有機合成薬品工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

有機合成薬品工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場のファインケミカルメーカー。アミノ酸、化成品、医薬品原料の製造販売を主力とし、高度な有機合成技術に強みを持ちます。業績は好調で、売上高は6期連続で過去最高を更新し150億円を突破。各段階利益も前期比で増益となり、成長基調を維持しています。


※本記事は、有機合成薬品工業株式会社 の有価証券報告書(第105期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 有機合成薬品工業ってどんな会社?


ファインケミカル専業メーカーとして、アミノ酸、化成品、医薬品原料等の製造・販売を行っています。

(1) 会社概要


1947年にたばこ香料の生産を目的として有機合成工業が設立されました。1962年に現社名へ変更し東証二部に上場すると、1964年には現在の主力生産拠点である常磐工場が稼働を開始しました。その後、2001年の医薬原薬生産設備の増設などを経て業容を拡大し、2004年に東証一部銘柄に指定されました。

同社(単体)の従業員数は296名です。筆頭株主は医薬品・医療機器の大手メーカーであるニプロで、第2位は化学品専門商社の長瀬産業、第3位は大塚ホールディングス傘下の医薬品メーカーである大鵬薬品工業です。事業上の関係が深い企業が主要株主となっています。

氏名 持株比率
ニプロ 15.30%
長瀬産業 5.10%
大鵬薬品工業 3.12%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長執行役員は松本清一郎氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
松本清一郎 代表取締役社長執行役員営業部門統括 1991年入社。医薬品本部長、化成品本部長、取締役執行役員を経て2019年より現職。
草野正浩 取締役常務執行役員研究開発部門 兼生産部門統括 1991年入社。常磐工場生産管理室長、常磐工場長などを歴任し、2023年より現職。
小松原達也 取締役上席執行役員経営管理部門統括 東京銀行(現三菱UFJ銀行)入行。同社経理財務部長などを経て2023年より現職。
須藤尚武 取締役(常勤監査等委員) 1981年入社。関東電化工業での勤務を経て2019年再入社。2020年より現職。


社外取締役は、山田啓介(元デロイト・ハスキンズ・アンド・セルズ公認会計士共同事務所)、大堀徳人(桃尾・松尾・難波法律事務所パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ファインケミカル事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

(1) アミノ酸関係


アミノ酸、ビタミン原料等の製造および販売を行っています。グリシンなどの製品群を持ち、医薬品用途や食品添加物、半導体関連用途など幅広い分野に供給しています。

製品の販売を通じて顧客から対価を得ています。運営は主に有機合成薬品工業が行っています。

(2) 化成品関係


タイヤコード接着剤原料、農薬中間体、シリコン化合物等の製造および販売を行っています。独自の合成技術を活かし、工業用薬品や電子材料向けの機能性化学品を展開しています。

製品の販売を通じて顧客から対価を得ています。運営は主に同社が行っています。

(3) 医薬品関係


医薬品原料・中間体等の製造および販売を行っています。原薬や重要中間体のほか、化粧品原料なども取り扱っており、創薬支援や受託製造も手がけています。

製品の販売および製造業務の受託により収益を得ています。運営は主に同社が行っています。

(4) その他(製造業務の受託等)


主として同社の製造業務の請負等を行っています。

同社の子会社であるユーキテクノサービスに対して業務委託費等を支払う形態となります。運営はユーキテクノサービスが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの5期間において、売上高は着実に右肩上がりで推移しており、直近では150億円を超える規模に成長しています。利益面でも、2021年3月期以降、経常利益および当期純利益は増加傾向にあり、特に直近2期は経常利益が11億円台で安定して推移するなど、収益力の向上が見られます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 111億円 124億円 128億円 129億円 151億円
経常利益 2億円 4億円 7億円 11億円 11億円
利益率(%) 1.6% 3.2% 5.1% 8.7% 7.5%
当期純利益(親会社所有者帰属) 3億円 2億円 6億円 8億円 9億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高の大幅な増加に伴い売上総利益も増加しましたが、原燃料費等の影響により売上原価率が上昇したため、利益の伸び率は売上の伸び率を下回りました。しかし、増収効果により営業利益および経常利益はいずれも前期を上回る結果となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 129億円 151億円
売上総利益 33億円 33億円
売上総利益率(%) 25.2% 21.9%
営業利益 11億円 12億円
営業利益率(%) 8.7% 8.0%


