※本記事は、日本化薬株式会社 の有価証券報告書(2026年3月期、2025年4月1日 ~ 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の開示情報に基づき作成しています。会計基準は 日本基準 です。
1. 企業概要:どんな会社?
日本化薬は、モビリティ&イメージング、ファインケミカルズ、ライフサイエンスの3つの事業領域で多岐にわたる製品・サービスを提供する化学メーカーです。エアバッグ用インフレータや液晶ディスプレイ用部材、エポキシ樹脂、インクジェットプリンタ用色素、抗悪性腫瘍剤、殺虫剤など、幅広い分野で事業を展開しています。
単体従業員数は2,366名、連結従業員数は5,946名です。セグメントはモビリティ&イメージング、ファインケミカルズ、ライフサイエンスの3つです。
主な国内グループ会社は、ポラテクノ、ニッカファインテクノ、厚和産業、テイコクテーピングシステム(半導体製造装置の製造・販売)、日本化薬フードテクノなどです。
同社グループは、中期事業計画「KAYAKU Vision 2025」の最終年度を迎え、新中期経営計画「Evolution2035 Phase1」において事業ポートフォリオの再構築を重点施策としています。
2. 給与と働き方:どんな環境で働く会社か?
日本化薬は、化学製品を基盤とする事業を展開しており、従業員の働きがいと多様性を重視する人的資本経営を推進しています。長期的な視点での人材育成と、柔軟な働き方を支援する環境整備に力を入れていることが特徴です。
■(1) 給与水準と在籍傾向:平均年間給与・勤続年数・年齢
日本化薬では、従業員が長期的にキャリアを形成できる環境が整っている傾向が見られます。平均勤続年数と平均年齢から、安定して働き続けられる職場であることがうかがえます。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 平均年間給与 | 7,976,000円 |
| 平均勤続年数 | 14.8年 |
| 平均年齢 | 41.0歳 |
| 単体従業員数 | 2,366人 |
| 連結従業員数 | 5,946人 |
| 単体のグループ内比率 | 39.8% |
日本化薬は、確定給付年金制度及び退職一時金制度を設けています。国内連結子会社は確定給付企業年金制度及び退職一時金制度を設けており、一部の在外子会社では退職一時金制度及び確定拠出制度を設けています。
退職一時金制度がありますが、支給条件や金額の算定方法は有価証券報告書では確認できないため、就業規則や募集要項で確認する必要があります。
退職給付債務は272億円、年金資産は392億円となっています。
■(2) 人材戦略と報酬制度:育成方針と給与の決め方
日本化薬グループは、人的資本経営を長期経営計画「Evolution2035」の実現と持続的成長を支える重要な成長基盤戦略と位置付けています。経営戦略の実現に必要な人材を明確化し、採用・育成・配置・活躍を通じて人材価値の最大化と企業価値の向上を目指しています。
人事制度としては、職務の価値を基準として評価し、等級を設定するポジションクラス制度(職務等級制度)を採用しています。年齢、性別、学歴、職歴などの属性にとらわれず、役割及び職務を重視した配置・処遇を基本方針としています。
従業員の報酬は、ポジションクラス制度に基づき、各人の担う職務、成果、外部労働市場の水準などを総合的に勘案して決定されます。賞与については、連結営業利益を基準とし、ROICなどの財務指標に加え、中長期重点課題を踏まえた非財務指標を考慮のうえ、個人業績評価を反映して支給される仕組みです。
重点人材として、次世代経営人材、デジタル人材、財務戦略企画人材、グローバル人材、高度専門職などの育成強化を進めています。従業員が健康で安心して働ける労働環境を整備し、生産性向上や従業員満足度向上を目指す社内環境整備方針も掲げています。
■(3) 人的資本データ:多様性と働き方に関する指標
有価証券報告書の法定開示項目および任意開示指標を示します。各指標は、女性活躍推進法・育児介護休業法に基づく法定開示と、同社が独自に開示している任意指標から構成されています。
法定開示
提出会社単体の法定開示データです。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 9.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 71.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 82.1% |
| 男女賃金差異(非正規雇用労働者) | 74.0% |
働きやすさと働きがいの向上
指標に関する目標及び実績は提出会社のものを記載しています。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 有給休暇取得率 | 74.4% |
| エンゲージメントスコア | 49.7 |
ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの推進
指標に関する目標及び実績は提出会社のものを記載しています。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 9.0% |
| 男性育児休業取得率 | 90.3% |
| 障害者雇用率 | 2.3% |
有報に開示される平均年収は全社平均です。職種・年次・職位ごとの実際の給与水準は、社員・OBOGの給与明細データで確認できます。
3. 事業の構造:どんなビジネスをしている会社か?
