技術の戦略的活用と人材育成:生成AI等の活用とイノベーション人材の育成。
3. ステークホルダーとの関係強化:対話と協働による価値創造。
4. グローバル経営基盤の強化:海外市場での成長加速と現地化の推進。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人がいてフクビがあり、人が成長してフクビが成長する」という理念のもと、従業員の成長と活躍を持続的発展の原動力と位置付けています。安全で健康的な職場づくり、柔軟な働き方の導入、自律的なキャリア形成支援、学ぶ風土の醸成に取り組んでいます。また、次世代幹部人材の育成や多様な人材の確保・活用も推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 43.0歳 | 19.4年 | 6,165,976円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 6.8% |
| 男性育児休業取得率 | 78.6% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 71.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 73.5% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 75.1% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 事業環境の変化による影響
住宅建築資材を中核事業としているため、個人消費動向や住宅関連税制、長期金利の変動等が住宅着工数に影響を与えます。これにより、固定資産や棚卸資産の減損損失が発生し、業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 原材料の市況変動による影響
主要製品の主原料である塩ビ・オレフィン等の価格変動に対し、生産技術の向上による吸収や製品価格への転嫁が適時に行えない場合、業績や財政状態に悪影響が生じる可能性があります。
■(3) 販売先の信用悪化による影響
大手建材問屋や商社を主な販売先としており、取引信用保険などでリスクヘッジを行っていますが、予期せぬ信用悪化により貸倒れが発生した場合、追加的な損失計上が必要となり、業績や財政状態に影響を与える可能性があります。



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