販売費及び一般管理費のうち、その他が7億円(構成比33%)、研究開発費が6億円(同27%)、役員報酬及び給料手当が5億円(同22%)を占めています。売上原価においては、原材料費が67億円(構成比52%)、経費が48億円(同37%)を占めています。

(3) セグメント収益


全製品区分で増収となりました。アミノ酸関係は医薬・半導体用途が好調、化成品関係は新製品の高分子材料等が寄与、医薬品関係は原薬中間体や受託原薬が伸長しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
アミノ酸関係 42億円 52億円
化成品関係 45億円 51億円
医薬品関係 42億円 49億円
連結(合計) 129億円 151億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は「積極型」です。本業で稼いだ資金(営業CFプラス)と財務活動による調達資金(財務CFプラス)を合わせ、設備投資等の投資活動(投資CFマイナス)へ積極的に資金を投じています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 4億円 21億円
投資CF -19億円 -32億円
財務CF 9億円 15億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.0%で市場平均(7.2%)をわずかに下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は48.8%で市場平均(57.5%)を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「わが社は内外のあらゆる技術を駆使して人の役に立ち人によろこばれるものを創る」という企業理念を頂点に置いています。その実現のため、時代のニーズに柔軟に対応する羅針盤として、「私たちはファインケミカルに機軸を置き叡智と技術を結集した真の『ものづくり』に挑戦します」という経営理念を掲げ、全てのステークホルダーに対して企業価値を最大化することを使命としています。

(2) 企業文化


「自然と共生し、地球にやさしい企業」をスローガンに掲げ、環境保護に取り組む姿勢を重視しています。また、企業競争力を高めるため「クオリティーカルチャーの醸成」を掲げ、「一人ひとりが自分で考え、判断し、行動する人材を育成する」ことをテーマに、従業員が自主的に改善活動に取り組める文化の構築を目指しています。

(3) 経営計画・目標


2024年3月期を起点とする3カ年の中期経営計画を推進しています。最終年度である2026年3月期の経営数値目標として以下を掲げています。

* 売上高:150億円
* 営業利益:8.5億円
* 経常利益:8.3億円
* 当期純利益:6.2億円
* ROA(総資産営業利益率):4.2%

(4) 成長戦略と重点施策


「激変する経済環境の中、主要製品の売上を拡大しながら、新製品を継続的に導入し、以て向こう10年間の成長に資する礎を築く」を基本方針としています。これを達成するため、以下の重点施策に取り組んでいます。

* クオリティーカルチャーの醸成
* 企業価値の向上
* アミノ酸分野の事業構造改革
* 医薬品分野の受託ビジネス拡充
* 化成品事業の拡大・再構築

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


クオリティーカルチャーの醸成による企業競争力向上を目指し、「一人ひとりが自分で考え、判断し、行動する人材を育成する」をテーマに人材育成を行っています。また、多様性の確保が社内活性化につながるとの認識のもと、性別や国籍、採用時期にかかわらず採用を行い、能力や適性を総合的に判断して管理職への登用を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.5歳 16.2年 6,653,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.7%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 85.9%
男女賃金差異(正規雇用) 85.9%
男女賃金差異(非正規) 89.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、定着率(99%)、有給休暇取得率(83%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 大口取引先への依存


売上高に占める取引上位10社の割合は約66%と高くなっています。これらの企業とは良好な信頼関係を構築していますが、取引条件の急激な変更や契約解除等が発生した場合、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 原材料価格の変動


使用する原材料等の価格は、国内外の情勢や原油・ナフサ価格の動向の影響を受けます。また、一部の原材料は特定の取引先に依存しています。コストダウンや価格転嫁等の対策を講じていますが、原材料価格の高騰が事業に影響を与える可能性があります。

(3) 自然災害等による影響と生産拠点の集中


本社や研究所は東京都にありますが、生産拠点である工場は福島県いわき市の常磐工場のみとなっています。BCP策定や耐震対策等を進めていますが、地震や水災等の自然災害により常磐工場が被災した場合、生産停止などにより業績に影響が及ぶ可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。