日本化薬グループは、化学品を基盤とした多岐にわたる事業を展開しており、日本化薬株式会社と多数の子会社・関連会社で構成されています。同社グループの事業は、「モビリティ&イメージング事業領域」「ファインケミカルズ事業領域」「ライフサイエンス事業領域」の3つのセグメントに分かれています。
■(1) 事業内容と収益モデル:何で利益を上げているか
同社グループは、自動車関連製品から半導体材料、医薬品、農業資材まで、幅広い分野で製品とサービスを提供しています。各事業領域がそれぞれの専門性を活かし、国内外の市場ニーズに応えることで収益を上げています。
モビリティ&イメージング事業領域
この事業領域では、自動車の安全システムに関する製品や、ディスプレイ・分析装置用の部材を提供しています。セイフティシステムズ事業ではエアバッグ用インフレータやシートベルトプリテンショナー用マイクロガスジェネレータなどを手掛け、ポラテクノ事業では液晶ディスプレイ用部材やX線分析装置用部材などを展開しています。
収益は、自動車生産の動向やディスプレイ・分析装置用部材の需要に影響されます。当連結会計年度の売上高は増加しましたが、セグメント利益は減少しました。
ファインケミカルズ事業領域
機能性材料、色素材料、触媒の3つの事業で構成されています。機能性材料事業ではエポキシ樹脂や半導体製造装置などを、色素材料事業ではインクジェットプリンタ用色素や調光ガラス用二色性色素などを、触媒事業ではアクリル酸製造用触媒などを提供しています。
収益は、半導体市況の動向やインクジェットプリンタ用色素、各種触媒の需要に影響を受けます。当連結会計年度は、売上高、セグメント利益ともに増加しました。
ライフサイエンス事業領域
医薬、アグロ、不動産の各事業を展開しています。医薬事業では抗悪性腫瘍剤や生物学的製剤、体外診断用医薬品などを、アグロ事業では殺虫剤や除草剤などの農業資材を、不動産事業では不動産賃貸を行っています。
収益は、新薬の開発・販売状況、ジェネリック医薬品の市場浸透、農業資材の需要、不動産賃貸収入に影響されます。当連結会計年度は、売上高、セグメント利益ともに増加しました。
同社グループの売上高は、日本国内が最大の割合を占めていますが、中国、アジア、米国など海外地域からの収益も全体の過半数を占めています。特定の顧客への売上高集中は見られません。
| セグメント | 売上高(2025年3月期) | 売上高(2026年3月期) |
|---|---|---|
| モビリティ&イメージング事業領域 | 914億円 | 947億円 |
| ファインケミカルズ事業領域 | 662億円 | 741億円 |
| ライフサイエンス事業領域 | 650億円 | 730億円 |
■(2) 業績トレンド:直近の売上・利益の推移
同社グループの過去5期間の業績を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあります。経常利益と親会社株主に帰属する当期純利益は、一時的な変動があったものの、直近の連結会計年度では大きく増加しました。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,848億円 | 1,984億円 | 2,018億円 | 2,226億円 | 2,419億円 |
| 経常利益 | 232億円 | 230億円 | 126億円 | 223億円 | 255億円 |
| 経常利益率 | 12.5% | 11.6% | 6.2% | 10.0% | 10.5% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 172億円 | 150億円 | 41.1億円 | 175億円 | 246億円 |
| 1株当たり当期純利益(円) | 101.70 | 89.36 | 24.80 | 107.17 | 161.18 |
■(3) 収益性と生産性:1人あたりの稼ぐ力を見る
同社グループの従業員1人あたりの売上高(連結)は、前期から当期にかけて増加しています。また、従業員1人あたりの営業利益(連結)も前期から当期にかけて増加しており、生産性が向上している傾向が見られます。
| 指標 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 従業員1人あたり売上高(連結) | 37.2百万円 | 40.7百万円 |
| 従業員1人あたり営業利益(連結) | 3.4百万円 | 3.8百万円 |
業績データからは見えない「この会社で実際に働くとどうか」は、社員・OBOGの口コミで確認できます。
4. 経営の安定性:どれくらい安心して働けそうか?
日本化薬グループは、本業で安定した資金を生み出し、将来に向けた投資も行いながら、手元に余剰資金を確保している状況です。このような財務基盤は、事業の持続的な成長を支えるものとなっています。
■(1) 財務基盤:自己資本と手元資金の厚み
同社グループの財務基盤は、高い自己資本比率と潤沢な手元資金によって安定している状況です。自己資本比率はプライム市場の製造業平均を大きく上回っており、強固な財務体質を示しています。ROE(自己資本利益率)はプライム市場平均に近い水準で推移しており、効率的な資本活用がうかがえます。
| 指標 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 純資産 | 2,685億円 | 2,801億円 |
| 自己資本比率 | 71.6% | 70.0% |
| ROE(自己資本利益率) | 6.5% | 9.0% |
| 現金及び預金 | 554億円 | 500億円 |
■(2) キャッシュフロー:事業・投資・財務の資金の流れ
同社グループの営業活動によるキャッシュフローは、当期において287.8億円の収入となりました。これは主に税金等調整前当期純利益の計上や減価償却費があったことによるものです。投資活動によるキャッシュフローは、有形固定資産の取得による支出があったものの、投資有価証券の売却による収入もあり、171.8億円の支出となりました。
財務活動によるキャッシュフローは、自己株式の取得や配当金の支払い、長期借入金の返済があったため、202.4億円の支出となっています。これらの結果、フリーキャッシュフローは116.0億円のプラスとなり、本業で得た資金を投資に充てつつも、余剰資金を生み出している状況です。このような資金の流れは、同社グループが安定した事業運営を継続し、将来の成長に向けた投資余力も確保していることを示しています。
| 項目 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 営業CF | 255.3億円 | 287.8億円 |
| 投資CF | △273.1億円 | △171.8億円 |
| 財務CF | △47.6億円 | △202.4億円 |
| フリーCF(営業CF+投資CF) | △17.8億円 | 116.0億円 |
■(3) 事業リスクと雇用への影響:転職時に押さえたいポイント
① 継続企業の前提に関するリスク
継続企業の前提に関する特記事項はありません。
② 事業構造・収益性に関するリスク
同社グループは、国内外競合との価格競争や技術競争の激化により収益性が低下する「競合リスク」を認識しています。また、技術革新や顧客ニーズの変化により既存製品の競争力が低下し、需要が減少する「市場ニーズの変化」も重要なリスクとして挙げています。
③ 人材・組織に関するリスク
人材・組織に関するリスクの記載はありません。
④ 雇用安定性・リストラ
解雇給付・リストラクチャリング引当金・構造改革費用の計上など、該当する記載はありません。
財務指標だけでは分からない、実際の残業の実態や職場環境は、社員の声から確認できます。
5. ビジョンと企業風土:どんな組織を目指している会社か?
日本化薬は、KAYAKU spiritを企業ビジョンに掲げ、人と地球の未来に貢献することを目指しています。同社グループは、技術力と挑戦する企業文化を融合させ、社会課題の解決と持続可能な成長を追求しています。
■(1) 経営理念とビジョン:会社はどこを目指しているか
日本化薬グループは、企業ビジョンとしてKAYAKU spirit「最良の製品を不断の進歩と良心の結合により社会に提供し続けること」を掲げています。
長期経営計画「Evolution2035」では、「KAYAKUの技術で人と地球の未来に安心・豊かさ・感動を」というありたい姿を定めています。
社会的価値と経済的価値の両立による持続可能な成長の実現を目指している会社です。
■(2) 企業風土:大切にしている価値観とカルチャー
同社グループは、KAYAKUの技術力と事業アセットに、従来の枠組みにとらわれない挑戦する企業文化を融合させることを重視しています。
従業員一人ひとりの能力とエンゲージメントの最大化を図り、イノベーション創出力の強化につなげるため、人的資本への戦略的投資を重要な経営資源と位置付けています。
多様な意見が尊重され、働きがいのある、心理的安全性の高い職場づくりを推進し、自律型人材の育成や、失敗を恐れずチャレンジできる人材の育成に取り組んでいます。
また、年齢や性別、キャリア、学歴、国籍などにこだわらない職務配置と処遇を可能にする「ポジションクラス(職務等級)制度」を導入し、従業員が健康で安心して働ける労働環境の整備を目指しています。
■(3) 経営課題と今後の重点テーマ
日本化薬グループは、長期経営計画「Evolution2035 Phase1」において、「効率とスピードを高める組織運営の進化」と「人的資本への戦略的投資」を全社重点施策としています。
具体的には、専門性の高度化、多様な人材の活躍推進、挑戦を促す組織風土の醸成を通じて、従業員の能力とエンゲージメントの最大化を図る方針です。
また、グループ経営の強化やコンプライアンスの徹底による内部統制の充実に努め、女性、外国人、キャリア採用者の活躍促進を含めた人材の育成・活用を推進しています。
さらに、人権を尊重した責任あるサプライチェーンの構築にも取り組んでいます。
会社が掲げる価値観と現場の実態が一致しているかどうかは、社員・OBOGの口コミが参考になります。
6. 経営体制とガバナンス:誰がどう会社を動かしているか?
日本化薬は、監査役会設置会社として経営の意思決定と監督機能を強化しています。執行役員制度を導入し、意思決定・監督機能と業務執行機能の役割を明確に分離しています。
■(1) 株主構成:誰に支えられている会社か
日本化薬の株主構成を見ると、筆頭株主は日本マスタートラスト信託銀行(信託口)であり、機関投資家が上位を占めています。また、カヤベスタークラブも上位株主として名を連ねています。
| 株主名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 14.83% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 7.44% |
| カヤベスタークラブ | 4.10% |
| 常陽銀行 | 3.43% |
| 明治安田生命保険相互会社 | 3.26% |
■(2) 経営陣の経歴:どんな人たちが会社を率いているか
同社の役員は14名(男性13名・女性1名)で構成され、女性役員比率は7.0%です。代表取締役社長は川村茂之氏が務めています。社外取締役比率は44.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 川村 茂之 | 代表取締役社長 | 1987年同社入社後、姫路工場調達部長、化薬(湖州)安全器材有限公司董事兼総経理などを歴任。セイフティシステムズ事業本部企画本部長、執行役員、常務執行役員を経て、2025年6月より代表取締役社長に就任し現職。 |
| 島田 博史 | 代表取締役ライフサイエンス事業領域管掌兼医薬事業部長 | 1989年同社入社。日本化薬フードテクノ代表取締役社長、医薬事業本部原薬・国際・診断薬本部長などを経験。執行役員、常務執行役員を経て、2025年6月より代表取締役に就任し現職。 |
| 井上 晋司 | 取締役経営企画・コーポレート・コミュニケーション部・経理部・情報システム部管掌兼危機管理委員会委員長 | 1988年同社入社後、上海化耀国際貿易有限公司董事兼総経理、機能化学品事業本部色素材料事業部長などを務める。執行役員、上席執行役員を経て、2024年6月より取締役に就任し現職。 |
| 武田 真 | 取締役人事部・法務部・総務部・秘書部・内部統制推進部管掌兼倫理委員会委員長・安全保障貿易管理責任者 | 1988年同社入社。経営戦略本部秘書部長、グループ管理本部人事部長などを歴任。執行役員、上席執行役員を経て、2024年6月より取締役に就任し現職。 |
| 加藤 康仁 | 取締役テクノロジー統括管掌 | 1990年同社入社後、アグロ研究所長、アグロ事業部長などを務める。執行役員、上席執行役員を経て、2025年6月より取締役に就任し現職。 |
社外取締役は、藤島安之氏(元双日代表取締役専務執行役員・一般社団法人外国人材支援機構理事長)、房村精一氏(元名古屋高等裁判所長官・東京都労働委員会会長)、赤松育子氏(公認会計士・学校法人産業能率大学総合研究所主幹研究員)、椿本光弘氏(日本クエーカー・ケミカル代表取締役社長・元豊田通商常務執行役員)です。
同社は監査役会設置会社です。経営の意思決定・監督機能と業務執行機能を分離し、それぞれの機能強化を図っています。
■(3) 役員報酬の仕組み:経営責任とインセンティブの設計
日本化薬の役員報酬は、企業価値の持続的な向上と株主との価値共有を目的として設計されています。業務執行取締役の報酬は、基本報酬と業績連動賞与金、株式報酬からなるインセンティブ報酬で構成されています。社外取締役および監査役の報酬は固定報酬のみとなっています。
| 区分 | 人数 | 総額 | 1人あたり平均 |
|---|---|---|---|
| 取締役(社外除く) | 7名 | 3.7億円 | 52.3百万円 |
| 監査役(社外除く) | 3名 | 47百万円 | 15.7百万円 |
| 社外役員 | 8名 | 75百万円 | 9.4百万円 |
役員報酬等の総額は4.88億円で、対象となる役員の合計は18名です。
個人別報酬が開示されている役員は、川村茂之氏(1.11億円)です。
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